▲トップへ

タイトルサンプル

口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

HOMEブログページ ≫ 2026年 ≫

2026年の記事:ブログページ

慢性疼痛と痛覚変調性疼痛、Chronic Overlapping pain conditions

慢性疼痛と痛覚変調性疼痛、Chronic Overlapping pain conditions
ケガや病気が通常治るのに要する期間(通常3ヶ月以上)を超えて持続する痛みを慢性疼痛と言います。原因が不明な場合や原因が判っていても取り除くことが出来ない場合があり、痛みが「病気そのもの」であります。多くの慢性痛は痛みの信号の発生が続かなくても、情動体験が脳によって認識・解釈されて「感情、持続的な主観的体験」として脳に蓄えられ、さまざまな情報が統合されて、苦痛を感じる状態です。
WHOが作成する病気の国際分類の最新版であるICD-11 International Classification of Diseases, 11th Revision)に初めて慢性疼痛の分類が含まれました。
慢性痛の大分類では、原因不明を一次性(ICD-112022)(ICHD-3、ICOPでは特発性)とし、元の原因が判っている場合を二次性に分類しています。
一次性は原因不明が原則ですが、最近になり一次性の主たる病態は痛覚変調性疼痛だろうと言われています。痛覚変調性疼痛は2017年にNociplasticPainとして提唱され、その基本的メカニズムは中枢感作だとされています。
世界的に痛覚変調性疼痛が注目されていますが、米国ではW.Maixerをはじめとする研究者達が TMDのOPPERA研究のなかで慢性TMDの多くはChronic Overlapping pain Conditions(慢性重複疼痛疾患)の一部になっていると主張していました。Chronic Overlapping pain conditionsは慢性疼痛障害の集合体で、同一人物に併発することが多く、痛覚変調性疼痛を共通のメカニズムにすることや女性における高い罹患率を特徴とします。顎関節症(TMD)、慢性緊張型頭痛、慢性片頭痛、慢性腰痛、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、線維筋痛症(FM)、子宮内膜症、外陰部痛、過敏性腸症候群(IBS)、間質性膀胱炎/疼痛性膀胱症候群(IC/PBS)などの疾患が含まれ、多くの場合、疲労、睡眠障害、気分の変化を伴います。米国国立衛生研究所(NIH)は、これらの疾患は従来の単一専門分野での医療アプローチの範囲外にあり、単独疾患としての治療では適切な治療が出来ないことが多いため、専門的な研究の必要性を強調している。
最近になってChronic Overlapping pain conditionsと痛覚変調性疼痛は共通して中枢感作を基本メカニズムとする病態であろうと言われています。つまり、慢性TMDの多くは痛覚変調性疼痛であり、Chronic Overlapping pain conditionsの部分症であると言えるということです。その他に関連する用語として、身体化障害、機能性身体症候群、Medically Unexplained Symptoms、ICD-11身体的苦痛症(BDD)があります。
精神科病名である身体症状症(Somatic Symptom Disorder DSM-5:SSD)は 医学的な異常が明確でないにもかかわらず、痛みの慢性化や身体症状に対する強い不安・過剰な認知・行動(頻回のインターネット検索、病院受診等)が日常生活に支障をきたしている状態を指す精神疾患ですが、痛覚変調性疼痛の精神的側面からの診断とも言えると思っています。
 
