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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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ハワイから非歯原性歯痛の患者さん来院

先日、ハワイ在住の日本人の方が10年来の非歯原性歯痛で来院されました。
経過を聞くと歯痛で抜髄が始まりで、かなりの歯科を受診して根管治療を数回受けたそうです。最後に日本人のENDO専門医に紹介され、歯原性では無いとの診断、ハワイには口腔顔面痛専門医はいないので米国本土か日本に行ったらどうかとアドバイスされたそうです。今回帰省する機会があり、ENDO専門医に相談したところ、私を薦められ受診したという次第でした。
これまでも、ハワイ在住の数人の日本人から非歯原性歯痛についてメールでの相談があり、ハワイの歯科事情、口腔顔面痛事情を知っていました。米国も日本も、世界の多くの国々で、簡単に口腔顔面痛の診断治療が受けられない状況にあります。せめて、歯原性か歯原性でないかの判断、そして、非歯原性歯痛だとして、筋触診で筋筋膜疼痛の可能性はないか、ここまで診査ができれば多くの患者さんが救われます。
今回ハワイから来院した患者さんは、側頭筋、咬筋、胸鎖乳突筋、後頸部の筋から歯への関連痛がありましたから筋筋膜疼痛だと思います、10年以上経過しているために、歯痛部の歯肉にはAllodyniaも認められ、感作が生じていると思われます。
筋骨格系の痛覚変調性疼痛診断に照らすと、かなりの部分で該当する項目があり、筋筋膜疼痛に痛覚変調性疼痛が合併していると診断できます。
この患者さんはハワイに一台しかない経頭蓋磁気治療を受けていて、歯痛は治らなかったがうつが軽くなったそうです、また、処方されている薬が米国らしかったです、モルフィン、トピラマート(強い片頭痛発作があった)、プロザック(SSRI、抗不安薬として)、頓服にオキシコドンが処方されていました。
私のアドバイスはまずは筋痛へのセルフケアです、腹式呼吸しながらの頸部、咀嚼筋のストレッチ、開口ストレッチアシストブロックも渡しました。全身の随意的最大緊張からの弛緩 など
薬としては痛覚変調性疼痛への対処としてトリプタノールを勧め、漸増服用法のパンフレットを渡して、ハワイのPainmanagementに相談する様に伝えました。

最後の観てもらった日本人ENDO専門医がなぜ私を推薦したのか不思議でした、日本の大学卒業して米国で専門医資格を取ったならば、私を知っている可能性はあるかと思いながら、フルネームが書かれていたので調べたらUniversity of North Carolina at Chapel Hill 卒業でそこでENDOレジデント研修
ここまで観たときに、私の鹿児島の同級生の高校の同級生が同姓で、学生時代に会った事があり、卒業後米国に渡り、University of North Carolina at Chapel Hillの生化学の教授をしていること、その教授の奥さんが私の大学の先輩で、ENDOの教室にいて、かなり昔にメールで近況を連絡したこと等を思い出しました。鹿児島の同級生に連絡して確認したところ息子さんがハワイで開業しているということで、どうも深い繋がりがあったようです。
その息子さんが私をどうやって知ったのかはまだ不明  連絡して診察結果を送ろうと思っています。

 
2023年03月19日 10:52

末梢神経損傷分類の混乱

sunderland分類
Seddonの分類、Sunder land分類活用の問題点   
最新解説  wajima-ofp.com/blog_articles/1707630604.html
Seddonの分類は1942年に発表され、約10年後の1951年にSunder land分類が細分化して発表されています。
この図がsunderlandの原図だと思います。他の図との違いは左側の神経細胞と神経線維が複数書かれています、他の図は神経細胞1個で一本の神経線維だけと勘違いして、一個の神経細胞しか書かれていません。

