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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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中枢性関与が強い筋・筋膜疼痛の治療 トリプタノール

中枢性関与が強くなっている筋・筋膜疼痛の治療
筋・筋膜疼痛の治療において、トリガーポイントインジェクションよりもトリガーポイントプレッシャーリリースが重要である事を書きました。
本稿では、私が行っている標準的な筋・筋膜疼痛法を示し、それに反応しない場合に何を考えるかを解説します。考えられることは、1)セルフケアが不十分、2)トリガーポイントプレッシャーリリースを加えれば改善する、3)末梢性から中枢性の状況になっている、の3つの状況です。
他の原稿と重複しますがまず基本的な事を書きます
初診時セルフケア指導:負荷軽減法:日常生活で肩が持ち上がっていないか、かみしめていないか、防止策として、気がついたら肩を上げ下げ、 舌で口蓋を舐める、 患側で咀嚼しない 
セルフケアとしての積極的治療:左右頚部四カ所(後頸部筋群と胸鎖乳突筋)、 開口ストレッチアシストブロックを用いた開口ストレッチ、各々30秒/回、3回朝昼晩/日、これを毎日実施する。
上記のセルフケア指導だけで2-3週で初期の痛みがかなり改善します。改善した場合には更なるオフイス治療は加えずに、セルフケアの補強のみを続けて行くことが多いです。
セルフケアが不十分の場合にはセルフケアの重要性と有効性を説明して、やってもらうように指導します。また、セルフケアを熱心続けているがなかなか痛みが改善しない場合で、末梢のトリガーポイントの原因が大きいと判断された場合にはまず、超音波を併用したトリガーポイントプレッシャーリリースを行います。これは他稿で詳しく書きました。
一方、患部の筋全体、あるいは筋の範囲を超えて圧痛閾値が下がって、過敏になっている場合には末梢性に中枢性が加わっていると考えて、セルフケアのストレッチの程度を下げて、中枢に対する治療をします。
ここで疑問は「患部の筋全体、あるいは筋の範囲を超えて圧痛閾値が下がって、過敏になっている」、このような状況は痛みの発生メカニズムではどの分類になるのか、1)侵害受容性疼痛、2)神経障害性疼痛、3)痛覚変調性疼痛のどれに該当するのか。限りなく、3)痛覚変調性疼痛に近いと思っていて、痛覚変調性疼痛の診断基準に照らし合わせると三ヶ月以上を満たしていれば、痛覚過敏症状を満たしているのでpossible of nociplastic pain(痛覚変調性疼痛の可能性あり)と診断されます。
この場合の私の治療法はアミトリプチリン(トリプタノール)の投与です。トリプタノールの投与はまず各患者の至適用量を探すことから始めます、最少用量から始めて少量ずつ漸増し、眠気、口渇、便秘などの即時発現する作用を目当てに至適用量を決めます。至適用量が決まったら、その用量で1-2ヶ月投与を継続します。頻脈や心電図でQT短縮などの以上が生ずる事があるので開始前、30mg、50mg、あるいは至適用量投与の段階で心電図を採ることが必須です。
至適用量で2-4週間経過したところで、緩除に効果が発現してきます。痛みを止めるためですが、NSAIDs、アセトアミノフェン、テグレトールのような即時効果は期待出来ません。
 
