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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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傾聴、受容、共感の共感について 医療者は共感力が必要

1.傾聴、受容、共感の共感について  医療の場では、共感では無く、患者さんの病気の情報共有という言葉が適していると思っています。
医療面接の基本として傾聴、受容、共感が挙げられます。傾聴、受容は判りやすいのですが、共感とはどんなことなのか。どうしても感情的な共有なのかと考えがちですが、同情(Sympathy)と共感(Empathy)、この2つの用語は、しばしば同じ意味で使用されますが、両者には重要な違いがあります。共感という日本語の語感で同情に引っ張られる傾向があります。
一般的には、共感(Empathy)には主に3つのタイプがあります。
1)感情的共感:このタイプの共感では、人が他者の感情を共有できるだけでなく、他者をより深く理解することができます。情動的共感とも呼ばれ、感情的共感を得ることで、他者との真の信頼関係が築けるようになります。
2)認知的共感:このタイプの共感は、他者の考え方や感じ方を理解する能力を指します。認知的共感は感情的共感とは異なり、感情移入を必要とせず、他者がそのように考えたり感じたりする理由に重点を置きます。
3)同情的共感:このタイプの共感では、人が他者の感情的な痛みを共有します。

医学用語としては2)認知的共感がいちばん近いと思います。
empathyは患者の内的経験や考え,不安を(感じるというより)理解し,その理解を患者と分かち合い意思疎通できる能力です。このため,empathyの向上は医療者の成長,望ましい治療アウトカムにつながると考えられています。このことが,empathyはより良い医療の提供のために不可欠とされる理由です。
極端なはなし、傾聴、受容、共感のなかで、傾聴、受容は共感のための準備行動とも言えるのかと思います。
2.共感力とは
医学部研修医の時点での志望診療科によって共感力が異なるかについて調査した論文や診療科により共感力が強いか弱いかについての調査論文が出されました。米国では以前に医学部学生の共感力について入学後の縦断的調査があり、入学時には共感力が高いが三年生時には下がるという論文が出されています。
口腔顔面痛の臨床にはまさに共感力の向上が医療者の成長,望ましい治療アウトカムにつながると考えられ、調査してみたいと考えていました。
セミナー中に大塚先生にお願いして実施を検討し始めました。皆さんの協力をおねがしいます。
次の課題は医療従事者の共感力をどうやって高めるかです。
 
12月口腔顔面痛オンラインセミナーではいろいろな話題がありました。
3.トリプタノール出荷調整による問題 他の三環系抗うつ薬への切り替え
痛みに対する三環系抗うつ薬とプレガバリンの作用機序は異なるので、神経障害性疼痛では三環系抗うつ薬からプレガバリンに代えられても、慢性筋痛、痛覚変調性疼痛ではプレガバリンの有効性は示されていないので、三環系抗うつ薬からプレガバリンに切り替えるわけにはいかず、トリプタノール以外の三環系抗うつ薬に切り替えざるを得ない。
他の三環系抗うつ薬に切り替えるには具体的にどのような飲み方を指導すれば良いのか、その前に、他の三環系抗うつ薬はトリプタノールと同様に神経障害性疼痛に有用なのか。
イミプラミン(トフラニール)、クロミプラミン(アナフラニール)とも神経障害性疼痛に有効という論文がありますが、なぜ神経障害性疼痛に関してトリプタノールとノリトレンの論文だけが多く、トフラニール、アナフラニールの論文は少ないのか、有効性低いからなのかという疑問が残ります。他のブログも参照してください。
 
供覧した症例 まさにRedFlag 左側頬部のしびれの主訴からFacial-onset sensory and motor neuropathy 非常に珍しい疾患であるだけで無く、Facial-onset 顔面発症という点、口腔顔面痛として受診する可能性があり、そこで見逃したら早期発見の機会を逃してしまいます。おそらく秋の日本口腔顔面痛学会で発表されるでしょうから、そこで確認してください。
 
