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原因不明の歯痛、顔の痛みに慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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慢性痛は強弱はあれPTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)である

いろいろな慢性の痛み患者さんを診ていると、強弱はあってもある種のPTSDによる症状ではないかと思っています。数年前に仙台の伊達先生が日本口腔顔面痛学会の精神セミナーで講演されたときに、このように質問したときも、同感だと答えていました。
今朝から痛み情報収集の仕事始めをしていて、Pain MedicineNewsという米国の痛み関連情報のダイジェスト版を発行しているサイトをみていたら、2022’s Top 10 Articles: Part
1でベスト5前の6-10の記事が掲載されていました。その中に、「慢性痛はPTSD」ではないかという私の考えにぴったりの記事がありましたので、和訳して紹介します。
 
「精神的トラウマが痛み感覚変化させる、慢性痛は単なる痛みの管理を超えて、全人的な痛みの回復を目指す必要がある」
私たち医療関係者の間では、有害な精神的ストレスが神経系の感覚処理機能を変化させ、組織の病理変化と関連しない痛みをもたらすという事実への理解と評価が高まっている。
発育期や成人期にストレスを抱えた人は、圧痛閾値が著しく低く、痛みの感じ方が異なることが研究により明らかになっています1-3。
 
精神的トラウマが慢性疼痛につながるのであれば、精神的トラウマに対する治療が痛みを和らげるはずである。
実際、精神的トラウマの回復が痛みの回復につながるという考えを支持する6つのランダム化比較試験がある4。
しかし、私たちはいまだに、精神的トラウマによる神経障害性疼痛を、患者の苦痛の原因が侵害受容性であるかのように、つまり、身体的損傷から来るものであるかのように管理しがちである。
例えば、抗生物質やオピオイドを処方し、精神的トラウマの後遺症に対処しない傾向があるのです。
患者さん個人と社会全体の健康のために、プライマリーケア提供者、痛みの専門家、その他の医師、行動医学の専門家は、今こそ私たちの考え方や治療方法を変えるべき時なのです。
 
ケース・イン・ポイント  人質が心的外傷となった患者 
シエラ ツーソンの疼痛回復プログラムに参加するほとんどの患者は、自分の症状を「罰当たり」「残酷」といった感情的な言葉で表現します。 しかし、その大半は、自分のひどい痛みと精神的トラウマの間に関係があるかもしれないことに気づいていません。  
 
数年前、私が診察したある患者は、体のあちこちに痛みを感じていると報告してきました。
彼女は、どこからともなくやってくるような衰弱した痛みのために、すでに3年間も身体障害者手帳を取得していたのです。
その3年間、彼女は多くの医療専門家に診てもらったが、痛みの原因となる組織は見つからず、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス、慢性ライム病、多発性硬化症と別々に診断された。抗生物質、オキシコドン、ベンゾジアゼピン系薬剤に何万ドルも費やしたが、ほとんど効果はなかった。
 初診のとき、彼女の夫は突然、あることを思いついた。「ちょっと待てよ、ハニー」と彼は言った。「痛みが始まる1ヶ月ほど前に、クイックマートで人質になり、男があなたの喉にナイフを突きつけてきて、保安官が後ろから撃ち殺さなければならなかったのを覚えていないかい?  先生、身体的には無傷でも、それが彼女の痛みと関係あるのでしょうか?" 
 
間違いありません。この患者の疼痛症候群は、人質事件から約1ヶ月後に始まりました。これは、身体の神経系が痛みを異なる方法で処理するように配線し直すのにかかる時間とほぼ同じです5。
ソマティック・エクスペリエンスと呼ばれる精神的トラウマ回復治療と、グループ認知行動療法、弁証法的行動療法が効果を示した。
6ヶ月後、彼女は仕事に復帰し、鎮痛剤もやめ、とても元気にしています。
確かに、人質事件に遭遇することは稀なことです。しかし、この国には、もっと一般的で、私が診療で見てきた慢性的な痛みの原因でもある、成長期トラウマという有害なストレスの原因がもうひとつあるのです。世界中の研究により、幼少期の精神的トラウマと大人になってからの慢性疼痛の発症には、用量反応関係があることが示されています6。
Substance Abuse and Mental Health Services Administrationによると、3分の2以上の子どもが、16歳になるまでに少なくとも1つの精神的トラウマとなる出来事を報告しています。
 
