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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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ハワイからなぜ口腔顔面痛の患者さんが私のところに来たのか

筋痛治療
ハワイからなぜ口腔顔面痛の患者さんが私のところに来たのか
 
先日ハワイから口腔顔面痛患者さんが受診したことを書きました。私にとっての疑問はなぜこの患者さんが私を指名して受診したのかでした。
患者さんは几帳面な方で、予診票にここ数年の間に受診した医療機関の名前を正確記載してありました。そして、最近に一般歯科から紹介されて受診したENDO専門医のところで、歯原性では無いからENDO治療は適応で無いこと、非歯原性歯痛、口腔顔面痛の診療には米国本土か日本に行くことを勧められた。また、非歯原性歯痛に関するパンフレットを渡されて、それに元赤坂デンタルクリニックが書かれていたと言うことであった。
ENDO専門医の名前はNozomu Yamauchi先生でした、インターネントで検索したところ、University of North Carolina at Chapel Hill 2007卒業、2010年ENDOレジデント終了であることが判りました。University of North Carolina at Chapel HillはTMD、口腔顔面痛の世界では知らない人のいない故William Maixnerが在籍した大学です。さらに私にとってはもう一つのことで非常になじみ深い大学でした。神奈川歯科大学の同級生で沖縄宮古島出身の友利優一君の幼ななじみで大学時代にアパートで会った事のある医科歯科大学出身の山内三男先生が教授として在籍している大学です。そして、大学時代にクラブの先輩であった故木下静子さんが山内先生と結婚されて、同大学のENDO教室に在籍されていました。Orofacial PainクリニックがENDO教室に属していたので、メールをやりとりして様子をうかがったこともありました。
Nozomu Yamauchi先生がUniversity of North Carolina at Chapel Hill 出身だということが判って、絶対、山内三男先生と木下さんの子供さんだろうと思いました。次に、なぜ私のことを知ったのかの疑問は残りました。
この話をまず、鹿児島にいる友利君に話したところ、山内先生の子供さんがハワイで開業している事を知っていました。さらに、この話を口腔顔面痛オンラインセミナーで紹介したところ、参加していた宮本諭先生(現:慶應義塾大学医学部 共同利用研究室・細胞組織学研究室在籍)が骨代謝の研究でUniversity of North Carolina at Chapel Hillに留学していて、家族ぐるみの付き合いがあり、次男のNozomu君がハワイで開業していることを知っていました。
そこで、患者さんの診察結果報告を兼ねてNozomu Yamauchi先生にメールを送りました。 A small world for sure.という返事があり、私がご両親と交流があった事を知ってびっくりしていました。数年前にハワイから来た患者さんがいて、筋筋膜性歯痛だったので非歯原性歯痛、筋筋膜性歯痛の解説パンフレットを渡しました。偶然にもその患者さんもNozomu Yamauchi先生を受診していたようで、それ以来、日本人の非歯原性歯痛の患者さんが受診した際にはそのパンフレットを活用して説明しているとのことでした。
私の作った非歯原性歯痛のパンフレットがハワイで活用されていることを知って、非常にうれしかったです、さらに、その先生が知り合いの息子さんだったという偶然にもびっくりでした。
 
2023年05月05日 15:12

口腔顔面痛の診断には筋触診が大事です

口腔顔面痛の診断には筋触診が大事です

口腔顔面痛の最も多い原因は咀嚼筋と頸部の筋痛です。咀嚼筋は本来の咀嚼時に加えて、日中のかみしめに睡眠中のくいしばりなどで筋に硬結が生じて、咀嚼時痛が生じたり、自発痛が生じたりする事もあります。

頸部の筋は日中の身体活動中、頭を支えるためにほぼ常に緊張しています。さらに、長時間、前屈みになったり、横を向いた姿勢をとったりするとそれぞれの機能筋に余計な緊張が強いることになります。さらに、咀嚼筋と協働運動して咀嚼、かみしめ、くいしばり時に緊張するので過剰な負荷となり、咀嚼筋の痛みとともに、肩こり、クビのコリが一緒に生ずることが多いです。

ただの筋痛(局所筋痛)が筋・筋膜疼痛になると関連痛としてその筋が痛いのではなく歯痛や顔面痛が生ずることがあります。また、頸部の筋の筋・筋膜疼痛は緊張型頭痛や顔面痛の原因になります。慢性化すればするほど、筋そのものの病態から中枢性の要因に移行してしまい、治療も難しくなります。

