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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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舌痛症 口腔灼熱症候群とは

舌痛症 口腔灼熱症候群(Burning Mouth Syndrome:BMS)とは
従来、日本では心因性と言われていた舌痛症、世界的には口腔灼熱症候群(Burning Mouth Syndrome:BMS)と言われ、誘発因子としてストレス、不安など心因性が関わるが、基本的には神経障害性疼痛の一つであると言われいます。舌の神経支配は味覚を感じる顔面神経の枝の鼓索神経と感覚と痛みを感じる三叉神経の枝の舌神経からなっています。舌は味覚、感覚とも非常に敏感に出来ているので、ちょっとした刺激でも神経が刺激されて障害されてしまい、神経障害性疼痛となるようです。また、味覚の神経と痛みの神経のバランスが崩れるといろいろな症状が出ることが判ってきました。
12月の日本口腔顔面痛学会サテライトmeetingで舌痛症をテーマにすることから、改めてまとめてみました。
舌痛症の治療に関する記事 参照してください。 

口腔灼熱症候群(BMS)は、舌や唇、口の中全体に焼けるような痛みを感じる病気です。
日本では舌に症状が出ることが多く、「舌痛症」と呼ばれることもあります。
誰にでも起こる可能性がありますが、特に閉経後の女性に多く見られます。
見た目に傷や腫れがないため、原因不明のまま長期間悩む方も少なくありません。
完全に治す方法はまだ確立されていませんが、治療によって痛みを軽くすることは可能です。

どんな症状が出るの?
BMSの典型的な症状は、名前の通り「焼けるような熱感(灼熱感)」です。
「舌がジーンと熱い」「ヒリヒリ・ピリピリする」「コーヒーでやけどしたような感じ」と表現されます。
しかし、見た目には異常がなく、傷や腫れ、色の変化などは見られません。
多くの人では、
  • 朝起きた直後は症状が軽く、
  • 午前中から昼にかけて強くなり、
  • 食事中や睡眠中には一時的に楽になる、
    といったリズムがあります。
また、次のような症状を伴うこともあります:
  • 口の中が苦い・金属のような味がする
  • 唾液は出ているのに「口が乾いている」ように感じる
  • しびれ感を伴う
  • 症状が続くと気分が落ち込み、不安を感じる

原因と分類の考え方
BMSには、かつて一次性と二次性という分類がありました。
  • 一次性BMS:検査をしても原因が見つからないもの
  • 二次性BMS:ビタミン不足、糖尿病、薬の副作用など、他の原因によって起こるもの
しかし、現在の国際分類(ICOP 2020)では考え方が整理され、
明確な原因が特定された場合は「BMS」とは呼ばず、
それぞれ「原因による灼熱感」として区別します。
つまり、「BMS」とは現在、原因が特定できない灼熱感を指します。

なりやすい人・関係する要因
BMSは特に次のような方に多く見られます。
  • 50歳以上の女性(閉経期・閉経後)
     → エストロゲン低下により味覚神経の感度が変化します。
  • 歯ぎしり・食いしばりの癖がある方
  • 逆流性食道炎のある方
  • 糖尿病・シェーグレン症候群などの全身疾患がある方
  • 鉄・亜鉛・ビタミンB6・B12などの栄養不足
  • 長期服薬中(抗うつ薬・降圧薬など)
  • 過去の歯科治療後から症状が出た方
  • 精神的ストレス・不安・うつ状態を抱えている方
これらの要因が複雑に関係して、舌や口腔の神経が過敏化し、
痛みや灼熱感を感じるようになると考えられています。

診断の流れ
まずは歯科医院での診察が第一歩です。
見た目の異常や歯科的な病変がないかを確認し、必要に応じて専門医に紹介されます。
専門医では、次のような検査を行うことがあります。
  • 血液検査(貧血・糖尿病・ビタミン不足など)
  • アレルギー検査(食物・薬・金属など)
  • 唾液量の測定
  • 口腔スワブ検査(カンジダなどの感染確認)
  • 組織検査(まれに行う)
これらの結果に明らかな原因が見つからなければ、**口腔灼熱症候群(BMS)**と診断されます。

