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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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4月新年度前期の予定

東京はサクラが散って、連日25度近い気温です。
クリニックの向かいにある鹿島ではすがすがさが感じられる新入社員が研修のためにまとまって移動していて、4月だなと感じられます。
4月、いくつかの出来事がありました。
今週デンタルダイヤモンドの担当の方と会って、2023-2024年の二年間、皆さんにご協力頂き、月刊ダイヤモンドに連載した「症例に学ぶ診断マスターへの道」を成書にしたいと言うことで、相談し、8月までに編集し直し9月1日発行と言う事になりました。症例の順番を少し入れ替える程度で、それほど手間は掛からないようです。令和4年の医学、歯学モデルコアカリキュラム改訂で、新たに臨床推論が教育項目に取り入れられました。ところが、ちゃんとした教科書はない状況で、各大学の講義担当者は困っている状況です。教育シラバスを作るのに参考になる内容も加えて発刊できれば良いなと思っています。
もう一つは、6月に久し振りにPhilippines、インドネシアに出かけることになり、セミナープログラムを考えて、昔の講演スライドを探したり、新たなスライド作ったりしています。英語のスライド作りながら、コロナ以来ちゃんと英語しゃべっていないし、ちゃんと話せるのかなと不安が浮かんでいました。その不安が拡がったのかどうか、先週から立て続けに英語しかしゃべれない初診患者さんが2人来て、しばらく英語の練習をしてもらうことになりました。笑ってしまいました。

臨床においては、急性痛治療体制から慢性痛治療体制への意識改革です。私のところを受診する患者さんのほとんどは、病歴3ヶ月以上で慢性痛です。その中で、適切な治療を受けていないために慢性化しているものはちゃんと治療すると改善します。ところが、訴える痛みに相応する身体的異常、治療すべき病態がはっきりしない、あるいは無いという状況があります。この場合には、従来の歯科治療のようにどんどん治療を進めれば改善するのかというと全く的外れです。認知行動療法を柱とする心身医学的対応が必要と言われています。ここで壁が見えます、削る、詰める、被せる、入れると言った従来の歯科治療から心身医学的対応に切り替えられるのか。かなり先進的なプログラムを企画してきたAAOP(米国口腔顔面痛学会)の今年のプログラムを見ても痛覚変調性疼痛とか認知行動療法、心身医学的対応などは見つかりません。否定的ではないでしょうが、切り替えは難しいのだと思います。今後どうやって口腔顔面痛の臨床を心身医学的対応に展開して行くべきか、いよいよ切り替えが迫って来ていると思っています。
2024年04月21日 19:47

顎関節症の本態は身体心理社会モデル

ここ10年、顎関節症の原因が咬合ではなく、心身医学的問題である事が強調され、少しずつ受け入れられてきています。しかし、世界中で咬合が一番大事なんだと、顎関節症の治療のために咬合を変える治療をしている方々もいます。日本各地で顎関節症の治療で有名と言われる方は、大体、咬合治療をしている様です。
以前に、「痛みは脳の中」という巻頭言を紹介したように、痛みは末梢の痛みを感じているところに問題があるのではなく、中枢神経系の問題である事が判って来ています。特に慢性疼痛では中枢神経系が痛みを感じ、さらに心理的要因が大きく影響していると言われています。
ここで紹介する論文は、かつては顎関節症の原因は咬合だと強調していた学会(American Equilibration Society)の機関誌の巻頭言を訳したものです。こんなに変わったんだとびっくりしました。少し長いですが読んでみてください。
CRANIO® The Journal of Craniomandibular & Sleep Practice 8 Mar 2024
Editorial The painful mind  Sanjivan Kandasamy


