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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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2026年7月の記事:ブログページ

顎関節症、口腔顔面痛診察法実習セミナー

昨年に続いて顎関節症TMD、口腔顔面痛診察法セミナーの最重要部分である対面での診察法実習を7月19日.20日に2回行いました。実技指導という目的とクリニックの収容キャパシティーから指導医、アシスタントと受講者5人で行いました。
全体のプログラムは5月に開始し、4回のOn-lineセミナーで基本的知識を学んでもらった後に対面での診察法実習という流れです。8月の最後のOn-lineセミナーでは診察法実習で覚えた手法を自分の臨床に活用した結果生じた疑問点などについて答える時間にする予定です。
対面診察法実習プログラムは、
  • 顎関節症の関節痛障害検査、患者の下顎を診察医が徒手的に動かして、可動範囲、雑音の発生を調べる、関節痛を再現させることが目的です。顎関節症にも口腔顔面痛にも共通する筋痛障害検査、触診部位、加圧力の確認、そしてトリガーポイントの触知法を重点的に行いました。筋触診には一定の加圧力を保って
  • トリガーポイントを触知できた後に、超音波照射を併用したトリガーポイントプレッシャーリリースの実習を行いました。一定の加圧力を保って筋触診することによりトリガーポイントを触知できること、さらに、トリガーポイントプレッシャーリリースにもかなりの加圧力が必要な事を体験してもらいました。
  • 12脳神経検査:12脳神経の簡易な検査法を実習しました。三叉神経領域に何からの異常所見がみられた時には頭蓋内の異常を疑い、その場で脳神経診査を行うべきです。そして、必要に応じて脳神経内科への依頼をするという流れを確認しまいた。
  • 三叉神経領域、顔面、口腔内の感覚検査:触覚:痛覚、冷覚、温覚の検査実習を行いました。顔面の触覚は綿棒、痛覚は爪楊枝、口腔内の触覚はミラー、痛覚はピンセットを用います。冷感覚は湿らした綿棒をクーラントスプレーで冷やして使う、温感覚はワックスペンを一定温度にして使う事などを体験してもらいました。特別な道具は使う必要は無いこと、それぞれを使っての手法を学んでもらいました。
プログラム毎に私が受講者全員の診察を行い、それを真似て相互実習を行うという形式です。実習の後は、実際にやってみて不明な点等を質問してもらい答えるという時間を設けて皆さんの質問に答えました。受講者全員でデスカッションになることもありました。
8月には昨年受講した方々の2回目の対面診察法実習を行います。一年間、各自の臨床に応用して、しっかり出来ているかどうかの確認とアドバンスとしてトリガーポイントインジェクションを観てもらう予定です。
顎関節症、口腔顔面痛とも、大学や病院の専門診療科に所属してトレーニングを受けた方以外の方々はどうやって診察法を学ぶのか、自己流、見よう見まねで診察をしているのだと思います。これでは正しく診断し治療することは出来ません。このような状況で私に出来ることとして、On-lineセミナーと対面での診察法実習HYブリッドセミナーを企画した次第です。来年も続ける予定です。
 
