現在の標準的TMD治療の10のポイント
国際歯科研究学会(IADR)INfORMグループは、現在の標準的TMD治療の10の重要なポイントを提案しました。Temporomandibular disorders: INfORM/IADR key points for good clinical practice based on standard of care CRANIO®: THE JOURNAL OF CRANIOMANDIBULAR & SLEEP PRACTICE 2024年10月
2010年に米国歯科研究学会が当時の臨床試験、実験研究、疫学研究の証拠に基づくTMD治療に関する声明を出しました。特筆されたことは、TMDの自然経過がSelf-limitedで時間の経過とともに改善または消失する傾向がある事、従って、保存的、可逆的、かつエビデンスに基づいた治療法を行うことを強く推奨した事でした。
その後、約15年経過し、多くの臨床的データ、疫学研究により2010年のTMD声明に書かれていたことが確かなものであることが支持されています。しかし、一方では未だにTMDはかみ合わせの異常であるとか、咬合治療を最優先させる古い考えが残っています。
この度、このような状況を更に改善する事を目的に、米国歯科研究学会AADR単独では無く、国際歯科研究学会(IADR)が踏み込んで、現在の標準的TMD治療の10の重要なポイントを提案した次第です。
- TMD を治療するには、患者中心の意思決定と患者の関与および視点が重要であり、治療は病歴から検査、診断、そして具体的な治療へと続くプロセスです。症状を制御および治療し、個人の日常生活への影響を軽減する方法を患者自身が学ぶことに重点を置く必要があります。
- TMD は、口腔顔面痛や筋骨格系に起因する機能障害などの兆候や症状を引き起こす可能性がある一連の疾患です。
- TMD の病因は生物心理社会的かつ多因子的です。咬合異常の比重は低い。
- TMD の診断は、訓練を受けた診断医が患者の視点に基づいて実施する、標準化され検証された病歴聴取と臨床評価に基づいています。
- 画像診断は特定の症例で有用であることが証明されていますが、慎重な病歴聴取と臨床検査の必要性に代わるものではありません。軟部組織の場合は磁気共鳴画像診断MRIが、骨の場合はコーンビーム コンピューター断層撮影CBTが現在の標準です。画像診断は、診断または治療に影響を与える可能性がある場合にのみ実施する必要があります。画像診断のタイミングは重要であり、コスト、利点、リスクのバランスも重要です。
- 通常の標準治療を超えての介入や新たな器具を用いた治療を実施する前に、その根拠となるエビデンスを慎重に検討する必要があります。この分野の開発に関する知識は最新の状態にしておく必要があります。現在、筋電図活動測定、コンピュータでの顎の動きの追跡、重心の揺れ評価などのはサポートされていません。
- TMD 治療は、痛みの影響を軽減し、機能制限を減らすことを目標とすべきです。治療結果は、症状悪化因子の除去と悪化の治療方法と生活の質の向上に関する教育との関連で評価する必要があります。
- TMD 治療は、主に、サポートされたセルフケアの奨励と、認知行動療法や理学療法などの保存的なアプローチに基づく必要があります。セルフケアをサポートする第 2 選択の治療には、理学療法、薬物療法、暫定的および期間限定のスプリントの使用が含まれます。外科的介入が必要とされるのは、ごくまれで、非常に限られたケースのみです。
- 不可逆的な修復治療や咬合、下顎頭の位置の調整を目的とした大がかりな治療は、ほとんどのTMDの治療には適応されません。例外となるのは、歯科治療の直後にTMDのような症状が現れる、不適切な高すぎる充填やクラウンなどによる咬合の急激な変化とリウマチ、下顎頭疾患により咬合が緩除に進行する変化だけです。
- 身体の広範囲にわたる痛みや併存疾患が同時に発生している場合、中枢感作の要素、長期にわたる痛み、または以前の治療の失敗歴など、予後が不確かな複雑な臨床症状がある場合は、TMD または非 TMD の痛みの慢性化が疑われます。そのため、適切な口腔顔面痛専門医への紹介が推奨されます。すべての国に口腔顔面痛の専門医がいるわけではないため、専門医は地域によって異なります。
TMDの治療として、かみ合わせの調整、被せたもののやり直し、かみ合わせを高くするなどの治療は現在の標準治療から逸脱しています。
2026年01月26日 13:08