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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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2023年2月の記事:ブログページ

痛覚変調性疼痛の診断基準を元にして中枢感作との関連を考える

痛覚変調性疼痛診断法
中枢感作とは
国際疼痛学会の現在の中枢感作の定義に従えば、中枢感作とは「正常または閾値以下の求心性入力に対して、中枢神経系の侵害受容ニューロンが増加した反応性」という意味になるはずです。つまり、中枢感作とは侵害受容性疼痛に関連する現象の変化のメカニズムとして用いるべきと言われています。
 
痛覚変調性疼痛のなかの中枢感作の位置付け
痛覚変調性疼痛発症への中枢感作の関与する部分を具体的にあげるならば、痛覚変調性疼痛の診断基準の「2. 痛みのある部位に疼痛過敏の既往がある。以下のいずれか1つ。触覚敏感、 圧覚敏感、 運動敏感、 熱、冷敏感」である。ここであげられている「触覚敏感、 圧覚敏感、 運動敏感、 熱、冷敏感」は侵害受容性の変化で、過敏になったのは中枢感作によると考えられます。
また、「4. 誘発性疼痛過敏現象は、痛みのある部位で臨床的に誘発されることがある。
以下のいずれかである。静的機械的アロディニア、 動的機械的アロディニア、 熱または冷感アロディニア、 上記のいずれかの評価後に残遺症状が残ること」、誘発性疼痛過敏症状はまさに侵害受容性疼痛の変化であり、中枢感作が関与すると考えられます。
他方、「3. 併存疾患がある。以下のいずれか1つ。音、光、においに対する感受性の亢進、 夜間頻回の覚醒を伴う睡眠障害、 疲労、 集中力の欠如、記憶障害などの認知的問題」、は侵害受容性神経系に関連して生ずる現象ではないので中枢感作の結果とは言えないということになります。
痛覚変調性疼痛の発症メカニズムを分析する
上記したように痛覚変調性疼痛は診断基準の2、4で侵害受容神経系が中枢感作により生ずる変化であるが、「3. 併存疾患がある」に含まれる症状は中枢感作以外のメカニズムにより生ずるものであり、痛覚変調性疼痛の発症には侵害受容性神経系への中枢感作だけではなく、もっと広く神経系が変化した結果であると考えねばなりません。
 
中枢感作プラスアルファのメカニズム
この詳しいメカニズムは不明で、とりあえず、脳機能変調とでも名付けておきます。
この先のメカニズムを考えるに当たって、中枢感作症候群とでも呼ばれる症状群を調べてみました。
中枢感作症候群(central sensitivity syndrome)とは
中枢感作症候群とは、中枢感作の症状を持つと「推定される」非器質性疾患(例:線維筋痛症や/慢性疲労)の包括的な用語として提案されたものです。
しかし、冒頭に書いた国際疼痛学会の中枢感作の定義から明らかに逸脱していますから中枢感作の症状とは言えません。
 
中枢感作症候群調査票(Central Sensitivity Syndrome Inventory)CSI
「中枢感作症候群(central sensitivity syndrome (CSS)に関連することが多い主要な身体的・感情的な訴えを評価するために」開発された質問票で、世界中で広く使われています。
この中枢感作症候群調査票で評価される「推定の」中枢感作の症状には、睡眠障害、集中力低下、光やにおいへの過敏性、ストレスなどが含まれます。 これらの症状は侵害受容性ではないので明らかに中枢感作ではありません。   
 
中枢感作症候群調査票を利用した論文を読むと、論理の飛躍があり、中枢感作症候群を調査したはずなのに、論文の結論等で中枢感作を評価したことになっています。
1)中枢感作が、非侵害受容系における反応の亢進を説明するために用いられている(例:音、光、におい)。
2)中枢感作があると中枢感作症候群調査票で高得点となり、中枢感作症候群調査票で高得点であれば中枢感作であると解釈されるという論理の飛躍があります。
 
このような中枢感作症候群調査票を用いた研究には科学的論理の逸脱があるのですが、中枢感作症候群を中枢感作とは別物、中枢感作プラスアルファのメカニズムにより生じた症状と考えれば、ここから何か手がかりが得られそうかなという気がしています。
今のところ、泥沼なのか、金の山かは皆目見当がつきません。
 
