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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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2025年2月の記事:ブログページ

神経障害性疼痛に二次的に筋・筋膜疼痛発症

神経障害性疼痛に二次的に筋・筋膜疼痛発症例
初診時に主訴の疼痛部にallodynia、hyperalgesiaなどの感覚障害があり、慢性的に経過している場合は同側の咬筋に筋・筋膜性疼痛が認められる場合が多い。咬筋の圧痛誘発により関連痛として主訴の疼痛が再現される事が多い。このような場合には神経障害性疼痛を念頭におきながら、筋・筋膜性疼痛の治療を優先させる。ストレッチ、随意運動によりかみしめ中断などの行動変容を含むセルフマネージメンを指導する。約一ヶ月で筋症状が改善し、持続性の鈍痛が消失する場合もある。しかし、もう一つのピリピリ、ヒリヒリ、むずがゆい感じなどの症状は改善せず、まだ痛いですという訴えになる。
そこでもう一度、感覚検査を行う。結果は初診時よりもはっきりした感覚異常が認められる。ああ、やっぱり神経障害性疼痛が元にあったのだと認識せられる。神経障害性疼痛が発症した後に、痛みの為に筋緊張が生じて筋・筋膜性疼痛となった。筋・筋膜性疼痛の痛みが前面に出て、如何にも筋・筋膜性疼痛が原発の様に思える。でも、違っていた。
初診時に筋・筋膜性疼痛の筋触診を行わず、筋触診障害から神経障害性疼痛と診断して薬物療法を行っても、一ヶ月たっても全く効果無く、診断に混乱することになるであろう。
口腔顔面痛の診査として、初診時、再診時に筋触診、感覚検査を繰り替えることが重要であると何時も再認識させられる。
 
2025年02月21日 18:35

筋肉痛のセルフケアの要点

セルフケアストレッチ
筋肉痛の患者さんに実際に指導しているセルフケアの内容をまとめました。
先日公開された国際歯科研究学会(IADR)の顎関節症の標準治療でも、専門医指導での患者さん自身による治療(管理)が推奨されています。

筋肉の仕事は縮んで力を出すことです、かみしめたりして弱い力でも筋肉が縮んだままになっていると、そのままこわばって、血行が悪くなって痛みが出ます。 痛みを改善するには、これ以上に こわばらせないこと、こわばった筋肉をストレッチして伸ばすことが有効です。
筋肉痛の原因になっていることを見つけて、少しずつ修正しましょう。
  1. 普段の生活、特に集中時のアゴのこわばり、肩の持ち上がりなどに気をつける。 対応策:こわばりの有無に関わらず、気がついたら、唇をパクパク、舌で上顎前歯部を舐める、肩を上げ下げする等、意識的に動かすことにより無意識のこわばりがキャンセルされる。
  2. 仕事中の姿勢の片寄りに気をつける(右手を前に出していると、身体が右に片寄る。頭の水平を保つために、左の後頸部の筋肉を緊張させて頭を起こすように調整している)    対応策:右手をなるべく手前に出さない、重心を意識的に左に移動させる
      作業時は手首クッション等で右手首を支える
  1. 生活の中で、前屈み(ストレートネック)になっていることに気づくこと     対応策:頭の頂点にフックを付けて上につり上げられた感じを意識して、身体を起こす。
  2. 仕事、家事などに長時間集中しすぎていませんか。 対応策:集中する時間を制限する、1時間に1度は休憩(45分集中、15分休む)
 
筋肉痛を改善するためには、緊張感をゆるめる、縮んだ筋肉を弛めたり、伸ばしたりしましょう。
  • 緊張感をゆるめる。 対応策:緊張している時は交感神経が強く働いています、それを調整するには、お水を飲むことと、ゆっくり腹式呼吸することが効果的です。やってみましょう。
  • 緊張した筋肉をゆるめる。 具体法:力が入っていると言われても、力を入れているつもりがないので抜きようがない。そこで、肩を上にぎゅーっと最大の力で持ち上げ、1-2秒おいて、大げさにストーンと落とす、これを数回繰り返す。入れたつもりのない緊張は抜きようが無いが、自分で緊張させたものは緩める事ができる。 これを全身で行うことも効果的です。
  • 縮んでいる顎、首、肩の筋肉をストレッチしましょう。 対応策:筋のストレッチは痛くない程度で、一回一カ所30秒以上、一日3回以上繰り返す事が有効とされています。 顎のストレッチ:発泡スチロールのブロックを歯に挿み、腹式呼吸しながら30秒以上      首、肩のストレッチ:手で頭を真横に引っ張り、お腹を見る格好(反対側の後頸部が引っ張られる)で30秒以上、次に天井を見る格好(反対側の前部が引っ張られる)で30秒以上、これを手を代えて左右行う。顎のストレッチをしながらやるのも能率的で、かつ、効果的です。
 以上の筋肉痛に対するセルフケアは有効であることが科学的に確認され、世界中で推奨されています。毎日続けることにより3-4週でこわばりがほぐれる実感が得られると思います。
やってみて、痛みが増したり、具合の悪いことがありましたら、直ちに中止して、連絡してください。また、何か不明な点がありましたら、何時でもお尋ねください。
 
