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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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原因不明の歯の痛み、顔の痛み

口腔顔面痛とは 非歯原性歯痛とは

-どんな症状、なにが原因? 何科を受診すれば良いか?治療方法は?-

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歯、歯肉が痛い、顔、頭が痛い、首や肩に痛みがあって、治療を受けても治らない、あるいは、何処で診てもらっても原因不明、異常なしと言われる、 痛み解決の道が見えないために苦しんでいる方が多くいます   
分析的臨床診断推論によって痛みの交通整理から始めましょう。
  • 口腔顔面痛とはどのような痛みですか。
  • 口腔顔面痛とは、広い意味では、口の中の歯や歯肉、あご、顔、頭などの痛み全般を言います。歯医者さんはむし歯や歯周病によって痛くなる歯や歯肉の痛みなどは良く知っていて、しっかり治療してくれます。 しかし、虫歯や歯周病などの病変がないにもかかわらず、歯、歯肉、口腔粘膜や舌、顔、頬、頭、あごの関節や筋肉、あるいはその周辺に痛みがあり、なかなか原因がわかりにくい痛みです。
  • 具体的にはどのような病気の患者さんがいますか?
  • 一番多くのは咀嚼筋という噛むための筋肉の痛み、筋・筋膜疼痛の患者さんです。さらに、三叉神経痛や帯状疱疹後神経痛と言った顔面の神経の痛みの方、舌がヒリヒリする舌痛症の方、片頭痛や群発頭痛といった頭痛の方、口のまわりや顎が慢性的に痛むが調べてもなかなか原因や病名のはっきりしない、痛覚変調性疼痛による歯痛や顔面痛の方などです。このように原因、病態が通常歯科疾患の範囲を超えて、様々であり、症状や痛む箇所も多種多様です。さらに、いくつかの痛みが重複して複雑化していることもあります。
  • 歯科では異常ない、原因不明と言われている、治療しているが一向に治らない   口腔顔面痛かと思う場合、何科を受診したらいいか?
  • 口腔顔面痛と思われる症状がある場合、何科を受診すればよいのでしょうか?    歯科で診療を受けたが、歯や歯肉には痛みの原因や原因となる異常が認められず、耳鼻科、内科、ペインクリニックに行ったがよく判らないと言われ、何処に行けば良いか困惑している方が多いようです。
    痛みがあるのに歯や歯肉の異常が無い、他の科でもよく判らない場合には、口腔顔面痛専門クリニックを受診することを勧めます。
  • 口腔顔面痛専門クリニックではどのような治療をするのでしょうか?
  • 口腔顔面痛の病態は多岐に渡るために、分析的臨床診断推論を行う必要があります。可能性のある鑑別診断をいくつか挙げて、入念な診査を行い最終診断に至ります。最終診断した病態に対して国際的ガイドラインに従って、患者さん毎に最適な治療を行います。
    ・筋痛障害にはストレッチなどセルフケア指導にはじまり、超音波療法、トリガーポイント注射などを行います。
    ・神経障害性疼痛には国際標準治療薬を用いて最適な薬物療法が行われます。
    ・その他、必要に応じて慶應病院や脳神経科、内科、頭痛専門医、神経内科、ペインクリニック、心理療法士、精神科、心療内科、耳鼻咽喉科といった診療科と連携を取って、治療に当たります。

非歯原性歯痛とは   少し詳しい解説日本顎伵合学会誌  第 35 巻 第 3 号 2015


歯痛は歯科疾患で最も一般的な症状で、そのほとんどの原因は虫歯や歯周疾患など炎症です。このような歯や歯肉の炎症による歯痛を「歯原性歯痛」と呼びます。
一方、歯や歯肉に原因がないにもかかわらず、歯の痛みが感じられる状態がある事が判ってきました。歯原性に対して、「非歯原性歯痛」と呼びます。わかりやすくいうと、「歯が痛い、歯は何も悪くないのに」、「歯の神経をとったのに歯が痛い。」「神経の処置が長引いていて、患者様も先生も困っている。」「歯を抜いたのに歯の痛みが続いている」といった症状、経過を呈します。

