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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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帯状疱疹後三叉神経痛は誤訳

国際口腔顔面痛分類(ICOP)、国際頭痛分類第3版(ICHD3)に見つかった大きな誤訳
この度、臨床推論実習セミナーの受講生から非常に違和感のある病名を聞かされました。「帯状疱疹後三叉神経痛」です。帯状疱疹の急性期が過ぎて、慢性化したときに持続的な痛みに発作性の痛みが混じることがあります。通常、これを帯状疱疹後神経痛と呼びます。
ところが、慢性化した持続的な痛みは帯状疱疹後神経痛で、そこに混じる発作性の痛みの病名は「帯状疱疹後三叉神経痛」が適切だろうという意見でした。なるほどと思うとともに大きな違和感がありました。そんな病名あったかと思って確認したら、国際口腔顔面痛分類(ICOP)は国際頭痛分類第3版(ICHD3)ともに確かにありました。
「帯状疱疹後三叉神経痛」を字面の通りに解釈すると、帯状疱疹後に起こる、あるいは帯状疱疹に罹患したことが原因で起こる三叉神経痛となります。もっともらしいのですが、これは大間違いで、「帯状疱疹後三叉神経痛」は誤訳です。
「帯状疱疹後三叉神経痛Trigeminal Post-Herpetic Neuralgia」は三叉神経痛の下分類では無く、三叉神経ニューロパチーの下分類として、帯状疱疹による有痛性三叉神経ニューロパチー、外傷後三叉神経ニューロパチーなどと並列に分類されています。つまり、三叉神経痛の下分類ではないのです。
ICHD3βでは明らかにニューロパチーが生じているということで「帯状疱疹後有痛性三叉神経ニューロパチーPost-Herpetic Trigeminal neuropathy」となっていました。しかし、やはり、帯状疱疹後神経痛Post-Herpetic Neuralgiaという用語が普及していることから、ICHD3では再度、改訂されました。ここで誤訳が発生したのです。
帯状疱疹後三叉神経痛の原文はTrigeminal Post-Herpetic Neuralgiaでした。ICHD3βの帯状疱疹後有痛性三叉神経ニューロパチーPost-Herpetic Trigeminal neuropathy」とではtrigeminalの位置が異なります。Trigeminal Post-Herpetic Neuralgiaでは敢えて先頭にtrigeminalを置いてあります。
中間神経の項に類似の分類があります。有痛性中間神経ニューロパチーの下分類に、帯状疱疹後中間神経痛があり、その英文はPost-Herpetic Neuralgia of nervus intermediusです。帯状疱疹後中間神経痛も誤訳です。
帯状疱疹後三叉神経痛Trigeminal Post-Herpetic Neuralgia
帯状疱疹後中間神経痛Post-Herpetic Neuralgia of nervus intermedius
並べて見ると、同じ分類なのに英文に統一性がないのも気になりますが、敢えて帯状疱疹後神経痛という病態を元に英文と日本文を修正するなら、
Trigeminal Post-Herpetic Neuralgia 三叉神経帯状疱疹後神経痛
Nervus intermedius Post-Herpetic Neuralgia 中間神経帯状疱疹後神経痛
これが適切と思います。
国際頭痛分類第4版への改訂が進められているそうです、発刊されるとすぐに日本語訳が出来ますので、間違いが出ないように担当の先生に今から連絡しておこうと思います。
 
 
2025年09月26日 09:17

顎関節症、歯ぎしり、スプリントに関する最新見解

顎関節症(TMD)におけるスプリント治療の最新論文から
歯科におけるスプリントに関するエビデンスは比較的弱く、決定的なものではありません。歯科医師は、歯科スプリントの歴史的発展とその背景にあるエビデンスを理解することが重要です。
TMD症例に取り組む際には、臨床医は病状に影響を及ぼす可能性のある全身的要因も認識しておく必要があります。
現時点では、特定のスプリントの材質、デザイン、または原理が他よりも優れている、または劣っているというエビデンスはありません。
顎関節症治療では関節痛障害、筋痛障害など診断を確定し、適切なスプリントの使用などの個別対応戦略を、薬物療法、理学療法、行動変容、認知行動療法、心理社会的カウンセリングなどの他の治療法と組み合わせて行うことが、慢性TMD症例の管理において最も有効であることが実証されており、再発防止にも重要な役割を果たします。
TMDを管理する歯科医師は、TMJ関連の筋骨格障害を単なる歯科の問題として扱うのではなく、「整形外科的存在」として捉える必要があります。
顎関節症のポイント
•TMD の管理を成功させるには、正確な診断が不可欠です。
•現在の顎関節症治療の進歩は、古い機械的、咬合治療から、学際的、生物心理社会的治療プロトコルと完全な口腔顔面痛の診断プロセスへと移行しています。
•咬合と TMD の因果関係を証明する有効な科学的証拠はまったくありません。
•スプリント療法や理学療法などの比較的短期的な治療法は、単純な症例では良好な結果をもたらします。
•咬合調整は不可逆的であり、顎関節症(TMD)および慢性顎関節痛の治療において効果は限定的、あるいは全くありません。顎関節症および歯ぎしりの治療を目的とした従来の咬合調整には、科学的根拠が欠けています。
•TMD および歯ぎしりの患者に影響を与える全身合併症を認識し、適切に治療することが重要です。