末梢神経損傷の分類としてSeddonの分類(1942)、さらにこの分類を修正、細分化したsunder landの分類(1951)が用いられます。この末梢神経損傷分類の活用に当たって、いくつかの問題点があります。
第一は、Seddonの分類、Sunder land分類とも多くの日本語訳がありますが、訳が間違っているものがあります。用いられる用語は軸索、シュワン鞘、ミエリン鞘、神経内膜、神経周膜、神経線維束、神経上膜、神経幹などで、必ずしも適切な訳になっていないために損傷程度がどの程度か誤解する可能性があります。オリジナルに忠実な訳を用いてください、内容が全く違ってしまいます。
 
もう一点は、これらの分類はseddon分類のNeurapraxiaとAxonotomesisまでとsunderland4度までは神経線維1本1本の損傷程度を分類し、Seddon分類neurotmesisとsunderland5度では神経幹を包む神経上膜の損傷状況を示していて、神経線維1本1本の問題から神経幹の損傷に飛んでいます。神経損傷の病理像としては非常に有用で、1本の神経線維で髄鞘の障害、軸索の断裂、そして、神経幹の断裂と理解出来ます。
ところが、臨床での神経損傷は1本1本の神経線維の問題ではなく、例えば下歯槽神経損傷とか神経線維が何万本も集まった神経幹の損傷が問題です。ところが、臨床の場において、まるで下歯槽神経が一本の神経線維であるかのように、Seddonの分類のどれとか、Sunder landの何度だと話していることがあります。例えば、下歯槽神経を傷害した場合、1本1本の神経線維ではsunderlandのⅠ度から4度までの損傷が混在した状態か5度の完全に断裂してしまっているかだと思います。
おそらく、このような混乱を憂う人は私以前にいるのは当たり前で、Mackinnon,Dellonと言う人達が解決策として、Sunder Landの分類にVI度損傷としてI〜V度損傷の神経束が混在した状態であるとして分類を追加しています。臨床で診る神経損傷のほとんどはSunder Landの分類VI度損傷(様々な損傷の混在)ということになります。  
例外は智歯抜歯等で下歯槽神経を圧迫し術後にオトガイ部の鈍麻が生じたが、約一ヶ月後に完全改善した例、この例では障害された神経線維全部がseddon分類のNeurapraxia つまり脱髄のみだったと思われます。また、下歯槽神経の完全断裂neurotmesisしてしまった例は、混在無しの状況でしょう。
 
2023年03月16日 21:23

今後の活動 2023年3月に思うこと

2023年3月に思うこと
2017年3月に大学を定年退職してから丸6年経過、米国の先生方に言われたEnjoy retirementの実感が少しずつ湧いてきています。貧乏性で完全にENJOY出来ずに今に至っています。まあ、診療は100%の出力になってしまうので疲れますので休みが良いなと思うときが多くなってきました。
大学時代より診療のレベルは上がっていると思います、一番に患者さんとのコミュニケーションです、時間があるのでしっかり診査ができ、正しい診断を引き出せます。

原則火曜日、金曜日はフルタイム、第3土曜日は午前中、口腔顔面痛診療です。
第2火曜日は静岡清水病院でTMD、口腔顔面痛診療、清水病院では井川先生と池田先生が口腔顔面痛を診ていますから、私は主に紹介患者さんを診ています。静岡県は他に本格的にTMD、口腔顔面痛を診ているところはないので患者さんが集まっています。
第4水曜日は札幌風の杜歯科で口腔顔面痛診療です、広い北海道で口腔顔面痛を専門とする診療科はなく、北海道中から患者さんが集まっています。完全に口腔顔面痛の三次医療機関になっているので、ここでの診療は大変です。歯髄炎の診断で歯の治療しているが改善せず来院、どうもおかしいと神経内科に紹介したら脳腫瘍だったという例も一例だけではありません。風の杜歯科の飯沼先生は口腔顔面痛について北海道歯科学術大会で発表したり、各地区の歯科医師会で講演したりして啓発に努めています。
2022年から月刊デンタルダイヤモンドに「症例に学ぶ診断マスターへの道」と題して連載記事を編集しています。毎号口腔顔面痛に興味を持って診療している先生方にパターン認識法で診断エラーしたが仮説演繹法でしっかり正しく診断して治療したという症例を提示してもらい、診断エラーの原因を自身で探し、次の診断に活かすという内容です。今年は診断エラーのみではなく、口腔顔面痛診断に関わる様々な問題点も取り上げて継続しています。