2026年05月10日 13:38

痛みの二面性(苦、痛 )が慢性化によりそれぞれの特性顕在化

痛みの二面性が慢性化によりそれぞれの特性がよりはっきり
40年ぶりに改訂された最新の国際疼痛学会の「痛みの定義」にも示されているように、痛みとは、組織の損傷(tissue injury)やその可能性(有害刺激)を検知し、痛みを引き起こす感覚メカニズム(Nociceptive) により生ずる「不快な感覚・情動体験」です。「感覚・情動体験」とは、感覚体験(sensory)と情動体験(emotional )の両方を含んでいて、「痛み刺激が加わったときの感覚(痛覚:sensory)」に情動(emotional )が相まって「痛み」として感じられるということです。さらに、「痛み(苦emotional痛sensory )」の感じ方はsensory系、 emotionalの修飾を受けて変化するために、必ずしも痛み刺激に比例しません。
この「痛み(苦emotional、痛sensory )」二つの側面が慢性痛では情動が感情(脳が認識・解釈した「持続的な主観的体験」)となりよりはっきりとその特性を示します。
ケガや病気が通常治るのに要する期間(通常3ヶ月以上)を超えて持続する痛みを慢性疼痛と言います。原因が不明な場合や原因が判っていても取り除くことが出来ない場合があり、痛みが「病気そのもの」であります。多くの慢性痛は痛みの信号の発生が続かなくても、情動体験が脳によって認識・解釈されて「感情、持続的な主観的体験」として脳に蓄えられ、さまざまな情報が統合されて、苦痛を感じる状態です。
私の慢性痛のメカニズム仮説として、「痛み(苦emotional、痛sensory )」の二つの側面によって生ずると判りやすくなると思っています。
  • 感覚体験(sensory)の元である痛み信号が感覚神経系を刺激して機能変化が生じた状態である中枢感作。
  • 情動体験(Emotional )が脳によって認識・解釈されてマイナスの「感情(Feeling)、持続的な主観的体験」として脳に記憶された状態、痛みのPTSDとでもいうべき状態。
慢性痛では上記の二つの側面が合わさって生じているのだろうと思っています。
慢性痛の解説は別報で解説します。
 
2026年05月10日 13:28

歯痛の窓口でセカンドオピニオン

歯痛の窓口でセカンドオピニオン
医療の世界ではセカンドオピニオンという言葉が一般的になっています。例えばガンの診断を受けて、ある治療法を提示された人が、診断に関して、治療法に関して他の医者の意見を聞くという事です。セカンドオピニオンを聞こうとする人は最初の医者が信用できないという場合もあるでしょうが、診断、治療に関して自分自身が納得出来ないために、他の医者の意見も聞きたいということが多いようです。
現在の医療は診断が決まると、それに対する治療法はガイドライン等で標準化されています。とはいえ、問題はあって、ある患者さんに対する検査、診察から診断は異なる可能性があります。
発展途上の口腔顔面痛ではこの検査、診察による診断に大きな差があります、診断が異なれば治療法も変わります。結果的に治るか治らないかの差になります。当然、この差は大きな問題で、日本口腔顔面痛学会では最上の医療を何処でも受けられるように活動をしていますが、まだまだ均てん化には到っていません。
主題に戻って、たかが歯痛でセカンドオピニオンは大げさだと思われるかもしれませんが、納得いかないままに治療を受けて、後に痛みや咬んだ時の不快感が残る可能性がいくらかでもあるならば専門歯科医師の見立てを求めることを見当すべきです。歯痛でもっと気軽にセカンドオピニオンを受けられるように「歯痛の窓口」という受け口をつくるのはどうかと思っています。
2026年05月10日 09:57

募集案内:2026診察法実技指導セミナー

2026 顎関節症・口腔顔面痛 診査法実技指導セミナー
― 明日から診療で使える「正しい診察・診断」を身につける ―

 

顎関節症や口腔顔面痛の患者さんに対して、
  • どこまで一般歯科で対応すべきか迷う
  • 痛みの原因が関節なのか筋肉なのか判断しにくい
  • 原因に関して咬合異常以外のことを知らない
  • 顔面の痛みやしびれへの対応に自信がない
そのように感じたことはないでしょうか。
顎関節症・口腔顔面痛の診療では、治療以上に「最初の診察・診断」が重要です。しかし、実際の診査法を実技として学ぶ機会は非常に限られているのが現状です。
そこで本セミナーでは、一般歯科の先生方が臨床で困りやすい症例に対応できるよう、診断に必要な診察技術を、オンライン講義+少人数対面実技で丁寧に指導します。

昨年度受講された先生方から再受講の希望もあり、内容の充実度には高い評価をいただいています。
本セミナー開催に当たっての和嶋の考えをまとめてあります。 実技指導セミナー企画意図    ハイブリッドセミナー