治療法について
BMSの原因は複数の要素が関係するため、個人差に応じた治療が必要です。
米国FDAで承認された特効薬はありませんが、いくつかの薬剤や方法が有効とされています。
薬物療法
  • **クロナゼパム(抗不安薬)**の含嗽または少量内服
  • **アミトリプチリン(トリプタノール)**などの抗うつ薬を少量使用
  • プレガバリン、ガバペンチンなどの神経過敏抑制薬を用いる場合もあります。
これらは痛みの感じ方を抑える神経調整薬として使用されます。
補助的治療・生活指導
  • ストレス緩和、睡眠の改善
  • 軽い運動やリラクゼーション
  • 栄養補給(鉄・ビタミンB群・亜鉛など)
  • 認知行動療法(CBT)や心理的サポート

自宅でできる痛み緩和の工夫
症状を軽くするために、次の方法を試してみましょう。
  • シュガーフリーガムや飴で唾液を促す
  • 冷たい水や氷を口に含む
  • 香辛料・酸味・熱い飲食物・アルコールを控える
  • アルコール入りマウスウォッシュを避ける
  • 禁煙・電子タバコの使用中止
これらは病気を“治す”方法ではありませんが、
一時的な痛みの軽減に役立ちます。

治療期間と経過
BMSは慢性化しやすく、治療せずに放置すると数か月〜数年続くことがあります。
適切な治療により、数週間〜数か月で症状が軽くなるケースもあります。
焦らずに医師や歯科医と連携し、
「症状をゼロにする」ではなく「生活を取り戻す」ことを目標に治療を続けることが大切です。

予防と再発予防
現時点で完全な予防法はありませんが、
次の点に注意することで再発のリスクを減らすことができます。
  • アルコール・カフェインのとり過ぎを控える
  • 熱すぎる・辛すぎる・酸っぱい食品を避ける
  • バランスの取れた食事でビタミン・鉄・亜鉛を補う
  • 睡眠不足・ストレスを溜めない生活を心がける

著者からのアドバイス
口の中が焼けるように痛いと、何も手につかなくなるほどつらいものです。
口腔灼熱症候群(BMS)は、見えない痛みであり、治療にも時間がかかります。
しかし、正しい理解と根気ある治療で、症状を和らげることは必ず可能です。
「もしかしてBMSかもしれない」と思ったら、まず歯科を受診してください。
そして、あなたの痛みを信じてくれる医師・歯科医師に相談しましょう。
痛みを分かち合いながら治療を続けることが、回復への第一歩です。
 
2025年10月19日 20:50

心理職向けの慢性疼痛に対する認知行動療法

先日、心理職向けの慢性疼痛に対する認知行動療法の一日コースを受けました。コースの内容とは別に、何時も聞いている医師、歯科医師向けの認知行動療法との違いが気になりました。多職種の特性を活かした慢性疼痛治療の有効性です。
医師、歯科医師は慢性疼痛の苦痛の「痛みの治療」しながら、完全回復させることの出来ない事により生ずる「苦悩に対応」しなければならない状況です。患者側からすると、あなたが痛みをちゃんと治療できないから私は苦悩を抱えてしまっているのでしょう、認知行動療法でごまかさないで痛みをちゃんととってください、という要求が何処までも続きます。このような状況ではどちらの治療も上手く進みませんし、治療の雰囲気は両者にとって不幸な状況です。
慢性疼痛治療に多職種が介入することにより、無責任ではなく役務を分担し、それぞれの特性を十分に発揮して治療を進められると思いました。
2025年09月28日 09:07

