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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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慢性化TMDにはTeamApprochが必要

2026年顎関節学会で海外招聘講演をしたEric SchiffmanはDC/TMDのⅡ軸評価が大事であると強調していました。

Ⅱ軸に問題が無い単純例は本来Selflimitedですから、症状期にはセルフケア、スプリント、薬物療法で対処すれば、ほぼ改善する、しかし、Ⅱ軸に問題がある場合には複雑で慢性化しやすく、全ての医療関係を含んだTeamApprochが必要な事があると述べていました。
Ⅱ軸の評価項目の多くはOPPERA研究で初発TMDのリスク因子に挙げられているものと共通です。OPPERA研究のリスク因子解析では、全身の併存疾患(重要度スコア100-ランク1)、口腔顔面領域の様々な症状の数(92.9-2)、身体の痛み(80.6-4)、歯ぎしり、くいしばりなどを含んだ口腔機能異常合計スコア(OBC)(66.0-5)(元論文にランク3の項目がありません)と言われています。重要度スコアーの比較法が判りませんが上位3つは100-80であり、歯ぎしり、くいしばりなどを含んだ口腔機能異常合計スコアは66.0とかなり離れた数値になっています。歯ぎしり、くいしばりなどを含んだ口腔機能異常は歯科的に予防対応が出来るという点では重要ですが、それ以上に、TMD臨床において全身の併存疾患、口腔顔面領域の様々な症状、身体の痛みの確認しなければならないことを再確認すべきです。
 Slade: Painful Temporomandibular Disorder Decade of Discovery from OPPERA Studies  J Dent Res. 2016 Jun 23;95(10):1084–1092. doi: 10.1177/0022034516653743
 Bair Multivariable Modeling of Phenotypic Risk Factors for First-Onset TMD: The OPPERA Prospective Cohort Study The Journal of Pain 2013, v14-2     
 https://doi.org/10.1016/j.jpain.2013.09.003

リスク因子と言う言葉が流行の様に使われていますが、本来の使い方は素因を意味するものと思います。もちろん、素因が発症後は継続化因子になっているものもありますが、発症前、発症後を区別せず、初発因子、継続化因子をリスク因子というのは明らかな間違いと思います。特に継続化因子をリスク因子と称して治療対象にしているのは違和感が大きいです。
2026年07月14日 18:20

2026日本顎関節学会学術大会参加して感じたこと

日本顎関節学会学術大会参加して感じたこと
2年ぶりの参加でした。一番気になったことは、円板転位、30年前の自分でやった研究結果かと錯覚するような発表が多かった。大会長のランチョンセミナーは20年前の自身の研究結果だとはっきり言っていました。

2日間の発表を聞いて強く感じたことは、口腔外科医、補綴科医、矯正科医がそれぞれの教育、研究、臨床の基盤を元とした顎関節症の捉えかたがかなり異なる事でした。少なくとも10数年前の顎関節症病態分類(2013)が出た頃は共通性があったように思っていましたが、今回の学会で、同じ顎関節症病態でも捉え方、治療法がこんなに違うんだと感じました。顎関節症教育を考えると、各大学により顎関節症を教育する担当科が異なる事から、教科書は同じでも学生のイメージはことなるだろう、また、卒業後勤務した医院、病院の指導医の専門家により得意技が違って行くのだろうと思いました。顎関節症の捉え方、治療法に関して中立的な教育への統合は必要だろうと強く思いました。奇しくも韓国からの招聘講演者が同様の事を言っていました、韓国は顎関節症に直接関わる学会と間接的に関わる学会がいくつかあって、内容が異なるようであるようで(統合)が必要であると。