筋触診について

筋痛診査のカギは筋触診です。筋触診で筋の肥大、硬結、圧痛の有無を診査します、ここで見逃されると筋痛が鑑別診断から抜け落ちてしまい、原因不明の痛みになってしまいます。当院に来院される患者さんのなかにはいくつかの施設で治療を受けているが一向に改善しないと言う方が多いです、そして、その方々の多くは筋触診が適切で無いために筋痛が見逃されています。単純には筋触診の圧力が弱い、硬結が探せていない等の理由です。長年、筋触診の指導をしてきましたが、手に手を添えて患者さんの筋を触診する、まさにHANDsOnが一番です。ビデオ等で供覧しても圧力は伝わらないために、正確には伝わりません。

多くの方々は肩こり、クビの筋痛を持っていて、筋・筋膜疼痛になっている人も少なくありません。自分で頸部の筋を入念に1kg程度の圧力で触診するとウッとする様な痛い部分が触れます。もう一度、その部分を1-2本の指先で弱い力で触ってみましょう、ポイント状に痛い部分があります、その部分に指先を置いて、ゆっくり小さい円を描くように力を強めてみましょう。痛みがボワーンと拡がり、離れた部分に鈍い痛みが感じられます。これが関連痛です。是非自己触診をしてみてください。これで何時もの痛みが誘発再現されたら、その痛みは圧している部分(トリガーポイント)の筋・筋膜疼痛によるものということになります。

2023年04月29日 17:05

特発性三叉神経痛の治療の限界

トリガーゾーンへの些細な刺激により誘発される激烈な発作痛を特徴とする三叉神経痛は原因毎に3つに分類されます。
昔は脳腫瘍などの原因が明らかなものが症候性(真性)、原因が不明のものが特発性(化性)と言われていましたが、現在は血管圧迫により神経に変形が生じている(neuro-vascular contact with morphological changes)典型的三叉神経痛(classical Trigeminal neuralgia)、脳腫瘍などのしげきによる二次性三叉神経痛と原因の不明な特発性三叉神経痛に分類されます。
典型的三叉神経痛、特発性三叉神経痛の治療ではカルバマゼピンなどの薬物療法が第一選択で、多くの症例は薬物療法でコントロール出来ます。
しかし、薬物療法で薬疹がでたり、肝機能障害などの副作用により薬物療法が継続出来な場合や代謝酵素の自己誘導により必要服用量の増加による副作用の発現等によって、副作用対策、併用薬の選択などで困窮することも多いです。
典型的三叉神経痛ではこのように薬物療法抵抗性の場合、微小血管減圧術microvascular decompression(MVDが適応となります。神の手を持つ脳外科医としてマスコミで取り上げられる福島孝徳先生の鍵穴手術がよく知られています。現在この手術は日本全国の主要な都市に専門にやっている脳外科医がいて、有効性について多くのエビデンスが示されています。
二次性三叉神経痛の脳腫瘍、髄膜腫等の摘出は脳外科医の得意とするところで手術により解決出来ます。ところが、特発性三叉神経痛では薬物療法で長期コントロール出来れば良いのですが、副作用等で薬物療法が有効でなくなった場合が大変です。特発性三叉神経痛においても典型的三叉神経痛に対する微小血管減圧術の様に根本的治療法の開発が望まれます。このような状況で新規の治療法としてInternal neurolysis (別名NerveCombing(文字通り神経に櫛かけるように、神経根の部分で神経取り巻く外表の膜に割線を入れるという術式)が有効であるという報告があります。しかし、まだ、論文は多くはなく、その術後経過は不明です。
Internal neurolysisを含めた神経遮断術neuroablative proceduresの中で最も侵襲の少ないのが定位放射線手術Gamma knife surgeryです。しかし、痛みの軽減は最大6ヶ月遅れることがあり、感覚脱失が頻繁に生ずると言われています。三叉神経internal neurolysisは長期的には非常に有効であるが、合併症が多い(感覚鈍麻96%、有痛性感覚脱失3.9%)ことが示されています。経皮的神経切除術(高周波熱凝固法、バルーン圧迫法、グリセロール根治療法)では、効果が平均3~4年間しか続かないために繰り返し行うことが一般的であり、合併症の発生率は高く、特に繰り返し行う場合は注意が必要といわれます。
神経遮断術neuroablative proceduresの中で、どれかの治療法が他の治療法より優れているという根拠はない。
 
