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原因不明の歯痛、顔の痛みに慶應義塾大学における永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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筋痛治療の基本

筋痛治療
筋痛治療の基本
筋痛治療は原因療法と対症療法からなります。
咀嚼筋痛発生の原因は夜間、日中のくいしばり、かみ締めが大きな要因で、左右の症状側を決めるのは偏咀嚼です、時々、バランシングコンタクトという咬合異常があることが症状側を決めることがあります。そして、発症のきっかけはストレスが加わる事による睡眠障害、くいしばり、日中考え事してのかみしめ、の流れだと思っています。
原因療法は夜間、日中のくいしばり、かみ締め、偏咀嚼による過剰負荷の予防、そして、ストレスの軽減です。発症後は増悪因子の除去になります。
具体的には睡眠障害への対応、これは難しい。日中の対応として、無意識にかみしめをしているものとして、そのかみしめを自覚的な、肩の上げ下げ、舌で口腔内舐めてみることの随意運動により中断させる作戦です。無意識にやっている行動をしないようにと言っても、止めることはできません。肩を持ち上げている、かみ締めているという無意識の過剰活動に対して意識した行動をすることにより、その不随意的活動を邪魔しようという事です。負荷の軽減のためには症状の無い側で軟らかいモノを咀嚼してもらいます。
ここまでが過剰活動の中止、過負荷の防止策です。
多くの過剰活動が発症前から日常的に行われていることが多く、発症の準備因子と理解出来ます。
準備因子による負荷の総和が筋肉の耐久閾値を超えると筋痛が発症すると考えられ、発症閾値を超える活動が発症因子と呼ばれます。この発症因子の多くが情動ストレスだと思っています。多くの人にとっては過ぎたことで、思い出したくないことが多いので、聞いてもはっきりしないことが多いです。発症因子は過ぎたことなので治療対象にはなりませんが、なぜ発症したかのストーリーの主役ではあります、なぜ発症したかが判ることにより、患者の治療への動機づけになります。
次は対症療法です。基本は治療対象は筋全体ではなく、過剰活動により収縮して固まったまま残された病気のシンデレラをどうやって助けるかです。収縮して固まってしまった運動単位、トリガーポイントの回復にはストレッチです。脚のこむら返りと同じです、むら返りして異常収縮している筋を伸ばすのです。それではストレッチは、どれくらいの強さで、どれくらいの持続期間、一日何回、毎日か隔日かの質問が出ます。
強さは痛みが出るほど強くストレッチすると揉み返しのような遅発筋痛が生じますから、余り強くなく、筋が引っ張られているが物足りなく感じる程度にしましょう。持続時間は30秒、回数は1日3回朝昼晩としましょう、忘れないために毎日やりましょう。
咀嚼筋の筋・筋膜疼痛でも、頸部の筋ストレッチを準備運動のように行いましょう。左右の前頸部の胸鎖乳突筋、後頸部の僧帽筋、頚・頭板状筋と半棘筋のストレッチを行った後に開口ストレッチです。自力最大開口量を頸部のストレッチを行うと後で比較すると、頸部筋ストレッチの後が2-5mm増加します。つまり、頸部筋ストレッチにより咀嚼筋の緊張改善が得られると言う事です。
開口ストレッチをどのように行うかのエビデンスはありません。30秒開口したままは結構辛いです。UCLA Merill教授には舌尖を切歯乳頭につけたまま最大開口して6秒維持を6回繰り返す方法を教わりました。6*6で36秒だから30秒に近似しています。以前は3横指開口ということで指三本入れて、指で顎を30秒間、支えるように指導していました。ところが30秒の間に前歯が指に食い込んで、痛くないように顎に力が入ってしまい、場合によっては開口筋に閉口筋も収縮して顎を保持しようとする共収縮が起こってしまうことが判りました。この共収縮の高まりが筋緊張の隠れた犯人でした。せっかくストレッチと思っても、逆に顎を緊張させてしまうのでは本末転倒、そこで考えたのが発泡スチロールで作った開口ストレッチアシストブロックです。和嶋オリジナルです。
https://wajima-ofp.com/blog_articles/1634341834.html
ここまでが筋痛治療の治療です。全ての筋痛患者さんに初診時に指導します。3-4週間後にはかなり筋痛が改善している事多いです。おそらく、慢性化していない場合には改善するのでしょう。
過労に倒れたシンデレラも入院するほどではなく、少し休養をとって、お風呂でゆっくりカラダを延ばすと回復してきます。ところが重症な場合にはこれだけでは治りません。王子様の登場が必要です。筋痛治療のプラスアルファは次項で書きます。
 