 
2023年02月28日 16:52

最後臼歯しか咬んでいない でも咬合調整はしないでください

口腔顔面痛、TMDの患者さんで骨格性要因に寄らない前歯部から大臼歯部開口状態で最後臼歯のみ咬んでいる患者さんを診ます。多くは前歯部小臼歯部に咬耗が認められ、以前は咬んでいたんだろう、そして、犬歯の尖頭が咬耗している事から歯ぎしりが強かったのだろうと推定されます。
これらの患者さんは下顎枝高径が短くなっていて、下顎頭が吸収変形した事も推定されます。
下顎頭に対する病名は進行性下顎頭吸収(Progressive Condylar Resorption: PCR)あるいは特発性下顎頭吸収(Idiopathic Condylar Resorption: ICR)とも言われます。私の経験では下顎頭の吸収が経時的に進行するのではなく、諸条件が合わさったある時期に急激に進行すると考えています。
下顎頭が何らかの原因で吸収し、咬筋をはじめ閉口筋の力が合わさって最後臼歯を軸に下顎が時計周りに回転して、小臼歯部から前歯部が開口状態になってしまったことです。この時計回り回転が重要なポイントです。
 多くの患者さんは急性期を過ぎて、顎関節には雑音以外症状がないことが多いです。

このような患者さんで生ずる大きな問題
歯科医師が初診でみた患者さんの口腔内が、前歯部から小臼歯部まで開口状態で左右最後臼歯しか咬んでいない状態をみると、これは大変だと思います。最後臼歯に力が集中するので外傷性咬合により歯がダメになってしまう、何とかかみ合う歯を増やそうと最後臼歯の当たっている部分を咬合調整しようとします。これが問題です、咬合調整するとどうなるでしょうか、反時計回りに前歯部がかみこんで行くでしょうか。
開口状態になったのは下顎が時計回りに回転した結果です、最後臼歯の当たっている部分を削ると反時計回りに回転するだろうという見込みとは反対に、もっと時計回りに回転して、前歯部の開口状態が増悪します。絶対に咬合調整してはいけないのです。
 
とりあえず、どうすれば良いか、夜間スプリント装着
まず、このような患者さんは歯ぎしりが強いので、上顎に全顎型のスプリントを入れて、少なくとも小臼歯部までバイトさせましょう。スプリントの厚みは1mmです、厚いスプリントでは盛り足すレジン量が多くなってしまいます。
 
 
 
2023年02月28日 15:50

チャットGPTに聞いてみました 解釈モデルのズレの直し方

2023年2月23日の朝日新聞天声人語にチャットGPTの話題が載っていました。
今世界中で話題のAiを使った小説執筆です。大学生が小説の校正作業のアルバイトに採用された。執筆者は生身の作家ではなく人工知能Ai、やりとりするうちに、相手の「意識」を感じ始めると言う話、これは昨年の第9回「星新一賞」でAiを利用した初入選した作品の事でした。ミーハーな私は世の中で流行っているもので自分の仕事が少しでも楽になるものは取り入れてきたので、このチャットGPTも早速活用にむけて試し中でしたので非常に興味をもちました。
最近の私の頭のなかで未解決で残っているものに、解釈モデルを能率良く把握するにはどうすれば良いか、把握した後にこちらの診断と齟齬があった場合に患者さんの考えを効果的に変えるには、こちらにすり合わせるにはどうすればいいのか、という課題があります。
 そこに、養老孟司が新刊本で、「あの人は私をわかっていない」「私を誤解している」などと思うのは、誤解ではない「正解」があるという前提に立っているから、
誤解されたままなんて嫌だと思うかもしれないが、「それは誤解です」と言っても相手は相手で自分が正解だと思っているから、たいてい無駄に終わる。誤解の多くは、放っておくと自然に解けて消えていきます。どうでもよくなるんです。長い時間がかかるかもしれません、その時間を「損」と思うと、短時間で、合理的に「誤解を正そう」という話になる。そこで無理矢理「これが正解なんだよ」と説明しても無駄なことです。