2023年12月18日 14:33

最近の口腔顔面痛患者さんで勉強したこと-1 来院までの経過

最近の口腔顔面痛患者さんで勉強したこと、 イヤ、勉強させてもらった事でしょうか、これからの患者さん診療に活かさせてもらいます。
 
私のクリニックにいらっしゃる患者さんの訴えは原因不明の歯痛、口、頬、アゴ、頸、頭の痛みです。これらの痛みを総称して口腔顔面痛という病名が使われます。
様々な痛みを訴えていらっしゃる患者さんの多くは既にいろいろな治療を受けています、歯科治療として、抜髄、根管治療、抜歯を受けている患者さんもいます、また、内科、脳神経内科、脳神経外科、耳鼻科などいろいろな科を受診している患者さんもいます。さらに、近所あるいは評判の鍼灸院、整体、マッサージなどを受けている患者さんもいます。
口腔顔面痛の代表的な原疾患は咀嚼筋の筋・筋膜疼痛と三叉神経の神経障害性疼痛です。
このような原因により歯の痛みを感じている非歯原性歯痛患者さんの当クリニック受診までの典型的な経過を示します。
  1. 歯が痛いので歯科に行った、一軒目では歯は何処も悪くない、経過観察しましょうと言われた。痛みは続くので二軒目に行った、一軒目と同じように虫歯も歯周疾患も無い、原因不明と言われた。患者さんは私の歯の痛みは原因不明の痛みなんだと解釈した。3軒目を受診した時には、原因不明の歯痛と言われているので、この歯の神経を取ってみてくださいと言った、最初、歯科医師は何も異常のない歯の神経を抜くことを断ったが患者さんが何回もの懇願に根負けして神経を抜いた、数日痛みが消えたかに思えたが、痛みは再発して、元に戻ってしまった。患者さんは歯科医師に何とかしてこの痛みをとってほしいと訴えた、神経を抜く処置をした歯科医師はもはや引き下がれなくなり、抜髄(神経抜く処置)してもダメなら、歯を抜いてしまえば痛みは止まるだろうということで、抜歯を提案した、患者さんはそれで痛みが止まるならと、藁にもすがる思いで抜歯を受けた、結果は抜髄と同じ、数日痛みは感じ無かったが痛みは元に戻ってしまった。今度は隣の歯が痛いような気がする、患者さんは不安、怒りと諦めが入り交じった気持ちになり、一時も歯の痛みを忘れることが出来なくなってしまった。このような気持ちが続くことにより睡眠は浅く、途中で何回も目が覚めてしまう日が続いている。このような状況の中で隣の歯の痛みは以前に増して強くなったような気がする。もはや患者さんは、「私の歯の痛みを治してくれる歯医者は世の中にいないのか」と言った絶望感さえ感じるようになっている。  相当、苦しんでいたのでしょう。 苦痛、心が苦しく、そしあて、痛みが続く、口腔顔面痛の患者さんの状況を的確に示しています。
2023年07月17日 11:13

毎晩、ひとり反省会  私と患者さんの合い言葉

毎晩、ひとり反省会 
筋痛はストレス、不安、怒りなどの心理精神的要因が関わっていることが多いと言われています。確かに私の患者さんのほとんどがそのように思えます。ところが、元気はつらつ、ニコニコいい顔、何でも笑い飛ばしている、このような人達が筋痛がひどい、起床時にかみ締めている感じがする、といった事を訴えます。そこで、睡眠障害について、寝付きはどうか、熟睡出来るか、途中覚醒は何回、早朝覚醒はないかなどと聞いていくと、どれも該当することが多いです。こんなに元気そうなのに何でと思うのですが、実はこの人達は日常生活のいろいろな出来事での心のもやもや、ぐるぐると再生される後悔、ふとした瞬間にふくらむ焦りや不安、やり場のないイライラなど、我慢や不満、焦りや不安が複雑に絡み合って「しんどい」ができあがってしまっているそうです。『あなたの「しんどい」をほぐす本』(KADOKAWA)私が日頃思っていたことがこの本にそのまま書かれていたので紹介しました。そして、この人達がしている事が、ひとり反省会です。初診の患者さんでこの人はと思う人に、余計な説明なしに、寝る前にひとり反省会していませんかと聞くと、素直に毎晩しています、と答えてくれます。このような患者さんにはすっと理解出来る言葉のようで、私と患者さんとの言葉かと思っていたら、この本にも出ていました。ひとり反省会で悩むのは、あなたは「こんなに落ち込むほど一生懸命頑張ったのです。そんな自分の良さを認めて、褒めてあげてください。」と書かれています。
先日、ラジオで腰痛が心因性であるという話しがあり、昔買って読んだ本を思い出してwajima図書室を探してもらいました。サーノ博士のヒーリング・バックペイン: 腰痛・肩こりの原因と治療– 1999と『腰痛は<怒り>である』2000を見つけて、もう一度読み直しています。20年以上を経て、心因性疼痛から痛覚変調性疼痛に代わるなど、最近の中枢神経系の関与等が判って来たことで、これらの本に書かれていたことが当たり前のことになっています。患者さん、病気をしっかり診ている人たちは詳しいメカニズムは別にして、なぜこの患者さんにこの症状が現れるのか大方予想が出来るのだと言う事を再確認しました。


追記 HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン/Highly Sensitive Person)と言う言葉もあります。この人達も一人反省会の会員です。
HSPは、米国の心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が提唱した心理学的概念で、神経が細やかで感受性が強い性質を生まれ持った人のことです。全人口の15~20%、約5人に1人はHSPと考えられています。

HSPには、特徴的な4つの性質「DOES(ダズ)」があります。

「いろいろなことが気になって落ち着かない」「ちょっとしたことで落ち込みやすい」と感じることはありませんか。それは、あなたが「HSP」だからかもしれません。HSPとは、視覚や聴覚などの感覚が敏感で、刺激を受けやすいという特性を生まれつき持っている人のこと。   他の人が気づかないような音や光、匂いなど、些細な刺激にすぐ気づく

HSPの人は、感覚的な刺激に対して無意識的・反射的に対応する脳の部位、「扁桃体」の機能が過剰に働きがちで、HSPではない人と比べて刺激に強く反応し、不安や恐怖を感じやすいことが分かっています。相手の気持ちを察知して行動したり、物事を深く探究できる半面、ささいなことで動揺したり、ストレスをためてしまうこともあります。


