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原因不明の歯痛、顔の痛みに慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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顔のピクピク二はいろいろな病気がある

最近の口腔顔面痛MLで、三叉神経痛の微小血管減圧術(MVD)の話しから、顔面けいれんのMVDに展開、顔面けいれんのボトックス注射に話しが進みました。顔面けいれんが顔面神経の運動枝が血管により圧迫された場合に、三叉神経の感覚枝が血管圧迫で異所性発火して痛みが出るのと同じ機序で不随意な筋収縮としてけいれんが生ずるのだと思います。神経血管圧迫症候群の一つということで、MVDが有効なのだと思います。正式には片側顔面けいれんです。
延髄から神経が出てくる位置をイラスト等で見ると独立している三叉神経のかなり下で、顔面神経本枝、中間神経、聴神経と並んでいますから、MVDオペの際に聴神経に圧がかかったりするのかと思われます。
顔面けいれんのMVDの次の選択肢としてボトックス注射があります。こちらはけいれんする筋を収縮しなくするという対症療法です。

片側顔面けいれんの原因は三叉神経痛と同様に血管圧迫ですが、精神的緊張で誘発されるという、三叉神経痛ではみられない誘因が出てきます。 ある先生から、顔面けいれんの患者さんに精神的問題という話しがありましたように、少し紛らわしいことがある様です。

「顔のぴくぴく」には、片側顔面けいれんの他にいくつか病気があり、眼瞼けいれん、眼瞼ミオキミア、チックなどがあります。
「ときどき片方のまぶたがぴくぴくする」は眼瞼けいれんではなく眼瞼ミオキミアです。眼瞼ミオキミアは眼輪筋という筋肉の攣縮が不随意に起こる状態で、通常片眼性であり、肉体的精神的ストレスが原因になると言われています。有効な治療法はなく、上記ストレスを緩和する(ゆっくり休む)ことで改善する場合が多いです。

眼瞼けいれんとは、両眼性の疾患で、一番の特徴はまぶたが開けにくくなること(開瞼失行)です。まぶたが開けにくいため、見づらさ、まぶしさや眼の違和感などが生じたりします。また、周りから「目つきが悪い」「いつも眉間にしわをよせている」などといわれることもあります。原因は正確にはわかっていませんが、中枢神経の神経伝達異常と考えられていて、ある種のジストニアであるという記述もあります。
私がこれまで診たことのある、口顎ジストニアの患者さんは全員は心因性でした。お嫁さんが嫌いでお嫁さんの作ったご飯を食べようとすると口が閉じてしまう、咬合治療に満足できず、散々苦情を言ったが聞いてもらえず、そのうちに斜頚と閉口してしまうようになった、ご主人と2人暮らし、食事になると歯がくっついてしまい、ご飯が食べられない、でもDaycareでは完食、と言った具合です。

チックとはチック症(チック障害)のことで、運動性チック症、音声チック症があり、本人の意思とは関係なく体の一部の速い動き(まばたき・顔をしかめる・首を急激に振る)や発声(咳払い、鼻を鳴らす、舌を鳴らす、「シュー、ンー」といった音を出す)を繰り返すといった状態が一定期間続きます。子供の10~20%に何らかのチック症がみられるとされており、一時的に出現して2~3カ月で消えていく場合と、軽くなったり重くなったりして何年か続く場合があります。
 