この相手の誤解を患者さんの解釈モデルに置き換えると、医療の場面での患者と医者のやり時になります。解釈モデルとこちらの診断をすり合わせるのは難しいことなんだとあらためて気づかされました。
患者さんの解釈モデルがどうしてもこれからの治療方針と合わずに、私はこの歯の痛みを治してほしいのに、頬の筋肉が強ばっているの、歯肉の神経が敏感だのと言われても、納得出来ない、歯の痛みを治して欲しいんだ、 歯医者はあなただけじゃない、歯のややこしい痛みの治療が上手いという評判を聞いてやってきたが、どうも見当外れだったようだ、と言われたらどうしましょう。
養老先生は「放っておくと自然に解けて消えていきます」と言っているが、治療するには、何とか解釈モデルを早めにすり合わせたい、どうすれば良いのか
このよう場面に備えて、早速、この課題をチャットGPTに答えてもらいました。
相手の誤解を解くためには、
以下のステップを踏むことが重要です。
 
1.相手の誤解を正確に理解する
まず、相手がどのような誤解を抱いているのか正確に理解する必要があります。相手が何を誤解しているのかを明確に把握することで、解決策を見出すことができます。
 
2.相手の視点に立って考える
相手がどのような状況や背景で誤解を抱いているのかを考え、相手の視点に立って考えることが重要です。自分の立場だけでなく、相手の立場を理解し、尊重することが重要です。
 
3.正確な情報を提供する
相手に正確な情報を提供することが大切です。誤解を解くためには、適切な情報を提供することで、相手が正確な情報に基づいて考えることができるようになります。
 
4.コミュニケーションを改善する
相手とのコミュニケーションを改善することが重要です。誤解を解くためには、相手とのコミュニケーションがスムーズであることが必要です。相手の意見を尊重し、適切なタイミングで適切な言葉を使うことが大切です。
 
5.誤解が解けたことを確認する
最後に、誤解が解けたことを確認することが重要です。相手が正確な情報に基づいて誤解を解いたことを確認することで、今後同じような誤解が生じないようにすることができます。
 
なるほど、もっともな話ですね。白衣の威厳よりもこのような論理だった話を如何にかみ砕いて伝えるか、精進します。
 
 
2023年02月24日 13:51

一般向け非歯原性歯痛情報

一般向け健康雑誌PHPからだスマイル に非歯原性歯痛に関して、医療ジャーナリストの木原さんに取材を受けて、記事になっています。
PHPからだスマイル2023 3月号 非歯原性歯痛 健康ニュース2023 3 虫歯・歯周病は無いのに”歯が痛い”  121-123   https://www.php.co.jp/magazine/karadasmile/  
非歯原性歯痛はH26年度から歯科医師国家試験に毎年出題され、多くの歯科医師は知っている歯科の疾患の一つですが、いざ臨床となると、知っているのと診断出来るのとは違うために、見逃されていることが多いのが現状です。歯科医師への啓発と共に患者さん、一般社会への広報が必要と思っています。
患者さん向けには、歯の神経の治療をしているが、うまく治らない場合には、私の痛みは非歯原性歯痛ではないかと主治医に言ってみることを提案します。
 
2023年02月13日 10:11

慢性痛治療はコミュニケーション

歯髄炎は大人子供、その人が他の病気を持っていたとしても、神経を抜くと治ります。処置前後の痛みに強い、弱いの差はあるでしょうが、痛みは収まります。これは歯に対する治療でことが住むからです。ところが慢性痛は、例えば咬筋の筋・筋膜疼痛による非歯原性歯痛の場合には歯に治療しても直らないのは当たり前、筋肉に治療すれば直るか。筋が痛みの元であるから治りそうですが、慢性化していると治療者と筋肉の問題に宿主の患者さんが絡んできます。慢性痛の治療では痛みの原因である筋肉よりも筋肉の持ち主である患者さんに対する治療が重要になります。
患者さんとコミュニケーションしなければならない、話さなければならない、患者さんに理解してもらうように話さなければならない、患者さんに自分の筋肉の病気について、なぜ起こったのか、どうすれば治るか等を説明して、原因が患者さん自身の生活にある事、改善するには患者さんによるセルフケアが必要である事を理解してもらう、そして、やる気になってもらわなければなりません。
今まで歯の病気だと思っていた人に、痛みの元はあなたの生活にありますよ、治すのはあなたですよと言ってセルフケアをやってもらうわけです。非歯原性歯痛のパンフレットを渡して、あなたの病気はこれです、ここに書かれている事をやってくださいでは治らないのは目に見えています。
患者さんの解釈モデルでは歯が痛い、歯の病気、歯科医院に行ったら歯の治療をしてくれて、すぐ治るはずでしたが、悪いのはあなたです、治すのもあなたですと言われても解釈モデルは変わりません。
振り出しに戻って、慢性痛の治療は痛みの元が治療対象ではなく患者さんです、そして治療法はコミュニケーションを通じて伝えることになります。
一般歯科治療はクルマの修理のように、大きく口を開けてもらい口の中にある歯を削り詰めたり被せたりして治療します、このような治療から180度反対側にある、口で話してもらい、こちらの話しを耳で聞いてもらって治療していくのです。
 
