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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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2026年1月の記事:ブログページ

患者さんとのコミュニケーションが一番大事

心理学者の堀越勝先生が講演のなかで臨床においてはコミュニケーションが大事であるという例にカナダ歯科医師会で作られたコミュニケーションガイドを挙げています。日本には類似した書籍はないか探しましたがありませんでした。
そこでカナダから出されているコミュニケーションガイドを翻訳しました。
ここのその一部を掲載します。日本の全ての歯科医師に知ってもらいたいし、受診する患者さんにも有益な内容と思います。

 患者さんとのコミュニケーションを改善するためのガイド 
このガイドには、患者とのコミュニケーションを改善するための簡単な戦略とヒントがまとめられています。研究によると、「ソフトスキル」は、提供されるケアの価値、歯科医師への信頼の度合い、治療の成功に対する患者の認識に直接関係することが示されています。本ガイドに掲載されているコミュニケーション戦略のいくつかはご存じかもしれませんが、これらを見直すことで、患者さんとのコミュニケーションを強化し、できるだけ一貫性を保つことを思い出させます。

効果的なコミュニケーションのゴールはシンプルです:患者さんに、口腔の健康について十分な情報を得た上で決断するために必要な知識を身につけてもらうことです。患者さんと患者さんが最善の治療法を決定できるように、患者さんの口腔衛生に関する目標や専門家の意見を伝えるのはあなた次第です。

  患者との良好なコミュニケーションが重要な理由
患者さんに十分な情報を提供し、治療のパートナーとして参加してもらうことで、患者さんもあなたに忠誠を誓い、治療を継続するようになります。さらに、貴方自身が仕事へのやりがい、モチベーションの向上、生産性の向上にも気づくでしょう。
患者さんはあなたの接し方であなたを判断することを考えると、あなた自身のコミュニケーショ ンスタイルを理解し、様々な患者さんのニーズに合わせて調整することが不可欠です。患者さんがあなたの診療所で良い経験をすれば、勧められた治療を受け入れ、継続的なケアのために再来院する傾向が高まります。また、友人や家族を紹介してくれるでしょう。そうすることで、あなたの評判が高まり、診療所も発展し、歯科医師という職業のイメージも向上するのです。

1.患者満足度の向上
患者さんが受けるケアに対する満足度と、医療提供者の患者さんとのコミュニケーションを図り共感する能力と意欲との間には、正の相関関係があることが医学的証拠によって証明されています。
2.苦情の減少
患者さんとのオープンな対話は、患者さんの定着率の向上と苦情の減少につながる。NSDAへの問い合わせの5件中4件(70%)は、歯科医師と患者さんとのより良いコミュニケーションによって解決される案件だろうと推定されています。
3.効率性の向上
患者さんとのコミュニケーションが改善されれば、診療の効率性も向上します。例えば、患者さんが不安を訴える時間を与えることで、そんなに時間はかかりませんが、後からの不安の発生や、重要なデータを収集する機会を逃したりする可能性を大幅に減らすことができます。

 

丁寧なコミュニケーション

歯科医師と患者の関係

患者ケアの第一法則は、:  患者の満足度=患者さんの体感-期待感 です。
患者さんがあるレベルのケアを体感していても、それ以上のもの、あるいはそれとは異なるものを期待していた場合、患者さんは不満を抱くことになります。体感と期待はどちらも心の状態であり、患者さんを満足させたいのであれば、これらを考慮する必要があります。
最も基本的な形として、良い患者ケアとは、患者さんのニーズに耳を傾け、理解し、それに応えることです。口腔衛生の知識や臨床スキルは卓越していても、患者さんとのコミュニケーションという「ソフトスキル」を教わった人はほとんどいないでしょう。
 患者のニーズは多種多様であるが、特に6つの基本的なニーズがある:
  • 親しみやすさ  基本的な礼儀と丁寧さ、温かさと思いやり。
  • 共感  患者さんは、歯科医師が自分の希望や状況を理解し、個人的な配慮をしてくれることを知る必要があります。
  • 効率性と時間厳守  患者さんは自分が尊重されていると感じたい。
  • コントロール  患者さんは、自分自身が治療計画の重要な一部であると感じたいのです。
  • 選択肢と代替案  患者さんは、どのような治療の選択肢があるのかを知りたがっています。
  • 情報  患者さんは料金やサービスについて知りたがっているが、適切な方法で、時間をかけて知りたい。