私たちの社会は、文字通り、そして比喩的に傷ついているのです。
私たちは、単なる痛みの管理を超えて、全人的な痛みの回復を目指す必要があるのです。実際、カリフォルニア州初の外科医長であるNadine Burke Harris医学博士は、州の公立学校のすべての生徒が成長期トラウマのスクリーニングを受けるよう呼びかけ、すでにこの運動を始めています。
彼女は、有害な幼少期の体験や有害なストレスに関する公衆衛生規模の介入が、私たちの時代における最大の公衆衛生の進歩になると考えているのです。
 
患者さんの慢性的な痛みを理解するためには、痛みの専門医と理学療法士、行動医学の専門家が協力して、集学的なアプローチを行う必要があります。
このような多角的な評価と、痛みの根本的な原因に対する治療が必要です。
統合的治療には、疼痛教育、運動療法、体験療法、薬物管理、個人・グループ療法による感情処理、認知行動療法、バイオフィードバックや経頭蓋磁気刺激などが含まれます。
 
痛みが強いから外傷治療や理学療法はできないと言う患者さんもいらっしゃるでしょう。
このような患者は、神経系について話すことも、ましてや精神的トラウマについて話すこともできませんし、理学療法士に触られることにも耐えられないでしょう。
 
医療専門家として、私たちは、彼らが明らかに精神的トラウマという重荷を背負っていることがわかっていても、まず彼らが感じている「身体的」な痛みに対処し、穏やかな精神的トラウマ療法を行うことで、彼らの現状に対応しなければならないのです。
しかし、そこで終わらせないのが私たちの義務です。そして、精神的トラウマに適応した神経系がどのように痛みを脳に伝えているのか、患者を教育する必要があります。
そして、患者さんがその関係を理解し、受け入れ始めたら、精神的トラウマの治療を開始し、私たち医療者は、単なる痛みの管理を超えて、完全な痛みの回復へと向かうことができるのです。
 
2023年01月04日 21:14

三叉神経麻痺 歯学教育モデル・コアカリキュラム

歯学教育モデル・コアカリキュラム(2022年度改訂版)のなかで、良かったことと不満の残ったことがこの項に集まっている。
口腔顔面痛が単独で学修目標に取り上げられたことは非常に良かった事である、一方、三叉神経麻痺は何とかならないのかと大きな不満の残った。
D-3-1-9 神経疾患
学修目標:
D-3-1-9-1 口腔顔面痛を理解している。
D-3-1-9-2 神経障害性疼痛の原因、症状及び治療法を理解している。
D-3-1-9-3 顔面神経麻痺の原因、症状及び治療法を理解している。
D-3-1-9-4 三叉神経麻痺(感覚麻痺、運動麻痺)の原因、症状及び治療法を理解している。
D-3-1-9-5 口腔領域の神経痙攣の原因、症状及び治療法を理解している。

前回(2017年版)の改訂までは三叉神経麻痺とされていて、医学的には運動麻痺を指しているように思えるが、歯科では麻痺は感覚障害を指していた。教科書にも、外傷性神経障害の後の鈍麻を麻痺paralysisと書かれていた程である。
2017年改訂版のパブリックコメント募集に応じて、三叉神経麻痺を三叉神経感覚障害と麻痺に分けるべきであると意見表明した。私の意見が採用されたかどうかは不明であるが、現行の三叉神経麻痺(感覚麻痺、運動麻痺)に改訂された。
麻痺は単独で運動麻痺を意味するのであるから、頭に運動を付け運動麻痺は屋上屋を架すようなものであるが一歩前進と感じられた。
顔面神経麻痺も運動神経麻痺と鼓索神経障害による味覚障害も一緒くたに麻痺とされている。
付表の症候から鑑別すべき主な原因疾患では、まだまだ麻痺の羅列で混乱の極みである。次回の改訂に期待した。何とかならないものかと思いながら書いている。
2022年12月03日 16:09