2023年02月03日 21:37

解釈モデルの主訴を病態と信じ込み、治療まで決めてしまう

痛みが慢性経過している場合、なかなか診断がつかない場合などには病気について、患者さんは自分の持っている知識のなかであれこれ考えてしまいます。
患者さんが自分の病気についてあれこれ考えていることを解釈モデルといいます。患者さんが病気の当事者として1)自分の病気の原因をどうとらえ、2)なぜ発症したのか、3)どの程度重いのか、4)予後はどうなのか、5)どんな治療が必要なのか等、自身の病気について決めつけていることがあります。
最近いらした患者さんは10年前に海外で、歯が痛くなって抜髄処置を受けました、しかし、痛みは改善せず、その後に腫脹感も現れて現地でいくつかの医療機関で診てもらいましたが、原因不明ということでした。
この時点で患者さんは海外の下手な歯科医師による抜髄の失敗だろうと考えました。つまり、解釈モデルとして、自分のこの痛み、腫脹感の原因は抜髄の失敗である、日本でちゃんとした根の治療を受ければ治るはず、と言う考えが出来たようです。
その後、症状は痛みよりも腫脹感が気になるように変わったのですが、解釈モデルは変わらず、帰国後、すぐに近所の歯科で根管治療を受けました。10年間に4-5回根管治療を受けたそうですが、症状は全く変わりません。従って、解釈モデルも変わらないままです。
最近、ENDO専門医に紹介され精査を受けたところ、根充状態が完全ではないということで再度根管治療を受けました。三ヶ月後に経過観察を受け、その歯には全く異常が無い、しかし、歯の周囲の腫脹感が変わらないと言うことで当クリニックに紹介されて受診しました。
これまでの治療は、患者さんの10年前のこの歯の治療が悪かったのでこの歯の周りがブヨブヨ腫れぼったいんだ、ちゃんと根の治療をすれば治るという解釈モデルが歯科医師に「海外での下手な根管治療による根尖病巣、根管治療すれば直る」という指示となる根管治療が行われていたようです。
紹介してくれたENDO専門医の治療は完璧で、自発痛はもちろん打診痛もありません、歯原性で無いことがすぐ判りました。そこで、ENDO専門医の先生の私に紹介してくれた意図などを説明して、歯にこだわらずもっと広く口腔顔面痛として診査しましょうと提案、受け入れてもらいました。
結果はその歯のある三叉神経の領域に触覚鈍麻、痛覚亢進が認められ、明らかに三叉神経ニューロパチーでした。10年前には痛みが強かったようですが今は痛みよりも鈍麻感が気になると言う事で、触覚鈍麻がその原因ではないか、時々、痛くなるのは痛覚亢進によるものだろう。そして、現在の感覚障害から10年前に戻ってみると、痛かったのは歯髄炎等の歯原性では無くでは、帯状疱疹だったのではないか、そのため、抜髄後も痛みが続いていた、10年の間に痛みは収まってきて、今は三叉神経ニューロパチーによる鈍麻感だけ残っているのではないかと推定できることを話しました。すぐに納得とは行きませんでしたが、患者さんの10年間の続いていた解釈モデル、「歯の治療が悪かったのでこの歯の周りがブヨブヨ腫れぼったいんだ、ちゃんと根の治療をすれば治る」という、ホワイトボードに根管治療する毎に油性マジックで重ね書きしてきたところに、正しい理解を書き込むことが出来たかなと思っています。
 
2023年01月23日 15:03

マスクをどうするか N-95 マスクの有用性

政府が、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の類型を来年4月1日に危険度が2番目に高い「2類」相当から、季節性インフルエンザ並みの「5類」に緩和するようです。そして、マスクを外そうという動きです。
ここで我々医療従事者のマスクの種類によるコロナ感染率についてのいくつかの論文結果と、議論を紹介します。

その前に知っておくべき事があります。
第一に、日本では今現在マスクは3つに分類されています。1)一般用、2)医療用(サージカルマスク)、3)N-95マスクです。
医療機関で通常用いられているのは2)医療用(サージカルマスク)です。ところが、2)医療用(サージカルマスク)、3)N-95マスクは使用する目的において大きく異なります。N-95マスクは病原菌、コロナウイルスなどを含む外気から、装着者(例えば医療従事者)を守るために使用されます。一方、サージカルマスクは、マスクを装着したヒト(風邪、インフルエンザ、コロナ感染者)から排出される病原菌を含む微粒子が大気中に拡がるのを防ぐ目的で使用されます。もっと単純に言うと、サージカルマスクは外科手術で医療従事者の唾が飛ばないよう使用するもので、自身の感染予防の目的ではありません。
N-95マスクの役割に似たものに、医療用ではありませんが防塵マスクがあります。防塵マスクとはその名前の通り、“塵(ほこりなどのチリ)”を“防”ぐための“マスク”です。作業を行う場所で粒子状の物質(粉塵やオイルミストなど)の吸引を防ぐために装着するもので目的はN-95マスクと同じです。規格もほぼ同じです。つまり、N95マスクは外から内への経路を、一般用マスク、サージカルマスクは内から外への経路を遮断する目的で使います。
 
WHO、CDC及び厚生労働省がSARSの患者、その疑いのある患者あるいは可能性のある患者と接触する場合、医療従事者はN95規格以上の呼吸器防護具を着用するよう推奨しています。
コロナ感染予防に関して、サージカルマスクはN-95マスクに劣るか?について検討した論文がいくつかあります。論文の結論は、「サージカルマスクとN-95は、エアロゾルを発生させないケア中の医療従事者において、コロナウイルスを含むウイルス性呼吸器感染症に対して同様の防護を提供することを、確実性の低い証拠が示している。」ということで、サージカルマスクはN-95マスクに劣らないということです。
しかし、いくつもの興味深い議論があります。その中の一つを紹介します。
もし研究が十分に大規模で、N95マスクが正しく着用され、正しくフィットテストされ、軽食や昼食時の休憩室での院内COVID-19感染が除外され、さらに大きな課題としてレストランや結婚式やコンサートやジムでの病院外での感染が除外され、医療現場での感染機会に限定できれば、サージカルマスクは明らかにN95マスクほど有効では無いという結論になるだろうという見解があります。
COVID-19は今やどこにでもあり、患者から医療従事者へのウイルス感染は世界的に起こっている曝露のごく一部に過ぎないのである。逆に、医療の場以外での感染が多いと言うことです。
 
この非劣勢試験の細かな数字を診ると、N95マスクの有効性が見つかります。この研究では、サージカルマスクとN95マスクのハザード比の95%信頼区間の上限が2未満であれば、非劣性であると規定しています。(どこかの国の選挙の人口当たりの定数に似ています)実際の数字はハザード比は1.14、95%信頼区間は0.77から1.69(ただし非劣性マージンは2倍未満)であった。つまり、サージカルマスクの方が1.69倍も悪いと言うことになりますが、2倍を超えないので非劣勢であるという結論です。個々のデータでは、サージカルマスクの方がN95よりも2倍以上感染したという結果もあります。
 