帯状疱疹後三叉神経痛は誤訳

国際口腔顔面痛分類(ICOP)、国際頭痛分類第3版(ICHD3)に見つかった大きな誤訳
この度、臨床推論実習セミナーの受講生から非常に違和感のある病名を聞かされました。「帯状疱疹後三叉神経痛」です。帯状疱疹の急性期が過ぎて、慢性化したときに持続的な痛みに発作性の痛みが混じることがあります。通常、これを帯状疱疹後神経痛と呼びます。
ところが、慢性化した持続的な痛みは帯状疱疹後神経痛で、そこに混じる発作性の痛みの病名は「帯状疱疹後三叉神経痛」が適切だろうという意見でした。なるほどと思うとともに大きな違和感がありました。そんな病名あったかと思って確認したら、国際口腔顔面痛分類(ICOP)は国際頭痛分類第3版(ICHD3)ともに確かにありました。
「帯状疱疹後三叉神経痛」を字面の通りに解釈すると、帯状疱疹後に起こる、あるいは帯状疱疹に罹患したことが原因で起こる三叉神経痛となります。もっともらしいのですが、これは大間違いで、「帯状疱疹後三叉神経痛」は誤訳です。
「帯状疱疹後三叉神経痛Trigeminal Post-Herpetic Neuralgia」は三叉神経痛の下分類では無く、三叉神経ニューロパチーの下分類として、帯状疱疹による有痛性三叉神経ニューロパチー、外傷後三叉神経ニューロパチーなどと並列に分類されています。つまり、三叉神経痛の下分類ではないのです。
ICHD3βでは明らかにニューロパチーが生じているということで「帯状疱疹後有痛性三叉神経ニューロパチーPost-Herpetic Trigeminal neuropathy」となっていました。しかし、やはり、帯状疱疹後神経痛Post-Herpetic Neuralgiaという用語が普及していることから、ICHD3では再度、改訂されました。ここで誤訳が発生したのです。
帯状疱疹後三叉神経痛の原文はTrigeminal Post-Herpetic Neuralgiaでした。ICHD3βの帯状疱疹後有痛性三叉神経ニューロパチーPost-Herpetic Trigeminal neuropathy」とではtrigeminalの位置が異なります。Trigeminal Post-Herpetic Neuralgiaでは敢えて先頭にtrigeminalを置いてあります。
中間神経の項に類似の分類があります。有痛性中間神経ニューロパチーの下分類に、帯状疱疹後中間神経痛があり、その英文はPost-Herpetic Neuralgia of nervus intermediusです。帯状疱疹後中間神経痛も誤訳です。
帯状疱疹後三叉神経痛Trigeminal Post-Herpetic Neuralgia
帯状疱疹後中間神経痛Post-Herpetic Neuralgia of nervus intermedius
並べて見ると、同じ分類なのに英文に統一性がないのも気になりますが、敢えて帯状疱疹後神経痛という病態を元に英文と日本文を修正するなら、
Trigeminal Post-Herpetic Neuralgia 三叉神経帯状疱疹後神経痛
Nervus intermedius Post-Herpetic Neuralgia 中間神経帯状疱疹後神経痛
これが適切と思います。
国際頭痛分類第4版への改訂が進められているそうです、発刊されるとすぐに日本語訳が出来ますので、間違いが出ないように担当の先生に今から連絡しておこうと思います。
 