2023年05月29日 19:08

超音波併用のトリガーポイントプレッシャーリリース

超音波併用のトリガーポイントプレッシャーリリース
筋・筋膜疼痛の治療というと皆さんトリガーポイント注射が最も強力な治療法と思っているようですが、全体的に緊張のとれていない筋のトリガーポイントに注射しても期待するほどの効果が得られません。
私が行っている標準的な筋・筋膜疼痛法を示します。
初診時セルフケア指導:負荷軽減法:日常生活で肩が持ち上がっていないか、かみしめていないか、防止策として、気がついたら肩を上げ下げ、 舌で口蓋を舐める、 患側で咀嚼しない 
セルフケアとしての積極的治療:左右頚部四カ所(後頸部筋群と胸鎖乳突筋)、 開口ストレッチアシストブロックを用いた開口ストレッチ、各々30秒/回、3回朝昼晩/日、これを毎日実施する。
上記のセルフケア指導だけで2-3週で初期の痛みがかなり改善します。改善した場合には更なるオフイス治療は加えずに、セルフケアの補強のみを続けて行くことがあります。
一方、セルフケアを熱心続けているがなかなか痛みが改善しない場合もあります。このような場合でまだ末梢のトリガーポイントの原因が大きいと判断された場合にはまず、超音波を併用したトリガーポイントプレッシャーリリースを行います。
  1. 超音波照射により筋肉の深部温度が3-4度上がります。これによりトリガーポイントを構成しているコラーゲンが軟化します、と言ってもまだまだ固まり硬結、索状硬結の状態です。
  2. 深部温度が上がった状況で硬結部を1kg程度の圧でゆっくり起始部から停止部に向かい、停止部から起始部に向かって一方向に筋を延ばすように指を2-3cm程度、滑らしてリリースします(マッサージの様にコリコリではありません)。ゆっくり滑らすことがポイントです、硬結(英語ではbarrier垣根、進行を妨げる障害物)を指先に感じながらゆっくり移動させる、途中でコリンと指の下をくぐり抜けて行くと言った感じです。これだけで硬結全体に柔らかくなりがなくなることもあります。
  3. 前記のリリースを行ってもまだ硬結が残っている場合、もっとトリガーポイントに圧力をかけます。これがトリガーポイントプレッシャーリリースです。指先を移動させて硬結を感じたら、指の下をくぐり抜け行かないように次第に圧力を高め、指先の移動を止めて10-60秒間、2-3kg加圧します。この操作を数回繰り返します、深部温度が下がってきたら最後超音波照射を行った後にトリガーポイントプレッシャーリリースを繰り返します。
 
筋触診、トリガーポイントプレッシャーリリースにはある程度の指、腕の力が必要です。筋触診は1kg程度で行う様に規定されていますが、余裕を持って加圧するには1kg以上に加圧できる必要があります。また、トリガーポイントを加圧して関連痛を誘発するには1kg以上が必要です。今回述べているトリガーポイントプレッシャーリリースには1kg以上の加圧力が必要です。要は筋触診、筋膜リリースにはある程度の腕力が必要だということです。
 
2023年05月29日 14:33

口腔顔面痛の診断には筋触診が大事です-2

咬筋トリガーポイント
口腔顔面痛の診断には筋触診が大事です-2
 
先日来院した患者さんを紹介します。
ある日突然、食事中に下顎右側大臼歯部にビキッと瞬間的に激痛が生ずる様になった。主治医A医院を受診し、検査を受けたがう蝕、歯の破折、歯周病など痛みの原因になるものは見つからなかった。かみ合わせがきついからだろうということで咬合調整がされたが改善しなかった。その後、右側で硬いものをかみ締めた時に痛みが出ることが判り、B医院に転院しCTを撮り、いろいろ調べたが異常は見つからず、歯ぎしりが強いということでマウスピースを使う事になった。C医院を受診したところ咬筋へのボトックス注射が行われ、咬む力が弱くなった感じがあったが痛みに変化はなかった。D大学病院を受診し、この歯が原因だろうということで下顎右側6の抜髄・根充が行われ、現在暫間的にレジンで埋めてある。食事の際に、軟らかいアサリを強く咬んだ時に砂が混じっていて、激痛が生じた。痛みは三日間続き、その間、冷過敏も感じられた。
最初に痛みが出てから3年経過、いろいろな治療を受けたが症状は全く変わっていない。

解釈モデル(患者さんが自分の痛みをどう思っているか)と認知行動療法的評価
  1. 歯ぎしり、くいしばりが原因なのか(認知)
  2. 無駄に神経抜かれて悲しい(感情)
  3. こんなに痛いのに、なぜ誰も治せないのか(感情)
  4. 何カ所も行ったのにそれぞれ言うことが違う(行動、感情)
  5. 来年には米国転勤が予定されている、その前に治したい(感情)
 
