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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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2024年の記事:ブログページ

痛覚変調性疼痛とはどのようなものか-かなり身近なものです-

痛みの臨床推論」の編集作業が終わったのが8月初旬、35度越えの猛暑日が毎日続いて居た頃から約2ヶ月、頭の中ですっきりしないことは、2017年国際疼痛学会で第3の痛みのメカニズムとして提案されたNociplastic Pain(2021年日本語訳が痛覚変調性疼痛)がどのようなものなのかでした。いくつかの日本、海外からの論文を読んでも、痛覚変調性疼痛はこのようなもので、臨床ではこのように関連しているんだという、私の知りたいことにダイレクトに答えてくれるものはまだありません。それでも頭の中に断片的な知識が溜まりましたので、何とかつなげて自分なりの痛覚変調性疼痛の理解に努めてきました。
今現在の痛覚変調性疼痛の私の理解は、人間の生存を脅かす様々な刺激、侵害刺激に加えて精神的な脅威、危機感等に対して生体防御のために過敏になり、反応性を亢進した結果なのだろと思っています。
つねると痛いという侵害受容性疼痛による痛み、神経が壊れた結果として起こる神経障害性疼痛は「痛みはなんらかの器質的な異常の結果として起こる」という従来の理解はそのまま正しいが、そのような「ここの神経に異常があるから痛いんだ」という「痛み」とは違った痛みの様です。侵害受容性疼痛も神経障害性疼痛もその痛みは身体保護のための合目的的現象であるが、痛覚変調性疼痛は痛み信号に精神的要因が加わって生ずる、他の二つの痛みメカニズムとはレベルの異なる警告信号のようです。当然のように侵害受容性疼痛にも神経障害性疼痛にも痛覚変調性疼痛が重複して、二つの痛みを変調させているようです。
例えば、歯が痛くて歯科に行ったが原因不明だと言われた、何が原因なんだろうと考えると痛みが気になってしょうがいない、時間とともに痛みが強くなったような気がするし、気分的に耐えられなくなってきた、このような状況も不安感により痛覚変調性疼痛がベースに生じて痛みの状況が変化してしまったのだと思います。つまり、苦痛(痛み、苦しみ)の感じ方が変調してしまうのです。生来、心配性のひとは何倍も変調し感覚ボリュウムがマックスまで上がっているでしょう。私のこのような雑な理解ですが、臨床的実感があると感じてくれる方もいるでしょうし、患者さんの中にも私のこの痛みも痛覚変調性疼痛が関連しているかもしれないと思う方がいると思います。
そこまで判ったら、次はどうすれば、治るのか改善するのかが問題です。残念ながらこれに対する臨床的な答えは余りはっきりしません。痛覚変調性疼痛に関する基礎的研究、病態の研究は進んでいますが、治療法に関してはこれだという答えを書いた論文は見当たりません。 私の印象では薬物療法よりも非薬物療法が第一選択で、基本的には患者さんの痛み、苦しみに寄り添い、傾聴、受容、そして、状況を共通認識することが必要なのだと思います。
 