参照 https://kenko.sawai.co.jp/mental-care/202103.html#:~:text=HSP%EF%BC%88%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%B3,%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%82
 
2023年03月25日 12:31

痛覚変調性疼痛に関する私の誤解がひとつ解けました

痛みの発生メカニズムとして、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛と心因性疼痛が挙げられていたが、心因性疼痛は発生メカニズムとしては適切でないという事で、第3の発生メカニズムとして痛覚変調性疼痛が提案され、定着してきました。
ここからが誤解だったのですが、発生メカニズムでは心因性疼痛が痛覚変調性疼痛に代わりましたが精神心理的因子は痛みの発生因子にならないのかというと、心因性は大きな発生要因のひとつであることに変わりはありません。
つまり、痛みの発生メカニズムでは心因性から痛覚変調性疼痛に代わりましたが、痛みの発生要因としては心因性が重要な因子であることに変わりはありません。
不安、怒り、あせりなどの心因が中枢に、例えば扁桃体に作用して脳機能の変調が生じ、痛み関連神経系を感作して痛覚変調性疼痛が生ずると言うのが、ひとつの痛覚変調性疼痛の発生経路かと思います。
 
2023年02月12日 17:48

慢性痛は強弱はあれPTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)である

いろいろな慢性の痛み患者さんを診ていると、強弱はあってもある種のPTSDによる症状ではないかと思っています。数年前に仙台の伊達先生が日本口腔顔面痛学会の精神セミナーで講演されたときに、このように質問したときも、同感だと答えていました。
今朝から痛み情報収集の仕事始めをしていて、Pain MedicineNewsという米国の痛み関連情報のダイジェスト版を発行しているサイトをみていたら、2022’s Top 10 Articles: Part
1でベスト5前の6-10の記事が掲載されていました。その中に、「慢性痛はPTSD」ではないかという私の考えにぴったりの記事がありましたので、和訳して紹介します。
 
「精神的トラウマが痛み感覚変化させる、慢性痛は単なる痛みの管理を超えて、全人的な痛みの回復を目指す必要がある」
私たち医療関係者の間では、有害な精神的ストレスが神経系の感覚処理機能を変化させ、組織の病理変化と関連しない痛みをもたらすという事実への理解と評価が高まっている。
発育期や成人期にストレスを抱えた人は、圧痛閾値が著しく低く、痛みの感じ方が異なることが研究により明らかになっています1-3。
 
精神的トラウマが慢性疼痛につながるのであれば、精神的トラウマに対する治療が痛みを和らげるはずである。
実際、精神的トラウマの回復が痛みの回復につながるという考えを支持する6つのランダム化比較試験がある4。
しかし、私たちはいまだに、精神的トラウマによる神経障害性疼痛を、患者の苦痛の原因が侵害受容性であるかのように、つまり、身体的損傷から来るものであるかのように管理しがちである。
例えば、抗生物質やオピオイドを処方し、精神的トラウマの後遺症に対処しない傾向があるのです。
患者さん個人と社会全体の健康のために、プライマリーケア提供者、痛みの専門家、その他の医師、行動医学の専門家は、今こそ私たちの考え方や治療方法を変えるべき時なのです。
 
ケース・イン・ポイント  人質が心的外傷となった患者 
シエラ ツーソンの疼痛回復プログラムに参加するほとんどの患者は、自分の症状を「罰当たり」「残酷」といった感情的な言葉で表現します。 しかし、その大半は、自分のひどい痛みと精神的トラウマの間に関係があるかもしれないことに気づいていません。  
 
数年前、私が診察したある患者は、体のあちこちに痛みを感じていると報告してきました。
彼女は、どこからともなくやってくるような衰弱した痛みのために、すでに3年間も身体障害者手帳を取得していたのです。
その3年間、彼女は多くの医療専門家に診てもらったが、痛みの原因となる組織は見つからず、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス、慢性ライム病、多発性硬化症と別々に診断された。抗生物質、オキシコドン、ベンゾジアゼピン系薬剤に何万ドルも費やしたが、ほとんど効果はなかった。
 初診のとき、彼女の夫は突然、あることを思いついた。「ちょっと待てよ、ハニー」と彼は言った。「痛みが始まる1ヶ月ほど前に、クイックマートで人質になり、男があなたの喉にナイフを突きつけてきて、保安官が後ろから撃ち殺さなければならなかったのを覚えていないかい?  先生、身体的には無傷でも、それが彼女の痛みと関係あるのでしょうか?" 
 