2023年02月13日 09:42

痛覚変調性疼痛に関する私の誤解がひとつ解けました

痛みの発生メカニズムとして、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛と心因性疼痛が挙げられていたが、心因性疼痛は発生メカニズムとしては適切でないという事で、第3の発生メカニズムとして痛覚変調性疼痛が提案され、定着してきました。
ここからが誤解だったのですが、発生メカニズムでは心因性疼痛が痛覚変調性疼痛に代わりましたが精神心理的因子は痛みの発生因子にならないのかというと、心因性は大きな発生要因のひとつであることに変わりはありません。
つまり、痛みの発生メカニズムでは心因性から痛覚変調性疼痛に代わりましたが、痛みの発生要因としては心因性が重要な因子であることに変わりはありません。
不安、怒り、あせりなどの心因が中枢に、例えば扁桃体に作用して脳機能の変調が生じ、痛み関連神経系を感作して痛覚変調性疼痛が生ずると言うのが、ひとつの痛覚変調性疼痛の発生経路かと思います。
 
2023年02月12日 17:48

これが痛覚変調性疼痛 本態は脳機能変調

痛覚変調性疼痛診断法
今回提示した参考文献を改めて読み直したら、痛覚以外の症状(睡眠障害、疲労、認知症状、光・音・においに対する過敏性など)が診断基準に含まれていました。
痛覚変調性疼痛の診断基準に完全一致する症例を提示します。

症例40歳男性 主訴:両側側頭部の自発痛と刺激痛(眼鏡がかけられない、マスクを耳にかけられない)
現病歴:10年前、頭が締め付けられるように痛くて、脳外科受診、MRI異常なし、鎮痛薬を処方で終了、その後、内科、ペインクリニックを受診したが異常なし、鎮痛薬のみ。
顎関節症専門を掲げる歯科で高価なスプリント治療を数回、効果無し。
2年前から、顎関節症の診断で二年間で咬合治療をして主訴を改善するという歯科受診中(前金3桁万円払い込み済み)、二年が近づいているが一向に改善しないという事で当クリニック受診。
主訴:両側側頭部締め付けられるように痛い。側頭部、耳に触ると非常に敏感、そして、残感覚が残る。左右の上下顎大臼歯部の歯痛あり
診査:下顎頭牽引圧迫痛誘発テスト顎関節可動性np、痛み無し 
両側咬筋 肥大+ 硬結+ 圧痛+ 関連痛あり(歯痛再現)
両側側頭筋 筋肥大無し、硬結無し、圧痛++、allodyniaあり 残感覚あり、主訴の両側側頭部締め付けられるような痛みが増悪。
最近、考えをまとめることが出来にくくなっている、短期記憶が欠落することあり、睡眠障害(途中覚醒)などの症状あり。
 
得られた所見を末梢から診断していくと、
  1. 側頭筋、咬筋圧痛、関連痛-筋・筋膜疼痛

  2. 10年来の頭が締め付けられる頭痛-頭蓋周囲の圧痛を伴う慢性緊張型頭痛

  3. 筋圧痛関連痛、残感覚-中枢感作   となりますが、


    以上の診断でこの患者さんの全てを説明出来るか?、「考えをまとめることが出来にくくなっている、短期記憶が欠落することあり、睡眠障害(途中覚醒)などの症状」も含めて考えると、この症例こそ痛覚変調性疼痛そのものという診断にいたりました。  痛覚の変化だけでなく、脳機能そのものが変化しているのだろう、「脳機能変調」が最も状況を的確に表した用語、痛覚変調性疼痛はそのひとつのphenotype(表現形)でしかない。と思うに至りました。
 