血管圧迫がない、血管圧迫があっても神経に変形が生じていないこと診断基準である特発性三叉神経痛にも苦し紛れのように微小血管減圧術(MVD)が行われることがあるようで、いくらか有効であり、定位放射線手術Gamma knife surgeryよりも有効である可能性があるという論文があります。
三叉神経痛の治療法の開発が進まないのは、三叉神経痛の動物モデルが出来ないからで、多くの人達が研究したようですが実現していません。人間でしかテストが出来ないので時間が掛かりますね。学生時代から使われていたカルバマゼピン以上に有効性の高い薬はなく、新しい薬の開発が待たれます。
つい最近も、片頭痛の予防薬として使われる新規に開発された抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin gene-related peptide:CGRP)抗体と抗CGRP受容体抗体のなかで抗CGRP受容体抗体のエレヌマブが三叉神経痛に有効であるという報告があり、期待しましたが100人規模のテストで無効が証明されてしまいました。残念
 
2023年04月01日 14:34

ChatGPTは知識を高める しかし、生き残るには足りない

先日のニュースで今年の医師国家試験をChatGPTに解かせたら正解率50%だっとでていて、まだまだかなと思っていたら、米国の医師国家試験ではほぼ100%の正解率だっということです。まだ、日本語の医学データ量が少ないからで、時間とともに賢くなり、100%正解も遠くないでしょう。いつも、このような革新的な発展の際に、歯科関連の情報もちゃんと記録され、取り残されないかどうかの問題は残ります。
ChatGPTが世に出たときに、大学の先生方は学生が課題レポートや小論文をこのチャットGPTを使って書くというか、書いてもらうのではないかという心配が生まれました。これまでもCopy&Pasteを見分けるソフトがあったり、レポートはprintではなく、自筆を強要したりして不正行為の防止策を講じてきましたが、それを遥か超える事態になっているのです。しかし、このテクノロジーの進化を利用しない選択はありません。
ニューズウィーク日本版2023年03月25日(土)18時25分に、ChatGPTは大学教育のレベルを間違いなく高める――「米国最高の教授」がそう言い切るこれだけの理由、というコラムがあります。
テクノロジーの進化に伴い、人間らしい倫理観を持つリーダーのニーズが高まっている。機械と人間が競争する労働市場で、私たちは人間ならではの必要不可欠なスキルを伸ばしていく必要がある。そして偽情報が氾濫する今、偽物と本物を見分ける知性を身に付ける必要もある。大学は所属教員に対し、不安定で複雑で曖昧な世界での競争に必要な特性を学生に身に付けさせるための授業設計を促すようになるはずだ。チャットGPTは、質の低い質問をすると質の低い答えしか返ってこないことが明らかになりつつある。
私は学生たちに、将来圧倒的なパフォーマンスを上げるためには「質問学」の博士号が必要だと繰り返し強調している。学生はAIに質の高い質問を投げかけ、今の自分の知識以上のことを学ぼうとする意欲が必要だ。
より高度な質問をすれば、それだけ大きな成果が手に入る。もしチャットGPTが知的作業に不可欠なツールになるのであれば、教育者は優れた「質問者」の育成に力を入れざるを得ない。それこそ将来の世界で必要とされるスキルだ。
英語の「競争する(compete)」の語源は、「高める」という意味のラテン語だ。チャットGPTは登場の瞬間から、AIと人間の競争は避けて通れないことを明らかにした。だが同時に、大学教育のレベルを間違いなく高めるだろう。教員たちよ、パニックにならず、賢くなろう、と書かれています。