ブラキシズムの概念は過去数十年間で大きく変化した。
• 現在ブラキシズムは障害ではなく、様々な基礎疾患の影響を受ける筋行動とみなされている。歯ぎしりは現在、様々な基礎疾患の影響を受ける筋行動とみなされている。
• 閉塞性無呼吸発作に対して歯ぎしりは保護的役割を果たす可能性がある。
2025年09月06日 10:58

オンラインでも感覚検査が出来ます

オンラインでも感覚検査ができます
オンライン相談を受けていて、相談者の訴えの原因を直接探れないもどかしさから、オンラインでも実施可能ないくつかの診査法を考案して実施しています。もちろん、オンライン相談を申し込む方々は既にいろはいろな治療を受けたが改善していない事から心理的にも窮していることが多いので、傾聴、受容、共感の態度は必須です。
オンライン相談の経験から、実際の診療での診査と同等の診査を行えるのは感覚検査です。オンラインでの手順を説明します。
1)問診により、痛みの種類、痛み部位、経過等を聞きます。
神経障害性疼痛による痛みは、しびれやヒリヒリ、ピリピリ、うずき、灼熱感のように表現されることが多いです。また、三叉神経痛の場合にはビリッとかズキンとした発作性の電気ショック様の痛みを訴えます。
現症を聞くなかで最も重要な点は、痛みの範囲が三叉神経の痛みとして神経解剖学的に妥当であることで、三叉神経のどれかの枝に限局しているはずです。そして、その痛みの部位の神経を刺激するようなエピソードがあったはずです。例えば、抜歯、インプラント、切開、根管治療、歯根端切除術などの後に痛みが生じていることが多いです。
ここまで確認出来ると神経障害性疼痛の疑いが高まります。
2)次はいよいよ感覚検査です、   https://wajima-ofp.com/blog_articles/1755509833.html
前もって綿棒と爪楊枝、保冷剤で冷やした小さなスプーンを用意してもらいます。
麺棒で痛いところの歯として肉をさすってもらい、嫌な感じ、痛みがないかどうか、そして、対照として反対側の歯肉もさすってもらいます。どこかに嫌な感じ、痛いところがあったら、必ず左右を比べてもらいます、一回だけでは無く、何回か繰り返してもらいます。そして、さすった後に嫌な感じや痛みがあった部分になにか感覚が残らないかどうかの残感覚も確認します。次に爪楊枝でチクチク刺激してもらいます、他に比べて痛みが強いところがないかどうかを聞きます。何回か繰り返し、痛いところがあったら左右で比較します。触覚同様に残感覚も確認します。
歯肉の温冷感覚は鈍いのですぐには反応がでません、正常でも冷たさが感じられるまで10秒―20秒くらい掛かります。最初は痛みの無い側の歯肉に冷やしたスプーンをペタッと当ててもらいます。指で唇を引っ張って他に当たらないように気をつけて行ってもらいましょう。歯肉に冷たさが感じられたら何か合図してもらいましょう。何秒で冷たさが感じられたか確認しておきます。
もう一回保冷剤でスプーンを冷やして、麺棒で嫌な感じ、痛かった部位、そして、爪楊枝でチクチクが強かった部位にペタッと当てます。冷たさを感じるのに何秒かかりましたか、敏感ですぐに感じるか、鈍くなってなかなか感じないか、冷たさを感じないがじわーっと痛みが出ることもあります。痛みを感じたらすぐ離して、痛み感覚がどれくらい続くか観察してもらいましょう。
感覚検査は自分だけでも実施することが出来ます。特に害はありません。感覚検査で何らかの異常反応があった場合には神経障害性疼痛の可能性が高まります。ここまでの結果を元に専門医あるいは病院歯科等を受診するように勧めます。
 