このセミナーで身につくこと
  • 顎関節痛の正しい診察法
  • 筋・筋膜性疼痛の診査法
  • 口腔・顔面の感覚検査
  • 脳神経診査の基本
  • 顎関節症・口腔顔面痛の臨床診断推論
  • 筋・筋膜性疼痛の基本的治療法
    「何を診れば診断できるのか」、「どこで専門医紹介を判断するのか」が明確になります。

開催形式
オンライン+対面ハイブリッドセミナー
1)オンライン講義(2時間 × 4回)
 診査法と診断の考え方を分かりやすく解説

2)対面少人数実技指導(5時間)
 実際に診察手技を体験しながら習得 会場:元赤坂デンタルクリニック

3)フォローアップオンライン(2時間 × 1回)
 実践後の疑問点を解消

4)専門クリニック診療見学(希望者)
 東京:元赤坂デンタルクリニック
 札幌:風の杜歯科

日程
  • 5月11日(月)オンライン
  • 6月8日(月)オンライン
  • 6月22日(月)オンライン
  • 7月6日(月)オンライン
  • 7月19日(日)対面実技
  • 8月24日(月)オンライン
  • 診療見学:日程応相談
※オンライン 20:00–22:00 ※対面 10:00–16:00

募集人数  新規受講者 5名限定
少人数制のため、実際の診察技術を直接丁寧に指導します。

受講料 7万円 (対面実技・オンラインフォロー・診療見学を含む)

このような先生におすすめ
  • 顎関節症、口腔顔面痛診療に苦手意識がある一般歯科医
  • 若手勤務医
  • 開業医で診断力を高めたい先生
  • 口腔顔面痛診療を基礎から学びたい先生
顎関節症/口腔顔面痛の臨床経験は問いません。 基本的な歯科診療経験があれば受講可能です。

応募締切  4月12日(日)
申込方法 メール:wajima.ofp@gmail.com
記載事項: 氏名/所属/年齢/メールアドレス



 
2026年03月19日 15:53

共感の再考

2026年度 京都大学特色入試の問題に知り合いの著書からの引用がありました
設問の元となった文の一部を抜粋します、
「ケアする側が「あなたの話に共感しました」などということも避けるべきです。共感という言葉は、話し手が共感して聞いてもらえたと感じたときに使われる言葉であり、聞き手が使うべきではないからです。」
出典 「<いのち>をケアする医療」加藤眞三著


医療面接における傾聴、受容、共感 は聞き手、医療者側の行為だと理解していましたが、この文では共感は聞き手ではなく、話し手、患者側の行為としています。  
確かに、聞き手、医療者が単純に共感しても疲れるだけです。大事なのは共感的態度です。

情動的共感に対して、認知的共感、共感的理解 と言う言葉があり、 認知的共感、共感的理解  での共感は情動ではなく、認知、理解することに重点がありますが やはり聞き手側の行為です。
認知行動療法、動機づけ面接など心理教育では、結果的に話し手、患者がどう変わるかが大事で、


聞き手が共感的態度で、患者の解釈モデルを正しく把握できると、
話し手は「聴いてもらえた」と感じ、場合により 「共感してもらえた」と感じれば、話し手の患者は気持ちが動き、患者主体で認知の変容、行動変容など次のステップに進みやすくなる、目的達成
と言う私の理解に到り、
「共感は聞き手ではなく、話し手、患者側の行為」という指摘は大胆ながら的を射ていると 思いました。 
 
