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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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2024年3月の記事:ブログページ

筋痛も自己治癒能力で改善 自己治癒能力を邪魔しない生活

口腔顔面痛、顎関節症でもっとも多い病態は筋痛です。アゴの筋痛は肩こりの延長のようなもので、肩こりがそうである様に慢性的な症状である反面、自然に収まる症状でもあります。重いものを持ったり、不自然な姿勢を強いたりすると肩こりが強くなるように、アゴの筋の凝りも何かに集中したときにかみしめたり、片方だけで咬んだりしていると筋が鍛えられて大きくなり、そこに何か筋緊張の原因が加わる事により筋が収縮し過ぎて凝りができて筋痛が発症します。
肩こりがひどいからと言って不安になるひとはいません、熟睡出来て、日中も過度に緊張しない、そして肩を動かしたり、ストレッチすることにより自然に収まってきます。アゴの筋痛も、アゴを強ばらせない、固いものを食べないなど、アゴに負担を掛けないようにしていれば自然に収まってきて、病院に行く必要なんてありません。
人間には本来、自己治癒能力があって、健康な身体では一週間もすると傷が治っていくように、身体の不具合の多くが収まっていきます。ところが、かつては「規則正しい生活」と言われていた“健康3原則”(調和のとれた食事、適度な運動、十分な休養・睡眠)から外れた生活をしていると、自己治癒能力が下がってしまい、例えば傷の治りが遅くなるように、肩こりなども治りにくくなってしまいます。アゴの筋痛も同様です。
健康の3原則から外れた生活をすると、いろいろな病気になってしまいます、いわゆる生活習慣病です。6大生活習慣病とは、肝硬変、糖尿病、高血圧性疾患、慢性腎不全、急性心筋梗塞、脳卒中が挙げられています。健康の近年、睡眠と生活習慣病との関係が指摘されていて、睡眠不足が、肥満、高血圧、循環器疾患、メタボリックシンドロームを発症させる危険性を高めると言われています。
痛みの研究でも、最近、慢性疼痛と睡眠障害の関連が注目されています。熟睡出来ない、途中覚醒が多い、早朝に覚醒してしまうなどの状況では、痛みの感じ方が強くなると言われています。痛み治療の一つとして睡眠改善が必要ですが、睡眠が悪い人の多くは単純にストレスが多いだけではなく、その元になる生活全般に色々と問題があることが多く、その改善は簡単ではありません。
私の診療では、毎回、睡眠状況はどうですかと聞くことにしています、アゴの痛み、歯ぎしりしている事やくいしばっていることが睡眠と関連していることを知ってもらうためです。そして、アゴのことから、自分の睡眠状況を改善する糸口を見つけてもらい、健康原則に沿った生活をおくってもらいたいと思っています。
 
2024年03月31日 21:21

痛い歯を抜いたら、その前の歯に痛み

今週の患者さんを診て、改めて驚きと苛立ち
今週の初診患者さんを診て、その解釈モデルに驚くとともに、修正することなく、さらに増悪させた歯科治療にいらだちを感じました。
70歳の女性患者さん、上下顎とも残存歯は前歯部のみ、臼歯部は痛みのために抜いたのだと言う事でした。抜いたらそこにあった痛みは消えたが、残っている下顎左右犬歯部に痛みが生じた。これも抜けば痛みが治るだろうから、抜きたいと主治医に頼んだが抜いてくれない。そのようなやりとりをしている間に娘さんが非歯原性歯痛という話しを見つけて、当クリニックに来院。
数年前に仕事を辞めて、転居した頃に発症して以来の歯痛だそうです。その頃、どれ位歯が残っていたのか不明ですが、相当数の抜歯をしたようです。歯痛発症以来の主治医は、抜歯をするほどに歯には病気はない、抜歯には反対だと言っていたそうです、しかし、患者から懇願されて抜髄した、しかし痛みは止まらない。いったん不可逆的な治療を始めてしまうと、歯止めが外れて、隣の歯も、その隣りも抜髄、そして、終着は抜歯です。その主治医は何とかして抜歯は避けたいと思い、大学病院を紹介したそうです、大学病院なら、知識と技術、そして権威により抜歯が必要でないことを話して、解釈モデルをすり合わせてくれるだろうと期待したのだと思います。ところが、大学病院ではあっさりと患者が訴える歯を抜歯してくれたそうです。初診の日に抜歯の予約が決まり、次の受診で抜歯だったそうです。抜歯により痛かった歯がなくなり、そこに感じていた痛みは消えたそうですが、残っている歯が同様に痛くなりはじめてしまった。解釈モデルでは抜いたからそこの歯の痛みは消えたとなっていて、抜いたことは全く悔やんでいませんでした。そればかりか、新たに痛くなった歯も抜けば、痛みが消えるかもしれないと思っています。
診査の結果、咬筋と顎二腹筋の筋・筋膜疼痛による関連痛としての歯痛でした。しかし、歯が悪いから歯が痛いんだという解釈モデルこの診断にすり合わせるのが大変でした。次回は解釈モデルが何処まで変化しているか、やっぱり歯を治療してくれと言われる可能性があることは想定済みです。解釈モデルを筋肉の緊張による痛みであることにすり合わせて納得してもらい、筋緊張防止と筋ストレッチレットのセルフケアを指導して実践してもらい、トリガーポイントプレッシャーリリースなどの専門的な治療も行って行く予定です。患者さんが痛い歯が原因ではなく、自分のくいしばり、かみしめたことにより筋肉の問題である事を納得してもらうことがスタートポイントです。
 