間違いありません。この患者の疼痛症候群は、人質事件から約1ヶ月後に始まりました。これは、身体の神経系が痛みを異なる方法で処理するように配線し直すのにかかる時間とほぼ同じです5。
ソマティック・エクスペリエンスと呼ばれる精神的トラウマ回復治療と、グループ認知行動療法、弁証法的行動療法が効果を示した。
6ヶ月後、彼女は仕事に復帰し、鎮痛剤もやめ、とても元気にしています。
確かに、人質事件に遭遇することは稀なことです。しかし、この国には、もっと一般的で、私が診療で見てきた慢性的な痛みの原因でもある、成長期トラウマという有害なストレスの原因がもうひとつあるのです。世界中の研究により、幼少期の精神的トラウマと大人になってからの慢性疼痛の発症には、用量反応関係があることが示されています6。
Substance Abuse and Mental Health Services Administrationによると、3分の2以上の子どもが、16歳になるまでに少なくとも1つの精神的トラウマとなる出来事を報告しています。
 
私たちの社会は、文字通り、そして比喩的に傷ついているのです。
私たちは、単なる痛みの管理を超えて、全人的な痛みの回復を目指す必要があるのです。実際、カリフォルニア州初の外科医長であるNadine Burke Harris医学博士は、州の公立学校のすべての生徒が成長期トラウマのスクリーニングを受けるよう呼びかけ、すでにこの運動を始めています。
彼女は、有害な幼少期の体験や有害なストレスに関する公衆衛生規模の介入が、私たちの時代における最大の公衆衛生の進歩になると考えているのです。
 
患者さんの慢性的な痛みを理解するためには、痛みの専門医と理学療法士、行動医学の専門家が協力して、集学的なアプローチを行う必要があります。
このような多角的な評価と、痛みの根本的な原因に対する治療が必要です。
統合的治療には、疼痛教育、運動療法、体験療法、薬物管理、個人・グループ療法による感情処理、認知行動療法、バイオフィードバックや経頭蓋磁気刺激などが含まれます。
 
痛みが強いから外傷治療や理学療法はできないと言う患者さんもいらっしゃるでしょう。
このような患者は、神経系について話すことも、ましてや精神的トラウマについて話すこともできませんし、理学療法士に触られることにも耐えられないでしょう。
 
医療専門家として、私たちは、彼らが明らかに精神的トラウマという重荷を背負っていることがわかっていても、まず彼らが感じている「身体的」な痛みに対処し、穏やかな精神的トラウマ療法を行うことで、彼らの現状に対応しなければならないのです。
しかし、そこで終わらせないのが私たちの義務です。そして、精神的トラウマに適応した神経系がどのように痛みを脳に伝えているのか、患者を教育する必要があります。
そして、患者さんがその関係を理解し、受け入れ始めたら、精神的トラウマの治療を開始し、私たち医療者は、単なる痛みの管理を超えて、完全な痛みの回復へと向かうことができるのです。
 
2023年01月04日 21:14

解釈モデルを聞きましょう 痛み患者は不安がいっぱい

患者さんが自らの病気(illness)(医師のとらえる疾病 disease)を解釈する枠組みを、解釈モデル(説明モデル)といいます。解釈モデルは米国発祥で、英国では患者さんの自分の病気に関する解釈(Ideas)認知、とらわれ、心配(Concerns) 感情、不安、期待(Expectations)治療への期待の頭文字をとってICEと言います。概念は共通で、患者が病気の当事者として1)自分の病気の原因をどうとらえ、2)なぜ発症したのか、3)どの程度重いのか、4)予後はどうなのか、5)どんな治療が必要なのか等、の患者自身の病気の解釈です。一方、医療者側には当然のこととして診察の結果、診断がなされ、治療方針が立てられます。
私は患者さんの解釈モデルをホワイトボードに例えています。医療者は患者さんの解釈モデル、ホワイトボードには自分たちが考える事と余り相違の無いことが書かれていると思われていたのですが、実際にはかなり異なったことが書かれていることが多いのです。異なっていることが書かれているというのは、聞いてみて初めて判ることで、医療者に患者さんのホワイトボードを覗いてみようという気が無いと判りません。患者さんのホワイトボードに何が書かれているかを知るには、時間が許せば、初診患者には少なくとも5分間は自由に遮らないで来院の理由を語ってもらう事です。
患者さんは心配顔で、症状、経過を必死に訴えます、発症以来、何軒も掛かかり、あるところでは、痛みに見合うような異常は無い、原因不明といわれ、原因が無いはずがない、なぜ原因が判らないのだろうと不安になり、自分の痛みを判ってくれないことに怒りがこみ上げることもあるという。あるところでは治療を受けたが、全く改善しない、そして、改善しない理由をいろいろ話されて、さらに心配になる。最終的には抜歯を提案されたり、自分から望んだりして、抜歯したが全く改善しない、抜歯を提案されたことに怒りが湧き、抜歯を望んだことに後悔してしまう。
このような心理状況では冷静な判断は出来ず、痛みの感受性が高まり、不快感が増強されて、患者さんの行動を形成する神経心理学的変化が生じてしまいドクターショッピングを続けざるを得なくなってしまいます。
以前に治療により不安が高まることにより、自覚的な痛みが亢進してしまった例を紹介しています、インプラント上部構造操作時の痛みからうつ状態になってインプラント治療の継続が出来なくなってしまった例、医療ハイフによる筋・筋膜疼痛から歯痛が生じ、原因不明のまま歯科治療を受け不安感が増して痛みが続いている例、根管治療が奏功しないため再植、抜歯、他施設受診により不安が増して痛みが亢進してしまった例です。
その後も、同様に不安で痛み亢進の患者さんが多いです。根管治療を続けているが、詳しい丁寧な説明を聞く毎に悪い経過ばかり考えて不安が増して痛みも強まってしまう例。治療の際に、担当医が隣に座っている患者さんとトラブルになり、相当な言い合いをした後に自分のところに来た、患者さん本人も隣のトラブルを聞いてびっくり、不安感いっぱい、この先生こんなに怒るんだという驚きと共にこの先生怒ったままに自分の治療、その治療が非常に乱暴に感じられ、この治療でちゃんと治るのかという不安が生じて痛みが強くなってしまった。睡眠障害が生じて、1時間半毎に目が覚めてしまう状況が続いていると言う話でした。
痛み患者さんの解釈モデル、ホワイトボードにはいろいろなことが書かれていました。
このような状況ではどのような治療、対応が必要でしょうか、痛み診療は、痛み、機能障害、破局思考、不安、抑うつの改善を目的に、身体的治療枠組みだけではなく、精神、心理的治療枠組みで行われます。不安が高まっている患者さんには英語圏で良くでてくる単語がReassurance (reassureの意味は「安心させる」で、語源はre(もう一度)とassure(安心させる))です。単純には、繰り返し安心させることだと思います。これが不安が高まっている痛み患者さん治療の第一歩です。
 