2024年09月30日 16:14

新刊「痛みの臨床推論」の読みどころ2 第三章の仮説演繹法

本書の読みどころ 2
この本の読みどころは、やはり第三章の仮説演繹法による可視化した臨床診断推論ステップです。
 「臨床推論」とは何にか、臨床医が日常臨床のなかで、診療に関して考える事(思考過程)、全てを意味します。医学モデルコアカリキュラム、歯学モデルコアカリキュラムともに「単純に疾患名を暗記することを期待しているのではなく、臨床推論では可能性のある病態から疾患を導き出すプロセスが重要であり、このプロセスを学修することで、十分に学んでいない疾患についても鑑別診断として想定できるようになることが目標である」と書かれています。臨床の場における診断プロセスを学習しましょうということと理解出来ます。
内科を代表とする医科では、皮膚科を除いて疾患の視覚的情報が少ないために、いくつかの鑑別診断を想起して、その確認の為に検査を行い、その結果と合わせて臨床診断推論を行うことが一般的です。このようなプロセスが簡単ながら仮説演繹法です。
一般歯科臨床において、例えば痛みの患者さんを前にして、歯科医師がどんな事を考えているか、「痛みの原因は何だろう」です、この思考過程も臨床診断推論です。
一般歯科臨床で診る痛みの多くは、歯髄炎、根尖性歯周組織炎、辺縁性歯周組織炎、智歯周囲炎、口内炎など最後に炎のつく、炎症による痛みです。これらの痛みの診断では口腔内検査、デンタルX 線検査による視覚的情報によって簡単に診断が出来てしまいます。観れば判ると言う事で、他の検査所見はそれを確認する程度の情報として取り扱われてしまいます。このような臨床診断推論がパターン認識法で、一般歯科臨床では非常に有用ですす。ところが、このパターン認識法が通用しない場面もあります。
本書の第三章の構成は、患者さんの訴えと視覚的情報によって、これだと、パターン認識法で診断が出来て、治療したが、どうも診断が間違っていたようだ、次はどうしようかと思ったときに使うべき診断プロセスが示してあります。
この診断プロセスが冒頭に示した医学モデルコアカリキュラム、歯学モデルコアカリキュラムに書かれている、「臨床推論では可能性のある病態から疾患を導き出すプロセスが重要であり、このプロセスを学修することで、十分に学んでいない疾患についても鑑別診断として想定できるようになることが目標である」、そのものです。
 
2024年09月18日 17:36

仮説演繹法との取り組み

2,019フィリピン
痛みの臨床推論(デンタルダイヤモンド社)を刊行しました。
臨床診断推論に取り組む経緯を改めて考えてみました。私の頭の中に臨床診断推論の元が生まれたのは非歯原性歯痛を知って以来ですが、その必要性を深く認識したのは米国口腔顔面痛学会認定医試験(American Board of Orofacial Pain)の口頭試問の様子を聞いたときです。私が1999年にABOPを受けた時は口頭試問は無く筆記試験だけでしたので知らなかったのですがその後、筆記試験合格者に翌年に口頭試問が課されました。この口頭試問は面接官から症例の概要を口頭で提示され、受験者が試験管にいろいろな質問しながら最終診断を導き出すという様式でした。面接官からの症例概要を聞いてすぐに浮かんだ鑑別診断をこれが診断だと答えると、複数の仮説想起を促され、それが出来ない様であれば失格だったようです。つまり、パターン認識法求めていたのでは無く、仮説演繹法による臨床診断推論が求められていました。これを知ったときに、私の頭の中で臨床における仮説演繹法が現実のものになりました。試行錯誤して、構造化問診等による包括的情報収集から始まる仮説演繹法の可視化ステップを作成し、研修医の症例検討会に用いてブラッシュアップしました。完成した仮説演繹法可視化ステップを用いて、10年以上前から日本口腔顔面痛学会口腔顔面痛診断実習セミナーを行ってきました。グループ学習として、ファシリテーターの指導の元、不ループ全員で提示された症例に対して仮説演繹法に従い仮説を想起し、それを検証する為の検査法を考えだしステップ表に書きだしてデスカッションし、最終診断を導くという実習が行われてきました。また、この実習は2016年、横浜において国際疼痛学会口腔顔面痛分科会とアジア口腔顔面痛学会が共催された時にアジアの参加者を対象に行われました。アジアにおける開催は、その後、2017年ジャカルタ(インドネシア)、2018年台北(台湾)、2019年マニラ(フィリピン)と続いたがコロナ禍で中断を余儀なくされてしまいました。今年2024年、台湾開催では間に合いませんでしたが、2025年タイ開催では、アジア各国からファシリテーターを募り、口腔顔面痛に興味を持つアジア各国の若手に集まってもらいインターナショナルなワークショップを行いたいと思っています。
 