2024年03月28日 15:07

アンガーマネジメントとWISERモデル「5つのステップ」

日本口腔顔面痛学会主催の外傷性三叉神経ニューロパチーのシンポジュウムが行われ、大阪歯科大学の佐久間先生がコンフリクトマネージメントの話をされました。 コンフリクトマネージメントに関連して、まずは、その中核をなすアンガーマネージメントを具体的に解説している、ハーバード大学から提案されているWISERモデル「5つのステップ」を紹介します。
アンガーマネージメントという言葉は皆さんご存じの事と思います。
「アンガーマネジメントの6秒ルール」、腹立たしい気持ちが強くなったときに、6秒間だけ、その気持ちを表に出さないように我慢することです。 腹が立って、きつい言い方をしたくなったら、こころの中でゆっくりと1から6まで数を数えてみましょう。 怒りの気持ちは、海岸に打ち寄せる波のようなもので、一時的に高い波が来ても、次の波は平波になるように、怒りも納まっているという事です。これは医療の場だけでは無く、家庭内、職場など何処でも共通して使えることです。
6秒ルールの中味をもう少し理論的に説明しているのが、ハーバード大学から提案されているWISERモデル「5つのステップ」(Watch観察、Interpret解釈、Select選択、Engage実行、Reflect振り返り)です。
引用元:Robert Waldinger、Marc Schulz、児島修(訳)『 THE GOOD LIFE 幸せになるのに、遅すぎることはない』(辰巳出版、2023)
怒りなどの感情は、特定のストレス要因(他人の言動などの出来事)が感覚を刺激し、それに対する反応として引き起こされます。怒りの感情が湧き上がった際に、まず「ギアを1つまたは2つ下げて」反応スピードを遅らせることから始めます。患者さんのキツい言葉に、売り言葉に買い言葉的に瞬時に反応して言い返すのではなく、ジッと言いたいことをのみ込んで、対応を考えるのです。その一言による後々の騒動を考えて、今、口から出そうになっている言葉をかみ殺しながら色々考えてみましょう。
WISERモデル「5つのステップ」
Step 1. Watch(観察──心の一時停止ボタンを押す)
 私たちは強力な感情に遭遇すると、すぐに反応したいという衝動に駆られます。しかし、この衝動はパターン認識や一般的な印象に基づいていることがほとんどで、十分な情報を持ち合わせないままの性急な反応は、往々にして望ましくない結果をもたらします。ある感情にうまく対応したければ、まず一呼吸置き(深呼吸がお勧め)、何が怒りの感情を引き起こしたのかを理解する必要があります。「心の一時停止ボタン」を押し、状況全体(環境、相手、自分自身)を見つめます。好奇心を発揮させるのがコツ、と著者らは述べています。このように、アンガーマネジメント・3つのコントロールの第1段階「衝動のコントロール」が、WISERモデルでも重要視されているのは非常に興味深いところです。

Step 2. Interpret(解釈──大切なものを見極める)
 その出来事がなぜ起きているのか、自分にとって何を意味するのかを考えます。私たちは状況全体を既に理解していると思い込みがちですが、実際には、その瞬間に脳が意識的に捉えることができた、非常に少ない情報を基に動いています。この段階では、「(この状況下での)私の思い込みは何だろう」と自分に尋ねることが効果的です。著者らは、「この解釈のステップ2で重要なのは(出来事に対する)自動的に生じる第一印象を超えて、理解を広げ、深めること」と示しています。 そして、怒りの感情の源となった(自分にとって)重要な要素の把握に努めます。そもそも怒りの感情が湧いてくるのは、自分にとって重要な何かが起こっているサインだからです。

Step 3. Select(選択──さまざまな可能性を探る)
 状況をしっかり観察し、解釈して視野を広げた後、その状況において自分が目指すべきより望ましい結果(目標)と、その達成に向けて利用できる選択肢を明確にします。重要なのは対応策を反射的に選択するのではなく、「意図的に選択すること」とされています。

Step 4. Engage(実行──トライするなら慎重に)
 その状況の改善に最善と考えて選択した対応策を、適切なタイミングで、できる限り上手に実行します。どんな状況でも、熟考された行動は感情に流された性急な行動より有益なはず、と著者らは述べています。

Step 5. Reflect(省察、振り返り──反省は役に立つ)
 選択した行動の結果、「何が成功し、何がうまくいかなかったか」「自分の対処法について何を学んだか」「この戦略はうまくいったか」「今後実践できることを学んだか」などを事後に振り返り、将来の行動に役立てます。
 著者らは、健全な人間関係を築くためにWISERモデルで重要なのは、「出来事への反応をできるだけ遅らせ、これまで完全に自動的だった感情的な反応から、自分が何を達成しようとしているかに合わせて、より考慮された目的のある反応に移行すること」としています。
 
この文を読んで、怒り心頭の時にそんなに冷静に考えられるかと思われる方は、とりあえず「6秒ルール」で、じーっと我慢しましょう。そのような場面が何回もあったらたまりませんが、2回目は少し落ち着いて、第三者的に怒っている自分を俯瞰的にみてみましょう。WISERモデル「5つのステップ」(Watch観察、Interpret解釈、Select選択、Engage実行、Reflect振り返り)が思い浮かんでくるかも知れません。
 
2024年03月13日 08:38

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