2025年09月05日 18:48

口腔診断学会・口腔内科学会共催学会臨床推論シンポジュウム

臨床推論シンポジュウム
 
9月6日、仙台で開催される口腔診断学会・口腔内科学会共催学会において、口腔顔面痛学会コラボレーション・シンポジウムとして、「日々の診療に臨床推論を根付かせる~これからの歯科医師にどう教育するか~」が行われます。私は企画提案者として座長を務めます。
歯学部教育の指標となる「歯学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)に臨床推論が新規作用され、令和6年入学生から教育する事が求められています。
臨床推論で求めているのは、臨床経験に基づいて行われる直感的思考(パターン認識法)から仮説演繹法に代表される分析的臨床推論を学習することです。本文には、主要な症候から鑑別すべき主な原因疾患が示され、その説明として、「症候から想定すべき代表的な原因疾患例等を記載したが、症候に該当する疾患を網羅しているわけではない。臨床推論では可能性のある症候や病態から原因疾患を鑑別診断するプロセスが重視され、原因疾患を単純に全て暗記することを期待しているものではない。」と記載され、明確に分析的臨床推論を学習することを求めています。
歯学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)抜粋
E-3-2 臨床推論 口腔・顎顔面領域の主な症候から病態生理学的に発症原因を推論し、分類、鑑別診断できる基本的能力を身に付ける。
学修目標:
E-3-2-1 主要な症候について原因と病態生理を理解している。
E-3-2-2 主要な症候について鑑別診断を検討し、診断の要点を説明できる。
E-3-2-3 臨床実習の現場で主訴から診断推論を組み立てられる。
E-3-2-4 臨床実習の現場における疾患の病態や疫学を理解している。
 
口腔顔面痛学会では10年以上前から痛みの診断方法として仮説演繹法を推奨し、その習得のために実習セミナーを行って来ました。日本口腔顔面痛学会認定医、専門医は痛み診断のための仮説演繹法をマスターし、痛み治療に活用しています。ところが、歯科全般としては歯学部教育のなかで臨床推論を学習する機会が無かったために、卒業後も各自の臨床経験に基づいて直感のようにパターン認識法で診断しています。臨床経験が多ければ直感でも正しい診断が出来ますが、如何に一つ一つの症例を解析して蓄積するかによって診断の正確さが変わります。少しでも症例の振り返りをすると症例の特徴が解析され整理されて記憶に残り、次に同じ様な症例を診たときにスムースに記憶が呼び起こされます
診断法の教育の場面ではパターン認識法は役に立ちません、研修医が指導医と一緒に臨床に立ち会っても、指導医の頭の中で考えていることは伝わってきません。研修機関における診断指導では診断のプロセスを可視化する事が必要です、その可視化のフォーマットの一つが仮説演繹法です。
https://wajima-ofp.com/blog_articles/1728088294.html
 
2025年09月04日 13:30

顎関節症、口腔顔面痛の診査法ハイブリッドセミナー

顎関節症、口腔顔面痛の診察法ハイブリッドセミナー
2025年、顎関節症、口腔顔面痛の本格的研修希望の方々に、対面で標準的診察法のHands onセミナーを行いました。Hands onとはまさに、手を使って研修する、手を取って教えるということです。各種のメディアが発達した現在にわざわざ対面で研修することもないだろうと考えられると思いますが、Hands onでしか伝えられない診察法があります。その代表が筋触診です。筋・筋膜性疼痛の元となる筋肉中の索状硬結とトリガーポイントを触診して見つけ出し、圧迫する事により関連痛を誘発することができる様になる事が目標です。
診察法実習セミナーには、3つのねらいがあります。1)私が日常の診療で行っている診察法を解説しながらそのまま実施し、それを間近で見学して手順を理解してもらうこと。2)受講者の全員に患者役になってもらい、診察を受ける側から診察法を確認すること。3)診査を間近で見学し、自分が被験者になり診査を受けた後に、受講者同士で相互診察を行う、相互実習では和嶋と同じ診察が出来る様に被験者から診察部位、強さなどのフィードバックを受けながら、診察技術を高めること。
セミナー全体は反転授業形式で、事前に各診察の意義等をオンラインで説明して理解してもらった上で、対面で実技習得してもらう形式です。オンライン講義の後の対面Hands-on実技指導のハイブリッド型学習方式でもあります。
受講者の反応から、この方式が顎関節症、口腔顔面痛の診査法学習の有効な方法であるいう印象があり、今後も継続して行く予定です。
 