2022年11月07日 11:39

考えすぎは「思考ウイルス」の感染

口腔顔面痛の外来で、毎晩眠る前に、一人でその日の反省会をしているという患者さんがいます。神経質そうな患者さんには、「寝る前に反省会していますか」と聞くと、想像していた以上に、毎晩しています、という返事が多いことにビックリして、ほぼ全員に聞くことにしています。この反省会をしている人は思考ウイルスに感染して考えすぎ (overthinking)の人達なのだろうと思います。以前に HSP(Highly Sensitive Person)についても紹介したように、同類と思います。 和嶋浩一

2022年9月1日(木)08時57分 ニューズウィーク日本版ウェブ編集部 https://www.newsweekjapan.jp/stories/lifestyle/2022/09/post-99512.php
<「考えすぎ(overthinking)」は「思考ウイルス」による、認知システムのバグ。自尊心を傷つける思考パターンを手放すには、言葉の使い方を変えるだけ>
思考は人間が動物と区別される能力の1つである。しかし、近年、「考えすぎ(overthinking)」の有害性に関する研究が相次いで発表されている。
「思考ウイルス」による 考えすぎ(overthinking)の一覧
白黒思考/過度の一般化/ネガティブフィルター/マイナス化思考/結論の飛躍/拡大解釈/過小視/感情的推論/認知的推論/身体的推論/自己関連づけ/「もう耐えられない!」/レッテル貼り/べき思考
これの認知(思考)の片寄りは、自動思考、認知の歪み(不合理な思考パターン)と言う言葉で以前から用いられていました。認知療法の創始者であるアーロンベックの弟子バーンズは1989年に続編として出版されたfeeling good handbook の中に代表的な自動思考、認知の歪み(不合理な思考パターン)として10の歪みが記載されています。 

もう一つ興味深い記事があります。上の記事の元です
心配しても92%は意味がない。欧米で注目「考えすぎ」問題への対処法とは
2022年8月19日(金)19時55分 ニューズウィーク日本版ウェブ編集部 https://www.newsweekjapan.jp/stories/carrier/2022/08/92-4_2.php
「心配」や「考えすぎ」をやめられない根本原因  養育歴の影響が書かれています。
なぜ私たちは「ネガティブな考えすぎ」から抜け出せず、心配せずにはいられないのか。実はそれには、子ども時代の経験が大きく影響している。
そもそも子どもが先天的に心配性である確率は25~40%だと著者は言う。そして、子どもは、周りの大人が大丈夫なときにだけ、自分も安全であると生存本能的に考える。すると、親や周囲の大人が眉間にしわを寄せたり、ため息をついたりしているのを見たときには、大人がそうしているならそれは重要なことで、大人の社会で生きていくために必要なことなのだと認識するのだ。
過剰に心配をする親は、得てしてわが子に対して過保護になりがちだ。そうして親が子どもを心配することで「この世界は、つらいことで満ちあふれた危険な場所だ。安全でいるためには、つねに警戒していなければならない」といったメッセージをいつの間にか子どもが受け取ることになる。これが、私たちが「心配」や「考えすぎ」をやめられない根本的な原因である。 慢性疼痛ではこのように養育歴の影響が大きいと言われています。

「考えすぎ(overthinking)」は「思考ウイルス」感染の患者さんは結構多くいます、昨日の診療した人もそうでした。この人達、起こりうることをいっぱい想定して、それでも、もしこうなったらどうしようと、そこまで想定しなくても、そんな事起こらないでしょうと言いたくなるくらいに考えすぎています。
昨日朝、出勤前に駅ナカの本屋さんで「考えすぎてしまうあなたへ」思考ウイルスの本を買って、早速患者さんと一緒にパラパラと開きました。患者さんは私のために書かれた本のようだと言っていました。
この本はオーストラリアで出された本で、世界中何処にも思考ウイルスがいて、考えすぎてしまう人がいるようです。
「考えすぎ(overthinking)」は「思考ウイルス」による、認知システムのバグ このバグの修正方法は原則、認知行動療法です。
認知行動療法の要素分析では ある状況があって、それに対して 思考(認知)感情 身体反応 行動が生じます。
この本に書かれていることは認知行動療法の中の思考(認知)を捉えて、思考ウイルスによって歪んだ思考になっていないかを確認するために、自分の思考を書き出して、歪んだ思考を見つけて修正しようとする方法です。
本格的な認知行動療法は専門の方に任せるとして、クリニックで実施する認知行動療法としては導入しやすいと思います。
2022年09月06日 11:18