今や日本においても、あらゆる産業でDXが叫ばれています。さらにDXが広まったあとに生き残れる職種と廃れる職種は何だ等という記事もよく見かけます。医療においては、画像診断、病理診断は完全にAIに取って代わられるだろう、これらの教室に残ろうとする人は激減でしょう。私の専門の臨床診断推論も患者さんがタブレットで問診票に答え、ルーチンの臨床検査を受けると、追加検査が指示され、その結果、あなたの痛みはこれだろうと示される時が遠くないと思います。私の世代は何とか今のままで名人芸的に逃げ切れると思いますが、次の世代はそうは行きません。それではどのような仕事が必要とされていくのか、ちゃんとコミュニケーションのとれる医者、双方向で話の出来る医者でしょうと同僚と雑談したら、目も合わせず、相手を気遣う意識も無い医者に言われるよりも、ロボットに淡々と言われた方がいいかもと反論されました。言い換えます、人間らしい倫理観を持ち、スピリッチャルに基づいた患者とのコミュニケーションの出来る医療者しか生き残れなくなるでしょう。
医療におけるマニュアルはデータを採るために、皆さんが決まったことをする様に作られているそうで、その最たるモノが米国精神医学会が作るDSMはDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの略で診断と統計のためのマニュアルなんです。マニュアルに従って行った医療の結果、有効性の認められたものを適宜いいとこ取りして、患者に応じて活用するのが臨床だという話があります。臨床診断推論、治療法選択推論はAIに任せて、コミュニケーション能力を高める研修をするのが今後必須になるでしょう。
2023年03月27日 14:13

ハワイから非歯原性歯痛の患者さん来院

先日、ハワイ在住の日本人の方が10年来の非歯原性歯痛で来院されました。
経過を聞くと歯痛で抜髄が始まりで、かなりの歯科を受診して根管治療を数回受けたそうです。最後に日本人のENDO専門医に紹介され、歯原性では無いとの診断、ハワイには口腔顔面痛専門医はいないので米国本土か日本に行ったらどうかとアドバイスされたそうです。今回帰省する機会があり、ENDO専門医に相談したところ、私を薦められ受診したという次第でした。
これまでも、ハワイ在住の数人の日本人から非歯原性歯痛についてメールでの相談があり、ハワイの歯科事情、口腔顔面痛事情を知っていました。米国も日本も、世界の多くの国々で、簡単に口腔顔面痛の診断治療が受けられない状況にあります。せめて、歯原性か歯原性でないかの判断、そして、非歯原性歯痛だとして、筋触診で筋筋膜疼痛の可能性はないか、ここまで診査ができれば多くの患者さんが救われます。
今回ハワイから来院した患者さんは、側頭筋、咬筋、胸鎖乳突筋、後頸部の筋から歯への関連痛がありましたから筋筋膜疼痛だと思います、10年以上経過しているために、歯痛部の歯肉にはAllodyniaも認められ、感作が生じていると思われます。
筋骨格系の痛覚変調性疼痛診断に照らすと、かなりの部分で該当する項目があり、筋筋膜疼痛に痛覚変調性疼痛が合併していると診断できます。
この患者さんはハワイに一台しかない経頭蓋磁気治療を受けていて、歯痛は治らなかったがうつが軽くなったそうです、また、処方されている薬が米国らしかったです、モルフィン、トピラマート(強い片頭痛発作があった)、プロザック(SSRI、抗不安薬として)、頓服にオキシコドンが処方されていました。
私のアドバイスはまずは筋痛へのセルフケアです、腹式呼吸しながらの頸部、咀嚼筋のストレッチ、開口ストレッチアシストブロックも渡しました。全身の随意的最大緊張からの弛緩 など
薬としては痛覚変調性疼痛への対処としてトリプタノールを勧め、漸増服用法のパンフレットを渡して、ハワイのPainmanagementに相談する様に伝えました。

最後の観てもらった日本人ENDO専門医がなぜ私を推薦したのか不思議でした、日本の大学卒業して米国で専門医資格を取ったならば、私を知っている可能性はあるかと思いながら、フルネームが書かれていたので調べたらUniversity of North Carolina at Chapel Hill 卒業でそこでENDOレジデント研修
ここまで観たときに、私の鹿児島の同級生の高校の同級生が同姓で、学生時代に会った事があり、卒業後米国に渡り、University of North Carolina at Chapel Hillの生化学の教授をしていること、その教授の奥さんが私の大学の先輩で、ENDOの教室にいて、かなり昔にメールで近況を連絡したこと等を思い出しました。鹿児島の同級生に連絡して確認したところ息子さんがハワイで開業しているということで、どうも深い繋がりがあったようです。
その息子さんが私をどうやって知ったのかはまだ不明  連絡して診察結果を送ろうと思っています。