2025年09月03日 14:23

口腔顔面痛オンライン相談での自己筋痛診査

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口腔顔面痛オンライン相談での自己筋痛診査
口腔顔面痛診療は日本全国何処でも受けられるわけではないことから、数年前から口腔顔面痛のオンライン相談を受けています。診療ではなく相談としているのは、一度も対面診療せずにオンラインだけでは正しい診断、治療に制限があるからです。
オンラインでも神経障害性疼痛診査の為の感覚検査は通常の対面診査と同等に行えることを前述しました。https://wajima-ofp.com/blog_articles/1755509833.html
口腔顔面痛で最も一般的な筋・筋膜性疼痛診断のための筋圧痛診査は難しいです。オンラインでの有効な自己診査法を考えてみました。
  1. とりあえず、貴方の痛みのある側で頬杖をついてもらいます、その格好は手のひらに顎の先が上手く収まって頭の重さが支えられ、親指が顎の下、揃えた指4本で顎を包み、人差し指と中指が耳の付け根に当たっています。
  2. そのままの格好で、何回かかみしめてもらいます、揃えた指の中頃で波打つように咬筋が収縮します。その波打つ部分に指先を移動します、そして、また、何回かかみしめてもらい、指先でしっかり筋の波の頂点を確認しましょう。
  3. 指先を波の頂点に置いたまま、かみしめをやめて力を抜いてもらいます。筋肉の盛り上がりは消えましたが、指先でしっかり触ると少し硬い部分が残っています。指先に力をこめたままで、少しだけ、ゆっくり顔、頭全体を揺らしてみましょう。きっと、指先に触れる硬いコリコリした部分が行ったり来たり、場合によっては強い痛みを感じることもあるでしょう、痛みが強かったら圧す力を少し弛めましょう。少し痛みを感じる程度に圧したままで、数秒顎を揺らし続けてください、上手く顎を揺らすことが出来なかったら指先でコリコリをゴリゴリしてみましょう。どこか他のところに痛みが広がりませんかと関連痛を確認します。
筋・筋膜性歯痛の場合にはこのように筋肉のコリコリを圧していると何時もの歯痛が再現されます。
  1. 次に、反対側で頬杖ついてもらい、手のひらに顎の先が上手く収まって頭の重さが支えられ、親指が顎の下、揃えた指4本で顎を包み、人差し指と中指が耳の付け根に当たっていることを確認しましょう。
  2. 痛みのある側と同様に、かみしめてコリコリを確認し、コリコリに指先を移動して、少し痛みを感じる程度に圧したままで、数秒顎を揺らし続けてください、上手く顎を揺らすことが出来なかったら指先でコリコリをゴリゴリしてみましょう。どこか他のところに痛みが広がりませんかと関連痛を確認します。
オンライン相談の際にもなるべく自分の通常の対面での診療と同じ事をしようと思っています。オンラインでは相手の表情を観ながらの会話で医療面接は通常通りできます。痛みの構造化問診を順に行い、痛みの経過、現在の痛みの状況がある程度把握できます。口腔顔面痛の疫学的疾患頻度と長年の診療経験からいくつかの代表的な痛み疾患が浮いてきます。多いのは筋・筋膜性疼痛と神経障害性疼痛です。
この二つの疾患をオンラインで何とか可能性の有無を詰めようとおもって、試行錯誤しながらオンライン自己診査法を検討しています。
 