診査結果
  1. 右側上下顎、打診痛なし
  2. 下顎右側大臼歯は無髄歯
  3. 歯周疾患なし   この段階で歯原性は否定的
  4. 感覚検査 下顎右側歯肉にParesthesia 他領域は異常なし
  5. トリガーゾーンなし、三叉神経痛否定的
  6. 顎関節診査: 左右の顎関節に無痛性クリック、下顎頭牽引圧迫誘発テスト:痛みなし 顎関節痛は否定的
  7. 筋触診:左右咬筋肥大、右側咬筋の中央部は萎縮傾向であるが下部(停止部)に索状硬結多数あって、強い圧痛、かみしめ時にその部分が盛り上がる。歯への関連痛はなし。
 
診断:右側咬筋局所筋痛
治療:セルフケア指導、前歯型スプリント、右側咬筋索状硬結部に超音波照射、トリガーポイントプレッシャーリリースによって、かみしめ時の痛み消失。
本症例はかみしめ時の激痛という歯冠破折やう蝕などの歯原性が疑われるが、A、B、C医院では歯原性を否定して不可逆的処置はしていなかった。それに反して、D大学では不可逆的な抜髄処置をしている、当然のこととして効果は無かった。かみしめたら歯に激痛が出るならば破折かう蝕だろうという代表的バイアスによる診断エラーということである。
C医院では患側咬筋のボトックスの注射をしているが効果は得られなかった、なぜか。ボトックス注射の一義的な目的は筋収縮を阻害して筋萎縮させて筋肥大を改善することである。そのため標準的な咬筋への注射部位は硬結部を狙うのではなく、筋の中央部である。筋萎縮の結果、二次的に筋痛が改善する可能性はあるが、ボトックス注射により必ずしも筋痛が改善する訳ではない。筋・筋膜疼痛へのトリガーポイントインジェクションでは注射液の種類にかかわらず、生食水でも確実にトリガーポイントを狙って注射をすることにより効果が得られる。ボトックス注射により咬筋は全体的に萎縮しているが、下部(起始部)にはしっかり硬結が残って、収縮時に強い痛みが続いているという訳です。
本症例での一番の問題点は、これまで診察した全ての歯科医師が筋触診をしっかりやっていなかったことです。
筋触診がしっかり出来ないと口腔顔面痛診断に大きな穴が開いて仕舞います。
 
2023年05月13日 18:00

ハワイからなぜ口腔顔面痛の患者さんが私のところに来たのか

筋痛治療
ハワイからなぜ口腔顔面痛の患者さんが私のところに来たのか
 
先日ハワイから口腔顔面痛患者さんが受診したことを書きました。私にとっての疑問はなぜこの患者さんが私を指名して受診したのかでした。
患者さんは几帳面な方で、予診票にここ数年の間に受診した医療機関の名前を正確記載してありました。そして、最近に一般歯科から紹介されて受診したENDO専門医のところで、歯原性では無いからENDO治療は適応で無いこと、非歯原性歯痛、口腔顔面痛の診療には米国本土か日本に行くことを勧められた。また、非歯原性歯痛に関するパンフレットを渡されて、それに元赤坂デンタルクリニックが書かれていたと言うことであった。
ENDO専門医の名前はNozomu Yamauchi先生でした、インターネントで検索したところ、University of North Carolina at Chapel Hill 2007卒業、2010年ENDOレジデント終了であることが判りました。University of North Carolina at Chapel HillはTMD、口腔顔面痛の世界では知らない人のいない故William Maixnerが在籍した大学です。さらに私にとってはもう一つのことで非常になじみ深い大学でした。神奈川歯科大学の同級生で沖縄宮古島出身の友利優一君の幼ななじみで大学時代にアパートで会った事のある医科歯科大学出身の山内三男先生が教授として在籍している大学です。そして、大学時代にクラブの先輩であった故木下静子さんが山内先生と結婚されて、同大学のENDO教室に在籍されていました。Orofacial PainクリニックがENDO教室に属していたので、メールをやりとりして様子をうかがったこともありました。
Nozomu Yamauchi先生がUniversity of North Carolina at Chapel Hill 出身だということが判って、絶対、山内三男先生と木下さんの子供さんだろうと思いました。次に、なぜ私のことを知ったのかの疑問は残りました。
この話をまず、鹿児島にいる友利君に話したところ、山内先生の子供さんがハワイで開業している事を知っていました。さらに、この話を口腔顔面痛オンラインセミナーで紹介したところ、参加していた宮本諭先生(現:慶應義塾大学医学部 共同利用研究室・細胞組織学研究室在籍)が骨代謝の研究でUniversity of North Carolina at Chapel Hillに留学していて、家族ぐるみの付き合いがあり、次男のNozomu君がハワイで開業していることを知っていました。
そこで、患者さんの診察結果報告を兼ねてNozomu Yamauchi先生にメールを送りました。 A small world for sure.という返事があり、私がご両親と交流があった事を知ってびっくりしていました。数年前にハワイから来た患者さんがいて、筋筋膜性歯痛だったので非歯原性歯痛、筋筋膜性歯痛の解説パンフレットを渡しました。偶然にもその患者さんもNozomu Yamauchi先生を受診していたようで、それ以来、日本人の非歯原性歯痛の患者さんが受診した際にはそのパンフレットを活用して説明しているとのことでした。
私の作った非歯原性歯痛のパンフレットがハワイで活用されていることを知って、非常にうれしかったです、さらに、その先生が知り合いの息子さんだったという偶然にもびっくりでした。
 
