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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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口腔顔面痛臨床の実際 患者さんが来院してから治療開始まで

口腔顔面痛患者さんがクリニックに初めて来院した際に、どの様に診断し、治療に至るか、そして口腔顔面痛をどのように治療するかについて概説します。

0.診察の前に、臨床診断推論に必要な臨床情報として以下の資料を記入してもらいます、疼痛構造化問診票、疼痛チェック票、hospital anxiety and depression scale (HAD)、痛みの破局化スケール(PCS)、システムレビューを兼ねた問診票。 

1.次に、記入完了された資料を基に医療面接を行い、臨床診断推論を始めます。基本は1)Open‒ended question、傾聴、2)沈黙による患者発言誘導、3)解釈モデルと受診理由の把握、4)質問返し:患者の考えを聞き出す、5)ドアノブコメント「聞き忘れたことはありませんか」、です。
医療面接で大事な事は、他人同士は 「わかり合える」ことは無いので、患者さんに共感して患者さんの状況を感じ取ることが必要です。
臨床的共感が患者さんの治療成績を向上させる3つの要素があります。
①正しい診断のための良好な病歴聴取において医師が共感を示した場合、患者は多くの情報を開示する、
②治療結果は治療に対する患者のアドヒアランス(治療を続けてくれる)にかかっており、患者が治療を継続するかどうかに影響する最大の要因は医師への信頼感である、
③共感的な文脈であれば、悪い知らせであっても患者はうまく対処できる、と言われています。
医療面接の際の医療者の傾聴、受容、共感が如何に重要かと言う事と、医療者は幅広い豊かな教養、態度、経験を身につける必要があるという事になります。苦痛を感じている患者さんにとって真の人間的な共感が得られ無いまま治療に進んでも効果が得られない可能性があります。

2.臨床診断推論:医療面接の中で直観的にパターン認識法により鑑別診断が思い浮かんでくるのと並行して仮説演繹法により気になる訴え、症状を医学用語に置き換える作業として Semantic Qualifier(SQ)を行い、鑑別診断を想起します。 想起された鑑別診断を問診、検査にて検証し、可能性のある診断仮説を、全ての病歴情報と矛盾しないか、整合性がとれているかを総合的に検証し、最終診断に至ります。
3.解釈モデルの把握と疾患発症ストーリーの作成:治療の説明をする前に、診断結果、病気の説明として、患者から得られた情報を元に書かれた発症から現在に至る疾患のストーリーを患者さんに話します。例えば、非歯原性歯痛は異所性疼痛であるため、患者のここが痛い、ここに痛みの原因があるとの解釈モデルと明らかなズレがあるのは当然です。また、治療歴がある場合、慢性化している場合には患者の認知が様々に歪み、解釈モデルのズレから不安が生じて病状に影響している場合が多いです。患者さんがなぜそのように考えているか、尋ねます。何らかの理由があるはずです。解釈モデルのズレたままでは治療に進まないことにしています。患者解釈モデルと専門医が描いた病気ストーリーとの間にズレがある場合には、納得するまで摺り合わせます。

4.治療: 口腔顔面痛の多くは慢性痛であるため、治療の基本が急性痛である歯原性疼痛と異なります。慢性痛の治療の柱は、運動療法、認知行動療法、薬物療法の3つです。常に、解釈モデル、痛みなどの現状から認知行動療法要素分析を再評価しながら、治療を進めていきます。
4a.口腔顔面痛で最も多い病態は筋筋膜疼痛です。筋筋膜疼痛はBiopshychosocialモデルの典型病態であり、筋への理学療法等とともに心理社会的対応も必須です。
4b.次に多い病態は神経障害性疼痛です。神経障害による陽性症状への対応として薬物療法が行われ、標準治療薬の薬理および処方知識が必須です。
残念ながら慢性痛を完全に取ることは難しいのが現状であり、現在の治療では、痛みそのものはゼロにできないことが多いです。従って、QOL(生活の質)とADL(日常生活動作)を向上させ、心身両面で慢性痛の痛みの苦しみから抜け出せることを目標としています。

この記事も参照してください
口腔顔面痛専門クリニックではどのような事をしているのか
https://wajima-ofp.com/blog_articles/1660982546.html
2022年08月16日 13:22

