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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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顎関節症治療

顎関節症はどの様な病気か

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かつて「顎関節症」の原因は「咬み合わせ」にあるという考えが定説でしたが、この20年の間の研究により、顎関節症の原因は多因子で、かみ合わせの異常はその中の一つに過ぎないことが科学的に立証されています。しかし、今でも歯列矯正や歯冠修復で顎関節症が治ると考えている歯科医師は多いようです。
現在、顎関節症を口腔顔面痛のひとつとしてとらえ、Bio(身体)-Psycho(心理、精神)-Social(社会、環境)な要因という複合的な要因で引き起こされる疾患だと考えるのが国際的常識です。
最初に顎関節症の症状を簡単に説明します。顎関節症という病名は顎関節と咀嚼筋および頚部筋の様々な障害をまとめた病名です。顎関節症の代表的な症状は「あごが痛い」、「口が大きく開けられない」、「あごを動かすと音がする」の三つです。これらの症状が一つだけで起こることよりも、2つ以上の症状が重なって起こることが多いです。
    下段の慶應病院医療情報サイトKOMPASも参照してください

あごが痛い

患者さんの訴える症状で一番多いのが「あごの痛み」です。顎関節症の痛みは口を開け閉めした時など、あごを動かしたときに出ます。筋肉の痛みの場合はじっとしていても鈍い痛み感じられることもありますが、そのような場合にはかみしめると痛みが強くなります。じっとしていてもあごが痛く、あごを動かしたり、かみしめても痛みが同じ場合には顎関節症の痛みではないと考えられます。

口を大きく開けられない

あごの痛みの次に多い症状が「口を大きく開けられない」です。無理に開けようとすると、痛みを伴うことがあります。突然に口が開かなくなる場合や普段から少し開きにくい状況があって、気がついたらほとんど開かないといった状態になることなど様々なケースがあります。正常な開口量は40-50mmで、縦にそろえた人差し指、中指、薬指が入ります。指3本が入らない場合には何処かに具合が悪いところがあると思います。

関節雑音

あごを動かしたときに音がすることがあります。耳障りで気になる場合には関節雑音と呼びます。関節の音は「カクン、コックン、カリッ」といった音から「ジャリジャリ、ゴリゴリ、ミシミシ」という音まですることがあります。このような音は関節内の構造に変化が起こっているために生じます。原因の多くは力のかかりすぎです。関節の音が気になって来院される方がいますが、関節の音だけの場合には治療の必要はありません。逆に治療すると、音が小さくなりますが、完全に消えることがありません。但し、関節雑音とともに、痛みや開口障害がある場合には治療することをお勧めします。

現在の顎関節症治療について

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従来、顎関節症の主な原因はかみ合わせの異常と考えられていましたが、最近では顎関節症の原因は多因子でかみあわせの異常は原因の一つにすぎないと考えられています。顎関節症の原因は直接的にあごに負担をかける歯ぎしり、くいしばりなどの本来のあごの機能ではない行動と、そのような非機能的行動を強めてしまう心理精神的背景因子に分けられます。

日中、睡眠中のくいしばりが筋肉を緊張させ顎関節症の発症に大きく影響しています。次に睡眠中の歯ぎしりは関節に大きな負担をかけて、関節痛を発症させます。
これらの歯ぎしり、くいしばりは精神的緊張状態で強くなります。精神的ストレスが加わると睡眠状態がわるくなり、歯ぎしりが強くなったり、くいしばりが強くなったりします。従って、元々、神経質な性格の人が、生活環境でストレスを感じることが多いと、日中は緊張状態になり、典型的には肩が挙がり、顔はこわばり、くいしばって生活している、そして、夜間は寝付きが悪い、熟睡できない、時々目が覚めてしまうなどの睡眠障害が生じ、歯ぎしりが強くなったり、くいしばりが強くなったり、その結果、寝る前よりも起床時の方が疲れているという状況が起こる事があります。
これらの原因に対する治療として、日中のくいしばりに対して、くいしばりが現在の病態の原因になっていることを理解してもらい、それを止めるように指導します。歯ぎしりはこれを止めるのではなく、関節への負荷を軽減させる目的で側方ガイドを付けたスプリントを就寝中に装着してもらいます。
関節の痛みに対しては安静と負荷の軽減(硬固物の咀嚼、患側での咀嚼、大開口の禁止)を指示し、疼痛の強い場合には非ステロイド系消炎鎮痛薬を投与します。また、筋の痛みに対しては負荷の軽減(硬固物の咀嚼、患側での咀嚼の禁止、かみしめの中止)およびホットパック、大開口による筋ストレッチを指示します。