口腔顔面痛に関するオンライン相談もしています、近くに口腔顔面痛の判る先生がいないのでどうすれば良いか、ペインクリニックの先生に薬を出してもらったが、どう飲めば良いのかとか、海外在住の方々からの相談も多いです。大都市に住んでいるがOrofacial painなんて見当たらない、何処に行っても診てもらえば良いのか、等の相談があります。

診療以外はPCに向かう時間が増えたことから、様々な情報が目についてしまい、臨床に活用できる話や世界中で話題になっている論文などを見つけて、自身のHPブログに挙げたり、口腔顔面痛MLに投稿して皆さんとデスカッションしたりしています。
閑でぼーっとする時間はなく、何時も何かしています、これも貧乏性だなーと思っています。コロナが鎮まったら、米国の学会も行きたいし、東南アジアの若手の教育も再開したいと思っています。
 
2023年03月01日 14:18

痛覚変調性疼痛の診断基準を元にして中枢感作との関連を考える

痛覚変調性疼痛診断法
中枢感作とは
国際疼痛学会の現在の中枢感作の定義に従えば、中枢感作とは「正常または閾値以下の求心性入力に対して、中枢神経系の侵害受容ニューロンが増加した反応性」という意味になるはずです。つまり、中枢感作とは侵害受容性疼痛に関連する現象の変化のメカニズムとして用いるべきと言われています。
 
痛覚変調性疼痛のなかの中枢感作の位置付け
痛覚変調性疼痛発症への中枢感作の関与する部分を具体的にあげるならば、痛覚変調性疼痛の診断基準の「2. 痛みのある部位に疼痛過敏の既往がある。以下のいずれか1つ。触覚敏感、 圧覚敏感、 運動敏感、 熱、冷敏感」である。ここであげられている「触覚敏感、 圧覚敏感、 運動敏感、 熱、冷敏感」は侵害受容性の変化で、過敏になったのは中枢感作によると考えられます。
また、「4. 誘発性疼痛過敏現象は、痛みのある部位で臨床的に誘発されることがある。
以下のいずれかである。静的機械的アロディニア、 動的機械的アロディニア、 熱または冷感アロディニア、 上記のいずれかの評価後に残遺症状が残ること」、誘発性疼痛過敏症状はまさに侵害受容性疼痛の変化であり、中枢感作が関与すると考えられます。
他方、「3. 併存疾患がある。以下のいずれか1つ。音、光、においに対する感受性の亢進、 夜間頻回の覚醒を伴う睡眠障害、 疲労、 集中力の欠如、記憶障害などの認知的問題」、は侵害受容性神経系に関連して生ずる現象ではないので中枢感作の結果とは言えないということになります。
痛覚変調性疼痛の発症メカニズムを分析する
上記したように痛覚変調性疼痛は診断基準の2、4で侵害受容神経系が中枢感作により生ずる変化であるが、「3. 併存疾患がある」に含まれる症状は中枢感作以外のメカニズムにより生ずるものであり、痛覚変調性疼痛の発症には侵害受容性神経系への中枢感作だけではなく、もっと広く神経系が変化した結果であると考えねばなりません。
 
中枢感作プラスアルファのメカニズム
この詳しいメカニズムは不明で、とりあえず、脳機能変調とでも名付けておきます。
この先のメカニズムを考えるに当たって、中枢感作症候群とでも呼ばれる症状群を調べてみました。
中枢感作症候群(central sensitivity syndrome)とは
中枢感作症候群とは、中枢感作の症状を持つと「推定される」非器質性疾患(例:線維筋痛症や/慢性疲労)の包括的な用語として提案されたものです。
しかし、冒頭に書いた国際疼痛学会の中枢感作の定義から明らかに逸脱していますから中枢感作の症状とは言えません。
 