商品展示のコーナーに顎運動の3次元計測機器があり、この機械の計測結果を使ってスプリントを作ると良いモノが出来ますよと宣伝していました。計測原理は30年以上前と同じ、当時は1分の計測をしたら演算の間に食事に出て、戻ってきたら軌跡が表示されていました、進歩はコンピューターの演算能力、計測すると即時に3次元表示ができることです。AADOCRのTMDPositionPaperには、「現在、診療室で使用される電子診断機器は、TMDの有無(症例群と対照群)を区別したり、TMDのサブグループ(疼痛性または関節内診断)を区別したりするために必要な臨床的妥当性(感度と特異度)を欠いています。」と書かれています。良いスプリントが出来るかどうかは書いてありませんが、30年以上前にデジタルで顎運動計測を研究した経験からは、顎運動計測という根本的概念がそれ程に役に立つモノとは思えません。

今回の学会での最大の収穫は海外招聘講演のEric Schiffmanの講演でした。2014年に出されたDC/TMD顎関節症の病態診断について、今更何か新しいことがあるのかと思っていました。予想通り、前半は診断法、そしてそれによる診断精度の話しでした。ところが後半はⅡ軸診断の解説でした。Ⅰ軸はDC/TMDを準用した日本顎関節学会の「顎関節症の病態分類(2013)、 顎関節症診断基準、診断決定樹(2019)その後の診療ガイドラインでも活用されて、日本でも定着していますが第二軸は言及されていませんでした。私も第二軸は評価法が日本では馴染みのないもののため活用していませんでした。第Ⅱ軸は、痛みの裏にある「心理的ストレス」(不安、うつの評価)、「日常生活への支障度」、「全身の症状」(Chronic Overlapping Pain Conditionsの評価)、「日常習癖」を評価するもので、顎関節症を単なる「顎の怪我」ではなく「慢性疼痛」として捉えるための重要な指標です。顎関節症をBiopshychosocialモデルとして捉えるPshychoSocialの部分に当たります。DC/TMD以前にもⅠ軸(身体障害)とⅡ軸(心身医学的評価)の二次元で評価すべきと言う考えがありましたがこの頃は消えていました。
DC/TMDでは、以下のような診断が推奨されています。「第軸:顎関節痛 + 第軸:障害度グレード(支障なし、心身医学的評価:低)」軽度のため、顎のストレッチや生活習慣の改善(マウスピースなど)で経過観察。「第軸:筋膜痛 + 第軸:障害度グレード(全身に症状があり著しい支障、高度の抑うつ・不安傾向)」であり、うつ、不安の心身医学的問題がある顎の治療だけでなく、また、単純なストレスマネジメントだけではなく、症例によっては内科、心療内科・ペインクリニック等と連携したチームアプローチが必要と判断されます。奇しくも、の講演の締めくくりは、「複雑、慢性例に対してはチームアプローチすべき」でした。

もう一つの収穫は韓国の先生の講演の中でMuscle tonicityという用語を使っていました。これは私の研究の一つであった開口抵抗力測定方法開発の目的でした。Muscle tonicityとは、顎関節周辺の筋肉の静止時の緊張と持続的な活性化によって生ずるものです。Muscle tonicityが高いと、咬筋、側頭筋などが過労または過活動になると持続的な痛み、顎の動きの制限、頭痛につながる可能性があると思っています。講演が終わってから質問して情報交換することになりました。
終わってみると、二日間の長野での学会参加、期待するほど涼しく無かったですが、いくつか収穫があり出かけた甲斐がありました。
 
2026年07月13日 17:02

慢性疼痛患者の46%がPTSD症状

慢性疼痛患者の46%がPTSD症状を持ち、機能障害が顕著に

2025年6月2日

慢性疼痛と心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder: PTSD)を併発している患者は、PTSDを伴わない慢性疼痛患者と比較して、より重度の機能障害を示すことが明らかになった。この研究では、外傷体験の有無よりも、PTSD症状の存在が機能障害と関連していることが示された。北アイルランドの慢性疼痛患者を対象とした大規模横断研究の成果は、European Journal of Pain誌2025年7月号に発表された。