2023年05月05日 15:12

口腔顔面痛の診断には筋触診が大事です

口腔顔面痛の診断には筋触診が大事です

口腔顔面痛の最も多い原因は咀嚼筋と頸部の筋痛です。咀嚼筋は本来の咀嚼時に加えて、日中のかみしめに睡眠中のくいしばりなどで筋に硬結が生じて、咀嚼時痛が生じたり、自発痛が生じたりする事もあります。

頸部の筋は日中の身体活動中、頭を支えるためにほぼ常に緊張しています。さらに、長時間、前屈みになったり、横を向いた姿勢をとったりするとそれぞれの機能筋に余計な緊張が強いることになります。さらに、咀嚼筋と協働運動して咀嚼、かみしめ、くいしばり時に緊張するので過剰な負荷となり、咀嚼筋の痛みとともに、肩こり、クビのコリが一緒に生ずることが多いです。

ただの筋痛(局所筋痛)が筋・筋膜疼痛になると関連痛としてその筋が痛いのではなく歯痛や顔面痛が生ずることがあります。また、頸部の筋の筋・筋膜疼痛は緊張型頭痛や顔面痛の原因になります。慢性化すればするほど、筋そのものの病態から中枢性の要因に移行してしまい、治療も難しくなります。

筋触診について

筋痛診査のカギは筋触診です。筋触診で筋の肥大、硬結、圧痛の有無を診査します、ここで見逃されると筋痛が鑑別診断から抜け落ちてしまい、原因不明の痛みになってしまいます。当院に来院される患者さんのなかにはいくつかの施設で治療を受けているが一向に改善しないと言う方が多いです、そして、その方々の多くは筋触診が適切で無いために筋痛が見逃されています。単純には筋触診の圧力が弱い、硬結が探せていない等の理由です。長年、筋触診の指導をしてきましたが、手に手を添えて患者さんの筋を触診する、まさにHANDsOnが一番です。ビデオ等で供覧しても圧力は伝わらないために、正確には伝わりません。

多くの方々は肩こり、クビの筋痛を持っていて、筋・筋膜疼痛になっている人も少なくありません。自分で頸部の筋を入念に1kg程度の圧力で触診するとウッとする様な痛い部分が触れます。もう一度、その部分を1-2本の指先で弱い力で触ってみましょう、ポイント状に痛い部分があります、その部分に指先を置いて、ゆっくり小さい円を描くように力を強めてみましょう。痛みがボワーンと拡がり、離れた部分に鈍い痛みが感じられます。これが関連痛です。是非自己触診をしてみてください。これで何時もの痛みが誘発再現されたら、その痛みは圧している部分(トリガーポイント)の筋・筋膜疼痛によるものということになります。