中枢感作症候群調査票(Central Sensitivity Syndrome Inventory)CSI
「中枢感作症候群(central sensitivity syndrome (CSS)に関連することが多い主要な身体的・感情的な訴えを評価するために」開発された質問票で、世界中で広く使われています。
この中枢感作症候群調査票で評価される「推定の」中枢感作の症状には、睡眠障害、集中力低下、光やにおいへの過敏性、ストレスなどが含まれます。 これらの症状は侵害受容性ではないので明らかに中枢感作ではありません。   
 
中枢感作症候群調査票を利用した論文を読むと、論理の飛躍があり、中枢感作症候群を調査したはずなのに、論文の結論等で中枢感作を評価したことになっています。
1)中枢感作が、非侵害受容系における反応の亢進を説明するために用いられている(例:音、光、におい)。
2)中枢感作があると中枢感作症候群調査票で高得点となり、中枢感作症候群調査票で高得点であれば中枢感作であると解釈されるという論理の飛躍があります。
 
このような中枢感作症候群調査票を用いた研究には科学的論理の逸脱があるのですが、中枢感作症候群を中枢感作とは別物、中枢感作プラスアルファのメカニズムにより生じた症状と考えれば、ここから何か手がかりが得られそうかなという気がしています。
今のところ、泥沼なのか、金の山かは皆目見当がつきません。
 
 
2023年02月28日 16:52

最後臼歯しか咬んでいない でも咬合調整はしないでください

口腔顔面痛、TMDの患者さんで骨格性要因に寄らない前歯部から大臼歯部開口状態で最後臼歯のみ咬んでいる患者さんを診ます。多くは前歯部小臼歯部に咬耗が認められ、以前は咬んでいたんだろう、そして、犬歯の尖頭が咬耗している事から歯ぎしりが強かったのだろうと推定されます。
これらの患者さんは下顎枝高径が短くなっていて、下顎頭が吸収変形した事も推定されます。
下顎頭に対する病名は進行性下顎頭吸収(Progressive Condylar Resorption: PCR)あるいは特発性下顎頭吸収(Idiopathic Condylar Resorption: ICR)とも言われます。私の経験では下顎頭の吸収が経時的に進行するのではなく、諸条件が合わさったある時期に急激に進行すると考えています。
下顎頭が何らかの原因で吸収し、咬筋をはじめ閉口筋の力が合わさって最後臼歯を軸に下顎が時計周りに回転して、小臼歯部から前歯部が開口状態になってしまったことです。この時計回り回転が重要なポイントです。
 多くの患者さんは急性期を過ぎて、顎関節には雑音以外症状がないことが多いです。

このような患者さんで生ずる大きな問題
歯科医師が初診でみた患者さんの口腔内が、前歯部から小臼歯部まで開口状態で左右最後臼歯しか咬んでいない状態をみると、これは大変だと思います。最後臼歯に力が集中するので外傷性咬合により歯がダメになってしまう、何とかかみ合う歯を増やそうと最後臼歯の当たっている部分を咬合調整しようとします。これが問題です、咬合調整するとどうなるでしょうか、反時計回りに前歯部がかみこんで行くでしょうか。
開口状態になったのは下顎が時計回りに回転した結果です、最後臼歯の当たっている部分を削ると反時計回りに回転するだろうという見込みとは反対に、もっと時計回りに回転して、前歯部の開口状態が増悪します。絶対に咬合調整してはいけないのです。
 
とりあえず、どうすれば良いか、夜間スプリント装着
まず、このような患者さんは歯ぎしりが強いので、上顎に全顎型のスプリントを入れて、少なくとも小臼歯部までバイトさせましょう。スプリントの厚みは1mmです、厚いスプリントでは盛り足すレジン量が多くなってしまいます。
 
 
 