2025年02月13日 09:36

TMD治療のための10の重要なポイント

IADR(国際歯科研究学会)のINfORM(The International Network for Orofacial pain and Related disorders Methodology) (INfORM)グループは、優れたTMD治療のための10の重要なポイントを提案します。これは、TMD管理と患者のニーズに関する現在の標準的なケアの要約を表しています:    赤文字は和嶋の追加です
2010年AADR(米国歯科研究学会)から出された、「顎関節症の声明」では自然経過が良いことから顎関節症はセルフリミッティングと言われていました、今回の論文ではセルフリミッティングという言葉が消えて、逆に慢性化という用語が加えられました。
また、複雑な症例は口腔顔面痛専門医に紹介すべきと明記されました。 ちなみに、米国では顎関節症は口腔顔面痛の一部であり、顎関節症専門医制度はなく口腔顔面痛専門医が顎関節症専門医も兼ねています。
  1. TMD を管理するには、患者中心の意思決定と患者の関与および視点が重要であり、病歴聴取から検査、診断、そして治療へと続くプロセスです。症状を制御および管理し、個人の日常生活への影響を軽減する方法を学ぶことに重点を置く必要があります。
  2. TMD は、口腔顔面痛や筋骨格系に起因する機能障害などの兆候や症状を引き起こす一連の疾患群です。
  3. TMD の病因は生物心理社会的であり、かつ多因子性です。  昔は咬合異常、かみ合わせが原因と言われていたが、かみ合わせの異常は否定され、それを修正するという咬合治療も否定されています。生物心理社会的:精神心理因子、社会的因子が重要視されています。
  4. TMD の診断は、研修を受けた診査者が患者の視点に基づいて、標準化され検証された病歴聴取と臨床評価に基づいて行われる。 診査法はちゃんとしたトレーニングを受けること、触診法などはハンズオンセミナーで研修を受けるべきです。
  5. 画像診断は特定の症例で有用であることが証明されているが、標準化された病歴聴取、臨床診査に代わるものではない。軟部組織の場合はMRI、骨の場合はCBCTが現在の標準検査法です。画像診断は、診断または治療に明らかな影響を与える可能性がある場合にのみ実施する必要があります。画像診断のタイミングは重要であり、コスト、利点、リスクのバランスも重要です。
  6. 通常の標準治療を超えた治療や器具を使用する前に、根拠となるエビデンスを慎重に検討する必要がある。この分野の新規開発に関する知識は最新の状態にしておく必要がある。現在、チェアーサイドで筋電図活動測定、顎運動計測や体の揺れを評価したりする技術機器の有効性は支持されていない。 特殊な器具でTMDのより優れた診断が出来るという学術的根拠はないと言われている。
  7. TMD 治療は、痛みの影響を軽減し、機能制限を減らすことを目標とすべきある。治療結果は、悪化の軽減、悪化の管理方法に関する教育の必要性の減少、生活のQOL向上との関連で評価する必要がある。
  8. TMD 治療は、主に、サポートされた自己管理の奨励と、原因となる習癖、姿勢等の行動変容や理学療法などの保存的アプローチに基づく必要がある。 自己管理をサポートする第 2 選択の治療には、暫間的、間歇的、および期間限定の口腔装置の使用が含まれる。外科的介入が必要とされるのは、ごくまれで、非常に限られたケースのみである。治療法の第一のサポートされた自己管理の奨励とは(ここが生物心理社会的のなかで特に、精神心理因子、社会的因子に対して共通認識を持つこと)のこと、原因となる習癖、姿勢等の行動変容は(原文では認知行動療法と書かれていますが、精神療法の認知行動療法とは異なりますので、行動変容と改変しています)の事です。
  9. 不可逆的な咬合治療や咬合または下顎頭の位置の調整は、TMD のほとんどの治療には適応されない。例外となるのは、高い充填物や冠を装着した直後に TMD 症状が現れる場合や下顎頭の疾患により咬合位がゆっくりと進行する場合である。かみ合わせを変える咬合治療は否定されています。
  10. 予後が不確実な複雑な臨床像、例えば、広範な疼痛や併存疾患、中枢性感作の要素、長期間持続する疼痛、過去に治療に失敗した既往歴がある場合などは、顎関節症や非顎関節痛の慢性化を疑うべきである。従って、適切な専門医(口腔顔面痛専門医)への紹介が推奨される。すべての国に口腔顔面痛専門医がいるわけではないため、地域に適切な紹介先を探すべきである。 顎関節症の中には(例えば、広範な疼痛や併存疾患、中枢性感作の要素、長期間持続する疼痛、過去に治療に失敗した既往歴がある場合)などの症状、経過を伴っている場合があり、それは普通の顎関節症ではなく、慢性化する症例があるために、早期に口腔顔面痛専門医に紹介すべきと書かれています。
2025年02月05日 16:54

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