2022年09月19日 16:50

筋・筋膜疼痛(トリガーポイント)とは

口腔顔面痛のなかで最も多い病態は咀嚼筋、頸部筋の筋・筋膜疼痛と言われています。
筋・筋膜疼痛の診断が難しい理由は、第一に異所性疼痛であることです。原因の筋に痛みを呈さず離れた部位、例えば歯に痛みが感じられ非歯原性歯痛となります。これについては「非歯原性歯痛は異所性疼痛 痛みが正しく診断されない理由
https://wajima-ofp.com/blog_articles/1658749560.html
に記載してあります。
第2には痛みの元であるトリガーポイントを見つけ出すことが難しいことです。筋触診の熟練が必要です。
かつては、赤色で示される筋肉に索状硬結、トリガーポイントが出来る事により痛みが生ずると言われていましたが、近年はその赤い筋肉を包む筋膜(Myofascia)あるいはFascia と呼ばれる部分の痛みだと言われています。

この病気は全身のあらゆる筋膜の異常で起きる可能性があります。しかし、線維筋痛症と違って、全身に同時に痛み、しびれ等が生ずる事はなく、基本的には局所性で肩、首、顔面など特定の部位、若しくはその複数の部位に生じます。腰痛などでも第一の原因で、珍しいものではありません。

筋・筋膜疼痛の原因は多数ありますが、基本的には重いものを持ったり、長時間の同じ姿勢、筋肉に負担のかかる姿勢を続けたりなどによる筋膜のへの過負荷が大きな原因です。
索状硬結、トリガーポイントの様に筋膜の一部に痛みの原因が生ずる原因として、シンデレラ仮説があります。筋肉が収縮活動するときに全体が一緒に活動するのではなく、運動単位ごとに活動することが判っています。まず、最初に活動する運動単位があり、力を入れようとするにしたいが同心円状に活動単位が増えていきます。そして、力を弛めるときには最後に活動に加わった運動単位から活動を停止していき、最後には最初に活動した運動単位だけが残り、その運動単位の活動停止による筋活動の終了になります。最初に運動開始した運動単位は最初から最後まで活動してた、働いていたと言う事で物語のシンデレラ(姉妹の中で一人だけ朝から晩まで働きどうし)にたとえられて、このような筋活動の活動順位にシンデレラ仮説と名付けられています。和嶋仮説では、このシンデレラが過負荷により病気になったのがトリガーポイントではないかと言うことです。
咀嚼筋では夜間、日中のくいしばり、かみ締めが大きな要因で、左右の症状側を決めるのは偏咀嚼です、時々、バランシングコンタクトという咬合異常があることが症状側を決めることがあります。そして、発症のきっかけはストレスが加わる事による睡眠障害、くいしばり、日中考え事してのかみしめ、の流れだと思っています。

筋・筋膜疼痛の診断は熟練が必要です、決め手は筋触診です。触診法を習得するには、まさにHands-onでなければ伝わりません。なぜならば、トリガーポイントはレントゲン、MRI、血液検査など一般的に行われる検査では目で見える結果として現れないためです、また、エコーでも診断できません。筋・筋膜疼痛の診断はあくまで問診・筋触診による評価を十分に組み合わせて診断していきます。
治療法については次項に書きます。
 