解釈モデルに不安を見つける 不安を解消するには

歯科の病気の中で一般社会で認知度が低い病気の代表が口腔顔面痛、非歯原性歯痛です。認知度が低い故に、診断がつかず、不安感、心配が増した状態になり、慢性疼痛になってしまいます。口腔顔面痛の治療には不安感、心配の解消が必須です。

当クリニックを受診する口腔顔面痛の患者さんを診ていて気がつくことは、歯痛、顔面痛の原因が不明、はっきりしないと言う状況のままに歯の治療が続いていたり、何軒も医療機関を受けているが納得いく説明が得られないまま、症状が始まってから半年、1年という状況にあることです。このような憂うべき状況は、口腔顔面痛、非歯原性歯痛が一般社会、患者さんに知らないだけで無く、歯科関係者においても認知度が低いことによります。
もう一つの、歯と関係ない病気に顎関節症があります。
顎関節症はかみ合わせの異常が原因だから、かみ合わせの治療をすれば治るという誤った情報が広まっているが、それでも「信じれば救われる、治る」そのもので、「治りますよ」のひと言で改善することもあります。Sef-limitedと言われるように、幸にして治りやすい病気なので深みに嵌まってしまうことが少ないようです。
当クリニックで行うことは、充分に時間をかけて医療面接し、これまでの経過を聞き、その中で患者さんがこの病気をどのように捉えているのかも聞きます。多くの患者さんは病気について大きな不安と⼼配を抱えていることが判ります。
患者さんの不満は⼤きくは(1)医師が何を⾔っているのか分からなかった、(2)⾔いたいことを⾔えなかったの2つです。
(1)に対しては、診断がついた後は、治療の前に病気についての説明です。患者さんの自身の痛み、病気についての解釈、認知、捉え方を聞き出しながら、標準的な理解とのズレを修正します。
この治療をすれば改善するのにと、治療を始めたい気持ちを抑えつつ、患者さんの納得のいくまで、腑に落ちるまで病気を説明します。
(2)については、最初に数分⾃由に話してもらって います。その間、⼝を挟まずに相槌を打って話を聞くのに徹します。そうしてから治療の話を始めます。

医師と患者の間にはたくさんのコミュニケーション・エラーが発生していて、原因の一端は医師側にあります。医師がみんな最初からコミュニケーションが得意なわけではなくて、意識的にコミュニケーションの訓練をしてな んとかなっている⼈が多いと思います。しかし、訓練をせず苦⼿なまま年齢を重ねてしまう医師も少なからずいます。 私もその一人です。研修医など若いうちは指導医や患者さんから指摘を受けることもありますが、ある程度年がいってしまうと、患者さんは不安 や不満を持っていても我慢してしまうので、フィードバックが受けられなくなってしまいます。若いうちに身につけておかないと、キャリアを積んでから訓練するのは⼤変だと思います。
2022年08月05日 09:27

痛覚変調性疼痛と心因性疼痛は何が違うか、本態は患者さんの不安だと思う

痛覚変調性疼痛が話題になってから、私の関心は従来の心因性疼痛と痛覚変調性疼痛の関連性と心因性という用語はなぜ用いられたのか、どのような事を意味していたのか、実際の臨床の中で該当する患者さんを探して、何が心因性なのか、痛覚変調性は何を意味するのか確かめてみることです。天の邪鬼な性格故に皆さんの痛覚変調性疼痛理解とは別な方向に進んでいます。
解釈モデルを知り、解釈モデルをホワイトボードに例えて、今現在、患者さんがどんな事を考えているのかを、ホワイトボードに何と書かれているかを確認するよう務めています。その結果、私の診査診断の結果の治療方針とズレの有無が明らかになる。ズレがある場合、なぜそのように考えるようになったのか、うつ病に代表される歪んだ認知、考え方があるのか等が、カルテに文字化されて書かれ、明らかに認識出来る様になりました。
その中で気になるのは、慢性痛の患者さんは大きな不安感を抱えていることです。
始まりは痛み、多くの痛みは痛みを感じる部分に痛みの原因があり、医者に診てもらえば診断が決まり、治療するとすぐに治ると思っています、そのように解釈モデルには書かれていました。
歪んだ認知、考え方によるズレという前に、ズレを生む大きな問題が目の前にありました。口腔顔面痛の代表的な疾患である非歯原性歯痛では痛みの感じる部分と痛みの原因部分が異なる異所性疼痛なのです。我々口腔顔面痛専門医は当たり前になってしまっていますが、自分で改めて考えても変ですし、患者さんが混乱するのは当然の事と思います。
このような混乱を生む状況をしっかり把握し、どうすれば混乱を防げるかの対策を考えています。
患者さんが痛みを訴える部分には原因になるような異常が認められない、ここで一般診療では原因不明ということで診断が進まなくなります。これによって、「ここに原因があるのだから、ここを治療すればすぐにでも治るのに」という患者さんの解釈モデルと一致しない部分が出てきます。その結果として患者さんの認知は変わり、「自分の言っている事が信じてもらえない、だから解決に向かわない、どうすれば良いのか、別な病院探さなければならないのか」、そして気分、感情は「めちゃくちゃ不安」となります。非歯原性歯痛だけで無く、様々な痛みの治療を受ける過程で解釈モデルと診断、治療方針にズレが生じていると患者さんが不安を感じることが多いようです。
この不安感によって身体反応、身体感覚として痛みが強く感じられることとなります。私はこの部分が心因性疼痛であり、痛覚変調性疼痛の局面だろうと思います。
この状況での効果的な治療は、痛み治療よりも不安を和らげることです。痛み診査、治療の経過の中で生じた解釈モデルの混乱、ズレについて、患者さんにとって腑に落ちる説明が得られると不安が解消されます。安心だけでは不安が解消されずに睡眠障害を伴う場合には睡眠導入剤、抗不安薬が有効なこともあります。
最近診た典型的な3例を概説します。