 
2023年03月19日 10:52

末梢神経損傷分類の混乱

sunderland分類
Seddonの分類、Sunder land分類活用の問題点   
最新解説  wajima-ofp.com/blog_articles/1707630604.html
Seddonの分類は1942年に発表され、約10年後の1951年にSunder land分類が細分化して発表されています。
この図がsunderlandの原図だと思います。他の図との違いは左側の神経細胞と神経線維が複数書かれています、他の図は神経細胞1個で一本の神経線維だけと勘違いして、一個の神経細胞しか書かれていません。

末梢神経損傷の分類としてSeddonの分類(1942)、さらにこの分類を修正、細分化したsunder landの分類(1951)が用いられます。この末梢神経損傷分類の活用に当たって、いくつかの問題点があります。
第一は、Seddonの分類、Sunder land分類とも多くの日本語訳がありますが、訳が間違っているものがあります。用いられる用語は軸索、シュワン鞘、ミエリン鞘、神経内膜、神経周膜、神経線維束、神経上膜、神経幹などで、必ずしも適切な訳になっていないために損傷程度がどの程度か誤解する可能性があります。オリジナルに忠実な訳を用いてください、内容が全く違ってしまいます。
 
もう一点は、これらの分類はseddon分類のNeurapraxiaとAxonotomesisまでとsunderland4度までは神経線維1本1本の損傷程度を分類し、Seddon分類neurotmesisとsunderland5度では神経幹を包む神経上膜の損傷状況を示していて、神経線維1本1本の問題から神経幹の損傷に飛んでいます。神経損傷の病理像としては非常に有用で、1本の神経線維で髄鞘の障害、軸索の断裂、そして、神経幹の断裂と理解出来ます。
ところが、臨床での神経損傷は1本1本の神経線維の問題ではなく、例えば下歯槽神経損傷とか神経線維が何万本も集まった神経幹の損傷が問題です。ところが、臨床の場において、まるで下歯槽神経が一本の神経線維であるかのように、Seddonの分類のどれとか、Sunder landの何度だと話していることがあります。例えば、下歯槽神経を傷害した場合、1本1本の神経線維ではsunderlandのⅠ度から4度までの損傷が混在した状態か5度の完全に断裂してしまっているかだと思います。
おそらく、このような混乱を憂う人は私以前にいるのは当たり前で、Mackinnon,Dellonと言う人達が解決策として、Sunder Landの分類にVI度損傷としてI〜V度損傷の神経束が混在した状態であるとして分類を追加しています。臨床で診る神経損傷のほとんどはSunder Landの分類VI度損傷(様々な損傷の混在)ということになります。  
例外は智歯抜歯等で下歯槽神経を圧迫し術後にオトガイ部の鈍麻が生じたが、約一ヶ月後に完全改善した例、この例では障害された神経線維全部がseddon分類のNeurapraxia つまり脱髄のみだったと思われます。また、下歯槽神経の完全断裂neurotmesisしてしまった例は、混在無しの状況でしょう。
 
2023年03月16日 21:23

今後の活動 2023年3月に思うこと

2023年3月に思うこと
2017年3月に大学を定年退職してから丸6年経過、米国の先生方に言われたEnjoy retirementの実感が少しずつ湧いてきています。貧乏性で完全にENJOY出来ずに今に至っています。まあ、診療は100%の出力になってしまうので疲れますので休みが良いなと思うときが多くなってきました。
大学時代より診療のレベルは上がっていると思います、一番に患者さんとのコミュニケーションです、時間があるのでしっかり診査ができ、正しい診断を引き出せます。