ここからはエアロゾルに曝される歯科医師のコロナ感染予防に関して、どのようなマスクを使用すべきかについて、興味深いたとえがあります。
COVID-19が確認された、あるいは疑われる患者をケアする際にN95を着用すべきですか?はい。土砂降りの雨の中、車から玄関に駆け込むとき、私はしっかりした傘を使います。
私の診療は歯を削らないのでエアロゾルに暴露される機会は少ないのですが、高齢者ゆえ診療中はN-95マスクをしています。 電車の中ではもう少しゆるめのN-95モドキをし、道を歩くときはマスク無しです。
 
2023年01月22日 14:39

口腔顔面痛専門医による顔面神経麻痺診断

頬筋について
頬筋は表情筋の一つで、口腔粘膜の裏打ちをしている筋肉です。他の表情筋と同様に口輪筋に停止し、その機能は口角を外側に引くという表情筋本来の機能の他に、咀嚼時に下顎の動きに呼応して頬粘膜を緊張させて食物を歯列に載せる咀嚼筋と思われる機能も有している興味深い筋肉です。
ここまで読んでも頬筋について思い出さないと思いますが、歯科教育の中で総義歯の人工歯をニュートラルゾーンに配列する様に指導されていて、このニュートラルゾーンは口蓋側からの舌圧と頬側からの頬筋の圧力の均衡する帯域であるということで、頬筋の存在、機能については皆さんが知っているはずです。
本稿では頬筋の解剖、神経支配について詳しく解説し、その機能の特殊性から口腔顔面痛的な顔面神経麻痺の有用な所見が得られる事を述べます。
 
【起始停止】
起始:上顎骨の大臼歯部における歯槽突起頬側面と、下顎骨の大臼歯部頬側面の頬筋稜
停止:口輪筋に合流。
 
【神経支配】
頬筋は顔面神経の頬筋枝により支配されています。
三叉神経第3枝の枝に頬神経があり、咀嚼筋である外側翼突筋の運動神経支配をしています。咀嚼筋は全て、三叉神経の枝である下顎神経の支配で、表情筋は全て顔面神経の支配で、顔面神経の枝の頬筋枝と三叉神経の枝の頬神経は別物です。ただし、頬筋の知覚は頬神経が支配しています。
 
【頬筋の臨床的側面】
頬筋は表情筋としてだけでなく、咀嚼時に頬粘膜を緊張させて食物を歯列に載せる働きで咀嚼運動と連動した機能も有していることから、顔面神経麻痺で頬筋が緊張できなくなると咀嚼時の頬粘膜が緊張することが出来なり、食塊が口腔前提に貯留したり、緩んでいる頬粘膜が誤咬されることになります。
通常、顔面神経麻痺は表情筋の麻痺により顔貌変化が生じて気づかれやすいが、顔面の表情筋には全く症状がなく頬筋のみの麻痺が生ずることがあり、顔面神経麻痺と診断されないことがある。補綴治療で頬側豊隆が変化等のきっかけがないのに、急に頬粘膜の誤咬を訴えて来院した場合や、歯科治療中の患者で食塊の口腔前庭貯留が認められた場合には顔面神経麻痺を疑うべきで、これが口腔顔面痛を知っている人しか出来ない顔面神経麻痺の診断とも言えます。
 
 
2023年01月12日 20:56

トリガーポイントに重点を置いた筋痛治療

筋膜に重点を置いた筋・筋膜疼痛の治療
 
本稿では、筋痛治療の対象は赤い筋線維ではなく、白い筋膜である事、筋膜は筋の周り、筋の内部にある筋膜、そして、靱帯、腱は筋膜に連続するものであり筋膜に類似した特徴をもっていて痛みを発しているという理解を元に筋膜治療の基本的な話しを書きます。
筋・筋膜疼痛の治療解説で口腔顔面痛学習者の皆さんが最も関心を示してくれるのがトリガーポイントインジェクション(TrPI)です。米国口腔顔面痛学会では、トラベルとシモンズのトリガーポイントマニュアルが教科書として推奨していたことからトリガーポイントインジェクションが最も有効な治療法のように思われているがこれは少し誤解がある。トリガーポイントマニュアルには、トリガーポイントインジェクションと共にTrP pressure release(TrPPr)についても詳記されている。TrP pressure release とはbarrier release concept (Lewit, 1999)の考え方にもとづいて、トリガーポイント(Barrier)を圧迫して押しつぶす様な手技である。この点において、後述する筋膜リリース、筋膜マニュプレーションと共通点が見えてくる。
 
筋膜とは
筋膜の役割は、筋組織と筋組織の間にあって、筋組織の滑走する際の緩衝剤の役割を果たし、その緩衝作用の元はヒアルロン酸である。筋膜の詳しい解剖等は省略するが、筋内部の筋膜、筋周囲の筋膜から筋組織へ入り込んでいて、筋収縮が筋膜へと伝達される。さらに、筋外膜の延長が腱、靱帯とつながって関節を動かす事になる。
 