 
2025年09月26日 09:17

オンラインでも感覚検査が出来ます

オンラインでも感覚検査ができます
オンライン相談を受けていて、相談者の訴えの原因を直接探れないもどかしさから、オンラインでも実施可能ないくつかの診査法を考案して実施しています。もちろん、オンライン相談を申し込む方々は既にいろはいろな治療を受けたが改善していない事から心理的にも窮していることが多いので、傾聴、受容、共感の態度は必須です。
オンライン相談の経験から、実際の診療での診査と同等の診査を行えるのは感覚検査です。オンラインでの手順を説明します。
1)問診により、痛みの種類、痛み部位、経過等を聞きます。
神経障害性疼痛による痛みは、しびれやヒリヒリ、ピリピリ、うずき、灼熱感のように表現されることが多いです。また、三叉神経痛の場合にはビリッとかズキンとした発作性の電気ショック様の痛みを訴えます。
現症を聞くなかで最も重要な点は、痛みの範囲が三叉神経の痛みとして神経解剖学的に妥当であることで、三叉神経のどれかの枝に限局しているはずです。そして、その痛みの部位の神経を刺激するようなエピソードがあったはずです。例えば、抜歯、インプラント、切開、根管治療、歯根端切除術などの後に痛みが生じていることが多いです。
ここまで確認出来ると神経障害性疼痛の疑いが高まります。
2)次はいよいよ感覚検査です、   https://wajima-ofp.com/blog_articles/1755509833.html
前もって綿棒と爪楊枝、保冷剤で冷やした小さなスプーンを用意してもらいます。
麺棒で痛いところの歯として肉をさすってもらい、嫌な感じ、痛みがないかどうか、そして、対照として反対側の歯肉もさすってもらいます。どこかに嫌な感じ、痛いところがあったら、必ず左右を比べてもらいます、一回だけでは無く、何回か繰り返してもらいます。そして、さすった後に嫌な感じや痛みがあった部分になにか感覚が残らないかどうかの残感覚も確認します。次に爪楊枝でチクチク刺激してもらいます、他に比べて痛みが強いところがないかどうかを聞きます。何回か繰り返し、痛いところがあったら左右で比較します。触覚同様に残感覚も確認します。
歯肉の温冷感覚は鈍いのですぐには反応がでません、正常でも冷たさが感じられるまで10秒―20秒くらい掛かります。最初は痛みの無い側の歯肉に冷やしたスプーンをペタッと当ててもらいます。指で唇を引っ張って他に当たらないように気をつけて行ってもらいましょう。歯肉に冷たさが感じられたら何か合図してもらいましょう。何秒で冷たさが感じられたか確認しておきます。
もう一回保冷剤でスプーンを冷やして、麺棒で嫌な感じ、痛かった部位、そして、爪楊枝でチクチクが強かった部位にペタッと当てます。冷たさを感じるのに何秒かかりましたか、敏感ですぐに感じるか、鈍くなってなかなか感じないか、冷たさを感じないがじわーっと痛みが出ることもあります。痛みを感じたらすぐ離して、痛み感覚がどれくらい続くか観察してもらいましょう。
感覚検査は自分だけでも実施することが出来ます。特に害はありません。感覚検査で何らかの異常反応があった場合には神経障害性疼痛の可能性が高まります。ここまでの結果を元に専門医あるいは病院歯科等を受診するように勧めます。
 
2025年09月05日 18:48

顎関節症、口腔顔面痛の診査法ハイブリッドセミナー

顎関節症、口腔顔面痛の診察法ハイブリッドセミナー
2025年、顎関節症、口腔顔面痛の本格的研修希望の方々に、対面で標準的診察法のHands onセミナーを行いました。Hands onとはまさに、手を使って研修する、手を取って教えるということです。各種のメディアが発達した現在にわざわざ対面で研修することもないだろうと考えられると思いますが、Hands onでしか伝えられない診察法があります。その代表が筋触診です。筋・筋膜性疼痛の元となる筋肉中の索状硬結とトリガーポイントを触診して見つけ出し、圧迫する事により関連痛を誘発することができる様になる事が目標です。
診察法実習セミナーには、3つのねらいがあります。1)私が日常の診療で行っている診察法を解説しながらそのまま実施し、それを間近で見学して手順を理解してもらうこと。2)受講者の全員に患者役になってもらい、診察を受ける側から診察法を確認すること。3)診査を間近で見学し、自分が被験者になり診査を受けた後に、受講者同士で相互診察を行う、相互実習では和嶋と同じ診察が出来る様に被験者から診察部位、強さなどのフィードバックを受けながら、診察技術を高めること。
セミナー全体は反転授業形式で、事前に各診察の意義等をオンラインで説明して理解してもらった上で、対面で実技習得してもらう形式です。オンライン講義の後の対面Hands-on実技指導のハイブリッド型学習方式でもあります。
受講者の反応から、この方式が顎関節症、口腔顔面痛の診査法学習の有効な方法であるいう印象があり、今後も継続して行く予定です。
 