患者との関係の基本
患者さんは、大勢の患者達として扱われるのでは無く、一人の個人として扱われることを望んでいる。ここでは、あなたとあなたのスタッフが心に留めておくべき、患者対応に関するいくつかの経験から得られた方法を紹介します:
- 患者さんは決してあなたの仕事を邪魔しない。患者さんの治療が貴方の仕事です、他のことは後回しでよいのです。
- たとえばスタッフに治療を任せている場合、スタッフが治療をしている間にさりげなく「ご気分はいかがですか」というジェスチャーをすることで、患者さんを癒やすことができる。
- 患者さんと口論してはならない。患者さんは常に(自分の独自の考えを持っていて)自分は正しいと思っている。聞き上手になり、同意できるところは同意し、患者さんを喜ばせることをしましょう。
- 患者さんとの最初の会話を決して金銭的なことで始めないこと。最初に 「保険で治療が出来ますか?」と聞かれることが多いが、金銭的な話しは、適切なタイミングで相談すること。治療の選択肢が決定し、患者さんに十分な説明がなされた後にされるべきである。

 

 
2026年01月31日 13:53

現在の標準的TMD治療の10のポイント

国際歯科研究学会(IADR)INfORMグループは、現在の標準的TMD治療の10の重要なポイントを提案しました。
Temporomandibular disorders: INfORM/IADR key points for good clinical practice based on standard of care  CRANIO®: THE JOURNAL OF CRANIOMANDIBULAR & SLEEP PRACTICE 2024年10月

2010年に米国歯科研究学会が当時の臨床試験、実験研究、疫学研究の証拠に基づくTMD治療に関する声明を出しました。特筆されたことは、TMDの自然経過がSelf-limitedで時間の経過とともに改善または消失する傾向がある事、従って、保存的、可逆的、かつエビデンスに基づいた治療法を行うことを強く推奨した事でした。
その後、約15年経過し、多くの臨床的データ、疫学研究により2010年のTMD声明に書かれていたことが確かなものであることが支持されています。しかし、一方では未だにTMDはかみ合わせの異常であるとか、咬合治療を最優先させる古い考えが残っています。
この度、このような状況を更に改善する事を目的に、米国歯科研究学会AADR単独では無く、国際歯科研究学会(IADR)が踏み込んで、現在の標準的TMD治療の10の重要なポイントを提案した次第です。
  1. TMD を治療するには、患者中心の意思決定と患者の関与および視点が重要であり、治療は病歴から検査、診断、そして具体的な治療へと続くプロセスです。症状を制御および治療し、個人の日常生活への影響を軽減する方法を患者自身が学ぶことに重点を置く必要があります。
  2. TMD は、口腔顔面痛や筋骨格系に起因する機能障害などの兆候や症状を引き起こす可能性がある一連の疾患です。
  3. TMD の病因は生物心理社会的かつ多因子的です。咬合異常の比重は低い。
  4. TMD の診断は、訓練を受けた診断医が患者の視点に基づいて実施する、標準化され検証された病歴聴取と臨床評価に基づいています。
  5. 画像診断は特定の症例で有用であることが証明されていますが、慎重な病歴聴取と臨床検査の必要性に代わるものではありません。軟部組織の場合は磁気共鳴画像診断MRIが、骨の場合はコーンビーム コンピューター断層撮影CBTが現在の標準です。画像診断は、診断または治療に影響を与える可能性がある場合にのみ実施する必要があります。画像診断のタイミングは重要であり、コスト、利点、リスクのバランスも重要です。
  6. 通常の標準治療を超えての介入や新たな器具を用いた治療を実施する前に、その根拠となるエビデンスを慎重に検討する必要があります。この分野の開発に関する知識は最新の状態にしておく必要があります。現在、筋電図活動測定、コンピュータでの顎の動きの追跡、重心の揺れ評価などのはサポートされていません。
  7. TMD 治療は、痛みの影響を軽減し、機能制限を減らすことを目標とすべきです。治療結果は、症状悪化因子の除去と悪化の治療方法と生活の質の向上に関する教育との関連で評価する必要があります。
  8. TMD 治療は、主に、サポートされたセルフケアの奨励と、認知行動療法や理学療法などの保存的なアプローチに基づく必要があります。セルフケアをサポートする第 2 選択の治療には、理学療法、薬物療法、暫定的および期間限定のスプリントの使用が含まれます。外科的介入が必要とされるのは、ごくまれで、非常に限られたケースのみです。
  9. 不可逆的な修復治療や咬合、下顎頭の位置の調整を目的とした大がかりな治療は、ほとんどのTMDの治療には適応されません。例外となるのは、歯科治療の直後にTMDのような症状が現れる、不適切な高すぎる充填やクラウンなどによる咬合の急激な変化とリウマチ、下顎頭疾患により咬合が緩除に進行する変化だけです。
  10. 身体の広範囲にわたる痛みや併存疾患が同時に発生している場合、中枢感作の要素、長期にわたる痛み、または以前の治療の失敗歴など、予後が不確かな複雑な臨床症状がある場合は、TMD または非 TMD の痛みの慢性化が疑われます。そのため、適切な口腔顔面痛専門医への紹介が推奨されます。すべての国に口腔顔面痛の専門医がいるわけではないため、専門医は地域によって異なります。

