関節反力 大開口時に最大、関節痛の原因
今週月曜日2026年5月18日、昔からの友達であるイスラエルのNizan先生の講演がありました。ご主人は経済学者で、ご夫婦共々日本が好きで、今回が8度目の来日だったそうです。4月末に来日して2週間あまり北海道の各地を回ったそうです。宗教的理由、ユダヤ教の食事規定「カシュルート」で肉魚は食べられないそうで、北海道で何がごちそうだったのか疑問です。私との食事はイタリアンの店で和風パスタ、サラダ、ブルスケッタでした。当日はご主人も一緒の予定でしたが同じ時間で東大で講演されていたそうです。
彼女がArthrocentesis関節腔洗浄術の有効性を語っていたのは1985-1990年頃でした。滑液の粘稠により円板が動き難くなって下顎頭がスタッグした結果、開口障害生ずる、Arthrocentesisで滑液の粘稠度を下げると円板は前方転位したままなのに下顎頭が正常に滑走して開口出来るようになることを盛んに解説していました。日本においてもこの分野で大学の同級生村上賢一郎、久保田英朗、瀬上夏樹先生達が世界で活躍していました。
確かに私も関節造影をしていた頃に最後に関節腔を洗浄したり、膨らましたりした後にクローズドロックが解けて開口出来るようになる症例を経験していました。そのような症例では前方転移していた円板が正常な位置に戻ったから開口出来るようになったのだろうと、再度関節造影をしたら円板は前方転位したままで、開口時には前方転移した円板は抵抗なく下顎頭によって前方に押し出されていました。このような経験からクローズをロックでは前方転移した円板を戻す必要は無く、上手く動く方法をとれば良いのだと考える様になりました。私は関節腔の中の問題よりも関節に負荷をかける筋緊張に注目した訳です。Nizanは関節腔の中はパスカルの法則が作用して、下顎頭の動き、位置にかかわらず何処でも同じ圧力だと主張し、私は関節の関節窩と相対する下顎頭との間に働く関節反力は位置によって異なると主張して議論したことがありました。関節窩に下顎頭が収まっているときには、かみしめたとしても関節反力はほぼゼロ、一方、最大開口で下顎頭が最前方に位置したときは関節反力が最大になります。これが、開口時に関節痛が出る理由でもあります。
下顎頭が最前方に出るのは開口した時ですが、通常は最大開口を永く続けることはありません。ところが歯科治療はこの良くない長時間の最大開口を強いています、もう一つは睡眠中のギリギリの元の歯ぎしりです。側方運動したときに下顎頭を前方に押しつけます。これらによって前方滑膜に機械的刺激を与えて、炎症を生じさせる、というのが私の顎関節痛の発症メカニズムです。治療は、関節痛があるときは歯科治療を延期すること、歯ぎしりに対しては急角度の犬歯ガイドを付けたスプリントを使ってもらうことです。この治療は大変有効な治療法で今も行っています。私の臨床ではスプリントを使うのはこのような歯ぎしりがあって関節痛がある人に限っています。筋肉痛には効果が無いので使いません。
2026年05月21日 15:24