2022年09月19日 12:21

解釈モデルと医療者が考えた病気のストーリー

今日のテーマは解釈モデルと医療者が考えた病気のストーリー
解釈モデルとは患者さんが自分の病気について考えていることです、患者さん自身の病気とはいえ、その理解は正しいとは限りません。しかし、我々治療する側としては患者さんが自分自身の病気についてどう考えているかについての情報を得ることは非常に大事です。
この解釈モデルにうまくかみ合う概念として、医療者側の解釈モデルとでも言うか、解釈モデルとうまく噛み合うこととして、私自身が考えているのは、医療者の考える患者さんの病気のストーリーを作るべきと考えています。
医療面接を終え、一通り診察をし、いろいろ検査をして患者さんの病気の診断がつきます、医療面接の時点で患者さんの解釈モデルはある程度推定されています。直接質問しなくても、患者さんが自分自身の病気についてどう思っているのかは言葉の端々に出てきますので、そこから患者さんはどう考えているのかをある程度把握をしながら、もしも患者さんの解釈モデルに間違いがあったとしても、そこでいきなり否定することはしません。
そしていろんな資料が整った段階で、それまでに把握した患者さんの解釈モデルから、あなたは、自分の病気についてこういう風に考えていると思います、これまでの診察から、あなたの病気について、その成り立ちから、どういう経過をたどったのか、どのような治療を受けたかなども含めてこういう様なことが起こり、今現在はこういう状態になっているというような医療者側の考える患者さんの病気のストーリーを作って、患者さんに話すことにしています。
私の作った患者さんの病気のストーリーを聞いて患者さん自身どう思いますか、という問いかけをします。
そこで患者さんは患者さん自身の解釈モデルを吐露してくれます。そこで、もしも我々医療者側の考える病気のストーリーと患者さんの解釈モデルに違いがあったり、ズレがあったら、そこでお互いに話し合って何がずれているのか、同じ病気について病気の持ち主である患者さんとその病気を治療しようとしている我々医療者とで、どこがどのようにずれているのかを明らかにして、治療に入る前に修正する必要があります。これが私の考えている間で解釈モデル、つまり患者さんが自分の病気について患者さん自身が考えていることそれに対して我々治療する側が作った患者さんの病気についてどう考えているかという病気のストーリーがうまく合致するかどうかズレが生じてないかどうか、これを治療に入る前に確認する事が必要なことだと思っています。
 
2022年09月16日 09:43

考えすぎは「思考ウイルス」の感染

口腔顔面痛の外来で、毎晩眠る前に、一人でその日の反省会をしているという患者さんがいます。神経質そうな患者さんには、「寝る前に反省会していますか」と聞くと、想像していた以上に、毎晩しています、という返事が多いことにビックリして、ほぼ全員に聞くことにしています。この反省会をしている人は思考ウイルスに感染して考えすぎ (overthinking)の人達なのだろうと思います。以前に HSP(Highly Sensitive Person)についても紹介したように、同類と思います。 和嶋浩一

2022年9月1日(木)08時57分 ニューズウィーク日本版ウェブ編集部 https://www.newsweekjapan.jp/stories/lifestyle/2022/09/post-99512.php
<「考えすぎ(overthinking)」は「思考ウイルス」による、認知システムのバグ。自尊心を傷つける思考パターンを手放すには、言葉の使い方を変えるだけ>
思考は人間が動物と区別される能力の1つである。しかし、近年、「考えすぎ(overthinking)」の有害性に関する研究が相次いで発表されている。
「思考ウイルス」による 考えすぎ(overthinking)の一覧
白黒思考/過度の一般化/ネガティブフィルター/マイナス化思考/結論の飛躍/拡大解釈/過小視/感情的推論/認知的推論/身体的推論/自己関連づけ/「もう耐えられない!」/レッテル貼り/べき思考
これの認知(思考)の片寄りは、自動思考、認知の歪み(不合理な思考パターン)と言う言葉で以前から用いられていました。認知療法の創始者であるアーロンベックの弟子バーンズは1989年に続編として出版されたfeeling good handbook の中に代表的な自動思考、認知の歪み(不合理な思考パターン)として10の歪みが記載されています。 