2026年07月25日 12:09

慢性化TMDにはTeamApprochが必要

2026年顎関節学会で海外招聘講演をしたEric SchiffmanはDC/TMDのⅡ軸評価が大事であると強調していました。

Ⅱ軸に問題が無い単純例は本来Selflimitedですから、症状期にはセルフケア、スプリント、薬物療法で対処すれば、ほぼ改善する、しかし、Ⅱ軸に問題がある場合には複雑で慢性化しやすく、全ての医療関係を含んだTeamApprochが必要な事があると述べていました。
Ⅱ軸の評価項目の多くはOPPERA研究で初発TMDのリスク因子に挙げられているものと共通です。OPPERA研究のリスク因子解析では、全身の併存疾患(重要度スコア100-ランク1)、口腔顔面領域の様々な症状の数(92.9-2)、身体の痛み(80.6-4)、歯ぎしり、くいしばりなどを含んだ口腔機能異常合計スコア(OBC)(66.0-5)(元論文にランク3の項目がありません)と言われています。重要度スコアーの比較法が判りませんが上位3つは100-80であり、歯ぎしり、くいしばりなどを含んだ口腔機能異常合計スコアは66.0とかなり離れた数値になっています。歯ぎしり、くいしばりなどを含んだ口腔機能異常は歯科的に予防対応が出来るという点では重要ですが、それ以上に、TMD臨床において全身の併存疾患、口腔顔面領域の様々な症状、身体の痛みの確認しなければならないことを再確認すべきです。
 Slade: Painful Temporomandibular Disorder Decade of Discovery from OPPERA Studies  J Dent Res. 2016 Jun 23;95(10):1084–1092. doi: 10.1177/0022034516653743
 Bair Multivariable Modeling of Phenotypic Risk Factors for First-Onset TMD: The OPPERA Prospective Cohort Study The Journal of Pain 2013, v14-2     
 https://doi.org/10.1016/j.jpain.2013.09.003

リスク因子と言う言葉が流行の様に使われていますが、本来の使い方は素因を意味するものと思います。もちろん、素因が発症後は継続化因子になっているものもありますが、発症前、発症後を区別せず、初発因子、継続化因子をリスク因子というのは明らかな間違いと思います。特に継続化因子をリスク因子と称して治療対象にしているのは違和感が大きいです。
2026年07月14日 18:20

2026日本顎関節学会学術大会参加して感じたこと

日本顎関節学会学術大会参加して感じたこと
2年ぶりの参加でした。一番気になったことは、円板転位、30年前の自分でやった研究結果かと錯覚するような発表が多かった。大会長のランチョンセミナーは20年前の自身の研究結果だとはっきり言っていました。

2日間の発表を聞いて強く感じたことは、口腔外科医、補綴科医、矯正科医がそれぞれの教育、研究、臨床の基盤を元とした顎関節症の捉えかたがかなり異なる事でした。少なくとも10数年前の顎関節症病態分類(2013)が出た頃は共通性があったように思っていましたが、今回の学会で、同じ顎関節症病態でも捉え方、治療法がこんなに違うんだと感じました。顎関節症教育を考えると、各大学により顎関節症を教育する担当科が異なる事から、教科書は同じでも学生のイメージはことなるだろう、また、卒業後勤務した医院、病院の指導医の専門家により得意技が違って行くのだろうと思いました。顎関節症の捉え方、治療法に関して中立的な教育への統合は必要だろうと強く思いました。奇しくも韓国からの招聘講演者が同様の事を言っていました、韓国は顎関節症に直接関わる学会と間接的に関わる学会がいくつかあって、内容が異なるようであるようで(統合)が必要であると。

商品展示のコーナーに顎運動の3次元計測機器があり、この機械の計測結果を使ってスプリントを作ると良いモノが出来ますよと宣伝していました。計測原理は30年以上前と同じ、当時は1分の計測をしたら演算の間に食事に出て、戻ってきたら軌跡が表示されていました、進歩はコンピューターの演算能力、計測すると即時に3次元表示ができることです。AADOCRのTMDPositionPaperには、「現在、診療室で使用される電子診断機器は、TMDの有無(症例群と対照群)を区別したり、TMDのサブグループ(疼痛性または関節内診断)を区別したりするために必要な臨床的妥当性(感度と特異度)を欠いています。」と書かれています。良いスプリントが出来るかどうかは書いてありませんが、30年以上前にデジタルで顎運動計測を研究した経験からは、顎運動計測という根本的概念がそれ程に役に立つモノとは思えません。