2024年09月18日 14:19

慈恵医大加藤先生痛覚変調性疼痛講演会参加記事 

今週赤坂麻布歯科医師会の学術講演会で慈恵医大の加藤先生が講演されました。一般歯科開業医対象ということで多少話しを判りやすく話されたようですが、しっかり最新脳科学を解説してくれました。私は歯科医師会会員ではありませんが、外部参加も受け付けると言う事で参加させてもらいました。
これまで加藤先生の話を何回か聞いたことと、今回の話は痛覚変調性疼痛だけで無く、周辺の知識も総合して話してくれるので、痛覚変調性疼痛の事が判りやすかったです。
最後に侵害受容主義から脳中心主義とまとめていました。加藤先生は脳機能の変化により様々な内部出力が生ずるとまとめていました。私の理解は脳機能全体に変調が生じ、痛みに関しては痛覚変調性疼痛という表現形で、感覚系では音過敏、光過敏、匂い過敏など、その他にも様々な表現形として症状が現れている、例えば自律神経失調、精神科からみると以前の身体表現性障害、疼痛障害、今の身体症状症もそうだろうと思います。
表現形が痛覚変調性疼痛と出るか、身体症状症と出るかの違いや、その誘因が何である、末梢からの慢性的な痛み刺激とか、精神的ストレスとかによって、薬物療法が効いたり、共感や認知療法など心身医学的対応が有効であったりするのかと思っています。いずれにしても、何らかの痛みがある状況で、痛みのボリュウムが上がって、通常よりも強く感じられているのが痛覚変調性疼痛だろうと思っています。
 
痛みの伝導路に関して、脊髄後角/三叉神経脊髄路核から視床への投射と教科書に書かれてきたが、三叉神経では95%が腕傍核へ直接投射され、視床への5%のみだそうです。腕傍核からは扁桃体に投射される、ということでこの扁桃体の機能が非常に重要視されている。精神的ストレス、情動変化はこの扁桃体に影響するといわれていて、三叉神経からの侵害刺激もこの扁桃体に投影されると言う事でその重要性が注目される。扁桃体を動物実験で刺激することにより足まで広範囲に痛覚過敏が生ずることが示されている。
数年前に、三叉神経の侵害刺激が腕傍核に投影されることが判り、脊髄神経からの中枢への投影経路が異なるの痛みの性質が異なるのではないかという論文がありました。三叉神経での95%対5%と脊髄神経での比率は異なるのかどうか、そしてその結果として痛みの性質が異なるのかどうか、扁桃体への投影が多いことにより、情動変化を起こしやすいのかどうかは解説していませんでした。どなたか詳しい方はお知らせください。
 
現在の神経障害性疼痛の薬物療法のターゲットは、脊髄後角/三叉神経脊髄路核での下行抑制系の作用、一次Nシナプス前膜からの興奮性伝達物質の放出調整であるが、プレガバリンは扁桃体でCGRP抑制を示して中枢感作を止めるということで、痛覚変調性疼痛にも神経障害性疼痛にも作用している可能性があると思いました。
 
ここからは和嶋の私見です。
筋・筋膜性疼痛の関連痛も脊髄後角/三叉神経脊髄路核の中枢感作で論じられていますが、もっと上位の可能性があるなと思いました。
片頭痛は中枢神経系にGeneratorがあると言われるが、痛みの本態は脳硬膜下での三叉神経血管説で言われるメカニズム、筋・筋膜性疼痛も末梢の筋肉中のトリガーポイントからの痛み、ところが片頭痛は全身にallodyniaを生じ、筋・筋膜性疼痛は関連痛が生ずる時点で少なくとも三叉神経脊髄路核で変化が起こっていて、両者とも中枢感作が生じていると考えられる。筋・筋膜性疼痛はトリガーポイント治療、片頭痛はトリプタンやCGRP製剤で末梢入力を減らすことをしている、それが奏功して痛みが収まることがあるが、痛みが完全には収まらないこともある。片頭痛でCGRPが無効な場合は中枢感作が生じているというBursteinの昔の研究があるが、片頭痛の時点で中枢感作が起こっているので、中枢感作がある、なしの問題では無く、末梢からの刺激減少によって収まる中枢感作なのか収まらない中枢感作なのかという事だと思います。そして、収まらない場合が痛覚変調性疼痛が起こっていると言うのかと思っています。
 