2025年09月03日 14:23

口腔顔面痛オンライン相談での自己筋痛診査

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口腔顔面痛オンライン相談での自己筋痛診査
口腔顔面痛診療は日本全国何処でも受けられるわけではないことから、数年前から口腔顔面痛のオンライン相談を受けています。診療ではなく相談としているのは、一度も対面診療せずにオンラインだけでは正しい診断、治療に制限があるからです。
オンラインでも神経障害性疼痛診査の為の感覚検査は通常の対面診査と同等に行えることを前述しました。https://wajima-ofp.com/blog_articles/1755509833.html
口腔顔面痛で最も一般的な筋・筋膜性疼痛診断のための筋圧痛診査は難しいです。オンラインでの有効な自己診査法を考えてみました。
  1. とりあえず、貴方の痛みのある側で頬杖をついてもらいます、その格好は手のひらに顎の先が上手く収まって頭の重さが支えられ、親指が顎の下、揃えた指4本で顎を包み、人差し指と中指が耳の付け根に当たっています。
  2. そのままの格好で、何回かかみしめてもらいます、揃えた指の中頃で波打つように咬筋が収縮します。その波打つ部分に指先を移動します、そして、また、何回かかみしめてもらい、指先でしっかり筋の波の頂点を確認しましょう。
  3. 指先を波の頂点に置いたまま、かみしめをやめて力を抜いてもらいます。筋肉の盛り上がりは消えましたが、指先でしっかり触ると少し硬い部分が残っています。指先に力をこめたままで、少しだけ、ゆっくり顔、頭全体を揺らしてみましょう。きっと、指先に触れる硬いコリコリした部分が行ったり来たり、場合によっては強い痛みを感じることもあるでしょう、痛みが強かったら圧す力を少し弛めましょう。少し痛みを感じる程度に圧したままで、数秒顎を揺らし続けてください、上手く顎を揺らすことが出来なかったら指先でコリコリをゴリゴリしてみましょう。どこか他のところに痛みが広がりませんかと関連痛を確認します。
筋・筋膜性歯痛の場合にはこのように筋肉のコリコリを圧していると何時もの歯痛が再現されます。
  1. 次に、反対側で頬杖ついてもらい、手のひらに顎の先が上手く収まって頭の重さが支えられ、親指が顎の下、揃えた指4本で顎を包み、人差し指と中指が耳の付け根に当たっていることを確認しましょう。
  2. 痛みのある側と同様に、かみしめてコリコリを確認し、コリコリに指先を移動して、少し痛みを感じる程度に圧したままで、数秒顎を揺らし続けてください、上手く顎を揺らすことが出来なかったら指先でコリコリをゴリゴリしてみましょう。どこか他のところに痛みが広がりませんかと関連痛を確認します。
オンライン相談の際にもなるべく自分の通常の対面での診療と同じ事をしようと思っています。オンラインでは相手の表情を観ながらの会話で医療面接は通常通りできます。痛みの構造化問診を順に行い、痛みの経過、現在の痛みの状況がある程度把握できます。口腔顔面痛の疫学的疾患頻度と長年の診療経験からいくつかの代表的な痛み疾患が浮いてきます。多いのは筋・筋膜性疼痛と神経障害性疼痛です。
この二つの疾患をオンラインで何とか可能性の有無を詰めようとおもって、試行錯誤しながらオンライン自己診査法を検討しています。
 
