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原因不明の歯痛、顔の痛みに慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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わかり合えないが共感できる、でもonlineでは出来ない

医療面接の際の医療者の態度の原則は傾聴、受容、共感です。オリジナルを調べるとこの3つをまとめて「積極的傾聴」と言うようです。
•傾聴は、アメリカの心理学者でカウンセリングの大家であるカール・ロジャーズによって提唱された。
•傾聴を「積極的傾聴」と呼び、自らが行ったカウンセリングの事例を分析して、話を聴く側には3つの要素が必要であると説いている。
1.自己一致(Congruence):話を聴いて分からないことをそのままにせず聴き直す等、常に真摯な態度で真意を把握する (傾聴)
2.無条件の肯定的配慮(Unconditional positive regard):善悪や好き嫌いと  いった評価をせず、肯定的な関心を持ちながら話を聴く(受容)
3.共感的理解(Empathic understanding):相手の立場になって話を聴く(共感)

この共感について
•人間関係 「わかり合える」 は誤解で、他人同士は 「わかり合える」 ことは無いそうです。
•わかり合えないことを前提とした上で、どのように患者と折り合いをつけるか。
•他者のことを完全に理解するのは不可能でも、人間の脳には元来、相手に共感しようとする機能が備わっている。
•ミラーニューロンとはその名(ミラー鏡)の通り、他者の行動を見て、自分が行動したかのように脳内で反応する神経細胞のことを言う。
•他人の心を推測する神経モジュールとしての機能がある 相手の行動を脳内で模倣することで、そのときに抱く感情を自分事として理解し、「相手がどう感じているか」を推測しようとする。簡単に言えば、過去の経験に基づき、自分の外の世界の仕組みを脳内でシミュレーションする神経機構のこと。
つまり、人との触れ合いとそれに伴う経験値、あるいは身につけた教養が豊かなほど、内部モデルのデータベースも豊富に蓄積されていく。それに伴い「心の理論」も成熟され、共感の幅が広がり、他者の感情を汲み取ることができる脳が育成されると言う事です。これによって、患者さんと話していて、患者さんの体験、感情に共感(自分が行動したかのように脳内で反応する)するのだそうです。

オンラインの弱点が見つかりました。対面で会話するとお互いに「共感」するのに対し、オンラインでの会話ではそれが起こらなかったという実験結果が報告されています。「週刊新潮」2022年4月28日号 掲載
コミュニケーションにおいて、大事な役割を果たすのは「視線」です。お互いに視線が合っているか否か、それはお互いに注意を向け、関心を持っていることを示す最も大きなサインです。これは「人間らしいコミュニケーション」ともいえます。動物だと、視線を合わせることは相手を「襲おうとしている」サインになりますが、人間だけは「自分に興味を持ってくれている」と善意に解釈する。
この人間らしいコミュニケーションの大事な要素である視線が、オンラインだとどうしてもずれてしまいます。画面上に映る相手の目を見ようとすれば、自分を撮っているカメラから視線を外すことになる。逆にカメラを見ると、相手の目は見られない。つまり視線は合わない。ゆえに脳は同期しないと言うことです。

和嶋対策 このことは以前から気になっていたのでカメラ目線で、なおかつ相手の顔を見られるようにカメラの位置をいろいろ変えてみています。結論は、相手が映っている画面と自分の目を結ぶ線上にカメラを位置付ける。カメラをどうやって固定するか、試行錯誤しています。
 
2022年05月30日 12:27

解釈モデル 腑に落ちない説明により不安が増して痛み過敏

慢性痛の患者さんが、なぜ、治療に満足できないのか、なぜ、多くの患者さんが中断、転院してしまうのか、なぜ治療でもめたりするのか。
理由の一つは、解釈モデル、つまり患者の自身の病気の理解、認知、把握と医者の診断、治療方針にズレがあるままに治療が行われるからだと思います。
1)「解釈モデルは患者さんの自動思考により作られる」、「歪んだ、不合理な思考により片寄った解釈モデルが作られる」
2)「患者さんの片寄った解釈モデルと医者の診断にズレがあると、不安が生ずる」
3)「不安亢進、痛みを強める気分による痛覚過敏=痛覚変調性疼痛」に至る過程が想定されます。
この過程でズレの修正ポイントを探して介入する、そして、患者と医者で病気の理解にズレのない状況で治療を行うことが望まれます。
既製の概念ではshared decision makingに類似した仮説です。
今後は臨床において、簡便に出来る方法を検討する必要があります。
keyword:解釈モデル、自動思考、歪んだ認知、不安、痛みを強める気分、痛覚変調性疼痛
2022年05月07日 15:13

