仮説演繹法との取り組み
臨床診断推論に取り組む経緯を改めて考えてみました。私の頭の中に臨床診断推論の元が生まれたのは非歯原性歯痛を知って以来ですが、その必要性を深く認識したのは米国口腔顔面痛学会認定医試験(American Board of Orofacial Pain)の口頭試問の様子を聞いたときです。私が1999年にABOPを受けた時は口頭試問は無く筆記試験だけでしたので知らなかったのですがその後、筆記試験合格者に翌年に口頭試問が課されました。この口頭試問は面接官から症例の概要を口頭で提示され、受験者が試験管にいろいろな質問しながら最終診断を導き出すという様式でした。面接官からの症例概要を聞いてすぐに浮かんだ鑑別診断をこれが診断だと答えると、複数の仮説想起を促され、それが出来ない様であれば失格だったようです。つまり、パターン認識法求めていたのでは無く、仮説演繹法による臨床診断推論が求められていました。これを知ったときに、私の頭の中で臨床における仮説演繹法が現実のものになりました。試行錯誤して、構造化問診等による包括的情報収集から始まる仮説演繹法の可視化ステップを作成し、研修医の症例検討会に用いてブラッシュアップしました。完成した仮説演繹法可視化ステップを用いて、10年以上前から日本口腔顔面痛学会口腔顔面痛診断実習セミナーを行ってきました。グループ学習として、ファシリテーターの指導の元、不ループ全員で提示された症例に対して仮説演繹法に従い仮説を想起し、それを検証する為の検査法を考えだしステップ表に書きだしてデスカッションし、最終診断を導くという実習が行われてきました。また、この実習は2016年、横浜において国際疼痛学会口腔顔面痛分科会とアジア口腔顔面痛学会が共催された時にアジアの参加者を対象に行われました。アジアにおける開催は、その後、2017年ジャカルタ(インドネシア)、2018年台北(台湾)、2019年マニラ(フィリピン)と続いたがコロナ禍で中断を余儀なくされてしまいました。今年2024年、台湾開催では間に合いませんでしたが、2025年タイ開催では、アジア各国からファシリテーターを募り、口腔顔面痛に興味を持つアジア各国の若手に集まってもらいインターナショナルなワークショップを行いたいと思っています。
2024年09月18日 14:19