2023年04月29日 17:05

毎晩、ひとり反省会  私と患者さんの合い言葉

毎晩、ひとり反省会 
筋痛はストレス、不安、怒りなどの心理精神的要因が関わっていることが多いと言われています。確かに私の患者さんのほとんどがそのように思えます。ところが、元気はつらつ、ニコニコいい顔、何でも笑い飛ばしている、このような人達が筋痛がひどい、起床時にかみ締めている感じがする、といった事を訴えます。そこで、睡眠障害について、寝付きはどうか、熟睡出来るか、途中覚醒は何回、早朝覚醒はないかなどと聞いていくと、どれも該当することが多いです。こんなに元気そうなのに何でと思うのですが、実はこの人達は日常生活のいろいろな出来事での心のもやもや、ぐるぐると再生される後悔、ふとした瞬間にふくらむ焦りや不安、やり場のないイライラなど、我慢や不満、焦りや不安が複雑に絡み合って「しんどい」ができあがってしまっているそうです。『あなたの「しんどい」をほぐす本』(KADOKAWA)私が日頃思っていたことがこの本にそのまま書かれていたので紹介しました。そして、この人達がしている事が、ひとり反省会です。初診の患者さんでこの人はと思う人に、余計な説明なしに、寝る前にひとり反省会していませんかと聞くと、素直に毎晩しています、と答えてくれます。このような患者さんにはすっと理解出来る言葉のようで、私と患者さんとの言葉かと思っていたら、この本にも出ていました。ひとり反省会で悩むのは、あなたは「こんなに落ち込むほど一生懸命頑張ったのです。そんな自分の良さを認めて、褒めてあげてください。」と書かれています。
先日、ラジオで腰痛が心因性であるという話しがあり、昔買って読んだ本を思い出してwajima図書室を探してもらいました。サーノ博士のヒーリング・バックペイン: 腰痛・肩こりの原因と治療– 1999と『腰痛は<怒り>である』2000を見つけて、もう一度読み直しています。20年以上を経て、心因性疼痛から痛覚変調性疼痛に代わるなど、最近の中枢神経系の関与等が判って来たことで、これらの本に書かれていたことが当たり前のことになっています。患者さん、病気をしっかり診ている人たちは詳しいメカニズムは別にして、なぜこの患者さんにこの症状が現れるのか大方予想が出来るのだと言う事を再確認しました。


追記 HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン/Highly Sensitive Person)と言う言葉もあります。この人達も一人反省会の会員です。
HSPは、米国の心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が提唱した心理学的概念で、神経が細やかで感受性が強い性質を生まれ持った人のことです。全人口の15~20%、約5人に1人はHSPと考えられています。

HSPには、特徴的な4つの性質「DOES(ダズ)」があります。

「いろいろなことが気になって落ち着かない」「ちょっとしたことで落ち込みやすい」と感じることはありませんか。それは、あなたが「HSP」だからかもしれません。HSPとは、視覚や聴覚などの感覚が敏感で、刺激を受けやすいという特性を生まれつき持っている人のこと。   他の人が気づかないような音や光、匂いなど、些細な刺激にすぐ気づく

HSPの人は、感覚的な刺激に対して無意識的・反射的に対応する脳の部位、「扁桃体」の機能が過剰に働きがちで、HSPではない人と比べて刺激に強く反応し、不安や恐怖を感じやすいことが分かっています。相手の気持ちを察知して行動したり、物事を深く探究できる半面、ささいなことで動揺したり、ストレスをためてしまうこともあります。


参照 https://kenko.sawai.co.jp/mental-care/202103.html#:~:text=HSP%EF%BC%88%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%B3,%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%82
 