今後、どのような状況を痛覚変調性疼痛と診断するのか、具体的な症例呈示してデスカッションが出来れば、これが痛覚変調性疼痛ということが具体的に理解出来るようになるだろうとおもいます。
 
2024年09月07日 21:33

超音波併用のトリガーポイントプレッシャーリリース

今年も日本口腔顔面痛学会学術大会において、超音波併用のトリガーポイントプレッシャーリリースのハンズオンセミナーを行います。このブログでは学術大会抄録集の原稿を供覧して、ハンズオンセミナーの内容をいち早く紹介します。

本ハンズオンコースでは、超音波照射とトリガーポイント触診およびトリガーポイントプレッシャーリリースを実習してもらう。
筋・筋膜疼痛の最も有効な治療法は何かと尋ねると、多くの方々からトリガーポイント注射、最近ではボツリヌストキシン注射との答えが返ってくる。確か 
。に有効な治療法であるが、筋全体に緊張がある状況でトリガーポイントに注射しても期待するほどの効果が得られない。米国の口腔顔面痛センターでは筋・筋膜疼痛に対してどのような治療が行われているのか、基本的にセルフケアとして開口ストレッチとかみしめ中止指導、オフイス治療として超音波を併用したトリガーポイントプレッシャーリリースが行われる。
超音波併用トリガーポイントプレッシャーリリースの実際
超音波照射により筋肉の深部温度が3-4度上がり、トリガーポイントを構成するコラーゲンが軟化してリリースしやすくなる。深部温度が上がった状況でトリガーポイントである硬結部を1kg程度の圧でゆっくり起始部から停止部に、停止部から起始部に向かって一方向に筋を延ばすように指先を2-3cm程度滑らして、最初は途中でコリンと硬結部(英語ではbarrier垣根、進行を妨げる障害物)が指の下をくぐり抜けていくのを感じながらリリースする。次に、硬結を指先に感じながらくぐり抜けさせないように次第に圧力を約2-3kgに高め、指先が硬結部に乗り上げた状態で移動を止めて10-60秒間、指圧のように加圧することがポイントである。トリガーポイントの軟化、消失まで、超音波照射と術後に痛みが残らない程度に圧を高めてトリガーポイントプレッシャーリリースを繰り返えす。

ハンズオンセミナーの手順
受講者が2人一組となり、担当インストラクターの元に下記の手順で相互実習を行う。
  1. 咬筋を触診して、タウトバンド、トリガーポイントを触知、関連痛を確認する。
  2. 超音波照射(最初に、2W、90秒照射)を行い、照射部が加温されることを実感する。
  3. 咬筋全体の触診を行い、タウトバンド、硬結、トリガーポイントを再確認し、約1kgの加圧でトリガーポイントプレッシャーリリースを行う。
  4. その後は、超音波照射(2W、30秒)とトリガーポイントプレッシャーリリース(約2-3kg加圧)を繰り返す。
2024年08月22日 20:35