顎関節症の治療は、ほぼ1世紀にわたって、多くの論争、議論、さまざまな意見が交わされてきた。その論争は、診断だけでなく、病因や適切な治療にも及んでいる[引用文献1]。さらに最近では、睡眠呼吸障害(SDB)が、独自の論争を展開する別の話題となっており、歯科、医療、および関連保健の専門家が、これらの状態の多くの側面について異なる意見を持つに至っている[引用2,引用3]。
睡眠と痛みが双方向の関係にあることを認めることには、ほとんど異論はない。しかし、論争の多くは、顎関節症の病因に関するこれまでの逸話的で根拠のない信念が、現在ではSDBでも同じであり、したがってSDBの管理の多くは、これまでの顎関節症と同じであるという仮定に関連している。
 このような根拠のない病因論的主張は、歯列および骨格の不正咬合の存在、遠心関係の不一致、犬歯の保護咬合の欠如、ブラキシズム、上顎および下顎の後退、狭い上顎、口呼吸、口唇、舌および頭蓋頸部の姿勢の異常など、ほんの数例を挙げるだけでも多岐にわたる[引用1-3]。その結果、多くの臨床家は、顎関節症および/またはSDBに対処するためには、主にこれらの原因の1つまたは複数を取り除く方向に治療を向ける必要があると考えている。
 1970年代のプラセボ試験 [引用文献4-7] や、最近では OPPERA (Orofacial Pain: Prospective Evaluation and Risk Assessment) 試験 [引用文献8-11] と呼ばれる大規模な臨床研究など、エビデンスに基づく文献の登場により、顎関節症治療の焦点は、粗雑な歯科的・機械的モデルから、生物心理社会的モデルへと徐々に移行している。偽薬、非閉塞性口腔器具、模擬平衡などのプラセボ顎関節症治療が、生物学的・行動学的に好ましい反応を示したことから、複雑な心と体の相互関係の存在が理解されるようになった。
やがて、専門家の大半は、顎関節症患者を管理するためのより保存的で可逆的な治療法へと進んでいった。さらに、痛みの調節に関するHenry Beecherの初期の観察[引用12]、MelzackとWallの痛みのゲートコントロール理論[引用13]、痛みの神経マトリックス[引用14,引用15]の概念、プラセボの有効性などの結果、医療と歯科の専門家は、痛みのコントロールの中枢調節またはトップダウンの経路が、痛みの経験を管理するための非常に効果的な本質的メカニズムであることを最終的に受け入れ始めました。
私たちは今日、痛みがどのように処理され、知覚されるかについて、より多くのことを知っている。
また、痛みの慢性化や中枢性感作、顎関節症に対する併存疾患の影響、顎関節症になりやすい人の特徴なども、よりよく理解できるようになった。
 
急性疼痛モデルであれ慢性疼痛モデルであれ、痛みの経験や知覚は認知的・感情的要因に大きく影響される。
この論説は顎関節症そのものに関するものではないが、多くの臨床医が患者の痛み体験の認知的・感情的側面を重視せず、あるいは関与していないことについてのものである。
もし私たちの思考が私たちの感情(そしてやがて私たちの行動)に影響を与えるのであれば、私たちは長い時間をかけて信念体系を構築し、それが最終的に私たちの考え方や日々の対処法に影響を与えることになる。
怒り、不安、恐怖、悲しみなどの否定的な感情とともに、破局視、自分の状況の異常な解釈や意味づけを含む認知の歪みは、人が痛みをどのように受け止め、どのように対処するかに影響を及ぼす重要な役割を担っている [引用16-23]。
多くの臨床医が、スクリーニングのための質問票や/あるいはチェアサイドでのディスカッションという形で、患者の心理的健康について考慮することはあっても、患者が心理的障壁を克服したり、通常の最低限を超えて認知的・感情的にうまく対処できるように手助けしたりするために、実際に患者と一緒に時間を費やしている人はどれほどいるだろうか?
顎関節症の診断や対処法について、エビデンスに基づかない主張を今後もずっと続けていくことになりそうだが、患者の痛みの発生、悪化、持続における心理的要因の役割について、エビデンスに基づいて確立されたことにもっと時間を費やし、日々の臨床に反映させることができるのではないだろうか。 私たちは皆、専門の心理学者や精神科医ではないので、患者の心理的な健康をよりよく管理できるように紹介することは重要だが、これもあまり行われていない。しかし、もし患者が認知的にも感情的にも "トップダウン "で痛み体験をうまく調整できるように手助けをすれば、スプリントを入れたり、錠剤を処方したりする以上に、治療成績がどれほど大きく向上するか想像してみてほしい。さらに良いのは、これらの根本的な影響因子について患者を特定し教育し、認知行動療法(CBT)、リフレーミング、マインドフルネス、リラクゼーション、潜在的にネガティブな行動への気づきなどのスキルを教えれば、患者が自分の痛み体験を管理しやすくなるだけでなく、将来的に苦痛やトラウマを伴う状況に対処しやすくなる可能性がある。 本誌がエビデンスに基づく歯科医療と医学の新たな章に突入する今こそ、エビデンスに基づく心理学的方法を取り入れ、通常の治療を補うことで、治療結果を大幅に改善し、患者が将来痛みと上手に闘う力をつける好機である。私たちは皆、患者さんの辛い心を癒す手助けをすることで、より良い結果を得ることができるのです。
 
 
 
 