2025年08月19日 15:42

オンライン感覚検査 続編 舌診査

オンライン感覚検査 続編 舌診査 オンライン神経障害性疼痛診査 https://wajima-ofp.com/blog_articles/1755509833.html
前編ではオンラインによる歯肉の神経障害性疼痛診査の為の感覚検査について書きました。症例によっては舌に痛みを訴えることもありますので舌の感覚検査を解説します。舌は一体ですが、神経支配は完全に左右に分かれていますので、左右側の比較が出来ると言うことです。舌の神経支配は左右に分かれていることと、触覚、痛覚、温冷感覚は前2/3は三叉神経の舌神経支配であり、後1/3は舌咽神経支配です。
味覚は前2/3は顔面神経の鼓索神経支配であり、後1/3は舌咽神経支配です。
  • 舌の触覚検査 スプーンで舌背の片側をこすってもらいます。主訴の部位を意識せず、変な感じ、嫌な感じ、痛いはないか、数回こすってもらいます。次に反対側も同様に数回こすってもらいます。どちらかに反対側とは異なる感じが無いかどうか、何らかの違いが認められた場合には、繰り返し念入りにさすっても賴、反対側と比較してもらいます。念のために少し時間をおいて、もう一度調べてもらいます。繰り返しの診査で主訴の側に何らか一定の感覚障害が認められたら、神経障害性疼痛の可能性ありです。診査した後に何らかの感覚が残っていないかどうかも聞きます。スプーンだと端があたって痛いと言う場合には綿棒で少し強めにさすってもらいます。
  • 次に、痛覚検査として爪楊枝で舌背をチクチクしてもらいます。最初に舌背の健常側をチクチクして、痛みの感じを覚えてもらいます、次に主訴側の舌背をチクチクして、反対側のチクチクの痛みと同じか、強くないかどうか聞きます。順番を変えて、患側を先にチクチクして、次に健常側をチクチクして、左右の比較をしてもらいます。また、チクチクの感覚が残らないかどうかも聞きます。念のために、少し時間をおいた後にもう一度診査を行ってもらいます。
  • 追加の検査として、保冷剤で冷やしておいたスプーンを用いて、冷感覚テストを行います。舌の診査は口唇、頬粘膜に触れないで出来るのでスプーンを用います。水を含ませた綿棒を保冷剤で冷やして用いても良いです。
最初に、触覚、痛覚テストで異常が認められた反対側舌背に冷やしたスプーンをペタッと当てます。舌は敏感なのですぐに冷たさを感じます。感じたらそのまましばらく当てたままにして痛みが誘発されないかどうか聞きます。次に異常が認められた側の舌背に冷たいスプーンをペタッと当てます。感じるまでの時間にはほとんど差がないと思います。そのまま当てたままにして、痛みが誘発されないかどうか聞きます。また、冷たさの程度を聞き、反対側と比べます。異常側では冷たいスプーンを当てた瞬間に強い冷たさを感じ、当てているとじわーっと痛さが出てきたと訴えることがあります。
ここまでのオンラインでの相談者自身での感覚検査もどきで、実際の診療とほぼ同じ感覚テストが出来ます。この結果はある程度信頼でき、異常が片側に一定して認められた場合には舌の神経障害性疼痛の疑いが高まります。
舌は通常感覚の他に味覚もあります、ベル顔面神経麻痺、帯状疱疹によるラムゼーハント症候群、そしてその後遺症の帯状疱疹後神経痛では舌に味覚障害も認められることがあるので、味覚検査も行います。
  • 味覚検査 事前に味の検査をすること、何か味を感じたら手を挙げてくださいと伝えておきます。水を含ませた綿棒にお塩を少し付けて、それを用いて半側の舌背をスリスリさすります、味を感じたら手を挙げてもらいます、次に反対側を同様に検査します。全く感じないことはなく、いくらか感じるが片方ははっきり感じて、反対側は弱いという反応になることが多いです。うがいしてもらい、順番を変えてもう一度行います。左右差が曖昧な場合にはお酢でもう一度検査してもらいます。  同様の検査を舌後1/3でもやってもらいます。嘔吐反射が出ることがあるので、余り奥までは入れないようにしてもらいます。
味覚検査で味覚低下が診られた場合には顔面神経麻痺が疑われ、ベル麻痺やラムゼーハント症候群、あるいは他の痛み症状と合わせて、後遺症の帯状疱疹後神経痛が疑われます。
希に、味覚が鈍麻ではなく塩味が強く感じられることがあります。これはスーパーテーストと言われ、同側の三叉神経障害による顔面神経の味覚の抑制のバランスが崩れている結果と判断され、多くは舌痛を伴っているためめにurning Mouth Syndromeの治療が必要となります。
前編で解説した歯肉の神経障害性疼痛診査と同様に舌の神経障害性疼痛、味覚検査をくわえた診査ではベル麻痺、ラムゼーハント症候群、あるいは他の痛み症状と合わせて、後遺症の帯状疱疹後神経痛のオンライン診査ができる可能性があります。
 