北アイルランドの慢性疼痛患者1,367例を対象とした横断研究


この研究は、北アイルランドの学際的疼痛リハビリテーションサービスを受診した慢性疼痛患者1,367例を対象とした横断研究である。研究の主な目的は、慢性疼痛患者における機能障害が外傷体験そのものによるものか、それともPTSD特有の症状に関連しているのかを評価することであった。また、北アイルランド地域におけるPTSDと慢性疼痛の併存率の高さを考慮し、その併存状況を調査することも副次的な目的とされた。参加者はPTSDスクリーニング尺度に加え、疼痛による生活障害、社会的機能、疼痛に対する不安、疼痛自己効力感、疼痛強度、うつ症状を評価する尺度に回答した。研究デザインとして、共変量を特定した後、多変量共分散分析(MANCOVA)を用いてPTSDカテゴリー別の従属変数の差異を検討した。

PTSD症状の有無が機能障害の重症度を左右


スクリーニングの結果、参加者の46.4%は外傷体験がなく、22.5%は外傷体験があるもののPTSDスクリーニングは陰性、31.1%はPTSDスクリーニング陽性であった。多変量共分散分析の結果、PTSDスクリーニング陽性群は、他の2群(外傷体験なし群、外傷体験ありPTSDスクリーニング陰性群)と比較して、すべての評価尺度において機能が悪く、生活障害がより大きいことが示された。一方、外傷体験なし群と外傷体験ありPTSDスクリーニング陰性群の間には、いずれの評価尺度においても有意差は認められなかった。これらの分析結果から、機能障害の悪化は外傷体験の有無だけでなく、PTSD症状の存在と関連していることが明らかになった。また、北アイルランドにおける慢性疼痛とPTSDの併存率は、過去の研究と比較して高い範囲にあり、地域の年間有病率推定値を上回っていた。

慢性疼痛とPTSDの統合的治療アプローチの必要性


研究者らは、慢性疼痛患者におけるPTSD評価では、外傷体験そのものに焦点を当てるよりも、これらの体験が日常機能に与える影響を評価することが重要であると指摘している。また、慢性疼痛とPTSDを統合的に治療するアプローチの開発が必要であるとしている。本研究の結果は、慢性疼痛患者の約3分の1がPTSDスクリーニング陽性であり、これらの患者は特に機能障害が大きいことを示している。このことから、慢性疼痛治療において心理的トラウマとPTSD症状の評価を組み込むことの重要性が強調される。慢性疼痛とPTSDの併存は患者の生活の質を著しく低下させる可能性があるため、両方の状態を同時に治療する統合的アプローチの開発が今後の課題として挙げられている。

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原著論文はこちら
Eur J Pain. 2025 Jul;29(6):e70044.
© 2025 The Author(s). European Journal of Pain published by John Wiley & Sons Ltd on behalf of European Pain Federation ‐ EFIC ®.
2026年05月15日 18:24

慢性痛は痛みのPTSDとも言える 2

私の慢性痛のメカニズム仮説として、「痛み(苦emotional、痛sensory )」の二つの側面が変化顕性化することによって生ずると考えています、これにより慢性痛が判りやすくなります。
慢性痛は下記の二つの側面が合わさって生じているのだろうと思っています。
  • 感覚体験(sensory)の元である痛み信号が感覚神経系を刺激して機能変化が生じた状態である中枢感作が生じている。
  • 情動体験(Emotional )が脳によって認識・解釈されてマイナスの「感情(Feeling)、持続的な主観的体験」として脳に記憶された状態、痛みのPTSD(心的外傷後ストレス障害)とでもいうべき状態。 
    情動(Emotion)と感情(Feeling)は心理学で明確に区別されます。情動は、外部刺激に対し自動的に生じる「急激で短期的な身体反応(恐怖、怒りなど)」です。一方、感情は、その身体変化を脳が認識・解釈した「持続的な主観的体験」です
    従って、情動的体験を脳がそれぞれの人生経験などを元にして認識、解釈して結果が感情という持続的な主観的体験となります。特にマイナスの感情は記憶に残りやすいと言われ、その典型的病態がPTSD(心的外傷後ストレス障害)であります。