何故、筋膜に痛みが生ずるか
筋膜は様々な要因により変性する、外傷、反復運動、持続的筋収縮等の過剰負荷、長時間の不良姿勢、などで筋膜内部のコラーゲン繊維の配列が変化して密度が高くなる。これにより線維束内部で脱水が生じて、基質がゲル化し、内部のヒアルロン酸の凝集が生じて滑りも悪くなる。この過程で筋膜に分布する自由神経終末が刺激されて痛みが生ずる様であるが、筋膜の緊張と痛みの関連性は明確でない。

筋膜の機能異常を改善する方法
このような筋膜の機能異常を改善する方法として、局所温度を上げて、ゲル化された基質を流動化させて正常なゾル状態に戻し、コラーゲン繊維間の癒着を除去する事である。そのための直接的治療法として筋膜リリース、筋膜マニュプレーション、TrP pressure release等が行われる。

筋膜リリース、筋膜マニュプレーション、TrP pressure releaseの整理
筋膜リリースはJohn Barnesを中心に発展してきた手技で、全身の筋膜組織を対象に筋膜のねじれを解きほぐすことを目的に、穏やかで持続的な伸張手技である。筋膜がコラーゲン繊維が固まった部分に軽く圧(5-20g)を加え、そのまま穏やかに伸ばし、固まりに当たったところで1-2分間そのまま伸ばし続ける。これによりコラーゲン繊維の固まりがリリースされ軟らかくなり、血管拡張が生じて血流量が増える、リンパドレナージが改善され、筋の固有感覚機構がリセットされる。筋膜制限が解除され、極端に言うならば組織が伸びる事になる。
一方、筋膜マニュプレーションは、イタリアの理学療法士Luigi Steccoが発展させた方法で、筋膜の固まった部分、局所へ適応される点で筋膜リリースと異なる。触診により筋膜の高密度化して固まった部分を探しだし、その部分に圧を加え、局所温度が上がるように充分な時間、摩擦する。この加温は基質がゲルからゾルへと変化しての筋膜基質の粘稠性を修正し、治癒に向かうのに必要な炎症過程が始まる。この過程で筋膜に分布している自由神経終末への刺激がなくなり痛みが和らぐ。
TrP pressure releaseは筋膜マニュプレーションと類似した目的と手技である。
 
和嶋の筋・筋膜疼痛に対する理学療法
和嶋が日常臨床で行っている手法の特徴は超音波照射を行う点である。
咬筋、側頭筋、胸鎖乳突筋、後頸部筋の筋触診を行い、索状硬結、トリガーポイントを探す。
  • 開口ストレッチアシストブロックを用いて開口状態を維持して、起始から停止まで全体に超音波照射を行う。
  • 筋の深部温度が高まったことを確認後、硬結、トリガーポイントを中心に筋膜リリースを行う。これにより筋組織が全体的に軟らかくなり、肥厚部がなくなる。これはリンパドレナージによるものと思われる。この時点で硬結部の圧痛が消えることが多い。
  • 筋膜リリースによっても硬結、トリガーポイントが解れていないで圧痛が残っている場合には、再度、超音波照射した後に筋膜マニュプレーションを行う。硬結部を中心に1-2分程度、持続的に圧迫する。これにより、硬結の完全消失は無い場合もあるが、多くの例で圧痛が消失する。
  • 圧痛が消失しない場合には、超音波照射と筋膜マニュプレーションを1-2回繰り返す。
    和嶋の筋・筋膜疼痛治療におけるキーは超音波を用いたTrP pressure releaseである。
 
トリガーポイントインジェクションは有効か、超音波を利用したハイドロリリースは
現在、私の臨床では超音波照射と筋膜リリース、筋膜マニュプレーションを組み合わせた方法により筋・筋膜疼痛がコントロール出来るようになっている、そのため、トリガーポイントインジェクションを行う回数が激減している。また、超音波にて筋膜の癒着部を確認して、その間に生食水、局所麻酔液を注入して癒着を剥離するという手法、ハイドロリリースが流行っているが、筋膜リリース、筋膜マニュプレーション、TrP pressure releaseの考えとは共通点は少なく、トリガーポイントインジェクションの経験からはハイドロリリースによって筋膜リリース、筋膜マニュプレーション、TrP pressure releaseと同等の効果が得られるとは思えない。
 
2023年01月08日 12:20

インプラント手術による神経損傷、三叉神経ニューロパチー

インプラント手術による三叉神経ニューロパチーの発生とその予防に関する私見
 
口腔インプラントの普及に伴い神経障害例が増えていて、インプラント関連学会でも対応策が検討されている。
末梢神経障害による症状は外傷後三叉神経ニューロパチーとされ、下唇、オトガイ部の感覚鈍麻を主徴候とする無痛性三叉神経ニューロパチーが生じ、その一部にジリジリ、ピリピリなどの持続性の痛みを主徴候とする有痛性三叉神経ニューロパチーが重複することがある。有痛性三叉神経ニューロパチーは神経障害性疼痛と同義語である。
 