11月OFPオンラインセミナーNerve combing

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11月の口腔顔面痛オンラインセミナーのトピックスは特発性三叉神経痛の根本的治療としての三叉神経の線維に沿って割を入れる神経内剥離(internal neurolysisまたはnerve combing)という方法が池田先生から自験例を含めて紹介されました。
三叉神経痛は、1)血管圧迫による神経変形を呈する典型的三叉神経痛、2)腫瘍等による圧迫による二次性三叉神経痛と3)明かな原因の認められない特発性三叉神経痛に大別されます。それぞれの根本的治療法として、1)には、血管を神経から離す、つまり減圧(頭蓋内微小血管減圧術K160-2)がおこなわれます、2)には腫瘍等原因になるものの摘出術がおこなわれますが、3)に対しては根本的治療法がないため、薬物療法、ブロック療法での長期管理がおこなわれます。薬物療法は長期になることにより副作用や無効化が生ずることがあります。また、ブロックでは感覚鈍麻が生ずることや再発があり、患者への負担が大きいです。
この状態の特発性三叉神経痛に対して、三叉神経の線維に沿って割を入れる神経内剥離(internal neurolysisまたはnerve combing)という方法を行うオペ法の報告が散見されるようになりました。手術直後85%の患者さんで痛みが消失し、5年後に約半数の患者さんに有効(*1)。この方法を行うと、顔面に違和感、しびれが出ることがありますが、ほとんどの場合日常生活に支障を来さない程度ですだそうです。
日本からも治療報告(*2)が出されています。
抄録:微小脳血管減圧術を施行したが再発, あるいは未治癒の突発性三叉神経痛でカルバマゼピン非耐性の5症例に対して, 再手術の際に三叉神経知覚枝のnerve combingを施行した. 全例術直後からカルバマゼピン内服なく疼痛発作が完全消失したが, 5例中4例 (80%) に三叉神経第3枝領域を中心とした顔面知覚障害が残存した. 術後1~5年の時点で再発を認めずQOLも良好である. 再発三叉神経痛で責任血管が明らかでなく, かつカルバマゼピン非耐性例に対してはnerve combing法は有効な治療法と思われる. なお, nerve combing法を予定する場合は術前に顔面知覚障害をきたす可能性が高いことを説明すべきである.
*1 Burchielら(米国) J Neurosurg. 2015 May;122(5):1048-57.
*2 森 健太郎、難治性三叉神経痛に対する “nerve combing” による治療経験 脳神経外科ジャーナル  2022 年 31 巻 7 号 p. 464-469  https://doi.org/10.7887/jcns.31.464
2022年11月27日 18:06

帯状疱疹ワクチン接種の勧め

帯状疱疹ワクチン比較
口腔顔面痛の臨床では急性期の帯状疱疹による痛み、その後に続く帯状疱疹後神経痛、さらに顔面神経麻痺でしっかり治療を受けて、顔面神経麻痺はほぼ回復したが顔面、口腔内の痛みが残っているというラムゼーハント症候群と三叉神経帯状疱疹の後遺症として帯状疱疹後神経痛が残っている患者さんを診ます。60歳以上の人が帯状疱疹になると、約半数は帯状疱疹後神経痛に移行します。
現在、乳幼児の水疱瘡予防としてワクチン接種が普及したことによって、親世代、祖父母世代に帯状疱疹が増えています。例えば、3世代ですんでいる家庭で、子供が水疱瘡になると、子供の水疱瘡の免疫刺激が親や祖父母に対してブースター効果となり帯状疱疹抗体が上がります。これにより、両親、祖父母の帯状疱疹予防が出来ていました。乳幼児の水疱瘡予防としてワクチン接種によりブースター作用の機会が無くなったのです。
それならば、帯状疱疹罹患率の高まり、帯状疱疹後神経痛への移行率が高くなる前の50歳以上の人達に帯状疱疹ワクチン接種が認められています。予防接種なので残念ながら保険診療ではありません、地域によっては費用が助成されています。
帯状疱疹ワクチンには2種類有ります。効果、費用が対照的です。
50歳以上の方々には接種をお勧めします。
2022年08月31日 10:46