今回の学会での最大の収穫は海外招聘講演のEric Schiffmanの講演でした。2014年に出されたDC/TMD顎関節症の病態診断について、今更何か新しいことがあるのかと思っていました。予想通り、前半は診断法、そしてそれによる診断精度の話しでした。ところが後半はⅡ軸診断の解説でした。Ⅰ軸はDC/TMDを準用した日本顎関節学会の「顎関節症の病態分類(2013)、 顎関節症診断基準、診断決定樹(2019)その後の診療ガイドラインでも活用されて、日本でも定着していますが第二軸は言及されていませんでした。私も第二軸は評価法が日本では馴染みのないもののため活用していませんでした。第Ⅱ軸は、痛みの裏にある「心理的ストレス」(不安、うつの評価)、「日常生活への支障度」、「全身の症状」(Chronic Overlapping Pain Conditionsの評価)、「日常習癖」を評価するもので、顎関節症を単なる「顎の怪我」ではなく「慢性疼痛」として捉えるための重要な指標です。顎関節症をBiopshychosocialモデルとして捉えるPshychoSocialの部分に当たります。DC/TMD以前にもⅠ軸(身体障害)とⅡ軸(心身医学的評価)の二次元で評価すべきと言う考えがありましたがこの頃は消えていました。
DC/TMDでは、以下のような診断が推奨されています。「第軸:顎関節痛 + 第軸:障害度グレード(支障なし、心身医学的評価:低)」軽度のため、顎のストレッチや生活習慣の改善(マウスピースなど)で経過観察。「第軸:筋膜痛 + 第軸:障害度グレード(全身に症状があり著しい支障、高度の抑うつ・不安傾向)」であり、うつ、不安の心身医学的問題がある顎の治療だけでなく、また、単純なストレスマネジメントだけではなく、症例によっては内科、心療内科・ペインクリニック等と連携したチームアプローチが必要と判断されます。奇しくも、の講演の締めくくりは、「複雑、慢性例に対してはチームアプローチすべき」でした。

もう一つの収穫は韓国の先生の講演の中でMuscle tonicityという用語を使っていました。これは私の研究の一つであった開口抵抗力測定方法開発の目的でした。Muscle tonicityとは、顎関節周辺の筋肉の静止時の緊張と持続的な活性化によって生ずるものです。Muscle tonicityが高いと、咬筋、側頭筋などが過労または過活動になると持続的な痛み、顎の動きの制限、頭痛につながる可能性があると思っています。講演が終わってから質問して情報交換することになりました。
終わってみると、二日間の長野での学会参加、期待するほど涼しく無かったですが、いくつか収穫があり出かけた甲斐がありました。
 
2026年07月13日 17:02

痛覚変調性疼痛と言えるTMD患者像を探して

7月第2週末、7/11.12日に長野市で日本顎関節学会が開催されます。プログラムは私が30年前1995年顎関節腔造影で転位円板の形態変化の研究で学位をもらう前に興味があった項目です。強い皮肉ですが、関係者は目にすることがないでしょうし、もし読んでくれたら今後の顎関節学会の方向が多少変わるでしょう。
私はその後、口腔顔面痛に転進し、1999年、American Board of Orofacial Pain(米国口腔顔面痛専門医認定機構)試験に合格して、今に到っています。