2026年03月09日 16:00

学術大会会場集合は時代錯誤

今後の学会学術大会の開催形式について
コロナ禍によりリモートワークが拡がり、会社に出社しなくても仕事が出来ることが判りました、強制的社会実験でした。やはり、対面の機会も必要と言うことで出社する日が増えているようですが、使い分けができることは明らかになりました。
さて、学会学術大会をみるとコロナ禍の2-3年はオンライン開催でしたが、今はほとんど会場開催に戻っています。コロナ渦中のオンライン開催は今後の学術大会の開催形式を見直す良い機会だったと思うのですが、会場開催のメリットがそれ程多いのか、学術大会は会場開催という固定観念なのか。
コロナ禍以降、有料、無料のオンラインセミナーが非常に増えました、その理由は主催側では会場設定の手間費用が省かれたことによりセミナーを企画しやすくなったこと、参加者側は会場への往復の時間費用が不要になり、自宅で仕事が終わった後に参加できるようになったことなどだと思います。
私は2017年大学退職後、それまで医局内で行っていた症例検討会を発展させた内容でOn-lineセミナーを始めました。当時は今ほどZoom、GoogleMeetが使いやすくなく、慶應のシステムを使わせてもらっても時間制限、参加人数制限があり、GoogleMeetが時間制限無し、参加人数24人だったので、これを使い続けています。毎月第4土曜日の午後8時から約2時間いろいろなテーマで話して、参加者の皆さんとデスカッションしています。昔なら、会場を設定して、皆さんに集まってもらわなければならなかったのが北海道の先生も九州の先生も自宅から参加できるのですから本当に便利です。
On-lineセミナーの状況をみると、従来は学術大会の会場でしか聞けなかった講演がOn-lineで出来てしまう、大会場ではないことにより圧迫感、緊張感が下がりデスカッションがしやすくなっているというメリットがあります。学術大会であれ講演はOn-line、ポスターはPDFで充分です。お金を掛けるのは会場費ではなく、講演を事前収録してアーカイブに保存し、学術大会期日前にオンデマンドで視聴できるようにする。それでは会場参加、対面のメリットは何か、久し振りにあった旧友と雑談、臨床の疑問のヒントを交換、会場では事前に視聴した講演について演者とデスカッションする事でしょう。反転授業と言う授業形式があります。反転授業(Flipped Classroom)は、従来の「教室で講義、自宅で宿題」という学習手順を逆転させ、自宅で動画等の動画視聴で予習し、教室ではディスカッションや問題演習を行う教育手法です。知識の定着を高め、主体的な「アクティブ・ラーニング」を促進する効果があります。我田引水ですが、私は北海道大学の歯学部4年生のフロンティア歯学の中で痛みについて講義していて、コロナ禍以前から反転授業をしています。講義内容は事前にパワーポイントスライドショーにして視聴してもらい、講義担当時間はコロナ禍の間は学生さんは自宅で、コロナ以降は大学の講義室に集まってもらい質疑応答をしています。事前学習しているだけに鋭い質問も出てきます。
学術大会会場開催のメリットはハンズオンです、少人数の参加者に適切な人数のインストラクターがついて、診査法、手技による治療、ロールプレーなどを行うことだと思っています。
昨年の東京ビックサイトでのJapan pain Weekと称した痛み学会の合同学術大会は時代錯誤と思っています。同日ビックサイトの他会場で開催されていたのはコンピューター関連、半導体関連の見本市です、DXでもどうにもならない手に取って見れる機会を設けていました。
 