典型的な非歯原性歯痛の患者さんの状況を紹介します。
「歯に痛みがあり、いくつかの歯科医院や大学病院を受診しましたが、虫歯などの明らかな原因が見つかりませんでした。痛みが続くので歯の神経を抜いてもらいました。それでも、痛みが改善せず、別な歯科で治療を受けたがどうにもならないと言うことで、抜歯してもらいました。それでも痛みは治まらず、痛みは1年以上続いています。痛みは日によっても違うし、1日の中の時間帯でも違います。そんなに気にならない時もあれば、ずっと気になることも。」なんとかしてくださいと来院されます。

筋・筋膜疼痛とは 

筋・筋膜性歯痛    トリガーポイントからの関連痛 ストレッチ解説

非歯原性歯痛の中で最も頻度が高く,約 45 ~ 50%を占めます。咬筋,側頭筋,顎二腹筋前腹に生じたトリガーポイントと言われる筋肉中の硬結(しこり)が原因で歯に痛みが感じられる状態です。歯痛の原因は歯から離れた筋肉にあるが、その筋肉には痛みが感じられず、何でも無い歯に感じられます。このように原因から離れた、原因でないところに感じられる痛みを関連痛と言います。歯が痛いがその歯は何にも悪くなく、原因が離れた筋肉にある事などが診断を難しくしています。
筋・筋膜疼痛は筋肉が頻回に緊張した結果、硬結(しこり)が出来て、その中の血液循環が滞るために痛みに敏感なトリガーポイントが生ずることによります。痛みの症状はジワーッとした嫌な感じ、こわばった感じ、締め付けられる感じなどと表現されます。
筋・筋膜疼痛の診断はトリガーポイントを触診して、何時もの痛みが再現されるかどうかを調べます。トリガーポイントを触診して歯痛を再現させるには熟練したテクニックが必要です。まず咬筋,側頭筋を概略的に触診して筋肥大、硬結の有無を確認し、硬結部分を人差し指で円を描く様に 1kg から 2kg 程度で約5秒間加圧して,他の部位,特に歯への関連痛発生の有無を確認します。咬筋のトリガーポイントからは上下顎の臼歯部に関連痛が生じ、側頭筋からは上顎前歯部から臼歯部に関連痛が生じます。この二つの筋からは歯以外に頭痛や顔面痛などが関連痛として生ずることがあります。また、咬筋、側頭筋以外に頸部の筋からも歯に関連痛が生ずることがあるために、頭頸部全体の筋診査を行います。
 

神経障害性疼痛とは

神経障害性疼痛は筋・筋膜疼痛についで多い病態です。従来の歯科にはなかった概念のため理解されていないことが多い。抜歯,手術などによって神経が損傷されたり,帯状疱疹のウイルス感染により神経に炎症が生じたり,その他に様々な神経を傷害する原因によって生ずる.神経が障害されることにより陰性症状として,知覚低下が生ずる。一方,神経が障害されることにより陽性症状として、感覚が過敏になって,本来は痛みが生じない様な弱い刺激でも痛みが生ずる様になったり(allodynia),痛み反応が強まったり(hyperalgesia),反応する部分が拡大したり(wide spread)して,痛みや,違和感が自発性に生じたり,誘発されやすい状況になります.診査として知覚検査により知覚鈍麻の陰性症状と allodynia,dysesthesia,paresthesia などの陽性症状の有無を調べます.
神経障害性歯痛は、大きく二つに分けられます。

1.三叉神経痛による痛み(発作性のチックンとした痛み)