原則火曜日、金曜日はフルタイム、第3土曜日は午前中、口腔顔面痛診療です。
第2火曜日は静岡清水病院でTMD、口腔顔面痛診療、清水病院では井川先生と池田先生が口腔顔面痛を診ていますから、私は主に紹介患者さんを診ています。静岡県は他に本格的にTMD、口腔顔面痛を診ているところはないので患者さんが集まっています。
第4水曜日は札幌風の杜歯科で口腔顔面痛診療です、広い北海道で口腔顔面痛を専門とする診療科はなく、北海道中から患者さんが集まっています。完全に口腔顔面痛の三次医療機関になっているので、ここでの診療は大変です。歯髄炎の診断で歯の治療しているが改善せず来院、どうもおかしいと神経内科に紹介したら脳腫瘍だったという例も一例だけではありません。風の杜歯科の飯沼先生は口腔顔面痛について北海道歯科学術大会で発表したり、各地区の歯科医師会で講演したりして啓発に努めています。
2022年から月刊デンタルダイヤモンドに「症例に学ぶ診断マスターへの道」と題して連載記事を編集しています。毎号口腔顔面痛に興味を持って診療している先生方にパターン認識法で診断エラーしたが仮説演繹法でしっかり正しく診断して治療したという症例を提示してもらい、診断エラーの原因を自身で探し、次の診断に活かすという内容です。今年は診断エラーのみではなく、口腔顔面痛診断に関わる様々な問題点も取り上げて継続しています。

口腔顔面痛に関するオンライン相談もしています、近くに口腔顔面痛の判る先生がいないのでどうすれば良いか、ペインクリニックの先生に薬を出してもらったが、どう飲めば良いのかとか、海外在住の方々からの相談も多いです。大都市に住んでいるがOrofacial painなんて見当たらない、何処に行っても診てもらえば良いのか、等の相談があります。

診療以外はPCに向かう時間が増えたことから、様々な情報が目についてしまい、臨床に活用できる話や世界中で話題になっている論文などを見つけて、自身のHPブログに挙げたり、口腔顔面痛MLに投稿して皆さんとデスカッションしたりしています。
閑でぼーっとする時間はなく、何時も何かしています、これも貧乏性だなーと思っています。コロナが鎮まったら、米国の学会も行きたいし、東南アジアの若手の教育も再開したいと思っています。
 
2023年03月01日 14:18

チャットGPTに聞いてみました 解釈モデルのズレの直し方

2023年2月23日の朝日新聞天声人語にチャットGPTの話題が載っていました。
今世界中で話題のAiを使った小説執筆です。大学生が小説の校正作業のアルバイトに採用された。執筆者は生身の作家ではなく人工知能Ai、やりとりするうちに、相手の「意識」を感じ始めると言う話、これは昨年の第9回「星新一賞」でAiを利用した初入選した作品の事でした。ミーハーな私は世の中で流行っているもので自分の仕事が少しでも楽になるものは取り入れてきたので、このチャットGPTも早速活用にむけて試し中でしたので非常に興味をもちました。
最近の私の頭のなかで未解決で残っているものに、解釈モデルを能率良く把握するにはどうすれば良いか、把握した後にこちらの診断と齟齬があった場合に患者さんの考えを効果的に変えるには、こちらにすり合わせるにはどうすればいいのか、という課題があります。
 そこに、養老孟司が新刊本で、「あの人は私をわかっていない」「私を誤解している」などと思うのは、誤解ではない「正解」があるという前提に立っているから、
誤解されたままなんて嫌だと思うかもしれないが、「それは誤解です」と言っても相手は相手で自分が正解だと思っているから、たいてい無駄に終わる。誤解の多くは、放っておくと自然に解けて消えていきます。どうでもよくなるんです。長い時間がかかるかもしれません、その時間を「損」と思うと、短時間で、合理的に「誤解を正そう」という話になる。そこで無理矢理「これが正解なんだよ」と説明しても無駄なことです。

この相手の誤解を患者さんの解釈モデルに置き換えると、医療の場面での患者と医者のやり時になります。解釈モデルとこちらの診断をすり合わせるのは難しいことなんだとあらためて気づかされました。
患者さんの解釈モデルがどうしてもこれからの治療方針と合わずに、私はこの歯の痛みを治してほしいのに、頬の筋肉が強ばっているの、歯肉の神経が敏感だのと言われても、納得出来ない、歯の痛みを治して欲しいんだ、 歯医者はあなただけじゃない、歯のややこしい痛みの治療が上手いという評判を聞いてやってきたが、どうも見当外れだったようだ、と言われたらどうしましょう。
養老先生は「放っておくと自然に解けて消えていきます」と言っているが、治療するには、何とか解釈モデルを早めにすり合わせたい、どうすれば良いのか
このよう場面に備えて、早速、この課題をチャットGPTに答えてもらいました。
相手の誤解を解くためには、
以下のステップを踏むことが重要です。
 