2023年02月28日 15:50

チャットGPTに聞いてみました 解釈モデルのズレの直し方

2023年2月23日の朝日新聞天声人語にチャットGPTの話題が載っていました。
今世界中で話題のAiを使った小説執筆です。大学生が小説の校正作業のアルバイトに採用された。執筆者は生身の作家ではなく人工知能Ai、やりとりするうちに、相手の「意識」を感じ始めると言う話、これは昨年の第9回「星新一賞」でAiを利用した初入選した作品の事でした。ミーハーな私は世の中で流行っているもので自分の仕事が少しでも楽になるものは取り入れてきたので、このチャットGPTも早速活用にむけて試し中でしたので非常に興味をもちました。
最近の私の頭のなかで未解決で残っているものに、解釈モデルを能率良く把握するにはどうすれば良いか、把握した後にこちらの診断と齟齬があった場合に患者さんの考えを効果的に変えるには、こちらにすり合わせるにはどうすればいいのか、という課題があります。
 そこに、養老孟司が新刊本で、「あの人は私をわかっていない」「私を誤解している」などと思うのは、誤解ではない「正解」があるという前提に立っているから、
誤解されたままなんて嫌だと思うかもしれないが、「それは誤解です」と言っても相手は相手で自分が正解だと思っているから、たいてい無駄に終わる。誤解の多くは、放っておくと自然に解けて消えていきます。どうでもよくなるんです。長い時間がかかるかもしれません、その時間を「損」と思うと、短時間で、合理的に「誤解を正そう」という話になる。そこで無理矢理「これが正解なんだよ」と説明しても無駄なことです。

この相手の誤解を患者さんの解釈モデルに置き換えると、医療の場面での患者と医者のやり時になります。解釈モデルとこちらの診断をすり合わせるのは難しいことなんだとあらためて気づかされました。
患者さんの解釈モデルがどうしてもこれからの治療方針と合わずに、私はこの歯の痛みを治してほしいのに、頬の筋肉が強ばっているの、歯肉の神経が敏感だのと言われても、納得出来ない、歯の痛みを治して欲しいんだ、 歯医者はあなただけじゃない、歯のややこしい痛みの治療が上手いという評判を聞いてやってきたが、どうも見当外れだったようだ、と言われたらどうしましょう。
養老先生は「放っておくと自然に解けて消えていきます」と言っているが、治療するには、何とか解釈モデルを早めにすり合わせたい、どうすれば良いのか
このよう場面に備えて、早速、この課題をチャットGPTに答えてもらいました。
相手の誤解を解くためには、
以下のステップを踏むことが重要です。
 
1.相手の誤解を正確に理解する
まず、相手がどのような誤解を抱いているのか正確に理解する必要があります。相手が何を誤解しているのかを明確に把握することで、解決策を見出すことができます。
 
2.相手の視点に立って考える
相手がどのような状況や背景で誤解を抱いているのかを考え、相手の視点に立って考えることが重要です。自分の立場だけでなく、相手の立場を理解し、尊重することが重要です。
 
3.正確な情報を提供する
相手に正確な情報を提供することが大切です。誤解を解くためには、適切な情報を提供することで、相手が正確な情報に基づいて考えることができるようになります。
 
4.コミュニケーションを改善する
相手とのコミュニケーションを改善することが重要です。誤解を解くためには、相手とのコミュニケーションがスムーズであることが必要です。相手の意見を尊重し、適切なタイミングで適切な言葉を使うことが大切です。
 
5.誤解が解けたことを確認する
最後に、誤解が解けたことを確認することが重要です。相手が正確な情報に基づいて誤解を解いたことを確認することで、今後同じような誤解が生じないようにすることができます。
 
なるほど、もっともな話ですね。白衣の威厳よりもこのような論理だった話を如何にかみ砕いて伝えるか、精進します。
 
 
2023年02月24日 13:51

一般向け非歯原性歯痛情報

一般向け健康雑誌PHPからだスマイル に非歯原性歯痛に関して、医療ジャーナリストの木原さんに取材を受けて、記事になっています。
PHPからだスマイル2023 3月号 非歯原性歯痛 健康ニュース2023 3 虫歯・歯周病は無いのに”歯が痛い”  121-123   https://www.php.co.jp/magazine/karadasmile/  
非歯原性歯痛はH26年度から歯科医師国家試験に毎年出題され、多くの歯科医師は知っている歯科の疾患の一つですが、いざ臨床となると、知っているのと診断出来るのとは違うために、見逃されていることが多いのが現状です。歯科医師への啓発と共に患者さん、一般社会への広報が必要と思っています。
患者さん向けには、歯の神経の治療をしているが、うまく治らない場合には、私の痛みは非歯原性歯痛ではないかと主治医に言ってみることを提案します。
 