口腔顔面痛専門クリニックではどのような事をしているのか

口腔顔面痛とは、簡単に言うと、口の中やあご、顔などに発生する痛みすべてを含みます。従来からウ蝕や歯周病によって生ずる歯の痛みや歯肉の痛みなど(歯原性疼痛)は良く知られていて、一般歯科臨床では、このような歯が原因の痛みが大半を占めます。治療法も確立されていて、すぐに痛みは治療され問題になることはありません。しかし、患者さんがこの歯が痛いと訴えるが、その歯や周囲の歯や歯肉にはウ蝕や歯周病が無く、原因が無い場合(非歯原性疼痛)があります。このような場合、どのように対処するのが良いのでしょうか。第一選択は経過観察です、経過観察と言っても決して放り投げるのではなく、次回までの症状の変化を観察してもらい、初回と比較するためです。急性の歯が原因の炎症(歯髄炎や急性歯周組織炎)では症状が顕かになり、特徴的な症状が現れて簡単に診断されるでしょう。しかし、経過観察して再診しても、症状に変化がなく、患者さんが訴える痛みに見合う所見がなかったらどうでしょうか。このような状況の際に考えるべき病気が口腔顔面痛です。
 
口腔顔面痛の外来で私たち専門医が主に診療をしているのは、虫歯や歯周病などの病変がないにもかかわらず歯や歯肉が痛いという患者さんや口の中や舌、あご、あるいはその周辺や頬部、顔面に痛みがあり、歯科の各科で診てもらったが原因がわからないといった患者さん達です。
様々な原因による口腔顔面痛に対して分析的臨床診断推論を駆使して原因を突き詰め、治療方針決定に至ります。
口腔顔面痛の中で最も多いのは、歯に原因がないにもかかわらず歯に痛みを感じられる非歯原性歯痛です。非歯原性歯痛の原因となる病気にはいろいろあります。咬筋、側頭筋などの筋肉のコリが原因のことが最も多く、約半数を占めます。次に、三叉神経痛、抜歯、インプラントなど外科手術による神経損傷に継発した神経障害性疼痛があります。その他に、三叉神経支配が共通である片頭痛、群発頭痛による歯痛、上顎洞炎による歯痛、稀ですが狭心症、心筋梗塞など心臓の病気、またガンの転移が原因の歯痛もあるので注意が必要です。他にも歯や歯肉に分布する末梢の三叉神経末端から脳で感じるまでの間にある痛みのボリューム調整が不安感など心理的影響により混乱して、痛みが強く感じられている場合(痛覚変調性疼痛)などもあります。
口腔顔面痛の多くは慢性痛であるため、治療の基本は急性痛である歯原性疼痛と異なり、原因を取り除くことよりも、運動療法、認知行動療法、薬物療法の3つに重きをおいて、症状緩和に努めます。口腔顔面痛で最も多い病態の筋・筋膜疼痛では、原因筋への理学療法等とともにストレスなどへの心理社会的対応を行います。次に多い神経障害性疼痛は神経が傷害されたことにより過敏化して生ずる痛みへの対応として薬物療法が行われます。神経障害性疼痛の標準治療薬の薬理および処方知識を熟知している専門医が患者ごとに服用法を調整して処方します。  
初診時の具合的な診療内容は、この記事も参照してください。  
口腔顔面痛臨床の実際 患者さんが来院してから治療開始まで 
https://wajima-ofp.com/blog_articles/1660623773.html