インドネシアの歯科医師に有痛性三叉神経ニューロパチの話し

三叉神経痛サマリー
昨日、2022/05/13日 インドネシアの歯科医師向けに、三叉神経痛と有痛性三叉神経ニューロパチーの話しをオンラインでしました。
久し振りの英語でどうなることかと心配でした。スムーズには話せませんで、三輪車程度でしたが、後半はさび付いた自転車くらいになりました。
昨日の参加者はインドネシアで補綴の専門医を目指す歯科医師の方々でした、その方々にサブスペシャリティーとして口腔顔面痛の話しの一つとして解説しました。2020年には非歯原性歯痛の総論から始まって筋・筋膜疼痛性歯痛の話しなど3回オンラインセミナーをしていて、今回はその続編でした。
東南アジアの多くの国では三叉神経痛の治療は脳神経内科でやることに決まっていて、歯科で診断したら脳神経内科に紹介します。まあ、これも合理的かと思います。というのは、三叉神経痛の原因は一番多いのが頭蓋内で脳幹部から出てきた神経の弱い部分が血管で圧迫されて変形すること、次に10%程度は類上皮囊胞や脳腫瘍による圧迫、そして、原因不明です。症状は三叉神経の分布領域に感じられますが、原因は頭蓋内、そして、治療はその原因に対して行われますから。日本では口腔顔面痛専門医がこれらの状況を熟知して、脳神経内科医、脳神経外科医と協働して、診断治療に当たっています。東南アジアでも口腔顔面痛が拡がれば、日本の様になると思います。
もう一方の、有痛性三叉神経ニューロパチーはもっと歯科に密接です。下分類の中に外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーがあり、外傷後とは下顎インプラント、下顎智歯抜歯、根管治療などによる神経障害をさすからです。これは、三叉神経痛とは異なり、歯科治療と密接に関連していて、歯科において診断治療が出来なければならない疾患です。
東南アジアにおいても、インプラントが盛んに行われるようになった結果、必ず数パーセントでは偶発症が起こり、その一番多いのが有痛性三叉神経ニューロパチーです。今後、有痛性三叉神経ニューロパチーについて繰り返しセミナーを続けて行くことになりました。3月で慶應を完全に退職し、自由の身になった現在、すぐにでも現地に行って直接指導したいところですが、コロナが収まるまで、今しばらく充電します。

三叉神経痛診断のサマリースライドを供覧します。
2022年05月14日 10:15

歯原性歯痛診査結果の勘違い

痛み診査の結果をどうのように解釈するかは非常に大事なことです。
通常、この診査結果はこのように解釈すると思われている事柄に、勘違いが含まれています。
1.患者さんの「しびれている」の訴えを、診査する側はそれぞれの認識の深さ、こだわり、とらわれなどにより、感覚過敏と捉える場合と感覚鈍麻と捉える場合があります。正反対の理解、捉え方ですから、その後の治療が異なってくる可能性大です。そこで、この 患者さんの「しびれている」の訴えが「感覚過敏か感覚鈍麻」なのかをはっきりさせるべきです。これは他の項目で書きました。
2.歯が痛いという訴えに対して、患歯を同定するために、打診痛、何かを上下の歯にはさんでかみ締めで痛みが出るかどうかを行います。そして、打診痛で他の歯に比べて反応が強い、ある歯でかみ締めたときに痛みが出ると、その歯が原因の可能性ありと判断します。打診痛については後述しますが、かみ締めによる痛みは、歯にかみしめの力が掛かり歯根膜を含めた歯周組織に炎症があって痛みが出たと理解されますが、もう一つ、かみしめの力のもとである咬筋など咀嚼筋の筋痛が関連痛(異所性疼痛)として歯の痛みに感じられる場合があります。 打診痛とかみ締め時痛が重なったら歯原性か、 まあ、確率的には歯原性と言えると思いますが、咀嚼筋の筋・筋膜疼痛があって、歯に関連痛が続いていた場合には歯根膜の感作により打診痛 プラス かみしめ時の咀嚼筋痛が起こる場合もあるので 例外もありうるということになります。
2-1、この結果の勘違いを無くすには、 筋触診をすることです。
筋触診によって筋肥大、硬結、圧痛があり、歯に関連痛が生じた場合には筋・筋膜疼痛による打診痛も出る可能性が高く、要注意です。
可能ならば筋の圧痛部分、トリガーポイントに局所麻酔をして、圧痛による関連痛が消えることを確認した後にかみ締め試験を行い、歯痛が出るかどうかを確認する。筋への局所麻酔前はかみ締め試験で歯痛が出たが、局所麻酔後のかみ締め試験では歯痛が出ない場合にはその歯痛は筋・筋膜疼痛による歯痛だったという事になります。
局所麻酔後のかみ締め試験でも歯痛が出た場合には歯原性の可能性が高いと判断できます。最終確認は歯痛のに局所麻酔をすれば確実に診断できます。