もう一つ興味深い記事があります。上の記事の元です
心配しても92%は意味がない。欧米で注目「考えすぎ」問題への対処法とは
2022年8月19日(金)19時55分 ニューズウィーク日本版ウェブ編集部 https://www.newsweekjapan.jp/stories/carrier/2022/08/92-4_2.php
「心配」や「考えすぎ」をやめられない根本原因  養育歴の影響が書かれています。
なぜ私たちは「ネガティブな考えすぎ」から抜け出せず、心配せずにはいられないのか。実はそれには、子ども時代の経験が大きく影響している。
そもそも子どもが先天的に心配性である確率は25~40%だと著者は言う。そして、子どもは、周りの大人が大丈夫なときにだけ、自分も安全であると生存本能的に考える。すると、親や周囲の大人が眉間にしわを寄せたり、ため息をついたりしているのを見たときには、大人がそうしているならそれは重要なことで、大人の社会で生きていくために必要なことなのだと認識するのだ。
過剰に心配をする親は、得てしてわが子に対して過保護になりがちだ。そうして親が子どもを心配することで「この世界は、つらいことで満ちあふれた危険な場所だ。安全でいるためには、つねに警戒していなければならない」といったメッセージをいつの間にか子どもが受け取ることになる。これが、私たちが「心配」や「考えすぎ」をやめられない根本的な原因である。 慢性疼痛ではこのように養育歴の影響が大きいと言われています。

「考えすぎ(overthinking)」は「思考ウイルス」感染の患者さんは結構多くいます、昨日の診療した人もそうでした。この人達、起こりうることをいっぱい想定して、それでも、もしこうなったらどうしようと、そこまで想定しなくても、そんな事起こらないでしょうと言いたくなるくらいに考えすぎています。
昨日朝、出勤前に駅ナカの本屋さんで「考えすぎてしまうあなたへ」思考ウイルスの本を買って、早速患者さんと一緒にパラパラと開きました。患者さんは私のために書かれた本のようだと言っていました。
この本はオーストラリアで出された本で、世界中何処にも思考ウイルスがいて、考えすぎてしまう人がいるようです。
「考えすぎ(overthinking)」は「思考ウイルス」による、認知システムのバグ このバグの修正方法は原則、認知行動療法です。
認知行動療法の要素分析では ある状況があって、それに対して 思考(認知)感情 身体反応 行動が生じます。
この本に書かれていることは認知行動療法の中の思考(認知)を捉えて、思考ウイルスによって歪んだ思考になっていないかを確認するために、自分の思考を書き出して、歪んだ思考を見つけて修正しようとする方法です。
本格的な認知行動療法は専門の方に任せるとして、クリニックで実施する認知行動療法としては導入しやすいと思います。
2022年09月06日 11:18

痛覚変調性疼痛について判らないこと

従来、痛みの発生機序は①侵害受容性疼痛 ②神経障害性疼痛 ③心因性疼痛に分けられていました。しかし、心因性疼痛はどの程度心因が関わるのか、もっと別な機序もあるだろうと言うことで、一時的に機能障害性疼痛とか非器質的疼痛とか使われましたが、2016年に国際疼痛学会が3番目の分類として「nociplastic pain」を提唱しました。
それを受けて、2021年、日本痛み関連学会連合用語委員会は,国際疼痛学会(IASP)が「第3の痛みの機構分類」 として提唱した nociplastic painの日本語訳を 痛覚変調性疼痛 と決めました。
(原文解説訳) 侵害受容の変化によって生じる痛みであり,末梢の侵害受容器の活性化をひきおこす組織損傷またはそのおそれがある明白な証拠,あるいは,痛みをひきおこす体性感覚系の疾患や傷害の証拠,がないにもかかわらず生じる痛み
(注記:患者が,侵害受容性疼痛と痛覚変調性疼痛を同時に示すこともありうる).
この定義を読んで、臨床的実感と照らし合わせて、以下の疑問があります。学会等の場で疑問を解決したいと思っています。