2026年02月18日 15:01

冷却スプレーと診断的局所麻酔は歯痛鑑別診断で非常に有用

冷却スプレーと診断的局所麻酔は歯痛鑑別診断で非常に有用
 
口腔顔面痛の臨床では歯原性歯痛と非歯原性歯痛の鑑別診断のために冷却スプレーと診断的局所麻酔を頻用しています。
冷却スプレーを湿らせた綿棒に吹きかけると瞬時に約10度以下になります。これを健全歯の歯頚部に押しつけると5秒程度で冷たさを感じます。知覚過敏の歯では瞬時にズキンとした刺激痛が感じられ、数秒持続します。神経が死んでいる歯では当然何も反応がありません。一方、歯髄炎の場合には歯冠部歯髄だけの軽度の炎症でもズキンとした刺激痛に続いてドックンドックンとした拍動性の持続痛が生じます。歯髄の炎症が進行して根尖部まで進み、根尖の歯髄のみが炎症を起こしている場合には冷却綿棒を当ててから数秒して拍動性の持続痛が始まります。電気歯髄診断器は神経が生きている場合にビリビリと感じて歯髄の生死が判りますが、継発して痛みが生ずることがありません。冷刺激により痛みを発症させるのは患者としては負担になりますが、診断が確定されることが大きなポイントです。冷刺激により持続性の痛みが出てしまったら、すぐに局所麻酔をして痛みを止めて、抜髄処置等を行います。
このような状況で行った麻酔によって痛みが消えたと言う事は、この歯が痛みの発生源であったということの証明になります。そして、これが診断的局所麻酔の真価です。
例えば、患者さんがこの歯が痛いと訴えて来院した、診察したが患者さんがこの歯が痛いと言う歯には齲歯はなく、打診、冷刺激に反応せず、レントゲンでも異常は見つからない、さあどうしましょうか。患者さんが訴えた歯に本当に異常が無いかどうかを更に調べ、多少でも疑いがある場合には、特に今現在、自発痛がある場合にはその歯に診断的に局所麻酔をします。それに寄って痛みが消えた場合はやはりその歯が原因である可能性が高いと言う事になり、原因の精査をします。
患者さんが痛みを訴える歯が原因でない可能性が高い場合には他に歯に痛みがないかどうか、打診痛、冷刺激で反応を調べます。患者さんは下の歯が痛いと訴えたが上の歯であったり、その反対であったりすることも往々にしてあります。そして、打診痛、冷刺激で反応があった場合には痛みの原因になり得るかどうかを確認し、可能性がある場合にはその歯に診断的に局所麻酔をして痛みが消えるかどうか確認します。
上下顎全部の歯を調べても、痛みの原因として疑わしい歯が無い場合には、範囲を拡大して非歯原性歯痛の診査をします。非歯原性歯痛の原疾患診査の順番は、最初に神経障害性疼痛を調べます。左右上下顎の歯肉の感覚検査をします、触覚検査としてミラーの丸い縁で歯肉をさすります、痛みや、いやな感じは無いか、変な感じは無いかを聞き、更に左右比較してどうかを聞きます。そして、刺激した感覚が後に残らないかを確認します。次にピンセットの先で痛覚検査をします。これも他の部位と比較して強く痛みを感じる部分は無いか、そして左右を比較してどうかを尋ねていきます。触覚検査を同様に、終わった後に刺激した感覚が後に残らないかを確認します。触覚検査と痛覚検査で異常所見が認められない場合には神経障害性疼痛の可能性はないと判断できます。もし、何らかの感覚異常があった場合には、次に冷感覚、温感覚の診査をします。この時に冷感覚検査に歯痛診査で用いたのと同じ、湿らせた綿棒に冷却スプレーを吹きかけた冷刺激材を用います。
非歯原性歯痛の次の原疾患検査として、筋・筋膜疼痛を調べます。筋・筋膜疼痛の検査はトリガーポイントを探し、関連痛が出ないかどうか、そして関連痛が出たら、その痛みがFamiliar Pain(何時もの痛みかどうか)、主訴の歯痛が再現されるかどうかを調べます。筋肉を圧しているが、そことは離れた患者さんが痛いと訴えていた歯に痛みが感じられ、何時もの痛みが強くなったり、何か変化したりした場合には、患者さんの訴えていた歯の痛みは筋・筋膜疼痛による痛みの可能性が高まります。確定診断するには当該のトリガーポイントに診断的局所麻酔をして、元々の歯の痛みが消えるかどうかを調べます。筋・筋膜疼痛による関連痛としの歯痛であった場合には診断的局所麻酔により痛みが消えます。
このように冷却スプレーと診断的局所麻酔は歯痛鑑別診断で非常に有用で、私の臨床では汎用しています。
 