 
2022年03月28日 11:16

口腔顔面痛とは、口腔顔面痛専門医のやっていること  

一般社会において口腔顔面痛の認知度が低いことによって、口腔顔面痛の患者さんが早期に、適切な治療が受けられない状況が続いています。
歯科医師における理解度は1996年以来、歯科医師国家試験に非歯原性歯痛に関する問題が毎年出題されているんで徐々に高まって来ています。しかし、1996年以前に歯科医師試験を受けている方は大学で口腔顔面痛、非歯原性歯痛の講義を受けていないことが多いのです。米国ですら、口腔顔面痛専門医のいない州があるくらいで、ハワイには専門医はいません、里帰りにのついでに受診した患者さんがいます。このような状況は世界中で同様で憂うべき状況にあります。
 以下は、米国口腔顔面痛専門医会HP(American Board of Orofacial Pain2022年1月アクセス)、米国口腔顔面痛学会HP( American Academy of Orofacial Pain2022年1月アクセス)より引用した文章です。
口腔顔面痛とは、口腔顔面痛専門医のやっていること     
口腔顔面痛とは、顔面および/または口腔に知覚される痛みのことである。その原因は、局所構造の疾患や障害、神経系の機能不全、あるいは離れた部分からの関連痛によるものである。
口腔顔面痛は、複雑な口腔顔面痛の治療に特化した歯科医学の中でも発展途上にある分野です。その領域は拡大しつつあります。口腔顔面痛の治療は、世界の多くの地域で既に歯科の専門分野となっており、他の地域では新たに専門分野に発展中である。 
口腔顔面痛専門医は、口腔顔面領域の痛みに関して他の歯科医師、医師、その他の医療提供者の相談役となり、様々なレベルの治療を行う主要な医療提供者であることも多い。したがって、口腔顔面痛専門医は、口腔顔面痛疾患の診断、治療、リハビリテーション、および予防において実力を備えている必要がある。 
口腔顔面痛専門医は、これらの疾患の基礎となる病態生理学、病因、予防、および治療に関する証拠に基づく理解を深め、学際的な患者ケアの能力を向上させることに専念しています。 
 
2022年03月20日 08:58

しびれという表現は曖昧 真意の確認が必要

口腔顔面痛の患者さんが、「しびれ」を訴えることがあります。
あなたは、「しびれ」と言う表現をするときに、どういう状況を言いあらわしたいのでしょうか?
「しびれ」という訴えは非常に曖昧です。私は患者さんが「しびれ」を訴えたときは必ず、麻酔注射の後の感じないしびれですか、正座した後の脚のビリビリですか、あるいは変な感じですかと確認します。
「しびれ」という訴えで思い付く病態は、(1)感覚が低下している(感覚低下)、(2)感覚が過敏になっている(感覚過敏)、(3)異常な感覚を訴えている(異常感覚)とあります。
(1)感覚が低下している(感覚低下)と(2)感覚が過敏になっている(感覚過敏)では病態が正反対です、しかし、「しびれ」と訴えます。感覚低下は神経機能が低下している、一方、感覚過敏では神経機能が亢進しています。治療法が全く異なります。
「しびれ」は方言のようなもので、主治医のしびれと患者さんの「しびれ」の理解にズレが生ずる場合があります。ズレたまま治療が進むと、改善しないばかりか、医者患者関係のズレも大きくなります。
患者さんが「しびれ」を訴えた場合、まず最初に患者さんの「しびれ」の真意を確認します。
あなたの「しびれ」は、、麻酔注射の後の感じないしびれですか、正座した後の脚のビリビリですか、あるいは変な感じですか、と確認します。(1)感覚が低下している(感覚低下)、(2)感覚が過敏になっている(感覚過敏)、(3)異常な感覚を訴えている(異常感覚)を確認しています。
そして次に、触覚、痛覚、場合により温冷覚を調べます。三叉神経の3本の枝毎に左右左を確認します。このような診査が神経障害性疼痛診査の入口です。
「しびれ」は神経障害の共通した訴えです。痛いと同様に口腔顔面痛では有用な自覚症状です。