多くの患者さんはこのような治療によって、症状が改善します。ところが、歯ぎしりによって関節に負担がかかり関節痛が生じている例で、睡眠中にスプリントを使えば症状が改善するだろうと思われても、神経質な性格の方はスプリントが気になって睡眠時に使うことができません。精神的ストレスが強い時には自律神経の一つである交感神経が過剰に緊張した状態になっています、また、不安、怒りなどによって痛みを感じる神経が過敏になっています。そのため、通常の治療では改善できないことが多いです。事前に心理精神的背景因子を見極めて、一般的顎関節症の治療を行う前にカウンセリングをして、患者さんの話を聞くことからはじめます。患者さんの中には自分の性格や今の生活環境と顎関節症が関連していることを知って驚く人もいます。関連性に気づいてもらえば症状に対する不安がなくなり、更に、顎関節症の治療におけるセルフケアの意味や重要性を理解してもらえ、症状への不安が消えて、改善に向かうことが出来ます。

国際的な顎関節症の捉え方

現在国際的に、顎関節症治療の考え方はどうなっているか、どの様な考えが標準的であるか

顎関節症は顎関節、咀嚼筋やかみ合わせの不具合だけでなく、様々な症状が出ます。
それは顎関節症の原因が単純にかみ合わせの異常、歯ぎしり、くいしばりだけでなく、Bio(身体)-Psycho(心理、精神)-Social(社会、環境)な要因が影響する病気だからです。従って、かみ合わせを直しただけ、歯ぎしり、くいしばり対策をしただけではちゃんと治りません。Bio(身体)-Psycho(心理、精神)-Social(社会、環境)全てに対応する必要があります。

当クリニックでは、最初にじっくりと話を聞いて問題点を明らかにし、そのもとになっている原因、病態を包括的な診査で探し出すことからはじめます。治療で最も大事な事は患者さんが自分の病気を知ることです。そして、その改善の為に患者さん自身でセルフケアをすることが必要です、患者さんが納得し、上手くできるまで指導します。生活習慣や環境を少し変える必要が出てくることもあります。もちろん、必要に応じて、鎮痛薬の処方、スプリント作成なども行います。

顎関節症治療

紹介されて来る患者さんの特徴 顎関節症の患者さんは顎関節症の病態だけでなく、Bio(身体面)-Psycho(心理、精神面)-Social(家族、環境面)疾患モデルに当てはめて、顎関節症を持った患者さんとしてとらえます。

Bio(身体面)
  1. 最も多い病態は筋痛障害である
  2. 病態が単一ではなく、筋痛、関節痛、開口障害が重複している
  3. 咬合状態は概して悪くない。
  4. 関節痛からの回避、防御的筋緊張、筋痛による緊張などにより、結果的にかみ合わせがズレていることがある。かみ合わせ異和感とは異なる
  5. 偏咀嚼している側に発症していることが多い。偏咀嚼の原因は不明なことが多い。
  6. 歯ぎしり、くいしばりなどで顎に過剰な負荷がかかり、咀嚼筋は肥大していることが多い。
  7. 随意的には正常の顎運動ができるが、 不随意に下顎が こわばっている。
Psycho(心理、精神面)
  1. かみ合わせの異和感を感じて、かみ合わせの治療を何回も受けている。
  2. 頻回の咬合治療の後にさらなる、かみ合わせの治療を希望する人
  3. これまでのかみ合わせ治療を後悔して、やらなければよかったと思っている人
  4. 神経質(生真面目)な性格、完璧にこだわる、ネガティブなとらえ方
  5. 心身症的反応が出やすく、ストレスに気づいていないが、身体が無意識に反応して、筋緊張が生じている場合もある
  6. 典型的心身症症状の胃腸障害、過敏性腸症候群を併発している
  7. 精神的ストレスにより発症することが多い、また、症状が続くことにより精神的ストレスが生ずる事もある
  8. 過緊張状態、肉体的にも精神的にも張りつめていて、リラックスしたくても緊張を解くことができない状態になっている。
  9. 睡眠障害があり、寝つきが悪い、熟睡できない、途中覚醒が数回ある、典型的には起床時に疲労感が増している事がある
  10. 医療不信が生じている これまでの治療の場面で医師の何気ない言動 に敏感になっていて、すべてにネガティブな思考傾向になっている
Social(家族、環境面)
  1. 発症のきっかけとして、ストレスになるイベントがあった
  2. 家族環境の変化によって、一時的な適応障害に陥いることが発症因子になっていることがある。
  3. ご両親の介護による過緊張状態になっている頻度が高い
  4. 妊娠、出産、育児による頑張り、要は過緊張状態
  5. 妊娠を望み不妊治療をしている方、本人、周囲の期待、高額な費用、年齢等から焦りが生じ、それが誘因になっていることもある

どの様な治療をするか

基本的対応

  1. まず、良い医者患者関係を構築し、一緒に病気に対応していく  傾聴、受容、共感
  2. これまでの治療に関する不安・不満・怒りなどを表出してもらい受容する。
  3. これまでの事は変えられません、しかし、「これからできることを、一緒にやってみませんか」
  4. 疾患教育 病態のある部分の正常像を説明する、患者さんの現在の状況、病態を説明して、自分の病気を正しく理解してもらう。
  5. 特に、かみ合わせの異常は原因ではなく、結果的に生ずる、従って、かみ合わせの異常は治療対象では無い
  6. 何が原因で現在の症状が生じたかを説明し、理解してもらう
  7. 原因と症状が点と線で結ばれるのでは無く、患者さん自身の性格、心理状況、家族関係、生活環境などが影響することを知ってもらい、検討する。