新刊「痛みの臨床推論」の読みどころ 1) パターン認識法の視える化

この度、「痛みの臨床推論」という痛みの診断法を解説した本を9月に出版します。本書は歯科医師向けに臨床推論を本格的に解説する、日本で最初の書籍だと思います。
臨床推論には直観的方法と分析的方法があります。
一般歯科臨床での診断は、多くの場合、治療経験があったり、馴染み深い病態であったりすることから、直感的に、簡単に正しい答えを導き出すことができます。このような直感的診断法は、「パターン認識法」とよばれ、簡単で有用な方法です。経験のある病態では、訴えの概略を聞くだけで、無意識に自分がもっている疾患イメージ、症状パターンと照らし合わせて、一致する病態を探して診断するという方法です。しかし、パターン認識法による診断には照らし合わせるべきパターンの蓄積が必要です。また、パターン認識法は一発診断とも呼ばれ、いったん診断エラーが生じると、正しい診断に至るまでパターン認識法を繰り返すことになってしまいます。また、最終的に正しい診断が得られても、なぜ診断エラーが生じたかを考察することがないため、次の診断の機会にフィードバックされず、同様の疾患においてもエラーを繰り返す可能性があります。診断エラーの繰り返しを避けるためには、一つ一つの臨床経験を次の診断にフィードバックする必要があります。どのようにフィードバックするのか、パターン認識法であっても、無意識に行っていた診断過程をステップ化して、要点を文字に表して視える化(視覚化)することが挙げられます。
本書ではパターン認識法は認知バイアスが入りやすく診断エラーを導きやすい悪い方法として取り上げていますが、一つ一つの診断エラー症例を省察してフィードバックすることにより、次のパターン認識法で有効活用できる症例バンクが出来上がります。
読者の臨床推論への理解が深まり、日常臨床における痛み診断能力の向上に寄与できることを願っています。
 
2024年08月21日 11:35

海外からの患者さん 感覚検査、筋触診されていない

最近海外からの患者さんがポツポツ、全員当院のホームpageを観てきてくれます。最近のPCシステムの進歩により、pageが簡単に翻訳出来る様になったり、書類にスマホをかざすと翻訳できたりと非常に便利になっているのですね。
その中で気になる患者さんを紹介します。根管治療で後の痛みが生じ、抜歯したが痛みが収まらず、アミトリプチリン、プレガバリンが処方され、上限まで増量した効果が出ないという訴えでした。通常通り、OFPの網羅的診査を行います、歯原性-異常なし、感覚検査-触覚診査、痛覚検査 異常なし、12脳神経検査-異常なし、筋触診-咬筋、後頸部の筋に強い圧痛、関連痛あり。
歯原性、神経障害性疼痛、は否定され、咬筋に筋・筋膜性疼痛による歯痛が当てはまる。極々一般的なOFP症例です。そこで、口腔内、痛い部位の感覚検査を受けた事があるかと聞くといろいろ検査は受けたがこのような簡単な検査は受けた事が無いとの返事、次に咬筋を触診して、タウトバンドがゴリゴリしながら、この痛いところを触られた事があるかと質問、自分では時々痛いところに触っているが診査では触られた事がないとのことでした。
6月にフィリピン、インドネシアに行った時には感じた事ように、OFPの網羅的診査をパッケージにして、通常の診査で診断が出来ない患者さんに必ず実施するように、日本は元より、海外にも勧めていきたいと思います。
日本でも下顎智歯抜歯やインプラントによる下歯槽神経損傷による外傷後神経障害性疼痛が問題になっています、東南アジアのインプラント熱も高まっています。その中で、歯科医師が起こしてしまった口腔内の問題は歯科医師しか診断出来ず網羅的診査は必須と思います。
また、根管治療の際に開口保持するために筋緊張が高まり、筋障害の素因がある場合には筋・筋膜性疼痛となり、歯の痛みなのか、開口保持による筋・筋膜性疼痛なのか判らなくなり、改善しないために抜歯となったが、痛みだけ残っているという症例も診られます。根管治療後、アゴが疲れませんか、治療の後に痛みがひどくなりませんかと質問し、あるとの答えがあったら、筋触診してみましょう。
口腔内の感覚検査、咀嚼筋の筋触診、難しいことではありません、一度、日本口腔顔面痛学会のハンズオンセミナー等を受講してみてください。
 