 
2022年08月20日 17:02

口腔顔面痛臨床の実際 患者さんが来院してから治療開始まで

一人の口腔顔面痛患者さんがクリニックに初めて来院した際に、どの様に診断し、治療に至るか、そして口腔顔面痛の治療について概説します。
診察の前に、臨床診断推論に必要な臨床情報として以下の資料を記入してもらいます、疼痛構造化問診票、疼痛チェック票、hospital anxiety and depression scale (HAD)、痛みの破局化スケール(PCS)、システムレビューを兼ねた問診票。 次に、記入完了された資料を基に医療面接を行い、臨床診断推論を始めます。基本は1)Open‒ended question、傾聴、2)沈黙による患者発言誘導、3)解釈モデルと受診理由の把握、4)質問返し:患者の考えを聞き出す、5)ドアノブコメント「聞き忘れたことはありませんか」、です。
医療面接で大事な事は、他人同士は 「わかり合える」ことは無いが故に共感が必要です。
臨床的共感が患者さんの治療成績を向上させる3つの要素があります。
①正しい診断のための良好な病歴聴取において医師が共感を示した場合、患者は多くの情報を開示する、
②治療結果は治療に対する患者のアドヒアランス(治療を続けてくれる)にかかっており、患者が治療を継続するかどうかに影響する最大の要因は医師への信頼感である、
③共感的な文脈であれば、悪い知らせであっても患者はうまく対処できる、と言われています。
医療面接の際の医療者の傾聴、受容、共感が如何に重要かと言う事と、医療者は幅広い豊かな教養、態度、経験を身につける必要があるという事になります。苦痛を感じている患者さんにとって真の人間的な共感が得られ無いまま治療に進んでも効果が得られない可能性があります。
医療面接の中で直観的にパターン認識法により鑑別診断が思い浮かんでくるのと並行して仮説演繹法により気になる訴え、症状を医学用語に置き換える作業として Semantic Qualifier(SQ)を行い、鑑別診断を想起します。 想起された鑑別診断を問診、検査にて検証し、可能性のある診断仮説を、全ての病歴情報と矛盾しないか、整合性がとれているかを総合的に検証し、最終診断に至ります。治療の説明をする前に、診断結果、病気の説明として、患者から得られた情報を元に書かれた発症から現在に至る疾患のストーリーを患者さんに話します。例えば、非歯原性歯痛は異所性疼痛であるため、患者のここが痛い、ここに痛みの原因があるとの解釈モデルと明らかなズレがあるのは当然です。また、治療歴がある場合、慢性化している場合には患者の認知が様々に歪み、解釈モデルのズレから不安が生じて病状に影響している場合が多いです。患者さんがなぜそのように考えているか、尋ねます。何らかの理由があるはずです。解釈モデルのズレたままでは治療に進まないことにしています。患者解釈モデルと専門医が描いた病気ストーリーとの間にズレがある場合には、納得するまで摺り合わせます。

口腔顔面痛の多くは慢性痛であるため、治療の基本が急性痛である歯原性疼痛と異なります。慢性痛の治療の柱は、運動療法、認知行動療法、薬物療法の3つです。常に、解釈モデル、痛みなどの現状から認知行動療法要素分析を再評価しながら、治療を進めていきます。
口腔顔面痛で最も多い病態は筋筋膜疼痛です。筋筋膜疼痛はBiopshychosocialモデルの典型病態であり、筋への理学療法等とともに心理社会的対応も必須です。次に多い病態は神経障害性疼痛です。神経障害による陽性症状への対応として薬物療法が行われ、標準治療薬の薬理および処方知識が必須です。
残念ながら慢性痛を完全に取ることは難しいのが現状であり、現在の治療では、痛みそのものはゼロにできないことが多いです。従って、QOL(生活の質)とADL(日常生活動作)を向上させ、心身両面で慢性痛の痛みの苦しみから抜け出せることを目標としています。

この記事も参照してください
口腔顔面痛専門クリニックではどのような事をしているのか
https://wajima-ofp.com/blog_articles/1660982546.html
2022年08月16日 13:22