    TMDの治療として、かみ合わせの調整、被せたもののやり直し、かみ合わせを高くするなどの治療は現在の標準治療から逸脱しています。
2026年01月26日 13:08

ホームページ情報と治療能力の解離

Homepageの情報と治療能力の解離
自院の宣伝のためにHomepageを作っています。書きためてあった原稿をいっぱい掲載していますから、患者さん向けなのか歯医者向けなのかと言われることがあります。最新の情報はブログとして書き加えています。
このブログのテーマは「Homepageの情報と治療能力の解離」ということで、Homepageに掲載されている内容とその医院の治療内容は必ずしも一致しないということです。当院に来院される患者さんのほとんどが既に数軒の歯科医院、病院、大学等で治療を受けたが、改善しないということで受診します。
問題は、受診した歯科医院で治療中に口腔顔面痛とか非歯原性歯痛の疑いがあるということはいっさい聞かなかったということです。何故、その歯科医院を受診したのかと訪ねると、Homepageをみたら非歯原性歯痛について詳しく解説してあったので治療も出来るだろうと思って受診したとのことでした。
2016年以降に卒業された歯科医師は国家試験出題範囲に非歯原性歯痛が含まれていますから、非歯原性歯痛の原疾患くらいの基本的な知識は持っているはずです。しかし、非歯原性歯痛で最も多い筋・筋膜疼痛診察のためのトリガーポイント診査、神経障害性疼痛診察のための感覚検査は大学時代では教わっていません、研修医時代にも非歯原性歯痛の患者さんを診ていないと思います。従って、自分が今、根管治療している歯痛の患者さんが非歯原性歯痛であっても、基本的な鑑別診断が出来ない事がほとんどです。
それでは、もし非歯原性歯痛の可能性があると思ったらどのような歯科を受診すれば良いのか、答えは日本口腔顔面痛学会認定医か専門医の資格をもっている先生を選ぶべきです。日本に数人しかいない米国口腔顔面痛認定医を持っている人は確実です。
 