慢性痛とPTSDの関連についてはこの記事を参照してください。 和嶋 ブログ参照

北アイルランドの慢性疼痛患者を対象とした大規模横断研究の成果
慢性疼痛患者の46%がPTSD症状を持ち、機能障害が強い
 
2026年05月10日 13:44

慢性疼痛と痛覚変調性疼痛、Chronic Overlapping pain conditions

慢性疼痛と痛覚変調性疼痛、Chronic Overlapping pain conditions
ケガや病気が通常治るのに要する期間(通常3ヶ月以上)を超えて持続する痛みを慢性疼痛と言います。原因が不明な場合や原因が判っていても取り除くことが出来ない場合があり、痛みが「病気そのもの」であります。多くの慢性痛は痛みの信号の発生が続かなくても、情動体験が脳によって認識・解釈されて「感情、持続的な主観的体験」として脳に蓄えられ、さまざまな情報が統合されて、苦痛を感じる状態です。
WHOが作成する病気の国際分類の最新版であるICD-11 International Classification of Diseases, 11th Revision)に初めて慢性疼痛の分類が含まれました。
慢性痛の大分類では、原因不明を一次性(ICD-112022)(ICHD-3、ICOPでは特発性)とし、元の原因が判っている場合を二次性に分類しています。
一次性は原因不明が原則ですが、最近になり一次性の主たる病態は痛覚変調性疼痛だろうと言われています。痛覚変調性疼痛は2017年にNociplasticPainとして提唱され、その基本的メカニズムは中枢感作だとされています。
世界的に痛覚変調性疼痛が注目されていますが、米国ではW.Maixerをはじめとする研究者達が TMDのOPPERA研究のなかで慢性TMDの多くはChronic Overlapping pain Conditions(慢性重複疼痛疾患)の一部になっていると主張していました。Chronic Overlapping pain conditionsは慢性疼痛障害の集合体で、同一人物に併発することが多く、痛覚変調性疼痛を共通のメカニズムにすることや女性における高い罹患率を特徴とします。顎関節症(TMD)、慢性緊張型頭痛、慢性片頭痛、慢性腰痛、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、線維筋痛症(FM)、子宮内膜症、外陰部痛、過敏性腸症候群(IBS)、間質性膀胱炎/疼痛性膀胱症候群(IC/PBS)などの疾患が含まれ、多くの場合、疲労、睡眠障害、気分の変化を伴います。米国国立衛生研究所(NIH)は、これらの疾患は従来の単一専門分野での医療アプローチの範囲外にあり、単独疾患としての治療では適切な治療が出来ないことが多いため、専門的な研究の必要性を強調している。
最近になってChronic Overlapping pain conditionsと痛覚変調性疼痛は共通して中枢感作を基本メカニズムとする病態であろうと言われています。つまり、慢性TMDの多くは痛覚変調性疼痛であり、Chronic Overlapping pain conditionsの部分症であると言えるということです。その他に関連する用語として、身体化障害、機能性身体症候群、Medically Unexplained Symptoms、ICD-11身体的苦痛症(BDD)があります。
精神科病名である身体症状症(Somatic Symptom Disorder DSM-5:SSD)は 医学的な異常が明確でないにもかかわらず、痛みの慢性化や身体症状に対する強い不安・過剰な認知・行動(頻回のインターネット検索、病院受診等)が日常生活に支障をきたしている状態を指す精神疾患ですが、痛覚変調性疼痛の精神的側面からの診断とも言えると思っています。
 