 
2022年02月18日 13:02

私の今後の活動

全く個人的な話です。昨年11月で70歳になりました。特に大きな持病はありませんが、70歳、年相応の体力、知力とおもいます
大学を65歳で定年退職後、非常勤講師として慶應義塾大学医学部で月に一回の専門的な診療と学生講義、昭和大学歯学部で兼担講師として学生講義を受け持ってきました。いずれの大学とも非常勤講師、兼担講師は70歳以上は更新しないと言う事で今年度で終わりになりました。北海道大学歯学部の学生講義は来年度も継続の予定です。
関連学会は日本口腔顔面痛学会、日本顎関節学会とも65歳で役員定年で名誉会員になっています。最後に残っていた日本頭痛学会理事は70歳が役員定年でしたので、昨年11月の学会で任期終了し、こちらも名誉会員にしていただきました。
自分の歳を忘れて仕事しているときもありますが、10年前とは違って、無理なことをすると身体に応えるようになりました。定年、停年とは上手く表現したもので、これまでの活動は停めて、年相応の活動にしなさいと言うことだと思います。
現在の診療は元赤坂デンタルクリニックで火曜日、金曜日と土曜日午前、プラス、月に一回の札幌、静岡での診療です。 これくらいがちょうど良いのかなと思います。
その他の曜日は何をしているのか、家にいると邪魔にされるので、平日は毎日朝に元赤坂デンタルクリニックに出勤し、原稿書きと文献読みをしています。ということで、暇な時間はほぼありません。
本によると「人生100年時代。現在の70代の日本人はかつての70代とは違います。若々しく、健康になった70代の10年間は、人生における「最後の活動期」とも言えます。70代の過ごし方が、その人がどう老いていくかを決めるとも言えます。要介護状態を遠ざけ、自立した80代以降の老いを迎えるためには、どう過ごせばいいしょうか。」 答えは、「気持ちが若く、いろいろなことを続けている人は、長い間若くいられる。」
75歳までは今の活動を続けて行こうと思っています。
2022年02月06日 20:21