 
2024年04月14日 10:23

典型的な顎関節症の症例を解説します

口腔顔面痛、顎関節症の痛み診療の第一歩は患者さんの訴えている痛みの部位、原因を探ることです。口腔顔面痛で最初に勉強すべき非歯原性歯痛は歯が痛いが、原因は別なところにあるという異所性疼痛の典型です。当然のことですが、歯とは別な部位にある原疾患を正しく見つけ出すことが第一歩です。顎関節症の痛みは関節か咀嚼筋かのどちらかで、ほとんどの例で「ここが痛いですね、これがあなたの訴えるいつもの痛みですか、そうです、そこの痛みです」と確認する事が出来ます。これが顎関節症の診査、診断の第一歩です。
最近診た典型的な症例を紹介します。
症例:60歳女性、内科医師 右側顎関節の痛み、開口障害と開口時下顎の右側偏位
現病歴:半年前に、突然の開口障害と顎運動時の右側顎関節部の痛みが生じ、知り合いに顎関節治療で有名な歯科があるとのことで、少し遠いところであったが通院を続けていた。治療は夜間は重合レジンの全歯接触型のスプリント装着、上顎左側に入っていたセラミックを外してレジン製の暫間クラウンを装着し、2週毎に咬合を高くしたり、低くしたりの調整。初診時に比べると痛みの種類が変わり、顎運動時の痛みはいくらか弱くなったが、持続痛があるとのこと。この数ヶ月は治療にも関わらず、症状に変化が無くなったところで、これで終了と打ち切られたと言うことであった。
当クリニック初診時診査結果:右側下顎頭滑走制限、牽引圧迫誘発テスト痛みなし、右側咬筋、側頭筋の肥大+ 硬結+ 圧痛+、患者の訴える持続痛は咬筋の痛みであった。 
歯ぎしり+(左右茎状突起圧痛+)、くいしばり+(自覚あり、頬粘膜歯の圧痕+)、Hypermobilityあり、睡眠障害あり、起床時くいしばりの自覚あり、書類記載時のかみしめの自覚あり。
既往歴:20歳代から左右顎関節のクリックが気になっていた。以前に開口障害が生じたことあり、40歳代に矯正治療を受けてから開口障害は起こっていなかった。
診断:半年前の突然の開口障害と顎運動時の右側顎関節部の痛みは右側顎関節の非復位性円板転位による開口障害と関節滑膜炎による運動時痛であった。半年の経過中に滑膜炎は改善したが、非復位性円板転位による下顎頭の滑走障害がつづき、開口障害と開口時右側偏位が続いている。
原因推定:体質的なHypermobilityに歯ぎしりが加わったことによって生じた両側関節円板転位、これは20歳代に発症し、今も転位のまま。途中で復位性円板転位から非復位性になりクローズドロックによる開口障害生じていた。記憶による矯正前は左側の関節痛であった。
顔貌、口角のズレ等から推定すると、元々は左側偏咀嚼であるが、現在の患側は右側である。歯ぎしり、くいしばり等は左右均等に負荷が掛かり、プラスアルファーの負荷である偏咀嚼が症状側を決めるので、現在の咀嚼側は右側のはず。40歳代の矯正以来、嚙み癖が左側から右側に変わったようである。何故かというと下顎側方運動時の犬歯の側方ガイドが急角度過ぎて、左側咀嚼の顎位をとってもらうと犬歯のみが接触して臼歯部がすぐに完全に離解しています。これでは左側で咀嚼出来ません。一方、右側咀嚼の顎位では犬歯のガイドに適度な遊びがあり、その間、臼歯部の接触が保たれ、その後に離解する。つまり、右側では咀嚼出来るが左側では咀嚼出来ない状況になっていた。矯正によって出来てしまった側方運動時の臼歯の離解の差によって、右側偏咀嚼が続いていると思われた。
治療方針、患者への指導:上記の診断、推定原因を患者に説明し、右側咬筋への負担を軽減し、咬筋痛改善のために、左側咀嚼を心がけてもらう、開口ストレッチアシストブロックを用いて右側偏位しない30mm程度の開口ストレッチを30-60秒、1日3回(朝、昼、夕)を実施してもらう。右側下顎頭の滑走障害改善のために、開口練習ではなく単純に左側側方運動をしてもらう(右側下顎頭に触って、動くことを確認しながら、滑走量が増えるように左側側方運動をしてもらう)ことを指導した。
ここで、発症要因について、発症前後に生活状況で普段と変わったことがなかったかを質問した。上記の病態の診査診断、および原因の推定に納得したようで自身のプライベートな事も話し始め、父親が無くなり、遺産相続のトラブルがあったこと、留学中の息子さんが戻ってきたことなど、また、自身の仕事に関するストレス等を話してくれた。どうも、これらのストレスが睡眠障害を来し、歯ぎしり、くいしばりを増悪して発症したものと考えられた。
今後、治療経過を報告する予定です。
 