歯科治療では麻酔下でなければ行うことの出来ない痛みを伴う処置、抜歯、抜髄、切開などでは全て、大なり小なり直接的神経損傷を起こしている。術後の神経障害の発生率は、0.38-6%といわれ、他の神経領域(5〜17%)に比べて非常に低いと報告されている。発生率が低いので余り問題にされずに日常臨床が行われている。しかし、一端、生ずると難治であり患者も術者も困窮する事となる。
神経損傷は何処でも生ずる可能性はあるが、発生頻度と生じたときに問題になるのは下歯槽神経である。下顎インプラント手術や抜歯、外科手術で下歯槽神経を、下顎智歯抜歯の際に舌神経を直接損傷したり、下顎歯の根管治療で用いる薬物で下歯槽神経に化学的損傷を与えたりした場合にはほぼ全例で支配領域に感覚鈍麻が生じ、一部には痛みも伴うことがある。
一端、外傷により直接的神経損傷が生ずると、その神経線維はほぼ回復の可能性はない。神経損傷が起こると他の組織と同様に直ぐに修復機転が働き、中枢側断端から神経成長端が遠心側断端を探して伸び始める、しかし、周囲組織からの肉芽組織の増殖が早いために、神経損傷部に入り込んでしまい神経成長端の伸長を遮ってしまう。神経成長端は神経腫を形成し、痛みの元になることある。
少し横道ながら、神経損傷を語る上で気をつけるべき事を説明する。末梢神経損傷の記事では損傷の程度を示すためにセドン(Seddon)の分類、サンダーランド(Sunderland)の分類を用いるが、あれらの分類は神経線維1本ずつの病理的な分類であり、末梢神経損傷の基礎的学習にはなっても、臨床症状に対して神経線維損傷の分類を適応して説明するのは間違っている。臨床的な神経損傷は多数の神経線維からなる神経束で起こっていることで、損傷された神経束には様々に損傷された神経線維が含まれている。単純にいえば、損傷された神経束では無傷な神経線維からセドンの分類の全ての損傷が生じていると言える。
まえおきはここまでにして、インプラントによる外傷後三叉神経ニューロパチーについて私見を述べる。
問題点は、専門医の診療機会が全く得られなかったり、正しく診断され、適切に治療されるまでに無駄に時間が経過しているために改善の機会を逃してしまい、患者が不利益を被ることである。
 
外傷後三叉神経ニューロパチーの発生とその予防法
解剖学的計測、植え込み方向の初歩的ミス等による直接的神経損傷が原因となった三叉神経ニューロパチーは論外である。回復不能であるので、ここでは言及しない。
1)なぜ神経に触っていないのにニューロパチーが起こるのか、予防するには
インプラント窩を形成した時に動脈性の出血があったり、出血が続く場合、出血が止まるまでインプラント体の植え込みを待つ。自然に止まる傾向が無かった場合にはその日のインプラント体挿入を中止する。(出血が続く中でインプラント体をさし込むと流れ出てくることはないが、出血は骨髄中に入り込み骨髄腔を拡げ、その後には下歯槽菅に入り込み下歯槽神経を血圧で圧迫、絞扼して、神経障害を生ずることとなる)
)局所麻酔が切れた頃(術後3時間程度)、電話で感覚鈍麻の有無を確認する 下歯槽神経に直接触れたり損傷していないと確信できるが感覚鈍麻が続いていて神経障害が疑われた場合、必ずすべきことは組織の浮腫治療のためのステロイドの早期投与である、そして、当日にインプラント体を撤去するかどうかを患者とともに検討する。英国のLenton教授によると許容時間は大雑把に24時間と言われている。
(1)当日インプラント体撤去により感覚障害が改善する可能性があるのは、出血、浮腫により下歯槽神経が圧迫されている場合のみである。
(2)論外ながら、下歯槽神経が直接的刺激により損傷している場合にはインプラント体撤去しても感覚障害の回復の可能性は低く、撤去による更なる損傷を生ずる可能性が高いと考えるべきである。

ステロイド投与参照:顔面神経麻痺の治療のための経口副腎皮質ホルモン投与例
・ 発症後3日以内にが望ましいが,遅くとも10日以内に開始する.
・ 成人ではprednisolone (1mg/kg/日 or 60mg/日)を5~7日間投与し,その後1週間(10mg/日)で漸減中止する.
 