何故、歯の痛みに苦しんでいる患者さんがいるのか 2

歯が痛い患者さんに「歯が痛いのに歯科で治らないなら、私は何処へ行けば良いのか」とまで言わせる歯の痛みの本態は非歯原性歯痛であり、歯科の一つの分野である口腔顔面痛専門医が得意とするところです。
非歯原性歯痛を漢文風に読むと、「歯が原因に非ざる歯痛」と言う事で、歯痛は歯が原因で起こるのが常識ですが、歯が原因で無い歯の痛みもあるのですその治療を専門とする口腔顔面痛とはどんな分野なのか。歯、歯肉、舌を含む口腔内、顔面に感じられる痛みを総称として口腔顔面痛と呼びます。従来、歯科で扱う痛みは主に、歯や歯肉が原因(主には炎症)の痛み(歯原性)でしたが、歯や歯肉の炎症によらない痛み(非歯原性)もあり、この非歯原性の痛みが口腔顔面痛の主体です。
前号で紹介した患者さんの話に出てくる、一軒目に受診したかかりつけ医で何故問題が解決出来なかったのか、答えは単純明快、一般歯科医師に非歯原性歯痛が知られていないからです。小生が非歯原性歯痛について学会報告したのが21年前、2000年の第一回口腔顔面痛懇談会(日本口腔顔面痛学会の前身)でした。その後、平成26年版歯科医師国家試験出題基準に非歯原性歯痛が含まれ、2014年以来毎年、非歯原性歯痛に関する問題が出題されています。また、歯科医師養成の基本となる「歯学教育モデル・コア・カリキュラム平成28年度改訂版」に 「口腔顔面痛を説明できる」の一文が加えられ、現在、歯学部において口腔顔面痛が教育されています。従って、2014年以降に歯科医師国家試験に合格した歯科医師は非歯原性歯痛を知っているはずで、「歯が痛いのに歯科で治らないなら、私は何処へ行けば良いのか」という患者さんの声に対して、それなら非歯原性歯痛を専門とする口腔顔面痛専門医の治療を受けてはどうですかというアドバイスがあるはずです。実際に歯科医師臨床研修の一環として半日の口腔顔面痛外来見学をした研修医が、その後、自分で診た歯痛患者さんを非歯原性歯痛の疑いということで治療依頼を受けたことがあります。
日本歯科医師会雑誌や、その他の歯科雑誌にも多数回に渡り口腔顔面痛、非歯原性歯痛の記事を執筆し、歯科医師に啓発を続けてきましたが未だ不十分の様です。
さらに、もっと大きな問題が冒頭に書いたように、患者さんをはじめ一般社会に口腔顔面痛、非歯原性歯痛が知られていないことです。これまで健康雑誌やWeb雑誌などに記事を執筆し、テレビでも取り上げてもらったこともありました。直近のテレビ放送は2020年12月8日放送の日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース「歯が原因ではない歯の痛みの謎」でした。https://www.ntv.co.jp/gyoten/articles/324mqqov2qwxpvxjjld.html
さすがゴールデンタイムの全国放送とあって、全国から問い合わせがありました。「テレビと同じような症状、経過なのだが、近くに専門とする先生が見つからない、どうすれば良いか」という内容でした。日本口腔顔面痛学会HPには全国の口腔顔面痛専門医の名簿が所在地付きで掲載されていますと答えるのですが、そんな事は初めて知ったということで、口腔顔面痛が知られていないのですから、日本口腔顔面痛学会が知られているはずがありません。さらに、専門医名簿を見てわかることは、所在地が全国均一ではないと言うことで、均霑化されていません。専門医が一人もいないという県も少なくありません。これでは近くに専門とする先生が見つからなくて当然です。
専門医全国均霑化の打開策としてDX(デジタルトランスフォーメーション)として、オンライン口腔顔面痛相談、あるいは一般歯科医師と協同してオンライン口腔顔面痛診療指導を行っています。今年はもっと広めようと思っています。
 
2022年01月02日 20:28

何故、歯の痛みに苦しんでいる患者さんがいるのか 1

今年の診療は世間並みに28日で仕事納め、仕事の緊張から解放されて今年の診療の省察の第一歩です。
今年も多くの、痛みに苦しむ患者さんが当クリニックを受診されました。ほとんどの患者さんは歯痛を訴えています。歯痛なのに当クリニックは3軒目、4軒目で、それ以上に医療機関を経てからいらっしゃる方もいます。
典型的な症状、経過の患者さんが語ってくれた治療経過を紹介します。
歯が痛いのでかかりつけの歯科を受診したら、「痛みの原因はない」、「あなたの歯の痛みは原因不明」、様子見たらと言われた、その説明に納得できず、もう一軒行ったが同じ答えだった。痛みは続くので知り合いに勧められた歯科を受診、「歯の痛みが続いているので、なんとかしてほしい」と懇願したら、「それでは痛い歯の神経を抜いてみましょう」、処置後数日は痛みが治まっていた。ところが、1週間も経ないうちに痛みが再燃、隣の歯が痛いような気がする。その痛みを訴えたら、「そんなはずはない、それは頭が勘違いしているのだろうから、歯科の治療では治らないよ」と、暗に「精神科の病気だろう」というようなことを言われ、痛みが治らない不安感以上に、「それなら、なんで神経抜いたんだ」と怒りがこみ上げた。
「歯が痛いのに歯科で治らないなら、私は何処へ行けば良いのか」これが多くの患者さんの心の声です。この声にどうすれば応えることが出来るのか、ちゃんとした答えを出すことが我々口腔顔面痛専門医の責務だと思っています。
 
2021年12月30日 11:22

患者さんの疑問:口腔顔面痛、非歯原性歯痛とはどんなものですか?

患者さんから何時も質問を受けます
一番は口腔顔面痛とか非歯原性歯痛とかいう用語があるが、それはどんなことか、全然判らないという苦情でもあります.