2024年04月03日 19:46

筋痛も自己治癒能力で改善 自己治癒能力を邪魔しない生活

口腔顔面痛、顎関節症でもっとも多い病態は筋痛です。アゴの筋痛は肩こりの延長のようなもので、肩こりがそうである様に慢性的な症状である反面、自然に収まる症状でもあります。重いものを持ったり、不自然な姿勢を強いたりすると肩こりが強くなるように、アゴの筋の凝りも何かに集中したときにかみしめたり、片方だけで咬んだりしていると筋が鍛えられて大きくなり、そこに何か筋緊張の原因が加わる事により筋が収縮し過ぎて凝りができて筋痛が発症します。
肩こりがひどいからと言って不安になるひとはいません、熟睡出来て、日中も過度に緊張しない、そして肩を動かしたり、ストレッチすることにより自然に収まってきます。アゴの筋痛も、アゴを強ばらせない、固いものを食べないなど、アゴに負担を掛けないようにしていれば自然に収まってきて、病院に行く必要なんてありません。
人間には本来、自己治癒能力があって、健康な身体では一週間もすると傷が治っていくように、身体の不具合の多くが収まっていきます。ところが、かつては「規則正しい生活」と言われていた“健康3原則”(調和のとれた食事、適度な運動、十分な休養・睡眠)から外れた生活をしていると、自己治癒能力が下がってしまい、例えば傷の治りが遅くなるように、肩こりなども治りにくくなってしまいます。アゴの筋痛も同様です。
健康の3原則から外れた生活をすると、いろいろな病気になってしまいます、いわゆる生活習慣病です。6大生活習慣病とは、肝硬変、糖尿病、高血圧性疾患、慢性腎不全、急性心筋梗塞、脳卒中が挙げられています。健康の近年、睡眠と生活習慣病との関係が指摘されていて、睡眠不足が、肥満、高血圧、循環器疾患、メタボリックシンドロームを発症させる危険性を高めると言われています。
痛みの研究でも、最近、慢性疼痛と睡眠障害の関連が注目されています。熟睡出来ない、途中覚醒が多い、早朝に覚醒してしまうなどの状況では、痛みの感じ方が強くなると言われています。痛み治療の一つとして睡眠改善が必要ですが、睡眠が悪い人の多くは単純にストレスが多いだけではなく、その元になる生活全般に色々と問題があることが多く、その改善は簡単ではありません。
私の診療では、毎回、睡眠状況はどうですかと聞くことにしています、アゴの痛み、歯ぎしりしている事やくいしばっていることが睡眠と関連していることを知ってもらうためです。そして、アゴのことから、自分の睡眠状況を改善する糸口を見つけてもらい、健康原則に沿った生活をおくってもらいたいと思っています。
 
2024年03月31日 21:21

痛い歯を抜いたら、その前の歯に痛み

今週の患者さんを診て、改めて驚きと苛立ち
今週の初診患者さんを診て、その解釈モデルに驚くとともに、修正することなく、さらに増悪させた歯科治療にいらだちを感じました。
70歳の女性患者さん、上下顎とも残存歯は前歯部のみ、臼歯部は痛みのために抜いたのだと言う事でした。抜いたらそこにあった痛みは消えたが、残っている下顎左右犬歯部に痛みが生じた。これも抜けば痛みが治るだろうから、抜きたいと主治医に頼んだが抜いてくれない。そのようなやりとりをしている間に娘さんが非歯原性歯痛という話しを見つけて、当クリニックに来院。
数年前に仕事を辞めて、転居した頃に発症して以来の歯痛だそうです。その頃、どれ位歯が残っていたのか不明ですが、相当数の抜歯をしたようです。歯痛発症以来の主治医は、抜歯をするほどに歯には病気はない、抜歯には反対だと言っていたそうです、しかし、患者から懇願されて抜髄した、しかし痛みは止まらない。いったん不可逆的な治療を始めてしまうと、歯止めが外れて、隣の歯も、その隣りも抜髄、そして、終着は抜歯です。その主治医は何とかして抜歯は避けたいと思い、大学病院を紹介したそうです、大学病院なら、知識と技術、そして権威により抜歯が必要でないことを話して、解釈モデルをすり合わせてくれるだろうと期待したのだと思います。ところが、大学病院ではあっさりと患者が訴える歯を抜歯してくれたそうです。初診の日に抜歯の予約が決まり、次の受診で抜歯だったそうです。抜歯により痛かった歯がなくなり、そこに感じていた痛みは消えたそうですが、残っている歯が同様に痛くなりはじめてしまった。解釈モデルでは抜いたからそこの歯の痛みは消えたとなっていて、抜いたことは全く悔やんでいませんでした。そればかりか、新たに痛くなった歯も抜けば、痛みが消えるかもしれないと思っています。
診査の結果、咬筋と顎二腹筋の筋・筋膜疼痛による関連痛としての歯痛でした。しかし、歯が悪いから歯が痛いんだという解釈モデルこの診断にすり合わせるのが大変でした。次回は解釈モデルが何処まで変化しているか、やっぱり歯を治療してくれと言われる可能性があることは想定済みです。解釈モデルを筋肉の緊張による痛みであることにすり合わせて納得してもらい、筋緊張防止と筋ストレッチレットのセルフケアを指導して実践してもらい、トリガーポイントプレッシャーリリースなどの専門的な治療も行って行く予定です。患者さんが痛い歯が原因ではなく、自分のくいしばり、かみしめたことにより筋肉の問題である事を納得してもらうことがスタートポイントです。
 