2025年08月19日 15:42

オンライン感覚検査 続編 舌診査

オンライン感覚検査 続編 舌診査 オンライン神経障害性疼痛診査 https://wajima-ofp.com/blog_articles/1755509833.html
前編ではオンラインによる歯肉の神経障害性疼痛診査の為の感覚検査について書きました。症例によっては舌に痛みを訴えることもありますので舌の感覚検査を解説します。舌は一体ですが、神経支配は完全に左右に分かれていますので、左右側の比較が出来ると言うことです。舌の神経支配は左右に分かれていることと、触覚、痛覚、温冷感覚は前2/3は三叉神経の舌神経支配であり、後1/3は舌咽神経支配です。
味覚は前2/3は顔面神経の鼓索神経支配であり、後1/3は舌咽神経支配です。
  • 舌の触覚検査 スプーンで舌背の片側をこすってもらいます。主訴の部位を意識せず、変な感じ、嫌な感じ、痛いはないか、数回こすってもらいます。次に反対側も同様に数回こすってもらいます。どちらかに反対側とは異なる感じが無いかどうか、何らかの違いが認められた場合には、繰り返し念入りにさすっても賴、反対側と比較してもらいます。念のために少し時間をおいて、もう一度調べてもらいます。繰り返しの診査で主訴の側に何らか一定の感覚障害が認められたら、神経障害性疼痛の可能性ありです。診査した後に何らかの感覚が残っていないかどうかも聞きます。スプーンだと端があたって痛いと言う場合には綿棒で少し強めにさすってもらいます。
  • 次に、痛覚検査として爪楊枝で舌背をチクチクしてもらいます。最初に舌背の健常側をチクチクして、痛みの感じを覚えてもらいます、次に主訴側の舌背をチクチクして、反対側のチクチクの痛みと同じか、強くないかどうか聞きます。順番を変えて、患側を先にチクチクして、次に健常側をチクチクして、左右の比較をしてもらいます。また、チクチクの感覚が残らないかどうかも聞きます。念のために、少し時間をおいた後にもう一度診査を行ってもらいます。
  • 追加の検査として、保冷剤で冷やしておいたスプーンを用いて、冷感覚テストを行います。舌の診査は口唇、頬粘膜に触れないで出来るのでスプーンを用います。水を含ませた綿棒を保冷剤で冷やして用いても良いです。
最初に、触覚、痛覚テストで異常が認められた反対側舌背に冷やしたスプーンをペタッと当てます。舌は敏感なのですぐに冷たさを感じます。感じたらそのまましばらく当てたままにして痛みが誘発されないかどうか聞きます。次に異常が認められた側の舌背に冷たいスプーンをペタッと当てます。感じるまでの時間にはほとんど差がないと思います。そのまま当てたままにして、痛みが誘発されないかどうか聞きます。また、冷たさの程度を聞き、反対側と比べます。異常側では冷たいスプーンを当てた瞬間に強い冷たさを感じ、当てているとじわーっと痛さが出てきたと訴えることがあります。
ここまでのオンラインでの相談者自身での感覚検査もどきで、実際の診療とほぼ同じ感覚テストが出来ます。この結果はある程度信頼でき、異常が片側に一定して認められた場合には舌の神経障害性疼痛の疑いが高まります。
舌は通常感覚の他に味覚もあります、ベル顔面神経麻痺、帯状疱疹によるラムゼーハント症候群、そしてその後遺症の帯状疱疹後神経痛では舌に味覚障害も認められることがあるので、味覚検査も行います。
  • 味覚検査 事前に味の検査をすること、何か味を感じたら手を挙げてくださいと伝えておきます。水を含ませた綿棒にお塩を少し付けて、それを用いて半側の舌背をスリスリさすります、味を感じたら手を挙げてもらいます、次に反対側を同様に検査します。全く感じないことはなく、いくらか感じるが片方ははっきり感じて、反対側は弱いという反応になることが多いです。うがいしてもらい、順番を変えてもう一度行います。左右差が曖昧な場合にはお酢でもう一度検査してもらいます。  同様の検査を舌後1/3でもやってもらいます。嘔吐反射が出ることがあるので、余り奥までは入れないようにしてもらいます。
味覚検査で味覚低下が診られた場合には顔面神経麻痺が疑われ、ベル麻痺やラムゼーハント症候群、あるいは他の痛み症状と合わせて、後遺症の帯状疱疹後神経痛が疑われます。
希に、味覚が鈍麻ではなく塩味が強く感じられることがあります。これはスーパーテーストと言われ、同側の三叉神経障害による顔面神経の味覚の抑制のバランスが崩れている結果と判断され、多くは舌痛を伴っているためめにurning Mouth Syndromeの治療が必要となります。
前編で解説した歯肉の神経障害性疼痛診査と同様に舌の神経障害性疼痛、味覚検査をくわえた診査ではベル麻痺、ラムゼーハント症候群、あるいは他の痛み症状と合わせて、後遺症の帯状疱疹後神経痛のオンライン診査ができる可能性があります。
 