三叉神経ニューロパチーの診査、診断(詳細はガイドライン等を参照のこと)
定性感覚検査を行う、感覚鈍麻がある場合には定量感覚検査を行う。
顔面、口腔内の三叉神経の三枝毎に左右差を比較検討する。顔面では触覚検査には綿棒、痛覚検査には爪楊枝を用いる。口腔内では触覚検査にミラーの縁あるいは形成充填器の丸端、痛覚検査にはピンセットを用いている。
原則的に左右で比較して鈍麻か過敏か、左右差がないかを確認し、触覚、痛覚に感覚異常がないかどうかを確認する。神経支配領域に限局した何らかの感覚異常が認められる場合には三叉神経ニューロパチーの可能性が高い。
 
外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーの治療(詳細はガイドライン等を参照のこと)
無痛性三叉神経ニューロパチーに関しては積極的治療法がない、ビタミンB12の投与が行われているが、そのエビデンスは低い、また、損傷した神経の回復のためには諸外国では通常用いられない。
神経障害性疼痛に準じて薬物療法を行う。世界の主なる神経障害性疼痛治療ガイドラインでは共通して、プレガバリン、アミトリプチリン、サインバルタ、ガバペンチンが第一選択とされ、効果がないか、不十分の場合には他の第一選択薬に変更するか、併用することが勧められている。
 
2023年01月07日 14:13

慢性痛は強弱はあれPTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)である

いろいろな慢性の痛み患者さんを診ていると、強弱はあってもある種のPTSDによる症状ではないかと思っています。数年前に仙台の伊達先生が日本口腔顔面痛学会の精神セミナーで講演されたときに、このように質問したときも、同感だと答えていました。
今朝から痛み情報収集の仕事始めをしていて、Pain MedicineNewsという米国の痛み関連情報のダイジェスト版を発行しているサイトをみていたら、2022’s Top 10 Articles: Part
1でベスト5前の6-10の記事が掲載されていました。その中に、「慢性痛はPTSD」ではないかという私の考えにぴったりの記事がありましたので、和訳して紹介します。
 
「精神的トラウマが痛み感覚変化させる、慢性痛は単なる痛みの管理を超えて、全人的な痛みの回復を目指す必要がある」
私たち医療関係者の間では、有害な精神的ストレスが神経系の感覚処理機能を変化させ、組織の病理変化と関連しない痛みをもたらすという事実への理解と評価が高まっている。
発育期や成人期にストレスを抱えた人は、圧痛閾値が著しく低く、痛みの感じ方が異なることが研究により明らかになっています1-3。
 
精神的トラウマが慢性疼痛につながるのであれば、精神的トラウマに対する治療が痛みを和らげるはずである。
実際、精神的トラウマの回復が痛みの回復につながるという考えを支持する6つのランダム化比較試験がある4。
しかし、私たちはいまだに、精神的トラウマによる神経障害性疼痛を、患者の苦痛の原因が侵害受容性であるかのように、つまり、身体的損傷から来るものであるかのように管理しがちである。
例えば、抗生物質やオピオイドを処方し、精神的トラウマの後遺症に対処しない傾向があるのです。
患者さん個人と社会全体の健康のために、プライマリーケア提供者、痛みの専門家、その他の医師、行動医学の専門家は、今こそ私たちの考え方や治療方法を変えるべき時なのです。
 
ケース・イン・ポイント  人質が心的外傷となった患者 
シエラ ツーソンの疼痛回復プログラムに参加するほとんどの患者は、自分の症状を「罰当たり」「残酷」といった感情的な言葉で表現します。 しかし、その大半は、自分のひどい痛みと精神的トラウマの間に関係があるかもしれないことに気づいていません。  
 
数年前、私が診察したある患者は、体のあちこちに痛みを感じていると報告してきました。
彼女は、どこからともなくやってくるような衰弱した痛みのために、すでに3年間も身体障害者手帳を取得していたのです。
その3年間、彼女は多くの医療専門家に診てもらったが、痛みの原因となる組織は見つからず、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス、慢性ライム病、多発性硬化症と別々に診断された。抗生物質、オキシコドン、ベンゾジアゼピン系薬剤に何万ドルも費やしたが、ほとんど効果はなかった。
 初診のとき、彼女の夫は突然、あることを思いついた。「ちょっと待てよ、ハニー」と彼は言った。「痛みが始まる1ヶ月ほど前に、クイックマートで人質になり、男があなたの喉にナイフを突きつけてきて、保安官が後ろから撃ち殺さなければならなかったのを覚えていないかい?  先生、身体的には無傷でも、それが彼女の痛みと関係あるのでしょうか?" 
 
間違いありません。この患者の疼痛症候群は、人質事件から約1ヶ月後に始まりました。これは、身体の神経系が痛みを異なる方法で処理するように配線し直すのにかかる時間とほぼ同じです5。
ソマティック・エクスペリエンスと呼ばれる精神的トラウマ回復治療と、グループ認知行動療法、弁証法的行動療法が効果を示した。
6ヶ月後、彼女は仕事に復帰し、鎮痛剤もやめ、とても元気にしています。
確かに、人質事件に遭遇することは稀なことです。しかし、この国には、もっと一般的で、私が診療で見てきた慢性的な痛みの原因でもある、成長期トラウマという有害なストレスの原因がもうひとつあるのです。世界中の研究により、幼少期の精神的トラウマと大人になってからの慢性疼痛の発症には、用量反応関係があることが示されています6。
Substance Abuse and Mental Health Services Administrationによると、3分の2以上の子どもが、16歳になるまでに少なくとも1つの精神的トラウマとなる出来事を報告しています。
 