2024年03月28日 15:07

アンガーマネジメントとWISERモデル「5つのステップ」

日本口腔顔面痛学会主催の外傷性三叉神経ニューロパチーのシンポジュウムが行われ、大阪歯科大学の佐久間先生がコンフリクトマネージメントの話をされました。 コンフリクトマネージメントに関連して、まずは、その中核をなすアンガーマネージメントを具体的に解説している、ハーバード大学から提案されているWISERモデル「5つのステップ」を紹介します。
アンガーマネージメントという言葉は皆さんご存じの事と思います。
「アンガーマネジメントの6秒ルール」、腹立たしい気持ちが強くなったときに、6秒間だけ、その気持ちを表に出さないように我慢することです。 腹が立って、きつい言い方をしたくなったら、こころの中でゆっくりと1から6まで数を数えてみましょう。 怒りの気持ちは、海岸に打ち寄せる波のようなもので、一時的に高い波が来ても、次の波は平波になるように、怒りも納まっているという事です。これは医療の場だけでは無く、家庭内、職場など何処でも共通して使えることです。
6秒ルールの中味をもう少し理論的に説明しているのが、ハーバード大学から提案されているWISERモデル「5つのステップ」(Watch観察、Interpret解釈、Select選択、Engage実行、Reflect振り返り)です。
引用元:Robert Waldinger、Marc Schulz、児島修(訳)『 THE GOOD LIFE 幸せになるのに、遅すぎることはない』(辰巳出版、2023)
怒りなどの感情は、特定のストレス要因(他人の言動などの出来事)が感覚を刺激し、それに対する反応として引き起こされます。怒りの感情が湧き上がった際に、まず「ギアを1つまたは2つ下げて」反応スピードを遅らせることから始めます。患者さんのキツい言葉に、売り言葉に買い言葉的に瞬時に反応して言い返すのではなく、ジッと言いたいことをのみ込んで、対応を考えるのです。その一言による後々の騒動を考えて、今、口から出そうになっている言葉をかみ殺しながら色々考えてみましょう。
WISERモデル「5つのステップ」
Step 1. Watch(観察──心の一時停止ボタンを押す)
 私たちは強力な感情に遭遇すると、すぐに反応したいという衝動に駆られます。しかし、この衝動はパターン認識や一般的な印象に基づいていることがほとんどで、十分な情報を持ち合わせないままの性急な反応は、往々にして望ましくない結果をもたらします。ある感情にうまく対応したければ、まず一呼吸置き(深呼吸がお勧め)、何が怒りの感情を引き起こしたのかを理解する必要があります。「心の一時停止ボタン」を押し、状況全体(環境、相手、自分自身)を見つめます。好奇心を発揮させるのがコツ、と著者らは述べています。このように、アンガーマネジメント・3つのコントロールの第1段階「衝動のコントロール」が、WISERモデルでも重要視されているのは非常に興味深いところです。

Step 2. Interpret(解釈──大切なものを見極める)
 その出来事がなぜ起きているのか、自分にとって何を意味するのかを考えます。私たちは状況全体を既に理解していると思い込みがちですが、実際には、その瞬間に脳が意識的に捉えることができた、非常に少ない情報を基に動いています。この段階では、「(この状況下での)私の思い込みは何だろう」と自分に尋ねることが効果的です。著者らは、「この解釈のステップ2で重要なのは(出来事に対する)自動的に生じる第一印象を超えて、理解を広げ、深めること」と示しています。 そして、怒りの感情の源となった(自分にとって)重要な要素の把握に努めます。そもそも怒りの感情が湧いてくるのは、自分にとって重要な何かが起こっているサインだからです。

Step 3. Select(選択──さまざまな可能性を探る)
 状況をしっかり観察し、解釈して視野を広げた後、その状況において自分が目指すべきより望ましい結果(目標)と、その達成に向けて利用できる選択肢を明確にします。重要なのは対応策を反射的に選択するのではなく、「意図的に選択すること」とされています。

Step 4. Engage(実行──トライするなら慎重に)
 その状況の改善に最善と考えて選択した対応策を、適切なタイミングで、できる限り上手に実行します。どんな状況でも、熟考された行動は感情に流された性急な行動より有益なはず、と著者らは述べています。

Step 5. Reflect(省察、振り返り──反省は役に立つ)
 選択した行動の結果、「何が成功し、何がうまくいかなかったか」「自分の対処法について何を学んだか」「この戦略はうまくいったか」「今後実践できることを学んだか」などを事後に振り返り、将来の行動に役立てます。
 著者らは、健全な人間関係を築くためにWISERモデルで重要なのは、「出来事への反応をできるだけ遅らせ、これまで完全に自動的だった感情的な反応から、自分が何を達成しようとしているかに合わせて、より考慮された目的のある反応に移行すること」としています。
 
この文を読んで、怒り心頭の時にそんなに冷静に考えられるかと思われる方は、とりあえず「6秒ルール」で、じーっと我慢しましょう。そのような場面が何回もあったらたまりませんが、2回目は少し落ち着いて、第三者的に怒っている自分を俯瞰的にみてみましょう。WISERモデル「5つのステップ」(Watch観察、Interpret解釈、Select選択、Engage実行、Reflect振り返り)が思い浮かんでくるかも知れません。
 