質問1 文頭の「侵害受容の変化によって生じる痛みであり,」これは侵害受容性疼痛のことか
2.注記:侵害受容性疼痛と痛覚変調性疼痛を同時にしめすこともありうる、とされているが神経障害性疼痛との同時はないのか
3.痛覚変調性疼痛はできあがった疼痛病態を指すのか、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛に作用して痛み感覚を調整する修飾因子として役割は無いのか。
4.従来の心因性疼痛は痛覚変調性疼痛の誘因の一つとして含まれるのか
5.痛覚変調性疼痛のメカニズムは大雑把に言って、かつて言われていた、中枢感作なのか、情動ストレスによる扁桃体の感作、痛み信号による痛覚受容野の感作などのか
2022年09月02日 14:55

帯状疱疹ワクチン接種の勧め

帯状疱疹ワクチン比較
口腔顔面痛の臨床では急性期の帯状疱疹による痛み、その後に続く帯状疱疹後神経痛、さらに顔面神経麻痺でしっかり治療を受けて、顔面神経麻痺はほぼ回復したが顔面、口腔内の痛みが残っているというラムゼーハント症候群と三叉神経帯状疱疹の後遺症として帯状疱疹後神経痛が残っている患者さんを診ます。60歳以上の人が帯状疱疹になると、約半数は帯状疱疹後神経痛に移行します。
現在、乳幼児の水疱瘡予防としてワクチン接種が普及したことによって、親世代、祖父母世代に帯状疱疹が増えています。例えば、3世代ですんでいる家庭で、子供が水疱瘡になると、子供の水疱瘡の免疫刺激が親や祖父母に対してブースター効果となり帯状疱疹抗体が上がります。これにより、両親、祖父母の帯状疱疹予防が出来ていました。乳幼児の水疱瘡予防としてワクチン接種によりブースター作用の機会が無くなったのです。
それならば、帯状疱疹罹患率の高まり、帯状疱疹後神経痛への移行率が高くなる前の50歳以上の人達に帯状疱疹ワクチン接種が認められています。予防接種なので残念ながら保険診療ではありません、地域によっては費用が助成されています。
帯状疱疹ワクチンには2種類有ります。効果、費用が対照的です。
50歳以上の方々には接種をお勧めします。
2022年08月31日 10:46