 
2026年01月24日 15:10

ボツリヌス毒素の三叉神経痛、神経障害性疼痛への有効性

 ボツリヌス毒素(BoNT-A)の痛み神経系への作用が判ってきました。三叉神経痛、有痛性三叉神経ニューロパチーなどの痛みを改善出来る可能性があります。
正月休みに関連論文を読んでまとめました。
1.三叉神経痛には有効性が高い。原因療法として微小血管減圧術が確立されている典型的三叉神経痛は、Second Lineに位置付けられる。
二次性三叉神経痛は原因療法が絶対に必要である。
特発性三叉神経痛はカルバマゼピンが効果的であったとしても、服用期間が長期になる。パルス高周波が有効である事が判って来たので治療の選択肢として考えるべき。同列にBoNT-Aのトリガーゾーンあるいは当該神経枝の神経孔に注射も検討すべき。欠点はトリガーゾーンが筋の近くである場合には筋弛緩を生じさせる可能性が高いので注意が必要。
2.有痛性三叉神経ニューロパチー 各種薬物療法で効果が無かった場合、効果があって痛みは減ったが、まだ残っているという場合には試みる価値がある。BoNT-Aの注射部位は当該神経枝の神経孔、下顎枝であればオトガイ孔周囲に注射、なるべく拡散しないようにする。上顎枝の場合何処に注射するかが問題
3.慢性筋・筋膜疼痛は有効とする論文と無効とする論文がある。何が有効性を左右するか、中枢感作のあるなしの様です。中枢感作が生じている場合には末梢に作用しても、中枢感作を抑制する程の効果は無いので効果無しになるようです。
筋・筋膜疼痛の病態を侵害受容性疼痛だけとするか、中枢感作の要素が増えて痛覚変調性疼痛が混じっているかを判断して治療法を検討すべきです。
 
2026年01月06日 16:30

痛み神経に対するボツリヌス毒素(ボトックス®)の作用

有痛性三叉神経ニューロパチーにボツリヌス毒素(ボトックス®)は効くか
ボツリヌス毒素(ボトックス®)は筋弛緩剤としての効果は定評があり、既に多くの方がくいしばりの力を弱めるためなどに使われていると思います。
私がボツリヌス毒素A型(BoNT-A)に期待する効果は筋弛緩効果ではなく、もう一つの痛み神経に対する作用です。文献では片頭痛、三叉神経痛、有痛性三叉神経ニューロパチー、慢性筋・筋膜疼痛等に効果があると言われています。
昨年暮れに、徳島大学松香先生にボツリヌス毒素A型(BoNT-A)の神経障害性疼痛に対する効果についての動物実験結果を解説していただきました。
BoNT-Aが神経系に対してどのように作用するのかを多くの文献結果を合わせてまとめてみました。
BoNT-Aは注射された部位で運動神経、痛み神経の神経末端に取り込まれる。
運動神経と筋肉の接合部の運動神経に取り込まれ、神経から筋肉への「動け」という指令を伝えるアセチルコリンの放出を阻害する。これにより筋弛緩が生ずる。効果は数日で現れ、3〜4ヶ月程度持続する。
痛み神経に対する作用
  • 痛み神経の末端に取り込まれたBoNT-Aは、侵害受容器に作用してサブスタンスP、グルタミン酸、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)等の神経ペプチドの放出を止めて神経原性炎症を抑制する。
  • 神経に取り込まれたBoNT-Aは小胞となって神経の軸索流で中枢側に運ばれて、シナップス前膜まで到達しているのは確実、シナプスを越えて二次ニューロンに達するかは不確実。軸索流とは神経線維の中心部にある軸索の中を、神経細胞で作られた神経に必要な物質が双方向に運ばれている。
  • 軸索流で運ばれながら神経線維のTRPV1強発現を止めるて、異所性発火を抑制する。
  • 三叉神経節ではNaイオンチャネルの強発現を止め、サテライトグリアの活性を止める。そして、他の神経への短絡(ショート)による信号の伝達を止める、これによりAllodyniaを止めたり、関連痛を止めたりする。
  • シナプス前膜まで達したBoNT-Aは、神経末端での作用と同様にグルタミン酸、サブスタンスP(SP)、およびカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)等興奮性伝達物質の遊離を抑制する。この作用機序はシナプス前膜にある電位依存性Caチャネルα2δに作用するプレガバリンと同様です。
  • このように神経損傷によって興奮状態となった一次神経において、神経末端、神経線維、神経節、シナプス前膜において興奮を抑制し、シナプスでの痛み信号の持続的伝達による神経損傷による有痛性三叉神経ニューロパチーを改善する事となる。
  • 一次神経の興奮を改善することにより、間接的に中枢感作を抑制すると考えられる。
  • 一方、論文によっては、BoNT-A小胞はシナプスに遊離されて二次神経に取り込まれて、さらに上位の神経系に作用して中枢感作を抑制する可能性もあるとする見解も見られる

    次号では、上記のBoNT-Aの作用機序の理解の元に、有痛性三叉神経ニューロパチー、三叉神経痛、慢性筋・筋膜性疼痛に有効かどうかを検討します。

     

2026年01月06日 15:52

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