2026年05月10日 13:38

痛みの二面性(苦、痛 )が慢性化によりそれぞれの特性顕在化

痛みの二面性が慢性化によりそれぞれの特性がよりはっきり
40年ぶりに改訂された最新の国際疼痛学会の「痛みの定義」にも示されているように、痛みとは、組織の損傷(tissue injury)やその可能性(有害刺激)を検知し、痛みを引き起こす感覚メカニズム(Nociceptive) により生ずる「不快な感覚・情動体験」です。「感覚・情動体験」とは、感覚体験(sensory)と情動体験(emotional )の両方を含んでいて、「痛み刺激が加わったときの感覚(痛覚:sensory)」に情動(emotional )が相まって「痛み」として感じられるということです。さらに、「痛み(苦emotional痛sensory )」の感じ方はsensory系、 emotionalの修飾を受けて変化するために、必ずしも痛み刺激に比例しません。
この「痛み(苦emotional、痛sensory )」二つの側面が慢性痛では情動が感情(脳が認識・解釈した「持続的な主観的体験」)となりよりはっきりとその特性を示します。
ケガや病気が通常治るのに要する期間(通常3ヶ月以上)を超えて持続する痛みを慢性疼痛と言います。原因が不明な場合や原因が判っていても取り除くことが出来ない場合があり、痛みが「病気そのもの」であります。多くの慢性痛は痛みの信号の発生が続かなくても、情動体験が脳によって認識・解釈されて「感情、持続的な主観的体験」として脳に蓄えられ、さまざまな情報が統合されて、苦痛を感じる状態です。
私の慢性痛のメカニズム仮説として、「痛み(苦emotional、痛sensory )」の二つの側面によって生ずると判りやすくなると思っています。
  • 感覚体験(sensory)の元である痛み信号が感覚神経系を刺激して機能変化が生じた状態である中枢感作。
  • 情動体験(Emotional )が脳によって認識・解釈されてマイナスの「感情(Feeling)、持続的な主観的体験」として脳に記憶された状態、痛みのPTSDとでもいうべき状態。
慢性痛では上記の二つの側面が合わさって生じているのだろうと思っています。
慢性痛の解説は別報で解説します。
 
2026年05月10日 13:28

舌痛症 口腔灼熱症候群とは

舌痛症 口腔灼熱症候群(Burning Mouth Syndrome:BMS)とは
従来、日本では心因性と言われていた舌痛症、世界的には口腔灼熱症候群(Burning Mouth Syndrome:BMS)と言われ、誘発因子としてストレス、不安など心因性が関わるが、基本的には神経障害性疼痛の一つであると言われいます。舌の神経支配は味覚を感じる顔面神経の枝の鼓索神経と感覚と痛みを感じる三叉神経の枝の舌神経からなっています。舌は味覚、感覚とも非常に敏感に出来ているので、ちょっとした刺激でも神経が刺激されて障害されてしまい、神経障害性疼痛となるようです。また、味覚の神経と痛みの神経のバランスが崩れるといろいろな症状が出ることが判ってきました。
12月の日本口腔顔面痛学会サテライトmeetingで舌痛症をテーマにすることから、改めてまとめてみました。
舌痛症の治療に関する記事 参照してください。 

口腔灼熱症候群(BMS)は、舌や唇、口の中全体に焼けるような痛みを感じる病気です。
日本では舌に症状が出ることが多く、「舌痛症」と呼ばれることもあります。
誰にでも起こる可能性がありますが、特に閉経後の女性に多く見られます。
見た目に傷や腫れがないため、原因不明のまま長期間悩む方も少なくありません。
完全に治す方法はまだ確立されていませんが、治療によって痛みを軽くすることは可能です。

どんな症状が出るの?
BMSの典型的な症状は、名前の通り「焼けるような熱感(灼熱感)」です。
「舌がジーンと熱い」「ヒリヒリ・ピリピリする」「コーヒーでやけどしたような感じ」と表現されます。
しかし、見た目には異常がなく、傷や腫れ、色の変化などは見られません。
多くの人では、
  • 朝起きた直後は症状が軽く、
  • 午前中から昼にかけて強くなり、
  • 食事中や睡眠中には一時的に楽になる、
    といったリズムがあります。
また、次のような症状を伴うこともあります:
  • 口の中が苦い・金属のような味がする
  • 唾液は出ているのに「口が乾いている」ように感じる
  • しびれ感を伴う
  • 症状が続くと気分が落ち込み、不安を感じる