 
2026年02月05日 12:51

海外学会参加費用からみた日本経済 私の愚痴

海外学会参加費用からみた日本経済 私の愚痴
昨年、久しぶりにワシントンDCで開催された米国口腔顔面痛学会(AAOP)に参加しました。コロナ前は大学に在籍し現役だったことから毎年参加していましたがコロナで中断されたままになっていました。大学に在籍していたころは海外学会で発表に対して年一回日当の補助がありました。日当だけで、往復飛行機代、現地での宿泊代は自分持ちです、まあ、それでも日当の補助はありがたかったです。そのころから気になっていたことは海外の宿泊費が高いことでした。国内では一万円以下で駅に近く、きれいいなビジネスホテルに泊まれるし、地方では5千円くらいのところもありました。ところが米国の学会が開かれる都市では200ドル(25000円)出さないとちゃんとしたホテルに泊まれませんでしたから、いつも学会場から少し離れた、安いところを探していました。学会に行くときは、朝起きたら学会場に行き、終わって夕方に帰り、寝るだけですから広い部屋は必要なく、ベッドとバストイレがあればいいだけです。
日本で生活しているには何も不自由はないのですが、いざ海外学会参加となると高い障壁ができていました。
今年の状況は米国の物価上昇によりもっと深刻です。二日半の日程で開催されるAAOPの参加費が非会員は1200ドル(約20万円)です、これに、飛行機代と宿泊費が加算されます。今年10月にタイで開催される国際疼痛学会(IASP)5日間で約千ドル(約15万円)です。宿泊は多少安いにしてもトータルの金額はかなり高額です。ちなみに日本の学会は二日間で1万5千円から高くて2万円です。
このような状況の元凶は円安と日本の国力の減衰です。2月8日に衆議院議員の選挙があり、消費税の引き下げが各党に共通した政策ですが、だれが消費税を下げなければならない状況にしたのでしょうか。
このように減衰しながらも大量の国債発行で保たれている日本で、円安の利得を目いっぱい活用しているのがインバウンドで来日している欧米勢です。彼らからみると今の日本の物価は半額セールでしょう。
ここまで読まれた方は何もわざわざ現地に赴かなくても、論文読めばいいし、オンラインもあるでしょうと言いたいと思います。もちろん活用しています、専門分野の口腔顔面痛関連でも毎週のように行われています。ところが現地で知り合いと対面でやり取りすることにより得られる情報は大きいのです。日頃、患者さん治療で感じた疑問点を専門の人に直接訪ね、自分の経験とデスカッションすることにより論文には書かれていない、貴重な情報が得られます。そして、あしたの治療に向けて自分を震え立たせることにもなります。
もう少し円高になり、せめて一ドル120円位になると、若手の人たちも行きやすくなると思います。
 
 
2026年02月04日 14:52

患者さんとのコミュニケーションが一番大事

心理学者の堀越勝先生が講演のなかで臨床においてはコミュニケーションが大事であるという例にカナダ歯科医師会で作られたコミュニケーションガイドを挙げています。日本には類似した書籍はないか探しましたがありませんでした。
そこでカナダから出されているコミュニケーションガイドを翻訳しました。
ここのその一部を掲載します。日本の全ての歯科医師に知ってもらいたいし、受診する患者さんにも有益な内容と思います。

 患者さんとのコミュニケーションを改善するためのガイド 
このガイドには、患者とのコミュニケーションを改善するための簡単な戦略とヒントがまとめられています。研究によると、「ソフトスキル」は、提供されるケアの価値、歯科医師への信頼の度合い、治療の成功に対する患者の認識に直接関係することが示されています。本ガイドに掲載されているコミュニケーション戦略のいくつかはご存じかもしれませんが、これらを見直すことで、患者さんとのコミュニケーションを強化し、できるだけ一貫性を保つことを思い出させます。

効果的なコミュニケーションのゴールはシンプルです:患者さんに、口腔の健康について十分な情報を得た上で決断するために必要な知識を身につけてもらうことです。患者さんと患者さんが最善の治療法を決定できるように、患者さんの口腔衛生に関する目標や専門家の意見を伝えるのはあなた次第です。

  患者との良好なコミュニケーションが重要な理由
患者さんに十分な情報を提供し、治療のパートナーとして参加してもらうことで、患者さんもあなたに忠誠を誓い、治療を継続するようになります。さらに、貴方自身が仕事へのやりがい、モチベーションの向上、生産性の向上にも気づくでしょう。
患者さんはあなたの接し方であなたを判断することを考えると、あなた自身のコミュニケーショ ンスタイルを理解し、様々な患者さんのニーズに合わせて調整することが不可欠です。患者さんがあなたの診療所で良い経験をすれば、勧められた治療を受け入れ、継続的なケアのために再来院する傾向が高まります。また、友人や家族を紹介してくれるでしょう。そうすることで、あなたの評判が高まり、診療所も発展し、歯科医師という職業のイメージも向上するのです。