2023年03月25日 12:31

ハワイから非歯原性歯痛の患者さん来院

先日、ハワイ在住の日本人の方が10年来の非歯原性歯痛で来院されました。
経過を聞くと歯痛で抜髄が始まりで、かなりの歯科を受診して根管治療を数回受けたそうです。最後に日本人のENDO専門医に紹介され、歯原性では無いとの診断、ハワイには口腔顔面痛専門医はいないので米国本土か日本に行ったらどうかとアドバイスされたそうです。今回帰省する機会があり、ENDO専門医に相談したところ、私を薦められ受診したという次第でした。
これまでも、ハワイ在住の数人の日本人から非歯原性歯痛についてメールでの相談があり、ハワイの歯科事情、口腔顔面痛事情を知っていました。米国も日本も、世界の多くの国々で、簡単に口腔顔面痛の診断治療が受けられない状況にあります。せめて、歯原性か歯原性でないかの判断、そして、非歯原性歯痛だとして、筋触診で筋筋膜疼痛の可能性はないか、ここまで診査ができれば多くの患者さんが救われます。
今回ハワイから来院した患者さんは、側頭筋、咬筋、胸鎖乳突筋、後頸部の筋から歯への関連痛がありましたから筋筋膜疼痛だと思います、10年以上経過しているために、歯痛部の歯肉にはAllodyniaも認められ、感作が生じていると思われます。
筋骨格系の痛覚変調性疼痛診断に照らすと、かなりの部分で該当する項目があり、筋筋膜疼痛に痛覚変調性疼痛が合併していると診断できます。
この患者さんはハワイに一台しかない経頭蓋磁気治療を受けていて、歯痛は治らなかったがうつが軽くなったそうです、また、処方されている薬が米国らしかったです、モルフィン、トピラマート(強い片頭痛発作があった)、プロザック(SSRI、抗不安薬として)、頓服にオキシコドンが処方されていました。
私のアドバイスはまずは筋痛へのセルフケアです、腹式呼吸しながらの頸部、咀嚼筋のストレッチ、開口ストレッチアシストブロックも渡しました。全身の随意的最大緊張からの弛緩 など
薬としては痛覚変調性疼痛への対処としてトリプタノールを勧め、漸増服用法のパンフレットを渡して、ハワイのPainmanagementに相談する様に伝えました。

最後の観てもらった日本人ENDO専門医がなぜ私を推薦したのか不思議でした、日本の大学卒業して米国で専門医資格を取ったならば、私を知っている可能性はあるかと思いながら、フルネームが書かれていたので調べたらUniversity of North Carolina at Chapel Hill 卒業でそこでENDOレジデント研修
ここまで観たときに、私の鹿児島の同級生の高校の同級生が同姓で、学生時代に会った事があり、卒業後米国に渡り、University of North Carolina at Chapel Hillの生化学の教授をしていること、その教授の奥さんが私の大学の先輩で、ENDOの教室にいて、かなり昔にメールで近況を連絡したこと等を思い出しました。鹿児島の同級生に連絡して確認したところ息子さんがハワイで開業しているということで、どうも深い繋がりがあったようです。
その息子さんが私をどうやって知ったのかはまだ不明  連絡して診察結果を送ろうと思っています。

 
2023年03月19日 10:52

トリガーポイントに重点を置いた筋痛治療

筋膜にあるトリガーポイントに重点を置いた筋痛の治療
 
本稿では、筋痛治療の対象は赤い筋線維ではなく、白い筋膜である事、筋膜は筋の周り、筋の内部にある筋膜、そして、靱帯、腱は筋膜に連続するものであり筋膜に類似した特徴をもっていて痛みを発しているという理解を元に筋膜治療の基本的な話しを書きます。
筋・筋膜疼痛の治療解説で口腔顔面痛学習者の皆さんが最も関心を示してくれるのがトリガーポイントインジェクション(TrPI)です。米国口腔顔面痛学会では、トラベルとシモンズのトリガーポイントマニュアルが教科書として推奨していたことからトリガーポイントインジェクションが最も有効な治療法のように思われているがこれは少し誤解がある。トリガーポイントマニュアルには、トリガーポイントインジェクションと共にTrP pressure release(TrPPr)についても詳記されている。TrP pressure release とはbarrier release concept (Lewit, 1999)の考え方にもとづいて、トリガーポイント(Barrier)を圧迫して押しつぶす様な手技である。この点において、後述する筋膜リリース、筋膜マニュプレーションと共通点が見えてくる。
 
筋膜とは
筋膜の役割は、筋組織と筋組織の間にあって、筋組織の滑走する際の緩衝剤の役割を果たし、その緩衝作用の元はヒアルロン酸である。筋膜の詳しい解剖等は省略するが、筋内部の筋膜、筋周囲の筋膜から筋組織へ入り込んでいて、筋収縮が筋膜へと伝達される。さらに、筋外膜の延長が腱、靱帯とつながって関節を動かす事になる。
 
何故、筋膜に痛みが生ずるか
筋膜は様々な要因により変性する、外傷、反復運動、持続的筋収縮等の過剰負荷、長時間の不良姿勢、などで筋膜内部のコラーゲン繊維の配列が変化して密度が高くなる。これにより線維束内部で脱水が生じて、基質がゲル化し、内部のヒアルロン酸の凝集が生じて滑りも悪くなる。この過程で筋膜に分布する自由神経終末が刺激されて痛みが生ずる様であるが、筋膜の緊張と痛みの関連性は明確でない。

