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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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トリガーポイントに重点を置いた筋痛治療

筋膜にあるトリガーポイントに重点を置いた筋痛の治療
 
本稿では、筋痛治療の対象は赤い筋線維ではなく、白い筋膜である事、筋膜は筋の周り、筋の内部にある筋膜、そして、靱帯、腱は筋膜に連続するものであり筋膜に類似した特徴をもっていて痛みを発しているという理解を元に筋膜治療の基本的な話しを書きます。
筋・筋膜疼痛の治療解説で口腔顔面痛学習者の皆さんが最も関心を示してくれるのがトリガーポイントインジェクション(TrPI)です。米国口腔顔面痛学会では、トラベルとシモンズのトリガーポイントマニュアルが教科書として推奨していたことからトリガーポイントインジェクションが最も有効な治療法のように思われているがこれは少し誤解がある。トリガーポイントマニュアルには、トリガーポイントインジェクションと共にTrP pressure release(TrPPr)についても詳記されている。TrP pressure release とはbarrier release concept (Lewit, 1999)の考え方にもとづいて、トリガーポイント(Barrier)を圧迫して押しつぶす様な手技である。この点において、後述する筋膜リリース、筋膜マニュプレーションと共通点が見えてくる。
 
筋膜とは
筋膜の役割は、筋組織と筋組織の間にあって、筋組織の滑走する際の緩衝剤の役割を果たし、その緩衝作用の元はヒアルロン酸である。筋膜の詳しい解剖等は省略するが、筋内部の筋膜、筋周囲の筋膜から筋組織へ入り込んでいて、筋収縮が筋膜へと伝達される。さらに、筋外膜の延長が腱、靱帯とつながって関節を動かす事になる。
 
何故、筋膜に痛みが生ずるか
筋膜は様々な要因により変性する、外傷、反復運動、持続的筋収縮等の過剰負荷、長時間の不良姿勢、などで筋膜内部のコラーゲン繊維の配列が変化して密度が高くなる。これにより線維束内部で脱水が生じて、基質がゲル化し、内部のヒアルロン酸の凝集が生じて滑りも悪くなる。この過程で筋膜に分布する自由神経終末が刺激されて痛みが生ずる様であるが、筋膜の緊張と痛みの関連性は明確でない。

筋膜の機能異常を改善する方法
このような筋膜の機能異常を改善する方法として、局所温度を上げて、ゲル化された基質を流動化させて正常なゾル状態に戻し、コラーゲン繊維間の癒着を除去する事である。そのための直接的治療法として筋膜リリース、筋膜マニュプレーション、TrP pressure release等が行われる。

筋膜リリース、筋膜マニュプレーション、TrP pressure releaseの整理
筋膜リリースはJohn Barnesを中心に発展してきた手技で、全身の筋膜組織を対象に筋膜のねじれを解きほぐすことを目的に、穏やかで持続的な伸張手技である。筋膜がコラーゲン繊維が固まった部分に軽く圧(5-20g)を加え、そのまま穏やかに伸ばし、固まりに当たったところで1-2分間そのまま伸ばし続ける。これによりコラーゲン繊維の固まりがリリースされ軟らかくなり、血管拡張が生じて血流量が増える、リンパドレナージが改善され、筋の固有感覚機構がリセットされる。筋膜制限が解除され、極端に言うならば組織が伸びる事になる。
一方、筋膜マニュプレーションは、イタリアの理学療法士Luigi Steccoが発展させた方法で、筋膜の固まった部分、局所へ適応される点で筋膜リリースと異なる。触診により筋膜の高密度化して固まった部分を探しだし、その部分に圧を加え、局所温度が上がるように充分な時間、摩擦する。この加温は基質がゲルからゾルへと変化しての筋膜基質の粘稠性を修正し、治癒に向かうのに必要な炎症過程が始まる。この過程で筋膜に分布している自由神経終末への刺激がなくなり痛みが和らぐ。
TrP pressure releaseは筋膜マニュプレーションと類似した目的と手技である。
 
和嶋の筋・筋膜疼痛に対する理学療法
和嶋が日常臨床で行っている手法の特徴は超音波照射を行う点である。
咬筋、側頭筋、胸鎖乳突筋、後頸部筋の筋触診を行い、索状硬結、トリガーポイントを探す。
  • 開口ストレッチアシストブロックを用いて開口状態を維持して、起始から停止まで全体に超音波照射を行う。
  • 筋の深部温度が高まったことを確認後、硬結、トリガーポイントを中心に筋膜リリースを行う。これにより筋組織が全体的に軟らかくなり、肥厚部がなくなる。これはリンパドレナージによるものと思われる。この時点で硬結部の圧痛が消えることが多い。
  • 筋膜リリースによっても硬結、トリガーポイントが解れていないで圧痛が残っている場合には、再度、超音波照射した後に筋膜マニュプレーションを行う。硬結部を中心に1-2分程度、持続的に圧迫する。これにより、硬結の完全消失は無い場合もあるが、多くの例で圧痛が消失する。
  • 圧痛が消失しない場合には、超音波照射と筋膜マニュプレーションを1-2回繰り返す。
    和嶋の筋・筋膜疼痛治療におけるキーは超音波を用いたTrP pressure releaseである。
 
トリガーポイントインジェクションは有効か、超音波を利用したハイドロリリースは
現在、私の臨床では超音波照射と筋膜リリース、筋膜マニュプレーションを組み合わせた方法により筋・筋膜疼痛がコントロール出来るようになっている、そのため、トリガーポイントインジェクションを行う回数が激減している。また、超音波にて筋膜の癒着部を確認して、その間に生食水、局所麻酔液を注入して癒着を剥離するという手法、ハイドロリリースが流行っているが、筋膜リリース、筋膜マニュプレーション、TrP pressure releaseの考えとは共通点は少なく、トリガーポイントインジェクションの経験からはハイドロリリースによって筋膜リリース、筋膜マニュプレーション、TrP pressure releaseと同等の効果が得られるとは思えない。
 
2023年01月08日 12:20

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