1.患者満足度の向上
患者さんが受けるケアに対する満足度と、医療提供者の患者さんとのコミュニケーションを図り共感する能力と意欲との間には、正の相関関係があることが医学的証拠によって証明されています。
2.苦情の減少
患者さんとのオープンな対話は、患者さんの定着率の向上と苦情の減少につながる。NSDAへの問い合わせの5件中4件(70%)は、歯科医師と患者さんとのより良いコミュニケーションによって解決される案件だろうと推定されています。
3.効率性の向上
患者さんとのコミュニケーションが改善されれば、診療の効率性も向上します。例えば、患者さんが不安を訴える時間を与えることで、そんなに時間はかかりませんが、後からの不安の発生や、重要なデータを収集する機会を逃したりする可能性を大幅に減らすことができます。

 

丁寧なコミュニケーション

歯科医師と患者の関係

患者ケアの第一法則は、:  患者の満足度=患者さんの体感-期待感 です。
患者さんがあるレベルのケアを体感していても、それ以上のもの、あるいはそれとは異なるものを期待していた場合、患者さんは不満を抱くことになります。体感と期待はどちらも心の状態であり、患者さんを満足させたいのであれば、これらを考慮する必要があります。
最も基本的な形として、良い患者ケアとは、患者さんのニーズに耳を傾け、理解し、それに応えることです。口腔衛生の知識や臨床スキルは卓越していても、患者さんとのコミュニケーションという「ソフトスキル」を教わった人はほとんどいないでしょう。
 患者のニーズは多種多様であるが、特に6つの基本的なニーズがある:
  • 親しみやすさ  基本的な礼儀と丁寧さ、温かさと思いやり。
  • 共感  患者さんは、歯科医師が自分の希望や状況を理解し、個人的な配慮をしてくれることを知る必要があります。
  • 効率性と時間厳守  患者さんは自分が尊重されていると感じたい。
  • コントロール  患者さんは、自分自身が治療計画の重要な一部であると感じたいのです。
  • 選択肢と代替案  患者さんは、どのような治療の選択肢があるのかを知りたがっています。
  • 情報  患者さんは料金やサービスについて知りたがっているが、適切な方法で、時間をかけて知りたい。

患者との関係の基本
患者さんは、大勢の患者達として扱われるのでは無く、一人の個人として扱われることを望んでいる。ここでは、あなたとあなたのスタッフが心に留めておくべき、患者対応に関するいくつかの経験から得られた方法を紹介します:
- 患者さんは決してあなたの仕事を邪魔しない。患者さんの治療が貴方の仕事です、他のことは後回しでよいのです。
- たとえばスタッフに治療を任せている場合、スタッフが治療をしている間にさりげなく「ご気分はいかがですか」というジェスチャーをすることで、患者さんを癒やすことができる。
- 患者さんと口論してはならない。患者さんは常に(自分の独自の考えを持っていて)自分は正しいと思っている。聞き上手になり、同意できるところは同意し、患者さんを喜ばせることをしましょう。
- 患者さんとの最初の会話を決して金銭的なことで始めないこと。最初に 「保険で治療が出来ますか?」と聞かれることが多いが、金銭的な話しは、適切なタイミングで相談すること。治療の選択肢が決定し、患者さんに十分な説明がなされた後にされるべきである。

 

 
2026年01月31日 13:53

現在の標準的TMD治療の10のポイント

国際歯科研究学会(IADR)INfORMグループは、現在の標準的TMD治療の10の重要なポイントを提案しました。
Temporomandibular disorders: INfORM/IADR key points for good clinical practice based on standard of care  CRANIO®: THE JOURNAL OF CRANIOMANDIBULAR & SLEEP PRACTICE 2024年10月