8月オンラインセミナーの話題

毎月、口腔顔面痛オンラインセミナーを続けています。今ではオンラインセミナーは珍しくありませんが、本オンラインセミナーはコロナ前から、和嶋が慶應大学を定年退職した年から始めていますから丸5年以上になります。口腔顔面痛に関するいろいろな事が話題になります。 8月20.21日、札幌、風の杜歯科の飯沼先生が北海道歯科学術大会で、自院の口腔顔面痛診療の変遷をまとめて発表されました。北海道における口腔顔面痛の広報活動として非常に有意義だったと思います。本セミナーに全国から参加の方々には、是非、機会を見つけて地元の歯科医師会等で口腔顔面痛の発表をしていただきたいと思っています。多くの歯科医師への啓発活動になり、口腔顔面痛に苦しんでいる患者さんの早期の治療に繋がります。その際は飯沼先生の発表スライドが参考になると思います。
このブログで何回か取り上げている患者さんの解釈モデル、患者さんの気持ちが素直に書かれます、また、診断側の認知バイアスも加わります。先日このような例がありました。ふぐ食べた、翌朝、舌がおかしい、ふぐ中毒ではないかと言う心配、診察する側のふぐを食べて口に異和感がでたと言うことで、認知バイアスが加わり、舌がしびれている、口唇がしびれている、という認識に早合点、これがヒューリスティックスで、パターン認識法の誤りの典型例です。ややこしい場合には、分析的臨床診断推論である仮説演繹法で診断を進めましょう。
歯学教育モデル・コア・カリキュラム 令和4年改訂版(案)に臨床推論が取り入れられたことは、非常に喜ぶべき事です。口腔顔面痛の診断では臨床診断推論として5年以上から推奨し、日本口腔顔面痛学会では診断実習セミナーでは臨床診断推論による症例診断実習を行ってきました。 歯科臨床では視覚的情報が多く、優先されてパターン認識法に直結しがちです。今後は一般歯科臨床の場で、仮説演繹法に代表される分析的臨床推論が用いられる機会が増えるでしょう。具体的方法としてデンタルダイヤモンドに連載している「症例に学ぶ診断マスターへの道」が役立ってくれれば良いと思います。
新たな話題として、処置後遷延感覚障害調査の提案をしました。抜歯、抜髄、インプラント、Apect、Flapなどの麻酔しなければ出来ない処置は全て神経を損傷します。術後に神経障害が生じても不思議はありません。処置後遷延性感覚障害の現実とその治療法を提案していきたいと思っています。興味を持たれた方は診査票を活用して、処置後遷延感覚障害の発生状況を調べてください、そして、セミナーで教えてください。
特に、前歯部の打撲後の歯根膜の過敏化は非常にやっかいです。何とか言い治療法はないかと、いろいろtryしています。現状では、確実な治療法がなく、抜けば治ると言う原始的な話になってしまいます。

最後に、痛覚変調性疼痛です、現状では痛覚変調性疼痛とはどのような痛みなのかよく判りません、先月から紹介しているように、処置により予期しない反応が生じ、それに対する医者の説明がしっかりしていない、患者は腑に落ちないために、不安が生じ、次の処置に期待するが、それもダメ、不安感とともに痛覚が亢進してしまう、このようにしてできあがった強い痛み感覚が痛覚変調性疼痛であり、津痛覚変調性疼痛は痛みの修飾因子とも言えるのだと思います。痛覚変調性疼痛にはこのような面もあるのだと思っています。 議論が進む事を期待します。
毎月、その月の話題を掲載していこうと思っています。
 