慶應病院KOMPASを参照

和嶋が慶應義塾大学在籍中に書いた、慶應病院 医療情報サイトKOMPASを参照してください。顎関節症の簡単なチェックリストや症状診査法、病態そして、標準的な治療法が解説されています。
KOMPASは慶應義塾大学病院の医師、医療スタッフが作成したオリジナルの医療・健康情報が収載されています。様々な病気について詳しく解説されています、是非参照してください。
顎関節症
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000319.html

新しい医療 顎関節症治療のトピックス
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000916.html
 

顎関節症に関してよくある質問

よくあるご質問
顎関節症に関して、よくある質問に答えます

質問:顎関節症はかみ合わせが悪い事が原因ですか

顎関節症の原因に関して、以前はかみ合わせの異常が主な原因といわれていましたが、現在は大きく変わっています。
現在、顎関節症の原因は多因子性で、多くの原因の一つとして、かみ合わせの異常があります。主な原因はくいしばり、歯ぎしりなど顎に余計な力をかける動作であると言われています。従って、顎関節症の治療では最初にかみ合わせの治療をすることはありません。

質問:
矯正でかみ合わせを治すと顎関節症が治りますか?
歯を削り、被せたりしてかみ合わせを治すと顎関節症が治りますか?
顎関節症の治療には手術が必要ですか、手術をすると治りますか?

この三つの質問に対してはまとめて答えさせていただきます。
現在、顎関節症の治療に関して、現時点における最も標準の見解は、2010 年 3 月米国歯科研究学会(American Academy of Dental Research,AADR)が出した「顎関節症の診断と治療に関する基本声明(Policy Statement)」です。ここに書かれている内容を抜粋して簡単に説明します。

  1. 顎関節症 は時間経過とともに改善し,治癒していく疾患である
  2. 顎関節症 患者の治療の第一選択は,保存的で可逆的かつ証拠に基づく治療法が強く薦められる.
  3. 保存的療法の多くがほとんどの侵襲的な治療法と少なくとも同程度に症状の改善をもたらす。
  4. 保存的療法は不可逆的な変化を起こさないため,害をもたらすリスクは格段に少ない。
保存的とは手術とか歯を削るとかの侵襲的ではない、歯を削るとか矯正とかとは異なる可逆的治療のことです。例えばセルフケア、スプリント、理学療法、薬の治療とかを指します。これらの治療によって侵襲的な治療と同等の効果があり、なおかつ、害が生じません。これらの事から当院では顎関節症治療の為には矯正治療や歯を削ったり、かぶせたりする、いわゆる咬合治療は行いません。顎関節症のほとんどは手術をしなくても治ります。手術が必要な例は特殊な例です。

質問:スプリントは顎関節症に有効ですか

顎関節症治療というとスプリントが有効と言われますが、スプリントはオールマイティーではありません。
歯ぎしりが原因で関節痛が生じている場合には歯ぎしり対策の調整を施したスプリントは有効です。しかし、作ったままのスプリントでは効果は得られません。きちんと調整が必要です。
顎関節症があっても、睡眠障害がある場合にはスプリントを入れると睡眠がもっと悪くなり症状が増悪する事が多いので、スプリントは使えません。従って、一概にスプリントが顎関節症に有効であるとは言えません。
当院では、睡眠障害を含めて症状、原因をしっかり診査して、スプリント治療を行うかどうかを決めます。

質問:固いものを咬んでアゴを鍛えると顎関節症が予防出来ますか

顎関節症の主な原因はくいしばり、歯ぎしりなど顎に余計な力をかける動作であると言われ、治療では負担を減らすことを指導します。
顎関節症の患者さんは顎が華奢な人よりも、筋肉が大きく顎が張っている人が多いです。また、顎関節症のきっかけは美味しいフランスパンを食べ過ぎたとか、スルメを咬みすぎたとか、負担が掛かることが多いです。従って、固いものを咬んであごを鍛えるというのは、顎関節症の予防になるのではなく、逆に作用して原因になることがあります。また、ガムをかみすぎるのも同様なことで顎関節症の原因になることがあります。是非お止めください。
 

質問:子供が歯ぎしりします、歯がすり減りそうです、何か治療した方が良いでしょうか

歯ぎしりが顎関節症の主な原因の一つであると、他の項で書きましたから、子供さんの歯ぎしりがもっと気になる人がいると思います。結論から言うと、子供の歯ぎしりは心配入りません。乳歯の頃の歯ぎしりはギリギリする事によって、刺激が歯を介して顎の骨に伝わり、顎が大きくなろうとする潜在能力を刺激して、顎の骨の成長発達を促しています。
乳歯が永久歯に生え換わる頃にはかなりすり減り、前歯では上下の歯が揃うくらいになっています。
心配いりませんし、スプリントを入れるなどの治療の必要もありません。  

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