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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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インドネシアの歯科医師に有痛性三叉神経ニューロパチの話し

三叉神経痛サマリー
昨日、2022/05/13日 インドネシアの歯科医師向けに、三叉神経痛と有痛性三叉神経ニューロパチーの話しをオンラインでしました。
久し振りの英語でどうなることかと心配でした。スムーズには話せませんで、三輪車程度でしたが、後半はさび付いた自転車くらいになりました。
昨日の参加者はインドネシアで補綴の専門医を目指す歯科医師の方々でした、その方々にサブスペシャリティーとして口腔顔面痛の話しの一つとして解説しました。2020年には非歯原性歯痛の総論から始まって筋・筋膜疼痛性歯痛の話しなど3回オンラインセミナーをしていて、今回はその続編でした。
東南アジアの多くの国では三叉神経痛の治療は脳神経内科でやることに決まっていて、歯科で診断したら脳神経内科に紹介します。まあ、これも合理的かと思います。というのは、三叉神経痛の原因は一番多いのが頭蓋内で脳幹部から出てきた神経の弱い部分が血管で圧迫されて変形すること、次に10%程度は類上皮囊胞や脳腫瘍による圧迫、そして、原因不明です。症状は三叉神経の分布領域に感じられますが、原因は頭蓋内、そして、治療はその原因に対して行われますから。日本では口腔顔面痛専門医がこれらの状況を熟知して、脳神経内科医、脳神経外科医と協働して、診断治療に当たっています。東南アジアでも口腔顔面痛が拡がれば、日本の様になると思います。
もう一方の、有痛性三叉神経ニューロパチーはもっと歯科に密接です。下分類の中に外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーがあり、外傷後とは下顎インプラント、下顎智歯抜歯、根管治療などによる神経障害をさすからです。これは、三叉神経痛とは異なり、歯科治療と密接に関連していて、歯科において診断治療が出来なければならない疾患です。
東南アジアにおいても、インプラントが盛んに行われるようになった結果、必ず数パーセントでは偶発症が起こり、その一番多いのが有痛性三叉神経ニューロパチーです。今後、有痛性三叉神経ニューロパチーについて繰り返しセミナーを続けて行くことになりました。3月で慶應を完全に退職し、自由の身になった現在、すぐにでも現地に行って直接指導したいところですが、コロナが収まるまで、今しばらく充電します。

三叉神経痛診断のサマリースライドを供覧します。
2022年05月14日 10:15

allodyniaの勘違い 勘違いシリーズ2

検査結果と病態が一対一で結ばれるモノが極く限られています。前号で打診痛、かみしめ痛が歯原性に特異的な症状ではないことを書きました。
アロディニア: allodynia)とは、通常では疼痛をもたらさない痛覚閾値以下の弱い刺激によっても痛みが感じられる感覚異常のことです。日本語では異痛症と言いますが、通常アロディニアあるいは allodyniaと記されます。
アロディニアが神経障害性疼痛に特異的な症状として誤解されていて、感覚検査の結果、アロディニアが見つかると神経障害性疼痛と診断されていることがあります。 これは早合点、診断エラーの場合があります。
アロディニアは片頭痛、群発頭痛でも認められると言われています、ここまで書けば神経障害性疼痛に特異的な症状で無いことが判ってもらえると思います。
口腔顔面痛の臨床においてアロディニアがよく診られるのは、神経障害性疼痛例、筋・筋膜疼痛例と神経障害性疼痛と筋・筋膜疼痛の重複例です。 筋・筋膜疼痛単独でも関連痛が感じられる部分にallodyniaが生じます。

口腔顔面痛専門医に、神経障害性疼痛と診断され、プレガバリン、アミトリプチリンなどの薬剤を処方されているが改善しないと言う症例を診ます。何故、改善しないのかの疑問に答えます。
典型的な症例では、神経経支配に沿ってallodyniaが認められたことから神経障害性疼痛と診断したのだと推定されるのですが、allodyniaに加えて、咬筋、側頭筋に筋・筋膜疼痛があり、圧痛診査によりallodyniaが認められた部分に関連痛が生じます。診断は神経障害性疼痛疑い プラス 筋・筋膜疼痛となります。
このような例の治療はプレガバリン、アミトリプチリンなどの薬剤の処方はファーストチョイスでないだけでなく、薬物療法を先行すべきではありません。神経障害性疼痛と筋・筋膜疼痛の重複例では、神経障害性疼痛に対してプレガバリン、アミトリプチリンなどの薬物療法が奏功しても、筋・筋膜疼痛にマスクされて痛みの自覚症状の改善はありません。筋・筋膜疼痛が重複している場合の治療順番は必ず1.筋・筋膜疼痛、改善後に2.神経障害性疼痛です。
1.筋・筋膜疼痛の治療による痛みが改善し、allodyniaも消失したら、痛み、allodyniaとも筋・筋膜疼痛による症状と理解出来ます。
2.筋・筋膜疼痛の治療により、痛みは完全消失していないが、筋圧痛による関連痛が消失した。allodyniaも残っている。この状況で残っているallodyniaは神経障害性疼痛によると考えて、薬物療法を開始する。
3.薬物療法の結果、自発痛は消失したがallodyniaは残っている場合がある。自発痛は生じないまで改善したが、刺激による誘発痛としてのallodyniaは残っている。完全消失しない場合もあると考え、自発痛が無ければ自然経過を観察すべき。
 
