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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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アンガーマネジメントとWISERモデル「5つのステップ」

日本口腔顔面痛学会主催の外傷性三叉神経ニューロパチーのシンポジュウムが行われ、大阪歯科大学の佐久間先生がコンフリクトマネージメントの話をされました。 コンフリクトマネージメントに関連して、まずは、その中核をなすアンガーマネージメントを具体的に解説している、ハーバード大学から提案されているWISERモデル「5つのステップ」を紹介します。
アンガーマネージメントという言葉は皆さんご存じの事と思います。
「アンガーマネジメントの6秒ルール」、腹立たしい気持ちが強くなったときに、6秒間だけ、その気持ちを表に出さないように我慢することです。 腹が立って、きつい言い方をしたくなったら、こころの中でゆっくりと1から6まで数を数えてみましょう。 怒りの気持ちは、海岸に打ち寄せる波のようなもので、一時的に高い波が来ても、次の波は平波になるように、怒りも納まっているという事です。これは医療の場だけでは無く、家庭内、職場など何処でも共通して使えることです。
6秒ルールの中味をもう少し理論的に説明しているのが、ハーバード大学から提案されているWISERモデル「5つのステップ」(Watch観察、Interpret解釈、Select選択、Engage実行、Reflect振り返り)です。
引用元:Robert Waldinger、Marc Schulz、児島修(訳)『 THE GOOD LIFE 幸せになるのに、遅すぎることはない』(辰巳出版、2023)
怒りなどの感情は、特定のストレス要因(他人の言動などの出来事)が感覚を刺激し、それに対する反応として引き起こされます。怒りの感情が湧き上がった際に、まず「ギアを1つまたは2つ下げて」反応スピードを遅らせることから始めます。患者さんのキツい言葉に、売り言葉に買い言葉的に瞬時に反応して言い返すのではなく、ジッと言いたいことをのみ込んで、対応を考えるのです。その一言による後々の騒動を考えて、今、口から出そうになっている言葉をかみ殺しながら色々考えてみましょう。
WISERモデル「5つのステップ」
Step 1. Watch(観察──心の一時停止ボタンを押す)
 私たちは強力な感情に遭遇すると、すぐに反応したいという衝動に駆られます。しかし、この衝動はパターン認識や一般的な印象に基づいていることがほとんどで、十分な情報を持ち合わせないままの性急な反応は、往々にして望ましくない結果をもたらします。ある感情にうまく対応したければ、まず一呼吸置き(深呼吸がお勧め)、何が怒りの感情を引き起こしたのかを理解する必要があります。「心の一時停止ボタン」を押し、状況全体(環境、相手、自分自身)を見つめます。好奇心を発揮させるのがコツ、と著者らは述べています。このように、アンガーマネジメント・3つのコントロールの第1段階「衝動のコントロール」が、WISERモデルでも重要視されているのは非常に興味深いところです。

Step 2. Interpret(解釈──大切なものを見極める)
 その出来事がなぜ起きているのか、自分にとって何を意味するのかを考えます。私たちは状況全体を既に理解していると思い込みがちですが、実際には、その瞬間に脳が意識的に捉えることができた、非常に少ない情報を基に動いています。この段階では、「(この状況下での)私の思い込みは何だろう」と自分に尋ねることが効果的です。著者らは、「この解釈のステップ2で重要なのは(出来事に対する)自動的に生じる第一印象を超えて、理解を広げ、深めること」と示しています。 そして、怒りの感情の源となった(自分にとって)重要な要素の把握に努めます。そもそも怒りの感情が湧いてくるのは、自分にとって重要な何かが起こっているサインだからです。

Step 3. Select(選択──さまざまな可能性を探る)
 状況をしっかり観察し、解釈して視野を広げた後、その状況において自分が目指すべきより望ましい結果(目標)と、その達成に向けて利用できる選択肢を明確にします。重要なのは対応策を反射的に選択するのではなく、「意図的に選択すること」とされています。

Step 4. Engage(実行──トライするなら慎重に)
 その状況の改善に最善と考えて選択した対応策を、適切なタイミングで、できる限り上手に実行します。どんな状況でも、熟考された行動は感情に流された性急な行動より有益なはず、と著者らは述べています。

Step 5. Reflect(省察、振り返り──反省は役に立つ)
 選択した行動の結果、「何が成功し、何がうまくいかなかったか」「自分の対処法について何を学んだか」「この戦略はうまくいったか」「今後実践できることを学んだか」などを事後に振り返り、将来の行動に役立てます。
 著者らは、健全な人間関係を築くためにWISERモデルで重要なのは、「出来事への反応をできるだけ遅らせ、これまで完全に自動的だった感情的な反応から、自分が何を達成しようとしているかに合わせて、より考慮された目的のある反応に移行すること」としています。
 
この文を読んで、怒り心頭の時にそんなに冷静に考えられるかと思われる方は、とりあえず「6秒ルール」で、じーっと我慢しましょう。そのような場面が何回もあったらたまりませんが、2回目は少し落ち着いて、第三者的に怒っている自分を俯瞰的にみてみましょう。WISERモデル「5つのステップ」(Watch観察、Interpret解釈、Select選択、Engage実行、Reflect振り返り)が思い浮かんでくるかも知れません。
 
2024年03月13日 08:38