顔や口の中の突発的に起こる瞬間的な激しい痛み。電気が走り抜けるような,刺されるような痛み。痛みのあまりうずくまる。特徴的な症状から診断は簡単だと思われますが、患者さんは、「歯の痛み」だと自覚するため、最初に歯科を受診します。そして、誤って、抜髄・抜歯が行われることが多い疾患です。診断は簡単だという先生もおられますが、経験を積んでも難しく、判断に迷うケースも少なくなく、実際に患者さんがいくつもの医療機関を回ることもあります。特に、脳神経外科で三叉神経痛ではないといわれた患者さんが、実は歯髄炎という最強の歯痛を発しているケースもあり、口の中に限局して痛みが出る患者さんは、ペインクリニック専門医も診断に苦慮します。脳神経外科・神経内科・ペインクリニックとうまく連携をとり、注意深く患者さんといっしょに診断をつける努力が実を結ぶことが少なくありません。

2.持続性(常にジワジワ、ジリーとした痛み)

顔や口の中の、1日中続く痛み。ピリピル、ヒリヒリ、ジンジン、・ジワジワ・ズキンズキンなどでと表現されることが多いです。
①帯状ほう疹や帯状ほう疹の後遺症による歯痛や顔の痛み
帯状ほう疹とは、水ぼうそうウイルスによるもの感染です。水疱が出来なかったり、口の中で口中炎と思っていることもあり症状がはっきりしない帯状ほう疹の場合、診断に苦慮します。
口の中に、一週間くらい続いた非常に痛い大きな口内炎があったことをできたことが後になってから患者さんが思い出し、診断に結びつくこともあります。
②インプラントや親しらずの抜歯後など、歯科治療後に長引く口の中や顔の痛み
歯の神経親知らずを抜いた後,通常1週間程度で痛みや違和感はとれますが,場合により痛みが長引くことがあります.抜歯で傷ついた神経が過敏になり、正常な痛みの情報を伝達することができず,歯や歯肉を軽くさわっただけでも「ピリピリ,ビリビリ,ジンジン」とした痛みを誘発します.これを外傷性神経障害性疼痛による歯痛といいます.神経を抜いたり、歯肉の切開した部分にも生ずることがあります。歯や歯肉の神経の傷ついた部位から痛みの異常信号が脳に伝わり,この異常な痛みが生じることがあります.アゴや顔まで痛みが広がるケースもあります。

口腔顔面痛、非歯原性歯痛よくある質問

よくあるご質問
  • 口腔顔面痛とはどんな痛みのことですか
  • 歯痛、歯肉痛を含めて舌、口腔粘膜の痛みなど、口の中のいろいろな痛み、顎の痛み、顔の痛みなどを全部まとめて口腔顔面痛と呼びます。