筋膜の機能異常を改善する方法
このような筋膜の機能異常を改善する方法として、局所温度を上げて、ゲル化された基質を流動化させて正常なゾル状態に戻し、コラーゲン繊維間の癒着を除去する事である。そのための直接的治療法として筋膜リリース、筋膜マニュプレーション、TrP pressure release等が行われる。

筋膜リリース、筋膜マニュプレーション、TrP pressure releaseの整理
筋膜リリースはJohn Barnesを中心に発展してきた手技で、全身の筋膜組織を対象に筋膜のねじれを解きほぐすことを目的に、穏やかで持続的な伸張手技である。筋膜がコラーゲン繊維が固まった部分に軽く圧(5-20g)を加え、そのまま穏やかに伸ばし、固まりに当たったところで1-2分間そのまま伸ばし続ける。これによりコラーゲン繊維の固まりがリリースされ軟らかくなり、血管拡張が生じて血流量が増える、リンパドレナージが改善され、筋の固有感覚機構がリセットされる。筋膜制限が解除され、極端に言うならば組織が伸びる事になる。
一方、筋膜マニュプレーションは、イタリアの理学療法士Luigi Steccoが発展させた方法で、筋膜の固まった部分、局所へ適応される点で筋膜リリースと異なる。触診により筋膜の高密度化して固まった部分を探しだし、その部分に圧を加え、局所温度が上がるように充分な時間、摩擦する。この加温は基質がゲルからゾルへと変化しての筋膜基質の粘稠性を修正し、治癒に向かうのに必要な炎症過程が始まる。この過程で筋膜に分布している自由神経終末への刺激がなくなり痛みが和らぐ。
TrP pressure releaseは筋膜マニュプレーションと類似した目的と手技である。
 
和嶋の筋・筋膜疼痛に対する理学療法
和嶋が日常臨床で行っている手法の特徴は超音波照射を行う点である。
咬筋、側頭筋、胸鎖乳突筋、後頸部筋の筋触診を行い、索状硬結、トリガーポイントを探す。
  • 開口ストレッチアシストブロックを用いて開口状態を維持して、起始から停止まで全体に超音波照射を行う。
  • 筋の深部温度が高まったことを確認後、硬結、トリガーポイントを中心に筋膜リリースを行う。これにより筋組織が全体的に軟らかくなり、肥厚部がなくなる。これはリンパドレナージによるものと思われる。この時点で硬結部の圧痛が消えることが多い。
  • 筋膜リリースによっても硬結、トリガーポイントが解れていないで圧痛が残っている場合には、再度、超音波照射した後に筋膜マニュプレーションを行う。硬結部を中心に1-2分程度、持続的に圧迫する。これにより、硬結の完全消失は無い場合もあるが、多くの例で圧痛が消失する。
  • 圧痛が消失しない場合には、超音波照射と筋膜マニュプレーションを1-2回繰り返す。
    和嶋の筋・筋膜疼痛治療におけるキーは超音波を用いたTrP pressure releaseである。
 
トリガーポイントインジェクションは有効か、超音波を利用したハイドロリリースは
現在、私の臨床では超音波照射と筋膜リリース、筋膜マニュプレーションを組み合わせた方法により筋・筋膜疼痛がコントロール出来るようになっている、そのため、トリガーポイントインジェクションを行う回数が激減している。また、超音波にて筋膜の癒着部を確認して、その間に生食水、局所麻酔液を注入して癒着を剥離するという手法、ハイドロリリースが流行っているが、筋膜リリース、筋膜マニュプレーション、TrP pressure releaseの考えとは共通点は少なく、トリガーポイントインジェクションの経験からはハイドロリリースによって筋膜リリース、筋膜マニュプレーション、TrP pressure releaseと同等の効果が得られるとは思えない。
 