2024年03月13日 08:38

慢性疼痛に関する話題 痛みを和らげる手法を探す

現在の慢性疼痛の治療の流れは最終的には痛みがゼロにならないから、残った痛みは患者さんに受容してもらい、ADL、QOLの向上を目的に、言わば軟着陸するための手法として認知行動療法が勧められています。慢性疼痛にはまだまだ判らないことがいっぱいあり、ゼロにならないにしても、できる限り痛みを和らげる手法を探そうと思います。
ここでは慢性疼痛に関する最近の話題をいくつか概説します。
1)何故、急性痛が慢性疼痛に移行するのか、2)ストレス等によって何故、慢性疼痛の強さ、感度が変動する、3)睡眠不足だとどうも痛みに敏感になってしまう、何故だろう、等など、いろいろな疑問があります。
  1. 急性痛が慢性疼痛に移行のメカニズム
昔から、炎症反応は防御的、合目的反応であると言われて、それは急性期の炎症反応を抑制するためと考えられてきました。最近になり、この反応は急性期のことだけでは無く、慢性疼痛への移行を防ぐ作用もあると考えられるに至っています。
急性の腰痛でNSAIDsを服用すると慢性疼痛に移行する可能性がある、また、腰痛に対してNSAIDsを長期も服用していると慢性化しやすいという論文があります。そして、OPPERA-TMD研究でも実際の患者さんで同様の傾向があることが示されました。結論として、運動器痛の急性期における炎症反応のアップレギュレーションが、慢性疼痛の発症に対する防御機構として重要であり、炎症反応をNSAIDsで抑制してしまうと好中球におけるある種の遺伝子発現量が少なくなることが、その理由だろうと言われています。一般に鎮痛に使われる薬の中でNSAIDsは抗炎症作用を持つのに対してアセトアミノフェンは抗炎症作用が無く、急性期における炎症反応のアップレギュレーションを抑制しないので、慢性疼痛移行への防御機構も阻害しないようです。NSAIDsは使わない方が良いのではと言う議論になりますが、それよりも、炎症反応のアップレギュレーションの際の好中球におけるある種の遺伝子発現量を高める方法を検討すべきと言うことで研究が進んでいます。
別な研究によると、急性疼痛から慢性疼痛への移行する背景には、Toll-like receptor 4 (TLR4)と呼ばれるゲートウェイ受容体が関連している可能性を報告しています。神経を含めた組織の傷害があると炎症が起こり、自然免疫のシグナル伝達が活性化されます。有害な刺激、ストレス、組織傷害、特にマイクロバイオームや消化管の傷害に反応して、炎症細胞から刺激物質を放出します。 これらの刺激物質の多くが、Toll-likeレセプターを刺激するということです。
TLR4を活性化することによって、強い痛みは引き起こさないが、中枢免疫系を刺激して神経系を感作する可能性があるとされています。つまり、神経系に慢性疼痛への移行を促進するカスケードを形成すると言うことです。
また、2)例えば食生活の乱れや心理的ストレスがあると、神経系にカスケードの反応を高める多くの受容体やチャネルが強発現し、痛みカスケード全体の流れが増強される可能性があると言われています。この結果、痛みを引き起こすというよりも、閾値が下がり反応しやすい状態になると言うことです。
3)睡眠障害と痛みの関連性 睡眠障害と痛みの関連性は隠れたトピックで重要な研究がいくつか出されています。これは続編で書きます。
 