2025年08月18日 22:04

オンラインで神経障害性疼痛の診査の試み

口腔顔面痛オンライン相談の現状 患者さんの状況をどの程度収集できるか
口腔顔面痛診療は日本全国何処でも受けられるわけではなく、専門医の診療をうけられるのは主に歯学部病院のある地域に限られています。
そこで、数年前から口腔顔面痛のオンライン相談を受けています。診療ではなく相談としているのは、一度も対面診療せずにオンラインだけでは正しい診断、治療に制限があるからです。それではオンラインでどんな事をしているのか。なるべく自分の通常の対面での診療と同じ事をしようと思っています。オンラインでは相手の表情を観ながらの会話で医療面接は通常通りできます。痛みの構造化問診を順に行い、痛みの経過、現在の痛みの状況がある程度把握できます。口腔顔面痛の臨床診断推論の始まりは、歯原性疼痛の除外診断です。これはオンライン相談以前に数軒の歯科医院、病院歯科などを受診していて歯科的な診査を受けていて異常がないとのお墨付きです。たまには、見逃されていることもありますが、歯原性疼痛はいずれ顕在化して、診断されます。
医療面接を進めていくと、口腔顔面痛の疫学的疾患頻度と長年の診療経験からいくつかの代表的な痛み疾患が浮いてきます。多いのは筋・筋膜性疼痛と神経障害性疼痛です。ところがここで制限があって先に進めません、筋・筋膜性疼痛診断のための筋圧痛が出来ません、神経障害性疼痛診断のための感覚検査が出来ません。何かの代替え法で乗り越えられないか、いろいろ考えてみました。

比較的簡単にクリア出来そうなのは神経障害性疼痛診断のための感覚検査です。オンライン相談受付の際に感覚検査のために、綿棒、爪楊枝、小さなスプーン、保冷剤、お塩を用意してもらいます。
オンラインでの感覚検査 スマホで相談者は自分の口腔内を観ながら進めます。
  1. 触覚検査として、小さなスプーンで上下顎左右の頬側歯肉をゆっくり、なでてもらいます。同じ場所を数回なでるようにスリスリしてもらいます。最初は主訴の部位を意識せず、右大臼歯部から前歯部、左側大臼歯部と進み、次に逆回りします。どこか、変な感じ、嫌な感じ、痛いところはないか、何らかの違いが認められた部位は繰り返し念入りになでてもらい、反対側、前後と比較してもらいます。念のために対顎を調べた後に、もう一度調べてもらいます。繰り返しの診査で主訴の部位に何らか一定の感覚障害が認められたら、神経障害性疼痛の可能性ありです。診査した後に何らかの感覚が残っていないかどうかも聞きます。スプーンだと周囲に当たって、何処でも痛いと言う場合には綿棒で少し強めになでてもらいます。
  2. 次に、痛覚検査として爪楊枝で上下顎左右の頬側歯肉をチクチクしてもらいます。どこか、特に痛いところがないか、最初に健常部をチクチクして、次に主訴の部位を調べて、痛みは同じか強くないかどうかを調べてもらいます。他の部位よりも痛みが強い部位が認められたら、左右の比較、前後の比較を行い、対顎を調べて、少し時間をおいた後にもう一度診査を行ってもらいます。診査した後に刺激感覚が残らないかどうかも聞きます。
  3.  神経障害性疼痛の多くの場合、触覚異常が認められた部位に痛覚異常も認められ、刺激後の残感覚も認められます。
  4. 追加の検査として、保冷剤で冷やしておいた水を含ませた綿棒を用いて、冷感覚テストを行います。この場合、口唇、頬粘膜に触れないようにしてください、スプーンは全部冷えて何処が当たって冷たい感覚か判らなくなるので用いません。最初に、触覚、痛覚テストで異常が認められた部位の反対側頬側歯肉に冷やした綿棒をペタッと当てます。何秒で冷たさを感じるか、正常でも数秒から秒と幅があります。感じたらそのまましばらく当てたままにして痛みが誘発されないかどうか聞きます。次に異常が認められた部位にもう本の冷たい綿棒を当てます、何秒で感じるか、そのまま当てて痛みが誘発されないかどうかを聞きます。場合によっては異常部位では冷たい綿棒を当てた瞬間に冷たさを感じ、当てているとじわーっと痛さが出てきたと訴えることがあります。
    味覚検査を含めた舌の感覚検査:
     https://wajima-ofp.com/blog_articles/1755522283.html
ここまでのオンライン相談での医療医面接、相談者自身でも感覚検査もどきで神経障害性疼痛の診査が行うことが出来ます。
 