2024年08月17日 10:54

筋肉痛治療のポイントは 対症療法に加えて原因療法も

口腔顔面痛でも顎関節症でも、最も多い病態は筋肉痛である。特に慢性化した筋・筋膜性疼痛が一番のやっかいは病態である。かつて、筋肉痛では自発痛は起こらないと言う人もいたが、持続性の筋肉痛で受診する人は少なくない。良い例が肩こり、頸のこりなどによる緊張型頭痛である。元々の肩こり性の人が重いものを持ったり、緊張する場面にあったりすると頭が締め付けられるような感じになり、頭が重苦しく、嫌な感じの頭痛が生じ、数日続くことがある。今現在は緊張型頭痛と呼ばれるが、以前は筋緊張性頭痛と言われていた。筋の緊張だけでは無く、他に精神的緊張によっても起こることがあるということで、現在は筋が外されて緊張型頭痛となっている。精神が緊張するとどうして頭痛が生ずるのか、自律神経の交感神経が亢進し、筋肉組織のなかで筋収縮している部分の血管が緊張して充分な血液が供給されないからと言われている。収縮のためにエネルギーが必要な状況であるのに血管が収縮して血液供給が不足、この状況をEnergy Crisis(エネルギー危機)と言って筋痛の原因とされている。
筋肉痛の治療というと、まずマッサージ、ストレッチ、温罨法、指圧が挙げられる、また、最近では即時効果を求めてHydro Releaseやボトックス注射も多くなっているようです。
全ての病気の治療は原因療法と対症療法からなるのですが、どうも対症療法に目が行きがちで、上記の治療法には原因療法が含まれていません。
筋肉痛の原因療法は何でしょうか、筋への負荷の軽減を目的に筋を収縮させない、そのために、痛い筋を極力使わないことです。第一に咀嚼筋では痛い側で咀嚼しない事、また、フランスパンの様に最後までかみしめなければならない様な食べ物は避ける。次に、日中、何かに集中している時などに肩が持ち上がり、かみしめている状況になりがちです。このような状況を避けるために、気がついたら意識的に肩を上げ下げする、舌で口腔内を舐めるなどの「随意運動によるかみしめ中断運動」をしましょう。人間の身体は無意識に筋緊張していても、意識的にその部位を動かそうとすると無意識の緊張が解除されて、意識通りに動きます。これと全く異なって、こむら返りなどの痙攀では動かそうとしても解除されません。
これらの筋を過度に緊張させない、あるいは筋緊張を中断させる等の筋への働きかけに加えて、精神的緊張による交感神経亢進に対して腹式呼吸が勧められます。この呼吸法で、副交感神経が刺激され、緊張緩和にもつながります。
人間仰向けになると自然に腹式呼吸になります、この特性を活かして腹式呼吸を覚えましょう。仰向けになりへその少し上に手のひらを置きます、次にフーーと息を吐き出してみましょう、手の下のお腹が凹みます。凹みを感じたら、ゆっくり息を吸い込んで、凹んだお腹を膨らまして、お腹で手を持ち上げてみましょう。なるべく高く持ち上げて、一秒間保ちます、そして、解除、フーーとゆっくり吐き出します。数時間は1.2.3秒、4で1秒ホールド、そして解除、5.6.7秒、吐く時をなるべく長く出来る様に練習しましょう。この繰り返しをして、腹式呼吸を覚えましょう、そして、坐位でも立位でも腹式呼吸が出来る様になりましょう。緊張していると思ったらお腹に手を当てて、やってみましょう
子供の頃の深呼吸は思いっきり吸い込んで胸を拡げることから始まっていましたが、あれとはまたく違った呼吸法です。
 