2024年02月27日 09:11

末梢神経障害の分類の変遷 臨床との関連を求めて

神経損傷分類まとめ
末梢神経障害の分類の変遷 Seddon分類、Sunderland分類からBirch and Bonney 分類まで
これまで数回末梢神経傷害の分類について書いてきました。いずれも臨床的有用性が低いこと、臨床的関連性は説明出来ませんという論調です。世界は広く、長い歴史の中でそのような考えは多くの方が持っていたようで、今回納得の話しを書きました。    
 wajima-ofp.com/blog_articles/1678969421.html   
 wajima-ofp.com/blog_articles/1673068431.html
歯科では、智歯抜歯やインプラントの偶発症として生ずる下歯槽神経、舌神経の神経障害が身近な問題であり、最近は下顎骨の狭小化により智歯抜歯による舌神経損傷、インプラントの普及による下歯槽神経損傷が世界的に増加傾向にある。末梢神経損傷の組織、病理分類として、必ずSeddonの分類、Sunderlandの分類が用いられるが、臨床的に有意なものかどうかと言う点では疑問がある。要は臨床の場における神経損傷は複雑な病態、様々な損傷程度が入り交じっていて、多くの症例は本稿の最後に挙げるMackinnonにより追加されたSunderland分類Ⅵに相当すると考えられる。Seddon、Sunderlandの細かな分類は神経障害の組織、病理的研究の基準であって、臨床における神経障害の程度や回復経過の説明のために作られたものではないと思っている。そのため、後年の研究者達は臨床を念頭に様々な改変、追加を行っている。最たるはBirch and Bonneyによる、非変性神経損傷と変性神経損傷の区別である。
神経損傷の分類に関する現在の理解の基礎は、英国Oxford大学Nuffield校整形外科学教授だったSeddonが神経損傷例を基に発表したSeddonの分類(1942)にある。
Seddonは当初英語での分類を考えたが、同僚の神経内科教授Henry Cohenの曖昧さを避けるためにギリシャ語使用の提案を受け入れて、ギリシャ語での分類となった。Neurapraxia (Transient block:一過性ブロック)、Axonotmesis (Lesion in continuity:軸索連続性の病変)、Neurotmesis (Division of a nerve:神経線維の断裂)
それから約10年後、オーストラリアMelbourne University解剖学教授で後に学部長になったSir Sydney Sunderlandによって、Sunderlandの分類(1951)が出された。彼は、現代の医師はギリシャ語を理解できないだろうとの予測と、末梢神経損傷例の長期研究の後に、神経鞘の段階的障害に基づいて番号による分類を提案した。Sunderlandタイプ I がSeddon分類のNeurapraxiaと同等であることに言及しているが、SeddonのAxonotmesis 、Neurotmesisとの比較は明確にしていない。神経鞘の破壊が大きくなると再生中の軸索の「交差配線」が生じる可能性があるということで、後年の比較表ではSunderland classⅡがAxonotmesisと同等でありであり、神経内膜損傷以上の損傷であるClassⅢ-ⅤがNeurotmesisに相当すると考える説がある。 和嶋の誕生年でした。
1988年、末梢神経外科の専門家であるLundborgは一見無害に見える神経への損傷による臨床症状の違いを理解するのに役立つ生理学的伝導ブロックの概念を提案し、Neurapraxiaと Sunderlandタイプ Iの部分を短時間回復のtype Aと数日から数週以内回復するtype Bに分類した。
1989年、カナダの末梢神経外科医であるMackinnon女史がSunderland分類の最後にClassⅥとしてSunderland分類の複数のタイプを組み合わせた混合タイプを追加した。この分類スキームは、神経損傷の臨床的診査所見や回復過程と合致するものである。
1991年、神経損傷の理解に多大な貢献を果たした英国のBirch and Bonneyが、臨床的観点から非変性神経損傷と変性神経損傷に区別することを提案しました。要は、障害軸索がワラー変性を起こすかどうかという臨床に密接に関連する相違に基づいての分類である。
ということで、最後の分類は非常に臨床的で神経障害が治るか、治らないかの分類でした、そして、治るのは最も軽度のSeddon分類のNeurapraxia  Sunderland分類のClassⅠのみです。
2024年02月11日 14:50

帯状疱疹ワクチン テレビコマーシャル

この頃、テレビで50歳以上の人への帯状疱疹ワクチンのコマーシャルをよく観ます、それにはしっかりした理由があります。
それは、子供への水痘ワクチン接種が普及して、子供の水痘がほとんど無くなったことに起因しています。従来は、家庭で子供、孫の水痘発症が帯状疱疹抗体価が下がってきた両親、祖父母で抗体増加のブースター効果を発揮して、両親、祖父母の帯状疱疹発症を予防していました。ところが、近年の水痘ワクチン接種によって子供の水痘発症が無くなったことにより、両親40歳代、祖父母50歳以上での帯状疱疹抗体増加のブースター効果が発揮されなくなり、抗体が上がること無く、帯状疱疹が発症してしまう事が増えています。
高齢で帯状疱疹を発症すると、60歳以上では約半数で帯状疱疹後神経痛に移行すると言われていて、現在は都合の悪い状況になっています。帯状疱疹自体が非常に痛そうですが期限があります。ところが帯状疱疹後神経痛は神経障害性疼痛であり、終わりが見えない慢性の痛みです。三叉神経領域でも顔面、口腔内に発疹する帯状疱疹が多く、中には顔面神経にも罹患し三叉神経の帯状疱疹後神経痛と顔面神経麻痺の後遺症が出る人がいます。非常に大変です。
現在、50歳以上の人には帯状疱疹の予防接種が出来る様になっています。
ワクチンには二種類あって、従来から用いられていたのは子供向けの水痘予防生ワクチン(一回7-8千円)、もう一つは、組み換え帯状疱疹ワクチン(一回2万円を2回)です。費用は地域によって公的補助金が出るところがあります。
この二つのワクチンの有効性に関する論文があります。単純には 組み換え帯状疱疹ワクチンの有効性が圧倒的に高いです。
生ワクチン
帯状疱疹の発症予防の有効性は、時間とともに減弱していた。接種後30日以上1年未満には67.2%(95%信頼区間65.4-68.8%)だったが、1年以上2年未満には49.6%(47.4-51.7%)に、10年以上12年未満には14.9%(5.1-23.7%)まで低下していた。
 帯状疱疹後神経痛予防については、接種後30日以上1年未満が83.0%(78.0-86.8%)で、10年以上12年未満には41.4%(16.8-58.7%)だった。
 
