慢性疼痛と痛覚変調性疼痛、Chronic Overlapping pain conditions
慢性疼痛と痛覚変調性疼痛、Chronic Overlapping pain conditionsケガや病気が通常治るのに要する期間(通常3ヶ月以上)を超えて持続する痛みを慢性疼痛と言います。原因が不明な場合や原因が判っていても取り除くことが出来ない場合があり、痛みが「病気そのもの」であります。多くの慢性痛は痛みの信号の発生が続かなくても、情動体験が脳によって認識・解釈されて「感情、持続的な主観的体験」として脳に蓄えられ、さまざまな情報が統合されて、苦痛を感じる状態です。
WHOが作成する病気の国際分類の最新版であるICD-11 International Classification of Diseases, 11th Revision)に初めて慢性疼痛の分類が含まれました。
慢性痛の大分類では、原因不明を一次性(ICD-112022)(ICHD-3、ICOPでは特発性)とし、元の原因が判っている場合を二次性に分類しています。
一次性は原因不明が原則ですが、最近になり一次性の主たる病態は痛覚変調性疼痛だろうと言われています。痛覚変調性疼痛は2017年にNociplasticPainとして提唱され、その基本的メカニズムは中枢感作だとされています。
世界的に痛覚変調性疼痛が注目されていますが、米国ではW.Maixerをはじめとする研究者達が TMDのOPPERA研究のなかで慢性TMDの多くはChronic Overlapping pain Conditions(慢性重複疼痛疾患)の一部になっていると主張していました。Chronic Overlapping pain conditionsは慢性疼痛障害の集合体で、同一人物に併発することが多く、痛覚変調性疼痛を共通のメカニズムにすることや女性における高い罹患率を特徴とします。顎関節症(TMD)、慢性緊張型頭痛、慢性片頭痛、慢性腰痛、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、線維筋痛症(FM)、子宮内膜症、外陰部痛、過敏性腸症候群(IBS)、間質性膀胱炎/疼痛性膀胱症候群(IC/PBS)などの疾患が含まれ、多くの場合、疲労、睡眠障害、気分の変化を伴います。米国国立衛生研究所(NIH)は、これらの疾患は従来の単一専門分野での医療アプローチの範囲外にあり、単独疾患としての治療では適切な治療が出来ないことが多いため、専門的な研究の必要性を強調している。
最近になってChronic Overlapping pain conditionsと痛覚変調性疼痛は共通して中枢感作を基本メカニズムとする病態であろうと言われています。つまり、慢性TMDの多くは痛覚変調性疼痛であり、Chronic Overlapping pain conditionsの部分症であると言えるということです。その他に関連する用語として、身体化障害、機能性身体症候群、Medically Unexplained Symptoms、ICD-11身体的苦痛症(BDD)があります。
精神科病名である身体症状症(Somatic Symptom Disorder DSM-5:SSD)は 医学的な異常が明確でないにもかかわらず、痛みの慢性化や身体症状に対する強い不安・過剰な認知・行動(頻回のインターネット検索、病院受診等)が日常生活に支障をきたしている状態を指す精神疾患ですが、痛覚変調性疼痛の精神的側面からの診断とも言えると思っています。
2026年05月10日 13:38