私たちの社会は、文字通り、そして比喩的に傷ついているのです。
私たちは、単なる痛みの管理を超えて、全人的な痛みの回復を目指す必要があるのです。実際、カリフォルニア州初の外科医長であるNadine Burke Harris医学博士は、州の公立学校のすべての生徒が成長期トラウマのスクリーニングを受けるよう呼びかけ、すでにこの運動を始めています。
彼女は、有害な幼少期の体験や有害なストレスに関する公衆衛生規模の介入が、私たちの時代における最大の公衆衛生の進歩になると考えているのです。
 
患者さんの慢性的な痛みを理解するためには、痛みの専門医と理学療法士、行動医学の専門家が協力して、集学的なアプローチを行う必要があります。
このような多角的な評価と、痛みの根本的な原因に対する治療が必要です。
統合的治療には、疼痛教育、運動療法、体験療法、薬物管理、個人・グループ療法による感情処理、認知行動療法、バイオフィードバックや経頭蓋磁気刺激などが含まれます。
 
痛みが強いから外傷治療や理学療法はできないと言う患者さんもいらっしゃるでしょう。
このような患者は、神経系について話すことも、ましてや精神的トラウマについて話すこともできませんし、理学療法士に触られることにも耐えられないでしょう。
 
医療専門家として、私たちは、彼らが明らかに精神的トラウマという重荷を背負っていることがわかっていても、まず彼らが感じている「身体的」な痛みに対処し、穏やかな精神的トラウマ療法を行うことで、彼らの現状に対応しなければならないのです。
しかし、そこで終わらせないのが私たちの義務です。そして、精神的トラウマに適応した神経系がどのように痛みを脳に伝えているのか、患者を教育する必要があります。
そして、患者さんがその関係を理解し、受け入れ始めたら、精神的トラウマの治療を開始し、私たち医療者は、単なる痛みの管理を超えて、完全な痛みの回復へと向かうことができるのです。
 
2023年01月04日 21:14

筋痛治療 その前に筋膜について

咬筋説明
筋痛治療を詳しく調べると、痛み治療の対象は赤い筋線維ではなく、白い筋膜である事が判ります。筋の周り、筋の内部にある筋膜、そして、靱帯、腱は筋膜に連続するものであり。筋膜に類似した特徴をもっていて、痛みを発しています。本稿では筋膜痛治療について概説します。
私の筋・筋膜疼痛の治療は超音波照射併用の筋膜リリースと筋膜マニュプレーションをメインとして、時々、筋膜マニュプレーションで解れない場合にトリガーポイントインジェクションを行うことです。
咬筋の解剖
腱腱膜過形成症という病気があり、重症の開口障害の原因の一つである。何故、咬筋に腱腱膜過形成症が生ずるのか、それは咬筋の解剖学的特性にあります。日本のクリスマスの定番はクリスマスケーキとチキン、今年もケンタッキーフライドチキンが賑わっていました。海外では七面鳥が定番です、始まりは、アメリカへの移住者が収穫祭をした際に、食べ物の栽培法を教わった先住民のネイティブアメリカンを招いて一緒に祝った、感謝祭です。アメリカでは今でもお祝いの際にはターキーが定番です。
ここまで書くとチキン、ターキーのもも肉が思い浮かんだと思います。あなたの頬に付いている咬筋も同じような構造と思うでしょうが、全く異なります。チキン、ターキーのもも肉が人間の咬筋と同じ構造をしていたら、今の様に感謝祭、クリスマスの定番にはならなかったでしょう。単純に言うと咬筋はスジだらけです。筋膜、腱、腱膜がいっぱいです。
この解剖学的特徴が筋痛、つまり筋膜痛を起こしやすい理由と思います。
腱腱膜過形成症に至るまえに、咬筋に過剰な負荷が掛かるといっぱいある筋膜、腱、腱膜の機能異常が生じて痛みを発したり、伸展障害により開口制限が生じます。
と言うことで、年始のブログ第一弾は筋膜について簡単な解説をしました。
 
2023年01月02日 18:44

痛覚変調性疼痛について

痛覚変調性疼痛と言う用語が2021年に出現しました。侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛と共に心因性疼痛に代わる第3の痛みと宣伝されています。私はこの痛覚変調性疼痛が臨床的にどの様な痛みをさすのかが興味津々、従来の持続性特発性疼痛は痛覚変調性疼痛だと言う人もいますが、そう言い切るのはまだ早いでしょうと思っています。
痛覚変調性疼痛とはどの様な事をさすのか、まだ誰も良く理解出来ていないような気がします。
1.危惧:国々によって言語、文化、社会が異なる、言語毎に翻訳されると、Nociplastic Painとして世界共通の理解ができるのかが疑問である。実際に日本では、Nociplastic Painそのものではなく、日本語になった痛覚変調性疼痛について時間とともに理解が深まっていくのでしょう。痛覚変調性疼痛という用語自体がしっくりする言葉だけに痛覚が変調した結果の痛みとして、Nociplastic Painの真意から離れていくのではないかと不安、心配なこともあります。それがどの様な病態、病状なのか、これが痛覚変調性疼痛だ、と言うような具体的な病名が出て来たときに世界共通かどうか。もし、世界共通な痛覚変調性疼痛があったとして、それはごく少数だろうと思います。
 