原因と分類の考え方
BMSには、かつて一次性と二次性という分類がありました。
  • 一次性BMS:検査をしても原因が見つからないもの
  • 二次性BMS:ビタミン不足、糖尿病、薬の副作用など、他の原因によって起こるもの
しかし、現在の国際分類(ICOP 2020)では考え方が整理され、
明確な原因が特定された場合は「BMS」とは呼ばず
それぞれ「原因による灼熱感」として区別します。
つまり、「BMS」とは現在、原因が特定できない灼熱感を指します。

なりやすい人・関係する要因
BMSは特に次のような方に多く見られます。
  • 50歳以上の女性(閉経期・閉経後)
     → エストロゲン低下により味覚神経の感度が変化します。
  • 歯ぎしり・食いしばりの癖がある方
  • 逆流性食道炎のある方
  • 糖尿病・シェーグレン症候群などの全身疾患がある方
  • 鉄・亜鉛・ビタミンB6・B12などの栄養不足
  • 長期服薬中(抗うつ薬・降圧薬など)
  • 過去の歯科治療後から症状が出た方
  • 精神的ストレス・不安・うつ状態を抱えている方
これらの要因が複雑に関係して、舌や口腔の神経が過敏化し、
痛みや灼熱感を感じるようになると考えられています。

診断の流れ
まずは歯科医院での診察が第一歩です。
見た目の異常や歯科的な病変がないかを確認し、必要に応じて専門医に紹介されます。
専門医では、次のような検査を行うことがあります。
  • 血液検査(貧血・糖尿病・ビタミン不足など)
  • アレルギー検査(食物・薬・金属など)
  • 唾液量の測定
  • 口腔スワブ検査(カンジダなどの感染確認)
  • 組織検査(まれに行う)
これらの結果に明らかな原因が見つからなければ、**口腔灼熱症候群(BMS)**と診断されます。

治療法について
BMSの原因は複数の要素が関係するため、個人差に応じた治療が必要です。
米国FDAで承認された特効薬はありませんが、いくつかの薬剤や方法が有効とされています。
薬物療法
  • **クロナゼパム(抗不安薬)**の含嗽または少量内服
  • **アミトリプチリン(トリプタノール)**などの抗うつ薬を少量使用
  • プレガバリン、ガバペンチンなどの神経過敏抑制薬を用いる場合もあります。
これらは痛みの感じ方を抑える神経調整薬として使用されます。
補助的治療・生活指導
  • ストレス緩和、睡眠の改善
  • 軽い運動やリラクゼーション
  • 栄養補給(鉄・ビタミンB群・亜鉛など)
  • 認知行動療法(CBT)や心理的サポート

自宅でできる痛み緩和の工夫
症状を軽くするために、次の方法を試してみましょう。
  • シュガーフリーガムや飴で唾液を促す
  • 冷たい水や氷を口に含む
  • 香辛料・酸味・熱い飲食物・アルコールを控える
  • アルコール入りマウスウォッシュを避ける
  • 禁煙・電子タバコの使用中止
これらは病気を“治す”方法ではありませんが、
一時的な痛みの軽減に役立ちます。

治療期間と経過
BMSは慢性化しやすく、治療せずに放置すると数か月〜数年続くことがあります。
適切な治療により、数週間〜数か月で症状が軽くなるケースもあります。
焦らずに医師や歯科医と連携し、
「症状をゼロにする」ではなく「生活を取り戻す」ことを目標に治療を続けることが大切です。