2025年08月18日 18:37

私の口腔顔面痛診療の現状と展望

私の現状と今後の展望
以前、クリニックでの口腔顔面痛診療は75歳を一区切りと書いたことがあります。現在(2025/08)、73歳、11月には74歳です、何を根拠に75歳と書いたのは定かではありませんが、後期高齢者が知力、体力を保って第一線で仕事出来るかという不安があったからだと思います。自分の診療が患者さんのためにならないならば、すぐに止めるべきと思っています。
コロナ前にAAOPで私よりも15歳年上のUCLAのRobert Merill先生に会ったときに、口腔顔面痛は臨床例の蓄積が大事で、それも何時でも引き出せるように整理して置かなければならないと言われました。大学止めてからが本番だよ、私の域に達するには15年必要だね、頑張れと言われました。残念ながらMerill先生はコロナの間に逝かれてしまいました、残念です。
知り合いが、臨床医の賞味期限は何時かという文を書いていて、それに寄ると診療、特に診断で感が働かなくなった時と言っていました。私は自分の診療において必要があって臨床診断推論を勉強して、自分の診療に取り入れています。若い頃は多くの症例を経験して、それを仮説演繹法で診断する。思いつく病気に加えて、keyになる症状、現症からPC検索して、知らなかった病気も含めて仮説を立てて、その真偽を診査、検査で確認する、最後に残った仮説が最終診断となる。このような論理的思考過程を繰り返す事により、一つ一つの症例が自分の臨床診断推論の良きデータとして蓄積されて行く、次に同じ様な症例に遭遇したときには診ただけで診断出来るということとなる、これが仮説演繹法の対極にあるパターン認識法である。今の私の診療における診断法に戻ると、ほとんどがパターン認識法で診断出来ています、時々、経過が長く、症状が重複しているなど複雑な症例では指導医の様に仮説演繹法が登場してきます。そこでは今まで経験した症例を総動員して可能性のある仮説を立てて、臨床診断推論を勧めていきます。良いエサを食べた鯛は美味いというのと同じでしょう。
このようにこの症例はパターン認識法で正しく診断出来るか、仮説演繹法に登場願うかの判断が出来るのが前述の「臨床医の賞味期限―診療、特に診断で感が働く」ということなのだと思います。
この基準によると私の診療期限はもう少し伸びそうです。
 
2025年08月18日 11:21

口腔顔面痛はまだ歯科で広まっていない

口腔顔面痛診療は日本全国何処でも受けられるわけではなく、専門医の診療をうけられるのは主に歯学部病院のある地域に限られています。
地域の何軒かの歯科を受診したが原因不明と言われた、治療を受けたが改善しない、あるいは、大学に行き、ペインクリニックに依頼されたが改善しないといった憂う状況にあることを聞きます。このような状況は日本に限ったことではなく世界中にみられるようです。正式に口腔顔面痛専門医が承認されている米国においても、ニューヨーク州、カリフォルニア州には多数の専門医がいるが、一人も専門医の居ない州があります。
イタリアから興味深い論文が出ています。「歯科医師は外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーを認識しているか?ウェブベースの疫学調査」という論文です。外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーとはどんなことか、外傷とはここでは抜髄、抜歯、切開などの歯科処置を指しています。有痛性三叉神経ニューロパチーとは三叉神経の神経障害性疼痛を指しています。従って、何らかの歯科処置によって神経が傷害されて術後に痛みが続いている状況ということになります。
この論文の要点をまとめます。
  1. 歯科医師の30%は外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーという用語を知らなかった。
  2. 歯科医師の70%は、臨床において、このような痛みを疑う患者を診たことがあった。その内訳は、根管治療後(60%)、抜歯後(43%)、原因不明(37%)、その他の歯科治療後(21%)であった。
  3. 外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーを疑った3分の1の患者だけ専門医に紹介された。
  4. 結局、ほとんどの患者は疼痛に対して、抜髄、抜歯、切開などの誤った、無意味な、不可逆的な治療を受けていた。
     結論として、不適切な診断と治療の遅れが慢性痛を生ずる可能性があります。さらに、広い知識の不足は、医療制度と患者の双方に、障害による大きな社会経済的損失をもたらしました。
これはイタリアの状況ですが、我が国と大差ないと思います。
 
2025年08月02日 21:47

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