2.和嶋の理解
NociplasticPainとは、「侵害受容器、神経系の異常という質的原因がないにも関わらず、侵害受容性様の痛みが可塑的に続く状態」とも理解出来る。
そして、具体的にどんな状態と聞かれるとかなり苦しい、PTSD的に痛みが記憶に残った状態とすればなんとなく判るが、これには痛覚が変調は見えないが。
 
3.よくわからない点
先日の日本口腔顔面痛学会学術大会で、痛覚変調性疼痛と中枢感作はどちら上流にあると考えれば良いのかの質問に対して、中枢感作は痛覚変調性疼痛の表現形の一つであるとの答えとともに、基礎研究者の考えるNociplastic Painそのものか、あるいはNociplastic Painを生ずる状況は中枢神経系において相当大きな機能変化であり、痛覚変調性疼痛が生ずる状況ではその発現型は痛みに留まらず、自律神経、感情の変化も生ずる状況であるとの返答。
ここで言っている中枢神経系における相当大きな機能変化とはどの様な状況なのか、今までもあったはずなのに把握されていなかったことなのか、不明
痛みとともに自律神経失調状況や感情変化も生じているというが、痛覚変調性疼痛はこのように捉えるべきものなのか、不明
痛覚変調性疼痛は中枢神経系の大きな機能変化の1つの発現系として、メカニズムとして中枢感作が介在して出現するということであり、中枢感作は生体の原始的自己防衛機能としてかなり原始的生物にもあるらしい。そうすると、中枢感作を生ずる要因は原始的なことなのか、不明
長年、心因性疼痛として、不安、怒り、哀しみ、憎しみなどのより生じていた痛みがあります。臨床的によく診る不安がつのった時の痛みは、元からあった痛みは強くなっていないのに、感じ方が変わって強く痛みを感じている状況で、これこそが純粋な痛覚変調性疼痛なのではないかと思っています。
従って、私は固有名詞としてこれが痛覚変調性疼痛と病名が出てくるのではなく、元からある病態に修飾子として痛覚変調性疼痛がくっ付く状態になるのではないかと思っています。
2022年最後の雑感としてまとめてみました、2023年には最新情報とともに理解が変化すると思います。
 
2022年12月30日 19:24

臨床推論先取り

2022年1月から月刊デンタルダイヤモンド誌に「症例に学ぶ診断マスターへの道」として、症例を挙げてパターン認識法で診断エラー、仮説演繹法で正しい診断、最後に全体を省察する体裁で連載している。好評につき2023年も続くこととなった。
文部科学省から2022年11月に公表された「歯学教育モデル・コアカリキュラム(2022年度改訂版)」の最大のトピックスは臨床推論が取り入れられた事である。そして、「臨床推論では可能性のある症候や病態から原因疾患を鑑別診断するプロセスが重視され、原因疾患を単純に全て暗記することを期待しているものではない。」と記載され、直感的思考(パターン認識法)から分析的臨床診断推論への改善が求められたと理解される。
本連載の目的は、一般臨床医および口腔顔面痛初学者の痛み診断精度の向である。
臨床医の診断精度を上げるには、知識的な勉強だけではなく、自分でうまく診断できなかった症例、つまり、診断エラーを経験しながら、その症例から学び続ける事によって最も確かな診断能力を獲得出来ると言われていて、これを紙上再現しようという企画である。
痛み診断について特に教育を受けていない一般臨床医に対して、ややこしい痛みを診る際に、直感的思考(イメージ診断、パターン認識法)に加えて分析的臨床診断推論を用いて診断に当たって欲しいという意図から、具体的に症例を挙げて、パターン認識法で診断エラーした後に、代表的分析的臨床診断推論の仮説演繹法を用いて正しい診断に至る過程を解説している。パターン認識法には各種の認知バイアスが入り易く、特に、忙しい、体調不良、周囲があわただしい、次の患者が待っているなどの劣状況にある際に認知バイアスが入り込んで診断エラーを起こしやすいと言われている。仮説演繹法で正しい診断を得た後に、パターン認識法ではなぜ診断エラーしたのかを振り返って、次の診断に活かすという省察についても解説している。
表面的にはパターン認識法が良くなく、常に分析的臨床診断推論をしなければならない様に思えるが、、真のねらいは、読者の皆さんが紙上でパターン認識法で診断エラー、仮説演繹法で正しい診断することを経験してもらい、全体を省察することにより、パターン認識法のSouceである症例パターンを増やしてもらい、実際に同様の症例を経験したときにパターン認識法で正しく診断出来るようになってもらう事である。
本連載は「歯学教育モデル・コアカリキュラム(2022年度改訂版)」の臨床推論を先取りしたものであり、今後、学生さんの教育資料にもなり得ると思っている。



 
2022年12月04日 07:40

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