症例1 35歳女性 HIFU(ハイフ)という美容施術を受けた後の咬筋筋・筋膜疼痛となり、歯痛が生じて歯科受診 プラスアルファ
HIFU(ハイフ)とは、High Intensity Focused Ultrasound(高密度焦点式超音波療法)(美容外科からの引用:お肌への負担を限りなく抑えながら高密度の熱エネルギーをお肌の奥まで届かせます。肌内部では受けた損傷を治そうと、コラーゲンが増生されます。この作用によりお肌が内側から引き締められ、お顔を引き上げていきます。)
ハイフを受けた後、頬部に痛み、歯痛も生じて、歯科受診。患者さんにとってハイフで頬部が痛いのは想定内、しかし、歯痛も関連するとは全く思わず。歯痛がハイフにより生じた咬筋筋・筋膜疼痛の関連痛とは考えなかった。異所性疼痛ですから当然と言えば当然、 ところが歯科医も診断できず。知覚過敏の診断で、繰り返し知覚過敏処置と負担過重軽減のために咬合調整。咬むと咬合面がしみると言う事で咬合面にもコーティング、当然、早期接触が生じ、かみ合わせがおかしいという異和感、そこを削る、また、しみるの繰り返し。患者が説明を求めると、毎回違った説明と新たな治療法提案、患者は不安感が高じて、自ら心療内科受診、そこで抗不安薬が処方され服薬、痛みは日ごとに改善してきた。
しかし、頬部の鈍痛、当初はハイファの術後痛と理解していたが、こんなにも続くものかと不安が強くなってきた。また、歯痛があり、冷水はしみなくなったが噛み方によりギックと激痛が生ずることも不安で受診した。
和嶋の理解と患者説明:歯の持続痛は筋・筋膜疼痛によるものであること、これは最初に遡って、筋緊張の準備因子があったところにハイフの筋膜舳の刺激により筋・筋膜疼痛が生じて頬部痛と関連痛として歯痛が生じた、現在の頬部痛、歯痛もそれが続いていることを説明した。
毎回違った診断と新たな治療法の提示に納得出来なかったことと不安感の高まったことにより痛みが強く感じられた事、患者自らの判断で心療内科受診して、今も抗不安薬を服用しているのは適切だったと思われることを説明した。かみ具合によりギクッとした痛みは咬合調整の結果、象牙質が露出して生じているであろう事を説明し、筋・筋膜疼痛、象牙質露出への治療法を提示した。
 
症例2.上顎前歯部にインプラント、頭出しして、さあ上部構造と言うときに痛みで中断を余儀なくされた。何本かの中の1本のインプラントがネジを締めたり、暫間冠を装着しようと力をかけると激痛が生ずるということで数回挑戦したが痛みが出る事に恐怖感が出てしまい、さらに持続痛も生じて上部構造の作成を一時中断。時期を同じくして、全身状態が悪化、内科の主治医を受診したが内科的には異常なし、大学病院脳神経外科受診、MRI等で検査するが異常なし、口腔外科を受診、筋・筋膜疼痛の診断で筋マッサージの指導を受けた。一向に改善せず、最近は病院に行くために車に乗ることすら出来ず、治療は何も受けていない。家ではほとんど横になっている状態で日常生活が出来ないとのこと。ご主人からの電話相談を受けて、以上の経過を聞いた。インプラント治療中に生ずる痛みがどうしても耐えられないことへの不安感、恐怖から痛みが出て、全身状態にも影響していることを推定して、精神科受診を勧めた。後日電話があり、以下の経過を受けた。精神科受診して、睡眠導入剤と抗うつ薬を処方された、抗うつ薬は副作用のための一日しか服用できなかったが睡眠導入剤が効果的で、睡眠が改善された。約1ヶ月経過して、持続痛は改善し、日常生活が出来るほどになり、元通り自分で車を運転して買い物に出かけられるまでに回復したとの事であった。
和嶋の理解:睡眠導入剤により睡眠が改善され、不安の改善に役立った。持続性疼痛がないこと、治療が中断され、インプラント部に触れなければ痛み刺激はないことにより次第に改善に向かったと推定される。
 