2023年02月13日 10:11

慢性痛治療はコミュニケーション

歯髄炎は大人子供、その人が他の病気を持っていたとしても、神経を抜くと治ります。処置前後の痛みに強い、弱いの差はあるでしょうが、痛みは収まります。これは歯に対する治療でことが住むからです。ところが慢性痛は、例えば咬筋の筋・筋膜疼痛による非歯原性歯痛の場合には歯に治療しても直らないのは当たり前、筋肉に治療すれば直るか。筋が痛みの元であるから治りそうですが、慢性化していると治療者と筋肉の問題に宿主の患者さんが絡んできます。慢性痛の治療では痛みの原因である筋肉よりも筋肉の持ち主である患者さんに対する治療が重要になります。
患者さんとコミュニケーションしなければならない、話さなければならない、患者さんに理解してもらうように話さなければならない、患者さんに自分の筋肉の病気について、なぜ起こったのか、どうすれば治るか等を説明して、原因が患者さん自身の生活にある事、改善するには患者さんによるセルフケアが必要である事を理解してもらう、そして、やる気になってもらわなければなりません。
今まで歯の病気だと思っていた人に、痛みの元はあなたの生活にありますよ、治すのはあなたですよと言ってセルフケアをやってもらうわけです。非歯原性歯痛のパンフレットを渡して、あなたの病気はこれです、ここに書かれている事をやってくださいでは治らないのは目に見えています。
患者さんの解釈モデルでは歯が痛い、歯の病気、歯科医院に行ったら歯の治療をしてくれて、すぐ治るはずでしたが、悪いのはあなたです、治すのもあなたですと言われても解釈モデルは変わりません。
振り出しに戻って、慢性痛の治療は痛みの元が治療対象ではなく患者さんです、そして治療法はコミュニケーションを通じて伝えることになります。
一般歯科治療はクルマの修理のように、大きく口を開けてもらい口の中にある歯を削り詰めたり被せたりして治療します、このような治療から180度反対側にある、口で話してもらい、こちらの話しを耳で聞いてもらって治療していくのです。
 
2023年02月13日 09:42

痛覚変調性疼痛に関する私の誤解がひとつ解けました

痛みの発生メカニズムとして、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛と心因性疼痛が挙げられていたが、心因性疼痛は発生メカニズムとしては適切でないという事で、第3の発生メカニズムとして痛覚変調性疼痛が提案され、定着してきました。
ここからが誤解だったのですが、発生メカニズムでは心因性疼痛が痛覚変調性疼痛に代わりましたが精神心理的因子は痛みの発生因子にならないのかというと、心因性は大きな発生要因のひとつであることに変わりはありません。
つまり、痛みの発生メカニズムでは心因性から痛覚変調性疼痛に代わりましたが、痛みの発生要因としては心因性が重要な因子であることに変わりはありません。
不安、怒り、あせりなどの心因が中枢に、例えば扁桃体に作用して脳機能の変調が生じ、痛み関連神経系を感作して痛覚変調性疼痛が生ずると言うのが、ひとつの痛覚変調性疼痛の発生経路かと思います。
 
2023年02月12日 17:48

これが痛覚変調性疼痛 本態は脳機能変調

痛覚変調性疼痛診断法
今回提示した参考文献を改めて読み直したら、痛覚以外の症状(睡眠障害、疲労、認知症状、光・音・においに対する過敏性など)が診断基準に含まれていました。
痛覚変調性疼痛の診断基準に完全一致する症例を提示します。