2022年03月28日 17:33

ラムゼーハント症候群と三叉神経の関連性

James Ramsay Hunt症候群
来週20.21日日本口腔顔面痛学会学術大会でRamsay Hunt症候群の講演があります。楽しみにしています。そこで質問したいことがあります。
Ramsay Hunt症候群は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)によって生ずる顔面神経麻痺を主徴とする疾患であり、呼称はJames Ramsay Huntが1907年に自験例をまとめて報告したことに由来する。
小児期に罹患した水痘の口腔粘膜疹からVZVが逆行性に、あるいはウイルス血症によって顔面神経の膝神経節に到達後潜伏している
後年それが再活性化することで神経炎が生じ、腫脹する為に神経が骨性顔面神経管の中で自己絞扼を生じ顔面神経麻痺、すなわち顔面半側の表情筋運動障害が発症する。
加えて周囲の脳神経にも波及し、耳介の発赤・水疱形成や聴神経を傷害するために耳痛、難聴、めまいなどを合併する例もある。
口腔顔面痛としては味覚障害と舌、歯肉、顔面の持続性疼痛を訴える患者を診ることがあり、聴覚障害を合併している場合にはRamsay Hunt症候群の後遺症とし診断できる。
舌の感覚検査で触覚、痛覚に鈍麻か過敏があり、味覚は低下していることがある。味覚の低下は顔面神経の枝の鼓索神経が傷害されたからと理解が出来るし、舌の感覚障害は鼓索神経と舌神経のエファプティック トランスミッションのようにウイルスが乗り移る可能性があると理解出来る。しかし、下顎歯肉、呈示した図の口蓋となると何らかの他の経路で顔面神経と三叉神経が交流していると思われる。
この疑問を解決するために質問しようと思っています。
なぜRamsay Hunt症候群と呼ばれるか、Ramsay先生とHunt先生の二人で発見したから            正解は James Ramsay Hunt先生だから James Ramsay Hunt症候群です、アメリカの神経内科医です (1874-1937)

Ramsay Hunt症候群でなぜ三叉神経領域にも症状が現れるのか、二つの可能性があります。1)顔面神経膝神経節から出たVZVが吻合している三叉神経に乗り移る、もう一つは、2)膝神経節で再帰感染が始まるのとほぼ同時に三叉神経神経節でもVZVの再帰感染が生じて三叉神経領域に帯状疱疹が生ずる。
先日の日本口腔顔面痛学会において、Ramsay Hunt症候群でなぜ三叉神経領域に疱疹が出たり、強い歯痛が出たり、そして、三叉神経領域に帯状疱疹後神経痛と思われる神経障害性疼痛が残る原因について質問しました。
皆さんの答えは1)顔面神経の枝がどこかで三叉神経と吻合していて、膝神経節で再帰感染したVZVが吻合部で三叉神経に乗り移り、三叉神経領域にも帯状疱疹が生ずる、この可能性が高いということでした。
 
2021年11月11日 20:40

ノーベル生理・医学賞 温度感覚、触覚

今年のノーベル生理学・医学賞は,温度受容体および触覚受容体を発見した功績で,米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のジュリアス(David Julius)教授,米スクリプス研究所のパタプティアン(Ardem Patapoutian)教授の2氏に授与される。
 
痛み治療に関わる者たちは温度受容体TRPファミリーを相手に仕事しているようなもので特に受賞対象のTRPV1という43度の熱で痛みを感じる受容体は非常に密接に感じます。
例えば、炎症で痛みを感じる場合に冷やすと楽になる、これは炎症物質がTRPV1に作用して過敏にして、43度よりも低い温度、体温が少し上がっただけでも痛みを感じるようにしているのです。
そして、冷やす事により体温が下がるとTRPV1が刺激されないために痛みが出なくなるということです。
また、ロキソニンなどの抗炎症性鎮痛薬は炎症部分でTRPV1を刺激するプロスタグランジンの発生を止めTRPV1の過敏化を止めることにより、体温ではTRPV1が刺激され無いこととなり、痛みがでなくなるという作用です。
この様にTRPV1は痛み治療に密接に関係する受容体です。残念な事として、1997年TRPV1の発見に深く関わっていた富永真琴先生が共同受賞できなかったことです。
 
2021年10月08日 18:07