2022年08月28日 20:41

口腔顔面痛専門クリニックではどのような事をしているのか

口腔顔面痛とは、簡単に言うと、口の中やあご、顔などに発生する痛みすべてを含みます。従来からウ蝕や歯周病によって生ずる歯の痛みや歯肉の痛みなど(歯原性疼痛)は良く知られていて、一般歯科臨床では、このような歯が原因の痛みが大半を占めます。治療法も確立されていて、すぐに痛みは治療され問題になることはありません。しかし、患者さんがこの歯が痛いと訴えるが、その歯や周囲の歯や歯肉にはウ蝕や歯周病が無く、原因が無い場合(非歯原性疼痛)があります。このような場合、どのように対処するのが良いのでしょうか。第一選択は経過観察です、経過観察と言っても決して放り投げるのではなく、次回までの症状の変化を観察してもらい、初回と比較するためです。急性の歯が原因の炎症(歯髄炎や急性歯周組織炎)では症状が顕かになり、特徴的な症状が現れて簡単に診断されるでしょう。しかし、経過観察して再診しても、症状に変化がなく、患者さんが訴える痛みに見合う所見がなかったらどうでしょうか。このような状況の際に考えるべき病気が口腔顔面痛です。
口腔顔面痛の外来で私たち専門医が主に診療をしているのは、虫歯や歯周病などの病変がないにもかかわらず歯や歯肉が痛いという患者さんや口の中や舌、あご、あるいはその周辺や頬部、顔面に痛みがあり、歯科の各科で診てもらったが原因がわからないといった患者さん達です。口腔顔面痛では分析的臨床診断推論を駆使して原因を突き詰め、治療方針決定に至ることができます。
口腔顔面痛の中で最も多いのは、歯に原因がないにもかかわらず歯に痛みを感じられる非歯原性歯痛です。非歯原性歯痛の原因となる病気にはいろいろあります。咬筋、側頭筋などの筋肉のコリが原因のことが最も多く、約半数を占めます。次に、三叉神経痛、抜歯、インプラントなど外科手術による神経損傷に継発した神経障害性疼痛があります。その他に、三叉神経支配が共通である片頭痛、群発頭痛による歯痛、上顎洞炎による歯痛、稀ですが狭心症、心筋梗塞など心臓の病気、またガンの転移が原因の歯痛もあるので注意が必要です。他にも歯や歯肉に分布する末梢の三叉神経末端から脳で感じるまでの間にある痛みのボリューム調整が不安感など心理的影響により混乱して、痛みが強く感じられている場合(痛覚変調性疼痛)などもあります。
口腔顔面痛の多くは慢性痛であるため、治療の基本は急性痛である歯原性疼痛と異なり、原因を取り除くことよりも、運動療法、認知行動療法、薬物療法の3つに重きをおいて、症状緩和に努めます。口腔顔面痛で最も多い病態の筋・筋膜疼痛では、原因筋への理学療法等とともにストレスなどへの心理社会的対応を行います。次に多い神経障害性疼痛は神経が傷害されたことにより過敏化して生ずる痛みへの対応として薬物療法が行われます。神経障害性疼痛の標準治療薬の薬理および処方知識が必要となります。
 
2022年08月20日 17:02

口腔顔面痛臨床の実際 患者さんが来院してから治療開始まで

一人の口腔顔面痛患者さんがクリニックに初めて来院した際に、どの様に診断し、治療に至るか、そして口腔顔面痛の治療について概説します。
診察の前に、臨床診断推論に必要な臨床情報として以下の資料を記入してもらいます、疼痛構造化問診票、疼痛チェック票、hospital anxiety and depression scale (HAD)、痛みの破局化スケール(PCS)、システムレビューを兼ねた問診票。 次に、記入完了された資料を基に医療面接を行い、臨床診断推論を始めます。基本は1)Open‒ended question、傾聴、2)沈黙による患者発言誘導、3)解釈モデルと受診理由の把握、4)質問返し:患者の考えを聞き出す、5)ドアノブコメント「聞き忘れたことはありませんか」、です。
医療面接の中で直観的にパターン認識法により鑑別診断が思い浮かんでくるのと並行して仮説演繹法により気になる訴え、症状を医学用語に置き換える作業として Semantic Qualifier(SQ)を行い、鑑別診断を想起します。 想起された鑑別診断を問診、検査にて検証し、可能性のある診断仮説を、全ての病歴情報と矛盾しないか、整合性がとれているかを総合的に検証し、最終診断に至ります。治療の説明をする前に、診断結果、病気の説明として、患者から得られた情報を元に書かれた発症から現在に至る疾患のストーリーを患者さんに話します。そして、あらかじめ把握していた患者の解釈モデルとのズレを明らかにして、修正を試みます。例えば、非歯原性歯痛は異所性疼痛であるため、患者のここが痛い、ここに痛みの原因があるとの解釈モデルと明らかなズレがあるのは当然です。また、治療歴がある場合、慢性化している場合には患者の認知が様々に歪み、解釈モデルのズレから不安が生じて病状に影響している場合が多いです。患者さんがなぜそのように考えているか、尋ねます。何らかの理由があるはずです。解釈モデルのズレたままでは治療に進まないことにしています。
口腔顔面痛の多くは慢性痛であるため、治療の基本が急性痛である歯原性疼痛と異なります。慢性痛の治療の柱は、運動療法、認知行動療法、薬物療法の3つです。常に、解釈モデル、痛みなどの現状から認知行動療法要素分析を再評価しながら、治療を進めていきます。
口腔顔面痛で最も多い病態は筋筋膜疼痛です。筋筋膜疼痛はBiopshychosocialモデルの典型病態であり、筋への理学療法等とともに心理社会的対応も必須です。次に多い病態は神経障害性疼痛です。神経障害による陽性症状への対応として薬物療法が行われ、標準治療薬の薬理および処方知識が必須です。
残念ながら慢性痛を完全に取ることは難しいのが現状であり、現在の治療では、痛みそのものはゼロにできないことが多いです。従って、QOL(生活の質)とADL(日常生活動作)を向上させ、心身両面で慢性痛の痛みの苦しみから抜け出せることを目標としています。
2022年08月16日 13:22