    狭い意味では、歯痛、口腔内の痛み、顔面領域の痛みでなかなか診断がつかず、一般的歯科治療では治らない痛みを指します。

  • 歯が痛くても、歯に原因がないことがあるのですか
  • 歯に原因がなくても、いかにも歯が痛いように感じられることがあります、そのような歯の痛みを歯に原因が無いと意味で非歯原性歯痛と呼びます。口腔顔面痛外来を受診する患者さんのなかで最も多い痛みです。
    非歯原性歯痛の原因は痛みを感じている歯とは別な部分にあり、歯の痛みから連想しにくいことなので、正しく診断されないことが多いです。そして、歯にいたみを訴えることから、歯の治療を受けていることが多く、残念ながら歯が原因ではないので、治療しても治りません。
  • 非歯原性歯痛の診断は難しいのですか
  • 歯が痛かったら、痛い歯に原因があると考えるのは歯科医師も同じですが、非歯原性歯痛を診た歯科医師は何時もの歯痛とは何かが違う、歯には明らかな原因がないということまでは判ります。しかし、非歯原性歯痛の考え方は従来の歯科教育にはなかったものなので、専門医でないと歯以外の何が原因であるかまで突き止めることはできません。
    現在、歯科医師国家試験に非歯原性歯痛に関する問題が毎年出題されていますので、将来的に全ての歯科医師が診断できるようになると思います。
  • 非歯原性歯痛の原因にはどの様なものがありますか
  • 最も多いのは筋肉の痛みです。肩こりが強いときに頭が痛くなったり、歯が痛くなったりすることが知られています。それと同じように、咬筋、側頭筋、胸鎖乳突筋の筋・筋膜疼痛という筋痛が強くなった状態が元となって、離れた所にある歯に関連痛として痛みが感じられることがあります。
    次に多いのは、何らかの原因で神経が障害されて鈍麻と共に過敏になって歯痛が感じられる状態になっていることです。その他に様々な原因があります。
  • これらの歯に原因がない歯痛はどのように治療するのでしょうか
  • 歯の治療をしても治らないことは既に述べました。非歯原性歯痛の原因である筋肉痛、神経障害などを正しく診断して、それぞれに応じた治療をすれば改善します。
    筋・筋膜疼痛、神経障害性疼痛などの治療法はすでに確立されています。
  • 非歯原性歯痛の治療は歯科医師なら誰でもできますか
  • 診断の項にも書きましたが、全ての歯科医師が非歯原性歯痛の原因まで診断できる訳ではありません。そのため、非歯原性歯痛の治療も全ての歯科医師が出来るわけではありません。
  • 筋肉痛による歯痛はどの様に治療するのでしょうか
  • 筋肉痛の直接的な原因は精神的ストレスなどによる筋肉の血管の収縮です。さらに、原因になる筋肉は肥大していることが多いので、慢性的なかみしめ、偏咀嚼などにより筋肉に過剰な負荷がかかっていると、血管の収縮により、痛みが発生しやすくなっているようです。
    治療の第一は、痛みの原因をはっきりさせて、患者さんを安心させて、精神的な緊張をとってあげることです。
    次に、原因になっている筋肉に対して、温湿布、ストレッチ、適度な運動により筋緊張を緩め、その筋肉に過剰な負荷をかけないように指導します。
  • 神経の障害はどうして起こるのですか、治療はどうするのですか
  • 下の奥歯の抜歯や手術の時に下顎の骨の中の神経を傷害することがあります。
    また、帯状疱疹のウイルスが神経の元から炎症を起こしながら皮膚に出てくるので、その神経の行き先の歯や歯肉に後遺症として、感覚の鈍磨とともに過敏が生じて痛みになることがあります。
    神経障害による痛みの場合には過敏さを納める薬により、痛みが改善します。現在、3種類の薬が使えます。(トリプタノール、リリカ、タリージェ)
  • 薬はどれくらいの期間、服用するのでしょうか
  • 神経障害性歯痛の治療に用いる薬は、炎症を止める消炎鎮痛薬とはまったく違う作用で痛みを止めます。
    脳の機能として元々からある神経の興奮を抑える神経を賦活化して痛みを鎮めます。神経の興奮状態と抑える神経活動のバランスをとるように薬の量を調整します。神経の興奮が下がったり、抑制する神経の働きがよくなったら、薬の量を減らし、最終的には止めるようにします。
    平均して数ヶ月かかることが多く、止められない場合もあります。
    多くの例で、内服薬に加えて、痛みの部分に軟膏を塗ってステントで覆う局所療法も併用します。これにより内服薬の用量を下げることが出来る、治療期間を短く出来る、そして、痛みが治まった後は内服薬を止めて、再発予防の為に局所療法を継続します。
  • 非歯原性歯痛は再発しますか
  • 残念ながら再発することがあります。
    特に筋・筋膜性歯痛は再発が多いです。何故かというと、筋緊張の元は日常生活における悪い習慣です。緊張したり、急いだりしている時は肩を持ち上げて、歯をくいしばっていることがあります。また、食事の際に左右どちらかだけで咬む癖をもっているため、くいしばりと合わさって咬んでいる側の筋肉が大きくなっていて、そちらに症状が出ることが多いです。
    歯科医師に適切な指導を受けて、実行することにより痛みが改善しますが、のど元過ぎれば熱さ忘れる、というように、痛みが無いといつもの癖が出てしまい、筋に負荷をかけて、症状が出やすい状況を作り出してしまうようです。