 再掲 下記の論文の診断基準です
Chronic nociplastic pain affecting the musculoskeletal system: clinical criteria and grading system
Eva Koseka,b,*  PAIN 162,11 (2021) 2629–2634
筋骨格系の痛覚変調性疼痛の臨床的基準とグレーディング。
1. 痛みは
1a. 慢性的(3ヶ月以上)、
1b. 局所的(不連続的ではなく)な分布( 筋骨格系の痛みは、皮膚ではなく深部性であり、(個別性ではなく)局所性、多巣性、あるいは 広範囲に分布している。)
1c. 侵害受容性疼痛が(a)存在しない、または(b)存在するとしても、その疼痛に完全に起因している証拠がない。
1d. 神経障害性疼痛(a)が存在しない、または(b)が存在する場合、その疼痛に完全に起因している証拠はない。(異なる慢性疼痛状態(例:肩の筋肉痛と膝の変形性関節症)に起因する多巣性疼痛状態の場合、各 慢性疼痛状態や疼痛部位は別々に評価されなければならない。)
 
2. 痛みのある部位に疼痛過敏の既往がある。
以下のいずれか1つ。触覚敏感、 圧覚敏感、 運動敏感、 熱、冷敏感
 
3. 併存疾患がある。
以下のいずれか1つ。音、光、においに対する感受性の亢進、 夜間頻回の覚醒を伴う睡眠障害、 疲労、 集中力の欠如、記憶障害などの認知的問題.
 
4. 誘発性疼痛過敏現象は、痛みのある部位で臨床的に誘発されることがある。
以下のいずれかである。静的機械的アロディニア、 動的機械的アロディニア、 熱または冷感アロディニア、 上記のいずれかの評価後に残遺症状が残ること。
 
痛覚変調性疼痛の疑いがある:1および4。
痛覚変調性疼痛の可能性が高い:上記(1、2、3、4)のすべて。
(変形性関節症などの侵害受容性疼痛や末梢神経病変などの神経障害性疼痛の存在 は、痛覚変調性疼痛の併発を排除しないが、疼痛部位は、同定可能な病態で説明可能な範囲より広範でなければならない。)
 
2023年02月04日 13:11

痛覚変調性疼痛の診断基準

痛覚変調性疼痛診断樹
筋骨格系の痛覚変調性疼痛の診断方法について
痛覚変調性疼痛について、具体的にどのような症例が該当するのか常に頭にあります。
軽度の痛みが不安感を高めて、いろいろな病気を考えてしまい解釈モデルが膨らんでいく、病院で診てもらえば解決するだろうと思い受診するが、全く解決につながらない、それを繰り返す事により、一層不安感をつのらせて、痛みの自覚症状も高まっていく、このような症例をしばしば診ていて、これも痛覚変調性疼痛の1つだろうと思っていました。
今回提示した参考文献を改めて読み直したら、痛覚以外の症状(睡眠障害、疲労、認知症状、光・音・においに対する過敏性など)が診断基準に含まれていました。
下記の論文の診断基準です
Chronic nociplastic pain affecting the musculoskeletal system: clinical criteria and grading system
Eva Koseka,b,*  PAIN 162,11 (2021) 2629–2634

筋骨格系の痛覚変調性疼痛の臨床的基準とグレーディング。
1. 痛みは
1a. 慢性的(3ヶ月以上)、
1b. 局所的(不連続的ではなく)な分布( 筋骨格系の痛みは、皮膚ではなく深部性であり、(個別性ではなく)局所性、多巣性、あるいは 広範囲に分布している。)
1c. 侵害受容性疼痛が(a)存在しない、または(b)存在するとしても、その疼痛に完全に起因している証拠がない。
1d. 神経障害性疼痛(a)が存在しない、または(b)が存在する場合、その疼痛に完全に起因している証拠はない。(異なる慢性疼痛状態(例:肩の筋肉痛と膝の変形性関節症)に起因する多巣性疼痛状態の場合、各 慢性疼痛状態や疼痛部位は別々に評価されなければならない。)
 
2. 痛みのある部位に疼痛過敏の既往がある。
以下のいずれか1つ。触覚敏感、 圧覚敏感、 運動敏感、 熱、冷敏感
 
3. 併存疾患がある。
以下のいずれか1つ。音、光、においに対する感受性の亢進、 夜間頻回の覚醒を伴う睡眠障害、 疲労、 集中力の欠如、記憶障害などの認知的問題.
 