解釈モデルに不安を見つける 不安を解消するには

歯科の病気の中で一般社会で認知度が低い病気の代表が口腔顔面痛、非歯原性歯痛です。認知度が低い故に、診断がつかず、不安感、心配が増した状態になり、慢性疼痛になってしまいます。口腔顔面痛の治療には不安感、心配の解消が必須です。

当クリニックを受診する口腔顔面痛の患者さんを診ていて気がつくことは、歯痛、顔面痛の原因が不明、はっきりしないと言う状況のままに歯の治療が続いていたり、何軒も医療機関を受けているが納得いく説明が得られないまま、症状が始まってから半年、1年という状況にあることです。このような憂うべき状況は、口腔顔面痛、非歯原性歯痛が一般社会、患者さんに知らないだけで無く、歯科関係者においても認知度が低いことによります。
もう一つの、歯と関係ない病気に顎関節症があります。
顎関節症はかみ合わせの異常が原因だから、かみ合わせの治療をすれば治るという誤った情報が広まっているが、それでも「信じれば救われる、治る」そのもので、「治りますよ」のひと言で改善することもあります。Sef-limitedと言われるように、幸にして治りやすい病気なので深みに嵌まってしまうことが少ないようです。
当クリニックで行うことは、充分に時間をかけて医療面接し、これまでの経過を聞き、その中で患者さんがこの病気をどのように捉えているのかも聞きます。多くの患者さんは病気について大きな不安と⼼配を抱えていることが判ります。
患者さんの不満は⼤きくは(1)医師が何を⾔っているのか分からなかった、(2)⾔いたいことを⾔えなかったの2つです。
(1)に対しては、診断がついた後は、治療の前に病気についての説明です。患者さんの自身の痛み、病気についての解釈、認知、捉え方を聞き出しながら、標準的な理解とのズレを修正します。
この治療をすれば改善するのにと、治療を始めたい気持ちを抑えつつ、患者さんの納得のいくまで、腑に落ちるまで病気を説明します。
(2)については、最初に数分⾃由に話してもらって います。その間、⼝を挟まずに相槌を打って話を聞くのに徹します。そうしてから治療の話を始めます。

医師と患者の間にはたくさんのコミュニケーション・エラーが発生していて、原因の一端は医師側にあります。医師がみんな最初からコミュニケーションが得意なわけではなくて、意識的にコミュニケーションの訓練をしてな んとかなっている⼈が多いと思います。しかし、訓練をせず苦⼿なまま年齢を重ねてしまう医師も少なからずいます。 私もその一人です。研修医など若いうちは指導医や患者さんから指摘を受けることもありますが、ある程度年がいってしまうと、患者さんは不安 や不満を持っていても我慢してしまうので、フィードバックが受けられなくなってしまいます。若いうちに身につけておかないと、キャリアを積んでから訓練するのは⼤変だと思います。
2022年08月05日 09:27

【電話番号】
03-3478-5248

【住所】
〒107-0051
東京都港区元赤坂1-1-7
赤坂モートサイド505

【診療時間】
10:00~13:30
14:30-18:00

【診療日】
火曜日、金曜日、土曜日(午前)
※第2火曜は休診し、水曜に診療
※第1、3土曜日診療

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