大学止めて以来、時間があるので、自分の毎日の診療で感じられる患者さんの病態、治療への反応性などをまとめて、自分の感覚と同じような事を考えている人はいないかと思い文献を調べています。
今回紹介する内容は、昔、米国の学会で討論会にも参加した事があり、以前から何回か紹介したことのあるOPPERA(Orofacial Pain: Prospective Evaluation and Risk Assessment)研究の臨床面での総括です。口腔顔面痛専門医としてのTMD治療に大きな指針を示してくれる内容です。
この研究の主宰者である故Maixner先生とはどこかの学会で講演の休憩時間に隣同士で用を足しながら(連れション)話した事が思い出です。痛覚変調性疼痛の議論で出てくるChronic Overlapping Pain Conditionsの発案者の一人でもあり、TMDだけではなく慢性疼痛に大きな影響を与える仕事をされた方です。奥様はタイの人で、学者の奥さんとは思えない好対照の人です。
今年2026年4月にAADOCR (American Association for Dental, Oral, and Craniofacial Research、旧名AADR:American Association for Dental Research)から出された「TMDに関する立場表明」には現在のTMDが総括されています。この立場表明は2010年にAADRから出されたTMD statementの改訂版に位置付けられます。2010TMD statementで強調されていたことは、TMDの原因は咬合異常では無いこと、もう一つの特徴は、多くはself-limitedで自然消退する病気であるから咬合治療など不可逆的な治療はしてはいけないという事でした。2026AADOCR TMDではやく70%が自然寛解すると書かれています。
これらの数字の根拠となるOPPERA研究は2006-2013年(baseline)と2014-2016年(Follow-Up)の二つからなります。TMDの発症因子をはじめとした様々な成果が得られ、30以上の論文が発表されています。その内容は現在の世界のTMD、口腔顔面痛、慢性疼痛の進歩に大きく寄与しています。
ここで紹介する内容は最近の痛みの世界で最も話題になっている痛覚変調性疼痛について、痛覚変調性疼痛としてのTMDの患者像はどんなものだろうかと探した結果出てきたものです。
OPPERA(Orofacial Pain: Prospective Evaluation and Risk Assessment)研究の結果、顎関節症(TMD)は病態が同じではなく、臨床的特徴から大きく3つのサブグループ(1,適応型、2,疼痛感受性型、3. 全身症候群型)に分類できることが示されました。
この考え方に基づき、現在のTMD治療では患者ごとの病態に応じた個別化治療(Precision Medicine)が推奨されています。
 
1. 適応型(Adaptive TMD)
特徴
  • 局所的な顎関節・咀嚼筋の障害が主体
  • 疼痛は比較的軽度で限局している
  • 心理社会的ストレスや中枢性感作は少ない
  • 全身性疼痛や他の慢性疼痛疾患を合併しないことが多い
  • 生体の適応能力が保たれている
病態
  • 局所の筋・関節への負荷や外傷が主因
  • 末梢組織の炎症や機械的障害が中心
治療
  • 患者教育・セルフケア
  • 咀嚼筋の安静
  • 理学療法
  • スプリント療法(適応を選んで)
  • NSAIDsなどの短期薬物療法
  • 予後は良好で保存療法に反応しやすい

2. 疼痛感受性型(Pain-sensitive TMD)
特徴
  • 顎だけでなく広範囲に痛みを感じやすい
  • 圧痛閾値(Pressure Pain Threshold)が低下
  • 中枢性感作(Central Sensitization)の存在
  • Chronic Overlapping pain conditions(線維筋痛症、頭痛、過敏性腸症候群など)を合併しやすい
  • 睡眠障害や疲労を伴うことが多い
病態
  • 中枢神経系の疼痛増幅
  • 下行性疼痛抑制系の機能低下
  • 神経可塑性の変化
治療
  • 中枢性感作を考慮した包括的治療
  • 認知行動療法(CBT)
  • 運動療法
  • 睡眠改善
  • 三環系抗うつ薬やSNRIなど中枢作用性薬剤(症例に応じて)
  • 咬合治療や侵襲的治療は避ける

3. 全身症候群型(Global Symptoms / Complex TMD)
特徴
  • 顎顔面痛に加えて全身症状が著明
  • 疼痛の部位が多数存在 Chronic Overlapping pain conditions
  • 身体症状(Somatic symptoms)が多い
  • 不安・抑うつ・破局的思考(Catastrophizing)が強い
  • QOL低下が著しい
  • 最も重症なグループ
病態
  • 中枢性感作に加えて
    • 心理社会的要因
    • 自律神経異常
    • 遺伝的要因
    • 神経免疫学的異常
      などが複合的に関与
治療
  • 生物・心理・社会(Biopsychosocial)モデルによる集学的治療
  • 歯科だけでなく
    • 疼痛専門医
    • 心理士
    • 理学療法士
    • 精神科・心療内科
      との連携
  • CBT
  • 疼痛教育(Pain Neuroscience Education)
  • 運動療法
  • 睡眠障害・精神症状への介入
  • 薬物療法(抗うつ薬、神経障害性疼痛治療薬など)
  • スプリントは適応でない
 
 
2026年07月02日 14:05

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