2010年に米国歯科研究学会が当時の臨床試験、実験研究、疫学研究の証拠に基づくTMD治療に関する声明を出しました。特筆されたことは、TMDの自然経過がSelf-limitedで時間の経過とともに改善または消失する傾向がある事、従って、保存的、可逆的、かつエビデンスに基づいた治療法を行うことを強く推奨した事でした。
その後、約15年経過し、多くの臨床的データ、疫学研究により2010年のTMD声明に書かれていたことが確かなものであることが支持されています。しかし、一方では未だにTMDはかみ合わせの異常であるとか、咬合治療を最優先させる古い考えが残っています。
この度、このような状況を更に改善する事を目的に、米国歯科研究学会AADR単独では無く、国際歯科研究学会(IADR)が踏み込んで、現在の標準的TMD治療の10の重要なポイントを提案した次第です。
  1. TMD を治療するには、患者中心の意思決定と患者の関与および視点が重要であり、治療は病歴から検査、診断、そして具体的な治療へと続くプロセスです。症状を制御および治療し、個人の日常生活への影響を軽減する方法を患者自身が学ぶことに重点を置く必要があります。
  2. TMD は、口腔顔面痛や筋骨格系に起因する機能障害などの兆候や症状を引き起こす可能性がある一連の疾患です。
  3. TMD の病因は生物心理社会的かつ多因子的です。咬合異常の比重は低い。
  4. TMD の診断は、訓練を受けた診断医が患者の視点に基づいて実施する、標準化され検証された病歴聴取と臨床評価に基づいています。
  5. 画像診断は特定の症例で有用であることが証明されていますが、慎重な病歴聴取と臨床検査の必要性に代わるものではありません。軟部組織の場合は磁気共鳴画像診断MRIが、骨の場合はコーンビーム コンピューター断層撮影CBTが現在の標準です。画像診断は、診断または治療に影響を与える可能性がある場合にのみ実施する必要があります。画像診断のタイミングは重要であり、コスト、利点、リスクのバランスも重要です。
  6. 通常の標準治療を超えての介入や新たな器具を用いた治療を実施する前に、その根拠となるエビデンスを慎重に検討する必要があります。この分野の開発に関する知識は最新の状態にしておく必要があります。現在、筋電図活動測定、コンピュータでの顎の動きの追跡、重心の揺れ評価などのはサポートされていません。
  7. TMD 治療は、痛みの影響を軽減し、機能制限を減らすことを目標とすべきです。治療結果は、症状悪化因子の除去と悪化の治療方法と生活の質の向上に関する教育との関連で評価する必要があります。
  8. TMD 治療は、主に、サポートされたセルフケアの奨励と、認知行動療法や理学療法などの保存的なアプローチに基づく必要があります。セルフケアをサポートする第 2 選択の治療には、理学療法、薬物療法、暫定的および期間限定のスプリントの使用が含まれます。外科的介入が必要とされるのは、ごくまれで、非常に限られたケースのみです。
  9. 不可逆的な修復治療や咬合、下顎頭の位置の調整を目的とした大がかりな治療は、ほとんどのTMDの治療には適応されません。例外となるのは、歯科治療の直後にTMDのような症状が現れる、不適切な高すぎる充填やクラウンなどによる咬合の急激な変化とリウマチ、下顎頭疾患により咬合が緩除に進行する変化だけです。
  10. 身体の広範囲にわたる痛みや併存疾患が同時に発生している場合、中枢感作の要素、長期にわたる痛み、または以前の治療の失敗歴など、予後が不確かな複雑な臨床症状がある場合は、TMD または非 TMD の痛みの慢性化が疑われます。そのため、適切な口腔顔面痛専門医への紹介が推奨されます。すべての国に口腔顔面痛の専門医がいるわけではないため、専門医は地域によって異なります。

    TMDの治療として、かみ合わせの調整、被せたもののやり直し、かみ合わせを高くするなどの治療は現在の標準治療から逸脱しています。
2026年01月26日 13:08

【English available】

【電話番号】
03-3478-5248

【住所】
〒107-0051
東京都港区元赤坂1-1-7
赤坂モートサイド505

【診療時間】
10:00~13:30
14:30-18:00

【診療日】
火曜日、金曜日、第3土曜午前
※第2火曜は休診し水曜に診療

モバイルサイト

元赤坂デンタルクリニックスマホサイトQRコード

スマートフォンからのアクセスはこちら

口腔顔面痛
専門医・認定医のいる施設

風の杜歯科
日本口腔顔面痛学会