1.相手の誤解を正確に理解する
まず、相手がどのような誤解を抱いているのか正確に理解する必要があります。相手が何を誤解しているのかを明確に把握することで、解決策を見出すことができます。
 
2.相手の視点に立って考える
相手がどのような状況や背景で誤解を抱いているのかを考え、相手の視点に立って考えることが重要です。自分の立場だけでなく、相手の立場を理解し、尊重することが重要です。
 
3.正確な情報を提供する
相手に正確な情報を提供することが大切です。誤解を解くためには、適切な情報を提供することで、相手が正確な情報に基づいて考えることができるようになります。
 
4.コミュニケーションを改善する
相手とのコミュニケーションを改善することが重要です。誤解を解くためには、相手とのコミュニケーションがスムーズであることが必要です。相手の意見を尊重し、適切なタイミングで適切な言葉を使うことが大切です。
 
5.誤解が解けたことを確認する
最後に、誤解が解けたことを確認することが重要です。相手が正確な情報に基づいて誤解を解いたことを確認することで、今後同じような誤解が生じないようにすることができます。
 
なるほど、もっともな話ですね。白衣の威厳よりもこのような論理だった話を如何にかみ砕いて伝えるか、精進します。
 
 
2023年02月24日 13:51

一般向け非歯原性歯痛情報

一般向け健康雑誌PHPからだスマイル に非歯原性歯痛に関して、医療ジャーナリストの木原さんに取材を受けて、記事になっています。
PHPからだスマイル2023 3月号 非歯原性歯痛 健康ニュース2023 3 虫歯・歯周病は無いのに”歯が痛い”  121-123   https://www.php.co.jp/magazine/karadasmile/  
非歯原性歯痛はH26年度から歯科医師国家試験に毎年出題され、多くの歯科医師は知っている歯科の疾患の一つですが、いざ臨床となると、知っているのと診断出来るのとは違うために、見逃されていることが多いのが現状です。歯科医師への啓発と共に患者さん、一般社会への広報が必要と思っています。
患者さん向けには、歯の神経の治療をしているが、うまく治らない場合には、私の痛みは非歯原性歯痛ではないかと主治医に言ってみることを提案します。
 
2023年02月13日 10:11

慢性痛治療はコミュニケーション

歯髄炎は大人子供、その人が他の病気を持っていたとしても、神経を抜くと治ります。処置前後の痛みに強い、弱いの差はあるでしょうが、痛みは収まります。これは歯に対する治療でことが住むからです。ところが慢性痛は、例えば咬筋の筋・筋膜疼痛による非歯原性歯痛の場合には歯に治療しても直らないのは当たり前、筋肉に治療すれば直るか。筋が痛みの元であるから治りそうですが、慢性化していると治療者と筋肉の問題に宿主の患者さんが絡んできます。慢性痛の治療では痛みの原因である筋肉よりも筋肉の持ち主である患者さんに対する治療が重要になります。
患者さんとコミュニケーションしなければならない、話さなければならない、患者さんに理解してもらうように話さなければならない、患者さんに自分の筋肉の病気について、なぜ起こったのか、どうすれば治るか等を説明して、原因が患者さん自身の生活にある事、改善するには患者さんによるセルフケアが必要である事を理解してもらう、そして、やる気になってもらわなければなりません。
今まで歯の病気だと思っていた人に、痛みの元はあなたの生活にありますよ、治すのはあなたですよと言ってセルフケアをやってもらうわけです。非歯原性歯痛のパンフレットを渡して、あなたの病気はこれです、ここに書かれている事をやってくださいでは治らないのは目に見えています。
患者さんの解釈モデルでは歯が痛い、歯の病気、歯科医院に行ったら歯の治療をしてくれて、すぐ治るはずでしたが、悪いのはあなたです、治すのもあなたですと言われても解釈モデルは変わりません。
振り出しに戻って、慢性痛の治療は痛みの元が治療対象ではなく患者さんです、そして治療法はコミュニケーションを通じて伝えることになります。
一般歯科治療はクルマの修理のように、大きく口を開けてもらい口の中にある歯を削り詰めたり被せたりして治療します、このような治療から180度反対側にある、口で話してもらい、こちらの話しを耳で聞いてもらって治療していくのです。
 
2023年02月13日 09:42

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