症例3:35歳男性 2ヶ月前に上顎左側6の歯肉痛
 1年前から上顎左側大臼歯部に異和感、上顎左側6は2年前に痛み治療の為に意図的再植、1年間痛み無かったが1年前から痛み再発、次第に増悪。4ヶ月前にかかりつけ医で歯周炎と言う診断でFlap手術を受けた。術後痛みが強く、再診、再植した歯が急性炎症を起こしていると言うことで、再度意図的再植術、術後、痛みは増悪、1週間後に抜歯、さらに痛みは強くなり、持続痛に経過中に発作痛が加わった。口腔顔面痛専門医を数軒受診、神経障害性疼痛、筋・筋膜疼痛、の診断、神経障害性疼痛の治療として処方されたトリプタノール10mgは翌日眠くて継続出来ず。大学口腔外科では抗菌薬処方。筋・筋膜疼痛専門整形外科受診、咬筋にトリガーポイントインジェクション、神経内科受診神経学的異常なし、リボトロリール処方されたが杭痙攀薬と書かれていたので服用せず、次にタリージェ処方され、服用したらふらつきで中止。漢方専門医受診、何種類かの漢方薬服用したが効果無し、脳神経外科受診、画像検査異常なし、三叉神経痛の診断でカルバマゼピン処方されるも、ふらつきで中止。次の内科でヂュロキセチン処方、吐き気で中止。大学ペインクリニックで眼窩下孔にブロック注射、効果は不明、その日から突発性難聴で耳鼻科受診、ステロイド治療を受ける、同日に母親が服用しているバランス(抗不安薬)10mgを服用し始める。バランスは以前にものストレスが強い時に服用したことがあった。徐々に痛みが改善。10日後に当クリニック受診、現在は発作痛なし、持続性の2/10鈍痛がある。上顎左側歯肉にallodynia、Hyperalgesiaあり、顔面左側v2に触覚鈍麻、痛覚過敏あり、咀嚼筋圧痛無し。現在、バランス(抗不安薬)のみ継続服用中。  
気になった事、最初はChairに座って、握りこぶしををつくり、身体を強ばらせていた、これまでの治療経過を聞いて、想定される原因と症状のストーリーを話していると、実は、実は、といくつもの新しい情報 そして、診療が終わったときには握りこぶしがほぐれていた。
和嶋の理解と患者説明:1)何らかの器質的痛みがあった可能性、2)そこに切開の外科的侵襲が加わった。腫れたとは言っていないので、感染、化膿は無かった様である。3)痛みへの不安により痛覚変調性して、痛み増悪、4)そこに意図的再植、抜歯外科処置の侵害刺激が加えられ、痛みは増悪し不安が増す。5)痛みが強いので、口腔顔面痛専門医を始め、複数の痛み関連診療科を受診するも改善せず、さらに不安が増し、痛みは増悪。6)ストレス性と思われる特発性難聴発症、改善因子として7)大学ペインクリニックで眼窩下孔にブロック注射と8)自分判断でバランス服用、を説明した。
現在残る症状として、感覚障害がある、三叉神経痛とは思えない、筋・筋膜疼痛でもないこと、眼窩下孔にブロック注射と抗不安薬のバランス服用が奏功した可能性がある事を説明した。今回の経過中大きな不安が生じたことは何らかの精神的素因が考えられるので、バランス服用の管理も兼ねて精神科受診を勧めた。


 
2022年08月03日 18:12

慢性痛による苦悩への対応法 認知行動療法

器質的痛みの治療にプラスして 認知行動療法
•痛みの治療では、最初に炎症などによる侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛などの器質的痛みを原因を探し、それに対する治療を行う。
•痛みは生体サインとして不可欠な身体感覚(痛覚:器質的痛み)と、痛みから生じる苦悩(感情・認知)の両側面を持っている。
•両者は密接に絡み合っており、片方のケアを怠れば、もう片方へ悪影響を及ぼし、痛みを悪化させる。
•一般に、急性疼痛であるほど生体サイン(痛覚)としての要素が大きく、慢性化するにつれ苦悩の要素が大きくなる。
•    痛み(痛覚)への対処と苦悩への対処、両方をバランスよく行うことが重要となる。

苦悩への対応 認知行動療法とは
•慢性疼痛は、最初は生体サイン(痛覚)であった痛みに苦悩が付随するようになった状態と言える。
•認知行動療法では個人の認知、感情、身体反応、行動に焦点を当てる。
•これらの4要素が上手く適応出来ない(非適応的:道理に合わない、うまくいかない)悪循環を作り出すことによって4要素が悪化、持続され、一層痛くなる。
•認知行動療法はこの悪循環を良循環に変えるために、各要素の状態を理解し、歪みを修正することで痛みを管理する。
•認知行動療法は苦悩の原因となる「ネガティブな感情や認知」を「適応的な、現実にそった柔軟な考え方」に変え、痛みに振り回されずに生活できるようになることを治療目標としている。
2021年10月17日 20:13

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