2024年08月17日 10:17

夏の暑さ ブログ再開

今日は8月10日 世の中は夏休み、そして、来週は月遅れのお盆です。またその後には、大学から50年来の親友が逝ってから一周忌がきます。
今年は6月の東南アジアセミナーの準備で5月以来3ヶ月間、周りを見る余裕なく過ぎてしまいました。6月下旬から梅雨前の猛暑があり、しっかり梅雨があり、嫌な雨で朝から傘さして出勤しました。例年、梅雨時でも月一回の札幌出張では6月、7月はカラリとして良い気候だったのですが、今年は本州の梅雨が移動したかのようなドンヨリした日々、蝦夷梅雨というそうです。大通公園のビヤガーデン、残念ながら私が行った日は雨でした、ここ数日は晴れているようで、ビヤガーデンは昼から大入り満員でしょう。青天の大通公園の日陰で冷たいビール、美味しいだろうな、来年こそはです。
さて、私は北国、青森生まれですが寒さが嫌いで、暑さは何とかなります。周りの皆さんは暑い暑いと言っていますが私は暑さは感じるが苦にならないんです。これは何故だろうとつい分析癖が出てしまいました。痛みには感受閾値(感じるか感じないかの境目)と耐性閾値(どれくらいまで我慢できるか)があります。
痛みに関して、患者さんが痛みを訴えるのは、痛みの侵害刺激が、痛み刺激を認知する視床での疼痛感受閾値を超える、つまり、痛みを感じたからではなく、痛み刺激の内容が評価、判断され、それに対する反応として患者さんの大脳皮質での耐性閾値が限界に達したときである、と言われています。疼痛感受閾値はたいていの人たちで比較的一致しているが、疼痛耐性閾値には個人差があり、たとえば年齢、性、文化的背景などに影響されると言われています。また、ここには中枢感作が影響するとも言われます。
私の暑さへの反応は暑いのが気にならないのでは無く、暑いのが苦にならない、暑さ耐性閾値が高いのだろうと自己分析されます。
先日、大きな仕事が終わって負債解消で楽になり、昼に居間のクーラーが気になって自分の部屋で窓開けっぱなしで横になり、暑さは気にならず、少しうとうと、でも、このまま寝ていたら熱中症になってしまうなと思い直して、真夏の午睡は中断しました。
熱中症になる人は暑さの耐性閾値が高すぎて、我慢するのでは無く、知らずに身体の限界を超えてしまうことにより掛かるのだろうと結論。皆さん気をつけてください。
 
2024年08月10日 13:18

歯痛でも中枢神経系が関与

慢性痛の基準である3ヶ月以上症状が続いている、これは一般歯科では多くないですが、TMD、口腔顔面痛では珍しくないことです。
従来の痛み治療は急性痛を前提としていて、特に歯科ではイケイケで痛いところに原因があるからそれに向かって進むというものでした、ところが慢性痛は違います。例外的に原因、病態が診断されていなかったために症状が続いているという例もあります。これは本来の慢性痛ではありません。
慢性痛例で思い知らされることは、歯が痛い、と言う症例に確実に局所麻酔をして、局所の感覚は消えたにもかかわらず、感じていた痛みの周辺部の痛みは消えたが中心部にジワーとして痛みが残っているという現象、要するに中枢要因が関連しているということです。一本の歯の痛みでもこのような事が観られ、歯の痛みが中枢神経系とつながり、痛みを感じる中枢が何らか変化している、末梢に向けて治療するだけでは直らないんだと改めて思い知らされることがあります。
典型例は、咬筋の筋・筋膜疼痛で下顎大臼歯部に持続痛がでて、歯科で抜髄、根管処置終了後も痛みは治らない、その後に当院受診。 抜髄歯には持続痛と打診痛があり、歯肉にはallodynia、咬筋のトリガーポイントを圧すと痛みが再現、FamiliarPainです。そこで当該歯に診断的局所麻酔、オトガイが鈍麻している程麻酔は効いていて打診痛が消えるが、持続痛は50%減のみで50%は残っている。このような症例では最初からトリプタノール、プレガバリン等で薬物療法を併用することもあります。筋・筋膜疼痛として治療して、持続痛、歯肉のallodyniaは消失したが打診痛は消えない例が一番難治です。上記のトリプタノール、プレガバリンの内服にはステントを使った局所外用薬物療法を併用します。総力戦ですが、難治です。これが一番大変な症例です。
出来れば抜髄等せずに、頑固な歯の痛みで来院してもらっていれば筋・筋膜疼痛の治療ですっきり治り、歯の打診痛で患者さんも私も苦しむ事が無かったのにと、思ってしまいます。
 
2024年04月29日 15:39