2025年08月18日 22:04

オンラインで神経障害性疼痛の診査の試み

口腔顔面痛オンライン相談の現状 患者さんの状況をどの程度収集できるか
口腔顔面痛診療は日本全国何処でも受けられるわけではなく、専門医の診療をうけられるのは主に歯学部病院のある地域に限られています。
そこで、数年前から口腔顔面痛のオンライン相談を受けています。診療ではなく相談としているのは、一度も対面診療せずにオンラインだけでは正しい診断、治療に制限があるからです。それではオンラインでどんな事をしているのか。なるべく自分の通常の対面での診療と同じ事をしようと思っています。オンラインでは相手の表情を観ながらの会話で医療面接は通常通りできます。痛みの構造化問診を順に行い、痛みの経過、現在の痛みの状況がある程度把握できます。口腔顔面痛の臨床診断推論の始まりは、歯原性疼痛の除外診断です。これはオンライン相談以前に数軒の歯科医院、病院歯科などを受診していて歯科的な診査を受けていて異常がないとのお墨付きです。たまには、見逃されていることもありますが、歯原性疼痛はいずれ顕在化して、診断されます。
医療面接を進めていくと、口腔顔面痛の疫学的疾患頻度と長年の診療経験からいくつかの代表的な痛み疾患が浮いてきます。多いのは筋・筋膜性疼痛と神経障害性疼痛です。ところがここで制限があって先に進めません、筋・筋膜性疼痛診断のための筋圧痛が出来ません、神経障害性疼痛診断のための感覚検査が出来ません。何かの代替え法で乗り越えられないか、いろいろ考えてみました。

比較的簡単にクリア出来そうなのは神経障害性疼痛診断のための感覚検査です。オンライン相談受付の際に感覚検査のために、綿棒、爪楊枝、小さなスプーン、保冷剤、お塩を用意してもらいます。
オンラインでの感覚検査 スマホで相談者は自分の口腔内を観ながら進めます。
  1. 触覚検査として、小さなスプーンで上下顎左右の頬側歯肉をゆっくり、なでてもらいます。同じ場所を数回なでるようにスリスリしてもらいます。最初は主訴の部位を意識せず、右大臼歯部から前歯部、左側大臼歯部と進み、次に逆回りします。どこか、変な感じ、嫌な感じ、痛いところはないか、何らかの違いが認められた部位は繰り返し念入りになでてもらい、反対側、前後と比較してもらいます。念のために対顎を調べた後に、もう一度調べてもらいます。繰り返しの診査で主訴の部位に何らか一定の感覚障害が認められたら、神経障害性疼痛の可能性ありです。診査した後に何らかの感覚が残っていないかどうかも聞きます。スプーンだと周囲に当たって、何処でも痛いと言う場合には綿棒で少し強めになでてもらいます。
  2. 次に、痛覚検査として爪楊枝で上下顎左右の頬側歯肉をチクチクしてもらいます。どこか、特に痛いところがないか、最初に健常部をチクチクして、次に主訴の部位を調べて、痛みは同じか強くないかどうかを調べてもらいます。他の部位よりも痛みが強い部位が認められたら、左右の比較、前後の比較を行い、対顎を調べて、少し時間をおいた後にもう一度診査を行ってもらいます。診査した後に刺激感覚が残らないかどうかも聞きます。
  3.  神経障害性疼痛の多くの場合、触覚異常が認められた部位に痛覚異常も認められ、刺激後の残感覚も認められます。
  4. 追加の検査として、保冷剤で冷やしておいた水を含ませた綿棒を用いて、冷感覚テストを行います。この場合、口唇、頬粘膜に触れないようにしてください、スプーンは全部冷えて何処が当たって冷たい感覚か判らなくなるので用いません。最初に、触覚、痛覚テストで異常が認められた部位の反対側頬側歯肉に冷やした綿棒をペタッと当てます。何秒で冷たさを感じるか、正常でも数秒から秒と幅があります。感じたらそのまましばらく当てたままにして痛みが誘発されないかどうか聞きます。次に異常が認められた部位にもう本の冷たい綿棒を当てます、何秒で感じるか、そのまま当てて痛みが誘発されないかどうかを聞きます。場合によっては異常部位では冷たい綿棒を当てた瞬間に冷たさを感じ、当てているとじわーっと痛さが出てきたと訴えることがあります。
    味覚検査を含めた舌の感覚検査:
     https://wajima-ofp.com/blog_articles/1755522283.html
ここまでのオンライン相談での医療医面接、相談者自身でも感覚検査もどきで神経障害性疼痛の診査が行うことが出来ます。
 