口腔顔面痛専門家の言っている口腔顔面痛、非歯原性歯痛とはどんなものですか?
•口腔顔面痛?最後に「痛」だから痛みの事か
•口腔顔面って、何処のこと? 「口・顔」 歯は?
•非歯原性歯痛とは、「歯の原因に非ずだから」、虫歯の痛みとは違う痛みか、原因不明の歯痛、歯肉痛の事か?
•顔だから、顎関節症の痛みも含むのか?

和嶋の答え  https://wajima-ofp.com/materials/163928689701601.pdf
口腔顔面痛とは:歯、歯肉、舌を含む口腔内、顔面に感じられる痛みの総称
•歯や口の中、周り、顔面の痛みは、 
 1)歯、歯肉が原因(主には炎症)の痛み(歯原性)と        
2)歯や歯肉の炎症によらない痛み(非歯原性)がある

非歯原性の痛みは診断の難しい痛みでもある
 歯や歯肉、口の中、周りのややこしい痛み    
 プラス 頬、目の周り、下あご、顔全体のややこしい痛み
歯や歯肉の炎症に寄らない非歯原性の痛みの原因は?
 咀嚼筋の痛み、神経の病気による痛み、心臓からの痛み
2021年12月12日 14:35

ラムゼーハント症候群と三叉神経の関連性

James Ramsay Hunt症候群
来週20.21日日本口腔顔面痛学会学術大会でRamsay Hunt症候群の講演があります。楽しみにしています。そこで質問したいことがあります。
Ramsay Hunt症候群は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)によって生ずる顔面神経麻痺を主徴とする疾患であり、呼称はJames Ramsay Huntが1907年に自験例をまとめて報告したことに由来する。
小児期に罹患した水痘の口腔粘膜疹からVZVが逆行性に、あるいはウイルス血症によって顔面神経の膝神経節に到達後潜伏している
後年それが再活性化することで神経炎が生じ、腫脹する為に神経が骨性顔面神経管の中で自己絞扼を生じ顔面神経麻痺、すなわち顔面半側の表情筋運動障害が発症する。
加えて周囲の脳神経にも波及し、耳介の発赤・水疱形成や聴神経を傷害するために耳痛、難聴、めまいなどを合併する例もある。
口腔顔面痛としては味覚障害と舌、歯肉、顔面の持続性疼痛を訴える患者を診ることがあり、聴覚障害を合併している場合にはRamsay Hunt症候群の後遺症とし診断できる。
舌の感覚検査で触覚、痛覚に鈍麻か過敏があり、味覚は低下していることがある。味覚の低下は顔面神経の枝の鼓索神経が傷害されたからと理解が出来るし、舌の感覚障害は鼓索神経と舌神経のエファプティック トランスミッションのようにウイルスが乗り移る可能性があると理解出来る。しかし、下顎歯肉、呈示した図の口蓋となると何らかの他の経路で顔面神経と三叉神経が交流していると思われる。
この疑問を解決するために質問しようと思っています。
なぜRamsay Hunt症候群と呼ばれるか、Ramsay先生とHunt先生の二人で発見したから            正解は James Ramsay Hunt先生だから James Ramsay Hunt症候群です、アメリカの神経内科医です (1874-1937)

Ramsay Hunt症候群でなぜ三叉神経領域にも症状が現れるのか、二つの可能性があります。1)顔面神経膝神経節から出たVZVが吻合している三叉神経に乗り移る、もう一つは、2)膝神経節で再帰感染が始まるのとほぼ同時に三叉神経神経節でもVZVの再帰感染が生じて三叉神経領域に帯状疱疹が生ずる。
先日の日本口腔顔面痛学会において、Ramsay Hunt症候群でなぜ三叉神経領域に疱疹が出たり、強い歯痛が出たり、そして、三叉神経領域に帯状疱疹後神経痛と思われる神経障害性疼痛が残る原因について質問しました。
皆さんの答えは1)顔面神経の枝がどこかで三叉神経と吻合していて、膝神経節で再帰感染したVZVが吻合部で三叉神経に乗り移り、三叉神経領域にも帯状疱疹が生ずる、この可能性が高いということでした。
 
2021年11月11日 20:40