予防と再発予防
現時点で完全な予防法はありませんが、
次の点に注意することで再発のリスクを減らすことができます。
  • アルコール・カフェインのとり過ぎを控える
  • 熱すぎる・辛すぎる・酸っぱい食品を避ける
  • バランスの取れた食事でビタミン・鉄・亜鉛を補う
  • 睡眠不足・ストレスを溜めない生活を心がける

著者からのアドバイス
口の中が焼けるように痛いと、何も手につかなくなるほどつらいものです。
口腔灼熱症候群(BMS)は、見えない痛みであり、治療にも時間がかかります。
しかし、正しい理解と根気ある治療で、症状を和らげることは必ず可能です。
「もしかしてBMSかもしれない」と思ったら、まず歯科を受診してください。
そして、あなたの痛みを信じてくれる医師・歯科医師に相談しましょう。
痛みを分かち合いながら治療を続けることが、回復への第一歩です。
 
2025年10月19日 20:50

心理職向けの慢性疼痛に対する認知行動療法

先日、心理職向けの慢性疼痛に対する認知行動療法の一日コースを受けました。コースの内容とは別に、何時も聞いている医師、歯科医師向けの認知行動療法との違いが気になりました。多職種の特性を活かした慢性疼痛治療の有効性です。
医師、歯科医師は慢性疼痛の苦痛の「痛みの治療」しながら、完全回復させることの出来ない事により生ずる「苦悩に対応」しなければならない状況です。患者側からすると、あなたが痛みをちゃんと治療できないから私は苦悩を抱えてしまっているのでしょう、認知行動療法でごまかさないで痛みをちゃんととってください、という要求が何処までも続きます。このような状況ではどちらの治療も上手く進みませんし、治療の雰囲気は両者にとって不幸な状況です。
慢性疼痛治療に多職種が介入することにより、無責任ではなく役務を分担し、それぞれの特性を十分に発揮して治療を進められると思いました。
2025年09月28日 09:07

動機づけ面接創始者による腕利き心理療法士のスキル

昨日3月24日月曜日に、動機づけ面接の創始者であるMiller博士の講演会に行ってきました。経歴に70年間の心理療法研究と書かれていますから90歳を超えていると思われます。年齢からか、経験深い心理療法士だからか、穏やかな説得力のある話し方でした。
 
事前公開の【講演概要】
どのような治療法が提供されても、クライアント(患者)の結果は、それを提供するセラピスト(治療者)によって大きく異なります。セラピスト(治療者)が全員同じ治療マニュアルに従っていても、セラピスト(治療者)毎に治療効果が異なります。それはなぜか、70年間の心理療法研究に基づいて、ミラー教授はクライアントがより良い治療結果が生ずるセラピスト(治療者)の8つの特徴を説明します。これらは性格特性ではなく、専門家育成の専門的なトレーニングに含めるべき、学習可能な臨床スキルです。
講演で述べられたこと
動機づけ面接の創始者の話であったが、動機づけ面接の話しは無かった、効果が高い治療者に備わった8つのスキルについての解説であった。
どの精神療法が他よりもすぐれているといえるか、それは言えない。精神療法の違いにより治療効果に差が出ない、これは、治療者毎に治療効果に差が出るが、平均するとどれも変わらなくなる。しかし、どの治療法も治療者毎に治療効果に差があるのは明らかで、適切なセルフケアの解説本を渡して実施してもらった場合よりも治療効果が低い場合、あるいは治療にも関わらず悪化する場合もある。差が出る理由は各治療者の8つのスキルの善し悪しによる。
講演で述べられていた8つのスキルを効果順に並べる、
1,正確な共感  2,肯定的な関心を向ける 3,真正性/自己一致(患者体験と治療者の体験)  4,受容  5,治療目標を定める、フォーカスする  6,希望を持ち、持たせる  7、解決志向を呼び起こす、 8,情報提供、助言をする
単純には傾聴、受容、共感を如何にレベル高く行うかという事だと思います。基本的な事ながら傾聴、受容、共感がうまく出来なければ、どんな精神療法を行っても治療効果はあがらないということ
8つのスキルの多くは動機づけ面接の基本技法と重複していて、動機づけ面接は行動変容をはじめ、心身医学的対応の基本として利用価値が高いという話しであった。
動機づけ面接学会での招聘講演で来日され記念として下記の本が出帆されます。この本に講演内容が詳記されているそうです。
腕利きの心理療法家 クライエントのアウトカムを改善する効果的な臨床スキル 単行本(ソフトカバー) – 2025/3/27発売予定 ウイリアム・R・ミラー (著), テレサ・B・モイヤーズ (著), 原井 宏明 (翻訳), & 1 その他
本書の宣伝文句
腕利きの心理療法家を、本書では「効果的なセラピスト」と呼ぶ。治療効果をもたらすことのできる心理療法家とはどのような人なのか。どんな特性や技能を備えていて、どのようなカウンセリングや心理療法をしているのか。患者・クライエントとの対話が単なるおしゃべりになってしまったり、行き詰まったりしていたら、そこから脱するために必要不可欠な要素を本書の中から見つけることができるだろう。「援助関係」「治療スキル」「学習、研修、臨床科学」の三部構成で、特にさまざまな治療スキルについて重点的に解説。本書で学んで実践し、効果的なセラピストを目指そう!
 