2025年08月18日 18:37

私の口腔顔面痛診療の現状と展望

私の現状と今後の展望
以前、クリニックでの口腔顔面痛診療は75歳を一区切りと書いたことがあります。現在(2025/08)、73歳、11月には74歳です、何を根拠に75歳と書いたのは定かではありませんが、後期高齢者が知力、体力を保って第一線で仕事出来るかという不安があったからだと思います。自分の診療が患者さんのためにならないならば、すぐに止めるべきと思っています。
コロナ前にAAOPで私よりも15歳年上のUCLAのRobert Merill先生に会ったときに、口腔顔面痛は臨床例の蓄積が大事で、それも何時でも引き出せるように整理して置かなければならないと言われました。大学止めてからが本番だよ、私の域に達するには15年必要だね、頑張れと言われました。残念ながらMerill先生はコロナの間に逝かれてしまいました、残念です。
知り合いが、臨床医の賞味期限は何時かという文を書いていて、それに寄ると診療、特に診断で感が働かなくなった時と言っていました。私は自分の診療において必要があって臨床診断推論を勉強して、自分の診療に取り入れています。若い頃は多くの症例を経験して、それを仮説演繹法で診断する。思いつく病気に加えて、keyになる症状、現症からPC検索して、知らなかった病気も含めて仮説を立てて、その真偽を診査、検査で確認する、最後に残った仮説が最終診断となる。このような論理的思考過程を繰り返す事により、一つ一つの症例が自分の臨床診断推論の良きデータとして蓄積されて行く、次に同じ様な症例に遭遇したときには診ただけで診断出来るということとなる、これが仮説演繹法の対極にあるパターン認識法である。今の私の診療における診断法に戻ると、ほとんどがパターン認識法で診断出来ています、時々、経過が長く、症状が重複しているなど複雑な症例では指導医の様に仮説演繹法が登場してきます。そこでは今まで経験した症例を総動員して可能性のある仮説を立てて、臨床診断推論を勧めていきます。良いエサを食べた鯛は美味いというのと同じでしょう。
このようにこの症例はパターン認識法で正しく診断出来るか、仮説演繹法に登場願うかの判断が出来るのが前述の「臨床医の賞味期限―診療、特に診断で感が働く」ということなのだと思います。
この基準によると私の診療期限はもう少し伸びそうです。
 
2025年08月18日 11:21

口腔顔面痛はまだ歯科で広まっていない

口腔顔面痛診療は日本全国何処でも受けられるわけではなく、専門医の診療をうけられるのは主に歯学部病院のある地域に限られています。
地域の何軒かの歯科を受診したが原因不明と言われた、治療を受けたが改善しない、あるいは、大学に行き、ペインクリニックに依頼されたが改善しないといった憂う状況にあることを聞きます。このような状況は日本に限ったことではなく世界中にみられるようです。正式に口腔顔面痛専門医が承認されている米国においても、ニューヨーク州、カリフォルニア州には多数の専門医がいるが、一人も専門医の居ない州があります。
イタリアから興味深い論文が出ています。「歯科医師は外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーを認識しているか?ウェブベースの疫学調査」という論文です。外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーとはどんなことか、外傷とはここでは抜髄、抜歯、切開などの歯科処置を指しています。有痛性三叉神経ニューロパチーとは三叉神経の神経障害性疼痛を指しています。従って、何らかの歯科処置によって神経が傷害されて術後に痛みが続いている状況ということになります。
この論文の要点をまとめます。
  1. 歯科医師の30%は外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーという用語を知らなかった。
  2. 歯科医師の70%は、臨床において、このような痛みを疑う患者を診たことがあった。その内訳は、根管治療後(60%)、抜歯後(43%)、原因不明(37%)、その他の歯科治療後(21%)であった。
  3. 外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーを疑った3分の1の患者だけ専門医に紹介された。
  4. 結局、ほとんどの患者は疼痛に対して、抜髄、抜歯、切開などの誤った、無意味な、不可逆的な治療を受けていた。
     結論として、不適切な診断と治療の遅れが慢性痛を生ずる可能性があります。さらに、広い知識の不足は、医療制度と患者の双方に、障害による大きな社会経済的損失をもたらしました。
これはイタリアの状況ですが、我が国と大差ないと思います。
 
2025年08月02日 21:47

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