組み換え帯状疱疹ワクチン
接種後の期間別にみた帯状疱疹予防有効率は以下のとおりであった(1回接種の有効率vs.2回接種の有効率)。
【30日後~1年未満】70% vs.79%
【1年後~2年未満】45% vs.75%
【2年後~3年未満】48% vs.73%
【3年後以降】52% vs.73%
 
費用対効果、何回注射を受けるかを考えると、組み換え帯状疱疹ワクチンが良さそうですね。
2024年02月05日 21:00

顔面非対称 口角のズレ

このブログは口腔顔面痛を主体としたものですが、その中に筋・筋膜疼痛の関連で、2021年10月13日に書いた「顔面の非対称は噛み癖で起こる」という記事があり、なぜか、この頃よく読まれています。痛みの専門医がなぜ顔面の非対称なのかと思われる方がいると思いますが、顔面の筋障害つながりです。
口腔顔面痛のなかで最も多い咀嚼筋の筋・筋膜疼痛は慢性痛であって、数日の負担過重で起こるのでは無く、何ヶ月、何年も負荷が掛かって生じます。どんな負荷が掛かるのか、ご飯の食べ過ぎや固いものを咬みすぎで咀嚼筋が大きくなったのかと思われがちですが、そうではなく、咀嚼筋への一番の負荷は日中、就寝中のかみしめ、くいしばりです。これによって両側の咬筋が均等に強化されます。ここに偏側咀嚼という片側だけに負荷をかける要素が加わります。科学的にエビデンスは弱いのですが、人間はどうも赤ちゃんの時から片側、それも左側で咀嚼するようになっているようです。この偏側咀嚼がかみしめ、くいしばりに加わり、偏咀嚼側の咀嚼筋への負荷が一層増し、症状発症の限界に近づきます。この状況に歯科治療で長時間開口していたとか、固いものを食べたとかの発症因子が加わり、症状発症限界を越えて痛みが生じます。いったん生ずると限界が下がってしまうので、少々の安静、負荷の軽減では症状は改善せずに慢性化してしまいます。これが筋・筋膜疼痛発症の簡単な解説です。
顔面非対称に直接関連するのは咀嚼筋では無く表情筋なので、咀嚼筋が大きく変化しても、顔面非対称とは関係ないはずなのですが、そうではないのです。
咀嚼筋は三叉神経支配で表情筋は顔面神経支配と神経支配が違って、咀嚼筋はその名の通り咀嚼、咬むために働いている筋肉であるのに対して、表情筋は口唇、口角、眼瞼を動かして顔の表情をつくる筋肉です。ところが、咀嚼の際は機能的共同運動として表情筋も活動します。左側でガムを咬んでみてください、意識しないのに左側の表情筋が緊張して左側の口角が引かれます。咀嚼の際に一番大事な機能的共同運動は、表面から見えないが、頬粘膜の緊張に関連する頬筋の活動です。頬筋は安静時には弛緩しているが、咀嚼時に緊張して、頬側、外側に壁を作って食塊を歯に載せる作用をしています。ところが、この頬筋はかみしめているときにも緊張しています、従って、日中、就寝中にかみしめ、くいしばりしている時に咀嚼筋と共に緊張しています。かみしめているときに頬粘膜を緊張させて歯面に押し当てているので頬粘膜に白い線が出来る理由です。
ネットを観ると表情筋を鍛えようというコマーシャルがいっぱいありますが、かみしめている人は鍛えるのでは無く、如何に弛めるかが課題だと思います。
このようにかみしめて表頬筋を普段から緊張させている人が習慣的に偏側咀嚼すると咀嚼側の表情筋が緊張して口角が咀嚼側に引かれてしまいます。筋肉は両端(起始、停止)が骨に付着して、筋緊張により骨を動かすのですが、表情筋は顔面後部で骨に付着し前方で口輪筋に停止して口唇を動かすように出来ています。そのため、偏側咀嚼の人の口角は咀嚼側に引かれています。また、咬筋の緊張と眼輪筋の機能的共同運動によって咀嚼側の目が垂れ気味になります。本人は毎日観ている自分の顔なので非対称も自然に見えるので、気にしていないことが多いです。テレビに出演されているアナウンサーや女優さん、男優さんにも口角が引かれて、片側の目が小さい、垂れている人が多く観られます。「片側だけで咬んでいるともっとひどくなりますよ、早く、何時も片側だけで咬んでいることに気づいて、反対側で咬むようにしましょう」と言いたくなります。

顔面非対称、口角の引かれ、の自己診断法
1.鏡に正面に向かって、アゴを引いて下を向く、上にのぞき込むように鏡で左右の口角の位置を確認する。口角の位置、頬の盛り上がり、ほうれい線の凹み具合、これだけで左右非対称が判る人もいます。
2.そのままの体制で、イーッと言ってみましょう、口角がさらに引かれます、非対称な人は口角の位置の左右差が一層大きくなります。以上の方法で口角のズレ、顔面非対称が確認できます。
表情筋の詳しい知識等は2021年10月13日の「顔面の非対称は噛み癖で起こる」を参照してください。
 
2024年02月05日 12:22

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