解釈モデルの聞き方

解釈モデルの聞き方 
英国発診療モデルICE( Idea:自分の病気の解釈、Concerns病気への不安、Expectations 医者、治療への期待)のすすめ
 
慢性的な痛みを抱えている患者さんは、痛みについて自分なりにいろいろなことを考えています。この症状の原因はこの病気ではないかと不安に思っているうえに、診察、検査や治療について、このようなことをしてほしいと期待していることがあります。患者さんが考えていること、心配していること、期待している事が判らなければ、私は患者さんが抱えている痛みに近づくことさえできません。たとえ、「正しい診断をくだした」と私が自己満足を覚えたとしても、患者さんが不安感をぬぐえず、不満を抱えたまま自宅に戻ることになります。慢性の痛みの治療において最も有効な治療法は、患者さんに安心してもらうことだというのに、出来ていないと言う事です。
患者さんが自分の病気についてあれこれ考えていることを一般的に解釈モデルといいます。
慢性経過している場合、なかなか診断がつかない場合には特に患者さんが自身の病気について、自分のもつ病気に関する知識のなかであれこれ考えてしまいます。最近ではインターネントで沢山の情報を集めて、悪い病気を当てはめてしまう傾向があります。
患者さんが病気の当事者として1)自分の病気の原因をどうとらえ、2)なぜ発症したのか、3)どの程度重いのか、4)予後はどうなのか、5)どんな治療が必要なのか等、自身の病気について想定していることがあります。このように患者さんが自分の病気について思っていることを、自分の言葉で述べてもらい顕かにしてもらいます。
解釈モデルを上手く把握するためには、出来るだけ患者さんに自発的に多く語ってもらうようにします。そのためには、時間が許せば、初診患者には少なくとも5分間は自由に遮らないで来院の理由を語ってもらいます。

例えば、最近私のところを受診したAさんの話。歯が痛かったのでかかりつけ医を受診した、明らかな原因はないので経過を診るように言われた。数週間しても治らないのでもう一度受診したが特に痛みの原因になるような歯は無いとのことであった。その後の痛みは治らないので不安になって、別な歯科を受診した。1ヶ月以上も痛みが続いていると訴えたら、かみ合わせに小さな虫歯があるので削って詰めましょうと言われ、治療を受けた。一週間経っても痛みが治らないので、再度受診して、もう一度調べ直してもらった。「虫歯を削って詰めても痛みが治らないなら、神経を抜くしかないです」と言われて、痛みに耐えかねて、神経を抜いてもらった。しかし、その後も痛みは全く変わらず続いている。治療が上手く行かなかったのではないか、治療のミスがあったのではないか、隣の歯が原因だったのではないか、炎症が骨に拡がっているのではないか、腫瘍があるのではないかなど、いろいろ考えてしまう。インターネットで調べると原因不明の歯痛は非定型歯痛であると書かれていた、私の歯痛も非定型歯痛ではないかと心配になり、治療してくれるところを探して、ここに受診しました、という話しであった。

解釈モデルの捉え方にいろいろな方法がありますが、英国のGeneral Practitionerが通常用いるICE( Idea:自分の病気の解釈、Concerns:病気への不安、Expectations:医者、治療への期待)が患者さんの状況を把握するのが便利です。
患者さんは自分の歯痛が非定型歯痛ではないかと思っている、その他に痛みが治らない原因をいろいろ考えている、インターネットでは非定型歯痛は治り難い、薬を飲まなければならないと書かれていた、私もそうなのか不安である、ここは原因不明の歯痛の専門クリニックだと聞いて、ここにかかれば治るかも知れないと期待して受診した、ということでした。
患者さんの考えている事が大枠判りましたので痛みの性質についてもっと詳しく尋ねる為に構造化問診に進みましょう。
注:ICEは1984年オックスフォード大学社会心理学者デヴィッド・ペンドルトンと同僚のGPが最初に提案した診療モデルの基本です。
 
2022年04月06日 11:47

解釈モデルとは 聞きましょう、患者さんの考えていること

•患者さんが自らの病気(illness、医師のとらえる疾病 disease)を解釈する枠組みを、解釈モデル(説明モデル)と言います。  
Harvard 大学医学部の医療人類学と精神医学の教授であるKleinmann、Aが提唱した概念です。
•患者さんが病気の当事者として1)自分の病気の原因をどうとらえ、2)なぜ発症したのか、3)どの程度重いのか、4)予後はどうなのか、5)どんな治療が必要なのか等、自身の病気について想定していることがあります。
慢性経過している場合、なかなか診断がつかない場合には特に患者さんが自身の病気について、自分のもつ病気に関する知識のなかであれこれ考えてしまいます。そのように患者さんの自分の病気について思っていることを、自分の言葉で述べてもらい顕かにしてもらいます。これにより、患者と医者の病気認識のズレを少なくし、 患者さんが納得、満足のいく診療が進められます。
・2008年頃に歯科でもOSCEという、患者さんでの実習に必要な臨床実地能力があるかどうかの試験が始まり、このための教育も行われるようになりました。この教育の中に解釈モデルも含まれていますので、卒後15年以内の歯科医師は知っています。私はつい最近まで知りませんでした。北里大學の宮岡教授に教えてもらい、臨床に活用しています。
患者さんと私が、病気の理解が違うと話しがかみ合わなくなります。話していて異和感がある場合には患者さんの解釈モデルが私の考えが違っている訳です。最近は医療面接の段階で必ず確認しています。

臨床の場で、病気について患者さんとの食い違いを無くすために、このようなことをしています。こちらも覧てください。
解釈モデルと医療者が考えた病気のストーリーを摺り合わせる
https://wajima-ofp.com/blog_articles/1663289038.html
 
2021年10月31日 11:04

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