インドネシアの歯科医師に有痛性三叉神経ニューロパチの話し

三叉神経痛サマリー
昨日、2022/05/13日 インドネシアの歯科医師向けに、三叉神経痛と有痛性三叉神経ニューロパチーの話しをオンラインでしました。
久し振りの英語でどうなることかと心配でした。スムーズには話せませんで、三輪車程度でしたが、後半はさび付いた自転車くらいになりました。
昨日の参加者はインドネシアで補綴の専門医を目指す歯科医師の方々でした、その方々にサブスペシャリティーとして口腔顔面痛の話しの一つとして解説しました。2020年には非歯原性歯痛の総論から始まって筋・筋膜疼痛性歯痛の話しなど3回オンラインセミナーをしていて、今回はその続編でした。
東南アジアの多くの国では三叉神経痛の治療は脳神経内科でやることに決まっていて、歯科で診断したら脳神経内科に紹介します。まあ、これも合理的かと思います。というのは、三叉神経痛の原因は一番多いのが頭蓋内で脳幹部から出てきた神経の弱い部分が血管で圧迫されて変形すること、次に10%程度は類上皮囊胞や脳腫瘍による圧迫、そして、原因不明です。症状は三叉神経の分布領域に感じられますが、原因は頭蓋内、そして、治療はその原因に対して行われますから。日本では口腔顔面痛専門医がこれらの状況を熟知して、脳神経内科医、脳神経外科医と協働して、診断治療に当たっています。東南アジアでも口腔顔面痛が拡がれば、日本の様になると思います。
もう一方の、有痛性三叉神経ニューロパチーはもっと歯科に密接です。下分類の中に外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーがあり、外傷後とは下顎インプラント、下顎智歯抜歯、根管治療などによる神経障害をさすからです。これは、三叉神経痛とは異なり、歯科治療と密接に関連していて、歯科において診断治療が出来なければならない疾患です。
東南アジアにおいても、インプラントが盛んに行われるようになった結果、必ず数パーセントでは偶発症が起こり、その一番多いのが有痛性三叉神経ニューロパチーです。今後、有痛性三叉神経ニューロパチーについて繰り返しセミナーを続けて行くことになりました。3月で慶應を完全に退職し、自由の身になった現在、すぐにでも現地に行って直接指導したいところですが、コロナが収まるまで、今しばらく充電します。

三叉神経痛診断のサマリースライドを供覧します。
2022年05月14日 10:15

歯原性歯痛診査結果の勘違い

痛み診査の結果をどうのように解釈するかは非常に大事なことです。
通常、この診査結果はこのように解釈すると思われている事柄に、勘違いが含まれています。
1.患者さんの「しびれている」の訴えを、診査する側はそれぞれの認識の深さ、こだわり、とらわれなどにより、感覚過敏と捉える場合と感覚鈍麻と捉える場合があります。正反対の理解、捉え方ですから、その後の治療が異なってくる可能性大です。そこで、この 患者さんの「しびれている」の訴えが「感覚過敏か感覚鈍麻」なのかをはっきりさせるべきです。これは他の項目で書きました。
2.歯が痛いという訴えに対して、患歯を同定するために、打診痛、何かを上下の歯にはさんでかみ締めで痛みが出るかどうかを行います。そして、打診痛で他の歯に比べて反応が強い、ある歯でかみ締めたときに痛みが出ると、その歯が原因の可能性ありと判断します。打診痛については後述しますが、かみ締めによる痛みは、歯にかみしめの力が掛かり歯根膜を含めた歯周組織に炎症があって痛みが出たと理解されますが、もう一つ、かみしめの力のもとである咬筋など咀嚼筋の筋痛が関連痛(異所性疼痛)として歯の痛みに感じられる場合があります。 打診痛とかみ締め時痛が重なったら歯原性か、 まあ、確率的には歯原性と言えると思いますが、咀嚼筋の筋・筋膜疼痛があって、歯に関連痛が続いていた場合には歯根膜の感作により打診痛 プラス かみしめ時の咀嚼筋痛が起こる場合もあるので 例外もありうるということになります。
2-1、この結果の勘違いを無くすには、 筋触診をすることです。
筋触診によって筋肥大、硬結、圧痛があり、歯に関連痛が生じた場合には筋・筋膜疼痛による打診痛も出る可能性が高く、要注意です。
可能ならば筋の圧痛部分、トリガーポイントに局所麻酔をして、圧痛による関連痛が消えることを確認した後にかみ締め試験を行い、歯痛が出るかどうかを確認する。筋への局所麻酔前はかみ締め試験で歯痛が出たが、局所麻酔後のかみ締め試験では歯痛が出ない場合にはその歯痛は筋・筋膜疼痛による歯痛だったという事になります。
局所麻酔後のかみ締め試験でも歯痛が出た場合には歯原性の可能性が高いと判断できます。最終確認は歯痛のに局所麻酔をすれば確実に診断できます。