症例40歳男性 主訴:両側側頭部の自発痛と刺激痛(眼鏡がかけられない、マスクを耳にかけられない)
現病歴:10年前、頭が締め付けられるように痛くて、脳外科受診、MRI異常なし、鎮痛薬を処方で終了、その後、内科、ペインクリニックを受診したが異常なし、鎮痛薬のみ。
顎関節症専門を掲げる歯科で高価なスプリント治療を数回、効果無し。
2年前から、顎関節症の診断で二年間で咬合治療をして主訴を改善するという歯科受診中(前金3桁万円払い込み済み)、二年が近づいているが一向に改善しないという事で当クリニック受診。
主訴:両側側頭部締め付けられるように痛い。側頭部、耳に触ると非常に敏感、そして、残感覚が残る。左右の上下顎大臼歯部の歯痛あり
診査:下顎頭牽引圧迫痛誘発テスト顎関節可動性np、痛み無し 
両側咬筋 肥大+ 硬結+ 圧痛+ 関連痛あり(歯痛再現)
両側側頭筋 筋肥大無し、硬結無し、圧痛++、allodyniaあり 残感覚あり、主訴の両側側頭部締め付けられるような痛みが増悪。
最近、考えをまとめることが出来にくくなっている、短期記憶が欠落することあり、睡眠障害(途中覚醒)などの症状あり。
 
得られた所見を末梢から診断していくと、
  1. 側頭筋、咬筋圧痛、関連痛-筋・筋膜疼痛

  2. 10年来の頭が締め付けられる頭痛-頭蓋周囲の圧痛を伴う慢性緊張型頭痛

  3. 筋圧痛関連痛、残感覚-中枢感作   となりますが、


    以上の診断でこの患者さんの全てを説明出来るか?、「考えをまとめることが出来にくくなっている、短期記憶が欠落することあり、睡眠障害(途中覚醒)などの症状」も含めて考えると、この症例こそ痛覚変調性疼痛そのものという診断にいたりました。  痛覚の変化だけでなく、脳機能そのものが変化しているのだろう、「脳機能変調」が最も状況を的確に表した用語、痛覚変調性疼痛はそのひとつのphenotype(表現形)でしかない。と思うに至りました。
 
 再掲 下記の論文の診断基準です
Chronic nociplastic pain affecting the musculoskeletal system: clinical criteria and grading system
Eva Koseka,b,*  PAIN 162,11 (2021) 2629–2634
筋骨格系の痛覚変調性疼痛の臨床的基準とグレーディング。
1. 痛みは
1a. 慢性的(3ヶ月以上)、
1b. 局所的(不連続的ではなく)な分布( 筋骨格系の痛みは、皮膚ではなく深部性であり、(個別性ではなく)局所性、多巣性、あるいは 広範囲に分布している。)
1c. 侵害受容性疼痛が(a)存在しない、または(b)存在するとしても、その疼痛に完全に起因している証拠がない。
1d. 神経障害性疼痛(a)が存在しない、または(b)が存在する場合、その疼痛に完全に起因している証拠はない。(異なる慢性疼痛状態(例:肩の筋肉痛と膝の変形性関節症)に起因する多巣性疼痛状態の場合、各 慢性疼痛状態や疼痛部位は別々に評価されなければならない。)
 
2. 痛みのある部位に疼痛過敏の既往がある。
以下のいずれか1つ。触覚敏感、 圧覚敏感、 運動敏感、 熱、冷敏感
 
3. 併存疾患がある。
以下のいずれか1つ。音、光、においに対する感受性の亢進、 夜間頻回の覚醒を伴う睡眠障害、 疲労、 集中力の欠如、記憶障害などの認知的問題.
 
4. 誘発性疼痛過敏現象は、痛みのある部位で臨床的に誘発されることがある。
以下のいずれかである。静的機械的アロディニア、 動的機械的アロディニア、 熱または冷感アロディニア、 上記のいずれかの評価後に残遺症状が残ること。
 
痛覚変調性疼痛の疑いがある:1および4。
痛覚変調性疼痛の可能性が高い:上記(1、2、3、4)のすべて。
(変形性関節症などの侵害受容性疼痛や末梢神経病変などの神経障害性疼痛の存在 は、痛覚変調性疼痛の併発を排除しないが、疼痛部位は、同定可能な病態で説明可能な範囲より広範でなければならない。)
 
2023年02月04日 13:11