 
 
2025年03月25日 19:23

痛覚変調性疼痛治療-患者さんを支えること

2024年はNociplasticPain(2017)、痛覚変調性疼痛(2021)とはどんなものなのかと痛み関連の人達の関心を集めました。
今年はもっと具体的な話しが出てくるでしょう。期待します。
昨年は関心が高まった結果、まるで新しい痛みが見つかったように、しかしながら、心因性疼痛(国際疼痛学会では正式用語ではないらしい)が消えて、それに代わるわけではないと言われるが、途中経過として様々な用語(心因性疼痛から始まり、非器質的疼痛、中枢神経機能障害性疼痛など、精神科領域では身体表現性障害(疼痛障害))で呼ばれてきた痛みに中枢感作を主たるメカニズムとする正式名称が与えられたと言うことだと思っている。中枢感作は痛み神経系に使われる用語なので、痛覚変調性疼痛診断の際に検討される併発疾患である光過敏、音過敏、睡眠障害、匂い過敏、夜間頻回の覚醒を伴う睡眠障害、 疲労、 集中力の欠如、記憶障害などの認知的問題などは中枢感作とは言えないが、痛み系の中枢感作の他に脳機能全体が変調した状態と捉えるべき。問題は何故侵害受容系が変化してしまい、他の脳機能全般を巻き込むまでになるのかのメカニズム解明と現実的にはどのように治療するかである。
Kosecの最新論文(The concept of nociplastic pain—where to from here? PAIN 165 (2024) S50–S57)によると、薬物療法は神経障害性疼痛の薬物療法と類似している、ということで目新しいものは無く、トリプタノール、プレガバリンの投与とともに、TopDown発生因子の精神心理的ストレスが疑われるときはBiopsychosocialモデルとして心身医学的対応をすることに尽きる。認知的共感を目的とした傾聴で支えてあげることに尽きる
Biopsychosocialモデルとして心身医学的対応には各自の心身医学的対応トレーニングの程度により支えのレベルが異なるが、まずはこのような考え方を持つことが大事と思っている。患者さんを支えることにより自然治癒能力が発揮されて、良い方向に向かってくれる。下手な治療で邪魔してはいけない。


 
2025年01月07日 10:17

【English available】

【電話番号】
03-3478-5248

【住所】
〒107-0051
東京都港区元赤坂1-1-7
赤坂モートサイド505

【診療時間】
10:00~13:30
14:30-18:00

【診療日】
火曜日、金曜日、第3土曜午前
※第2火曜は休診し水曜に診療

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