 
2022年03月28日 11:16

口腔顔面痛とは、口腔顔面痛専門医のやっていること  

一般社会において口腔顔面痛の認知度が低いことによって、口腔顔面痛の患者さんが早期に、適切な治療が受けられない状況が続いています。
歯科医師における理解度は1996年以来、歯科医師国家試験に非歯原性歯痛に関する問題が毎年出題されているんで徐々に高まって来ています。しかし、1996年以前に歯科医師試験を受けている方は大学で口腔顔面痛、非歯原性歯痛の講義を受けていないことが多いのです。米国ですら、口腔顔面痛専門医のいない州があるくらいで、ハワイには専門医はいません、里帰りにのついでに受診した患者さんがいます。このような状況は世界中で同様で憂うべき状況にあります。
 以下は、米国口腔顔面痛専門医会HP(American Board of Orofacial Pain2022年1月アクセス)、米国口腔顔面痛学会HP( American Academy of Orofacial Pain2022年1月アクセス)より引用した文章です。
口腔顔面痛とは、口腔顔面痛専門医のやっていること     
口腔顔面痛とは、顔面および/または口腔に知覚される痛みのことである。その原因は、局所構造の疾患や障害、神経系の機能不全、あるいは離れた部分からの関連痛によるものである。
口腔顔面痛は、複雑な口腔顔面痛の治療に特化した歯科医学の中でも発展途上にある分野です。その領域は拡大しつつあります。口腔顔面痛の治療は、世界の多くの地域で既に歯科の専門分野となっており、他の地域では新たに専門分野に発展中である。 
口腔顔面痛専門医は、口腔顔面領域の痛みに関して他の歯科医師、医師、その他の医療提供者の相談役となり、様々なレベルの治療を行う主要な医療提供者であることも多い。したがって、口腔顔面痛専門医は、口腔顔面痛疾患の診断、治療、リハビリテーション、および予防において実力を備えている必要がある。 
口腔顔面痛専門医は、これらの疾患の基礎となる病態生理学、病因、予防、および治療に関する証拠に基づく理解を深め、学際的な患者ケアの能力を向上させることに専念しています。 
 
2022年03月20日 08:58

しびれという表現は曖昧 真意の確認が必要

口腔顔面痛の患者さんが、「しびれ」を訴えることがあります。
あなたは、「しびれ」と言う表現をするときに、どういう状況を言いあらわしたいのでしょうか?
「しびれ」という訴えは非常に曖昧です。私は患者さんが「しびれ」を訴えたときは必ず、麻酔注射の後の感じないしびれですか、正座した後の脚のビリビリですか、あるいは変な感じですかと確認します。
「しびれ」という訴えで思い付く病態は、(1)感覚が低下している(感覚低下)、(2)感覚が過敏になっている(感覚過敏)、(3)異常な感覚を訴えている(異常感覚)とあります。
(1)感覚が低下している(感覚低下)と(2)感覚が過敏になっている(感覚過敏)では病態が正反対です、しかし、「しびれ」と訴えます。感覚低下は神経機能が低下している、一方、感覚過敏では神経機能が亢進しています。治療法が全く異なります。
「しびれ」は方言のようなもので、主治医のしびれと患者さんの「しびれ」の理解にズレが生ずる場合があります。ズレたまま治療が進むと、改善しないばかりか、医者患者関係のズレも大きくなります。
患者さんが「しびれ」を訴えた場合、まず最初に患者さんの「しびれ」の真意を確認します。
あなたの「しびれ」は、、麻酔注射の後の感じないしびれですか、正座した後の脚のビリビリですか、あるいは変な感じですか、と確認します。(1)感覚が低下している(感覚低下)、(2)感覚が過敏になっている(感覚過敏)、(3)異常な感覚を訴えている(異常感覚)を確認しています。
そして次に、触覚、痛覚、場合により温冷覚を調べます。三叉神経の3本の枝毎に左右左を確認します。このような診査が神経障害性疼痛診査の入口です。
「しびれ」は神経障害の共通した訴えです。痛いと同様に口腔顔面痛では有用な自覚症状です。

 
2022年02月18日 13:02

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