4. 痛みのある部位に誘発性疼痛過敏現象が臨床的に誘発され残感覚が残る。
以下のいずれかがある事。 静的機械的アロディニア、 動的機械的アロディニア、 熱または冷感アロディニア、 上記のいずれかの評価後に残感覚が残ること。
 
痛覚変調性疼痛の疑いがある:1および4。  診断樹では4誘発性疼痛過敏現象誘発が1の診査の次に位置付けられて、1と4が該当する場合には、痛覚変調性疼痛の疑いがあると評価される。
痛覚変調性疼痛の可能性が高い:上記(1、2、3、4)のすべて。
(変形性関節症などの侵害受容性疼痛や末梢神経病変などの神経障害性疼痛の存在 は、痛覚変調性疼痛の併発を排除しないが、疼痛部位は、同定可能な病態で説明可能な範囲より広範でなければならない。)

この診断システムの目的は、患者が痛覚変調性疼痛であることの確実性のレベルを示すことである。現状では痛覚変調性疼痛の疑いあり、可能性高いまでです。
今後、診断検査が開発され、その有効性が確認されれば、「確定的な痛覚変調性疼痛」という用語の導入も検討されるでしょう。
 
2023年02月04日 11:44

顔のピクピク二はいろいろな病気がある

最近の口腔顔面痛MLで、三叉神経痛の微小血管減圧術(MVD)の話しから、顔面けいれんのMVDに展開、顔面けいれんのボトックス注射に話しが進みました。顔面けいれんが顔面神経の運動枝が血管により圧迫された場合に、三叉神経の感覚枝が血管圧迫で異所性発火して痛みが出るのと同じ機序で不随意な筋収縮としてけいれんが生ずるのだと思います。神経血管圧迫症候群の一つということで、MVDが有効なのだと思います。正式には片側顔面けいれんです。
延髄から神経が出てくる位置をイラスト等で見ると独立している三叉神経のかなり下で、顔面神経本枝、中間神経、聴神経と並んでいますから、MVDオペの際に聴神経に圧がかかったりするのかと思われます。
顔面けいれんのMVDの次の選択肢としてボトックス注射があります。こちらはけいれんする筋を収縮しなくするという対症療法です。

片側顔面けいれんの原因は三叉神経痛と同様に血管圧迫ですが、精神的緊張で誘発されるという、三叉神経痛ではみられない誘因が出てきます。 ある先生から、顔面けいれんの患者さんに精神的問題という話しがありましたように、少し紛らわしいことがある様です。

「顔のぴくぴく」には、片側顔面けいれんの他にいくつか病気があり、眼瞼けいれん、眼瞼ミオキミア、チックなどがあります。
「ときどき片方のまぶたがぴくぴくする」は眼瞼けいれんではなく眼瞼ミオキミアです。眼瞼ミオキミアは眼輪筋という筋肉の攣縮が不随意に起こる状態で、通常片眼性であり、肉体的精神的ストレスが原因になると言われています。有効な治療法はなく、上記ストレスを緩和する(ゆっくり休む)ことで改善する場合が多いです。

眼瞼けいれんとは、両眼性の疾患で、一番の特徴はまぶたが開けにくくなること(開瞼失行)です。まぶたが開けにくいため、見づらさ、まぶしさや眼の違和感などが生じたりします。また、周りから「目つきが悪い」「いつも眉間にしわをよせている」などといわれることもあります。原因は正確にはわかっていませんが、中枢神経の神経伝達異常と考えられていて、ある種のジストニアであるという記述もあります。
私がこれまで診たことのある、口顎ジストニアの患者さんは全員は心因性でした。お嫁さんが嫌いでお嫁さんの作ったご飯を食べようとすると口が閉じてしまう、咬合治療に満足できず、散々苦情を言ったが聞いてもらえず、そのうちに斜頚と閉口してしまうようになった、ご主人と2人暮らし、食事になると歯がくっついてしまい、ご飯が食べられない、でもDaycareでは完食、と言った具合です。

チックとはチック症(チック障害)のことで、運動性チック症、音声チック症があり、本人の意思とは関係なく体の一部の速い動き(まばたき・顔をしかめる・首を急激に振る)や発声(咳払い、鼻を鳴らす、舌を鳴らす、「シュー、ンー」といった音を出す)を繰り返すといった状態が一定期間続きます。子供の10~20%に何らかのチック症がみられるとされており、一時的に出現して2~3カ月で消えていく場合と、軽くなったり重くなったりして何年か続く場合があります。
 
2023年02月03日 21:37

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