慢性疼痛患者の46%がPTSD症状
慢性疼痛患者の46%がPTSD症状を持ち、機能障害が顕著に
2025年6月2日慢性疼痛と心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder: PTSD)を併発している患者は、PTSDを伴わない慢性疼痛患者と比較して、より重度の機能障害を示すことが明らかになった。この研究では、外傷体験の有無よりも、PTSD症状の存在が機能障害と関連していることが示された。北アイルランドの慢性疼痛患者を対象とした大規模横断研究の成果は、European Journal of Pain誌2025年7月号に発表された。
北アイルランドの慢性疼痛患者1,367例を対象とした横断研究
この研究は、北アイルランドの学際的疼痛リハビリテーションサービスを受診した慢性疼痛患者1,367例を対象とした横断研究である。研究の主な目的は、慢性疼痛患者における機能障害が外傷体験そのものによるものか、それともPTSD特有の症状に関連しているのかを評価することであった。また、北アイルランド地域におけるPTSDと慢性疼痛の併存率の高さを考慮し、その併存状況を調査することも副次的な目的とされた。参加者はPTSDスクリーニング尺度に加え、疼痛による生活障害、社会的機能、疼痛に対する不安、疼痛自己効力感、疼痛強度、うつ症状を評価する尺度に回答した。研究デザインとして、共変量を特定した後、多変量共分散分析(MANCOVA)を用いてPTSDカテゴリー別の従属変数の差異を検討した。
PTSD症状の有無が機能障害の重症度を左右
スクリーニングの結果、参加者の46.4%は外傷体験がなく、22.5%は外傷体験があるもののPTSDスクリーニングは陰性、31.1%はPTSDスクリーニング陽性であった。多変量共分散分析の結果、PTSDスクリーニング陽性群は、他の2群(外傷体験なし群、外傷体験ありPTSDスクリーニング陰性群)と比較して、すべての評価尺度において機能が悪く、生活障害がより大きいことが示された。一方、外傷体験なし群と外傷体験ありPTSDスクリーニング陰性群の間には、いずれの評価尺度においても有意差は認められなかった。これらの分析結果から、機能障害の悪化は外傷体験の有無だけでなく、PTSD症状の存在と関連していることが明らかになった。また、北アイルランドにおける慢性疼痛とPTSDの併存率は、過去の研究と比較して高い範囲にあり、地域の年間有病率推定値を上回っていた。
慢性疼痛とPTSDの統合的治療アプローチの必要性
研究者らは、慢性疼痛患者におけるPTSD評価では、外傷体験そのものに焦点を当てるよりも、これらの体験が日常機能に与える影響を評価することが重要であると指摘している。また、慢性疼痛とPTSDを統合的に治療するアプローチの開発が必要であるとしている。本研究の結果は、慢性疼痛患者の約3分の1がPTSDスクリーニング陽性であり、これらの患者は特に機能障害が大きいことを示している。このことから、慢性疼痛治療において心理的トラウマとPTSD症状の評価を組み込むことの重要性が強調される。慢性疼痛とPTSDの併存は患者の生活の質を著しく低下させる可能性があるため、両方の状態を同時に治療する統合的アプローチの開発が今後の課題として挙げられている。
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Eur J Pain. 2025 Jul;29(6):e70044.
© 2025 The Author(s). European Journal of Pain published by John Wiley & Sons Ltd on behalf of European Pain Federation ‐ EFIC ®.
2026年05月15日 18:24