2023年01月08日 12:20

筋痛治療 その前に筋膜について

咬筋説明
筋痛治療を詳しく調べると、痛み治療の対象は赤い筋線維ではなく、白い筋膜である事が判ります。筋の周り、筋の内部にある筋膜、そして、靱帯、腱は筋膜に連続するものであり。筋膜に類似した特徴をもっていて、痛みを発しています。本稿では筋膜痛治療について概説します。
私の筋・筋膜疼痛の治療は超音波照射併用の筋膜リリースと筋膜マニュプレーションをメインとして、時々、筋膜マニュプレーションで解れない場合にトリガーポイントインジェクションを行うことです。
咬筋の解剖
腱腱膜過形成症という病気があり、重症の開口障害の原因の一つである。何故、咬筋に腱腱膜過形成症が生ずるのか、それは咬筋の解剖学的特性にあります。日本のクリスマスの定番はクリスマスケーキとチキン、今年もケンタッキーフライドチキンが賑わっていました。海外では七面鳥が定番です、始まりは、アメリカへの移住者が収穫祭をした際に、食べ物の栽培法を教わった先住民のネイティブアメリカンを招いて一緒に祝った、感謝祭です。アメリカでは今でもお祝いの際にはターキーが定番です。
ここまで書くとチキン、ターキーのもも肉が思い浮かんだと思います。あなたの頬に付いている咬筋も同じような構造と思うでしょうが、全く異なります。チキン、ターキーのもも肉が人間の咬筋と同じ構造をしていたら、今の様に感謝祭、クリスマスの定番にはならなかったでしょう。単純に言うと咬筋はスジだらけです。筋膜、腱、腱膜がいっぱいです。
この解剖学的特徴が筋痛、つまり筋膜痛を起こしやすい理由と思います。
腱腱膜過形成症に至るまえに、咬筋に過剰な負荷が掛かるといっぱいある筋膜、腱、腱膜の機能異常が生じて痛みを発したり、伸展障害により開口制限が生じます。
と言うことで、年始のブログ第一弾は筋膜について簡単な解説をしました。
 
2023年01月02日 18:44

筋痛治療の基本

筋痛治療
筋痛治療の基本
筋痛治療は原因療法と対症療法からなります。
咀嚼筋痛発生の原因は夜間、日中のくいしばり、かみ締めが大きな要因で、左右の症状側を決めるのは偏咀嚼です、時々、バランシングコンタクトという咬合異常があることが症状側を決めることがあります。そして、発症のきっかけはストレスが加わる事による睡眠障害、くいしばり、日中考え事してのかみしめ、の流れだと思っています。
原因療法は夜間、日中のくいしばり、かみ締め、偏咀嚼による過剰負荷の予防、そして、ストレスの軽減です。発症後は増悪因子の除去になります。
具体的には睡眠障害への対応、これは難しい。日中の対応として、無意識にかみしめをしているものとして、そのかみしめを自覚的な、肩の上げ下げ、舌で口腔内舐めてみることの随意運動により中断させる作戦です。無意識にやっている行動をしないようにと言っても、止めることはできません。肩を持ち上げている、かみ締めているという無意識の過剰活動に対して意識した行動をすることにより、その不随意的活動を邪魔しようという事です。負荷の軽減のためには症状の無い側で軟らかいモノを咀嚼してもらいます。
ここまでが過剰活動の中止、過負荷の防止策です。
多くの過剰活動が発症前から日常的に行われていることが多く、発症の準備因子と理解出来ます。
準備因子による負荷の総和が筋肉の耐久閾値を超えると筋痛が発症すると考えられ、発症閾値を超える活動が発症因子と呼ばれます。この発症因子の多くが情動ストレスだと思っています。多くの人にとっては過ぎたことで、思い出したくないことが多いので、聞いてもはっきりしないことが多いです。発症因子は過ぎたことなので治療対象にはなりませんが、なぜ発症したかのストーリーの主役ではあります、なぜ発症したかが判ることにより、患者の治療への動機づけになります。
次は対症療法です。基本は治療対象は筋全体ではなく、過剰活動により収縮して固まったまま残された病気のシンデレラをどうやって助けるかです。収縮して固まってしまった運動単位、トリガーポイントの回復にはストレッチです。脚のこむら返りと同じです、むら返りして異常収縮している筋を伸ばすのです。それではストレッチは、どれくらいの強さで、どれくらいの持続期間、一日何回、毎日か隔日かの質問が出ます。
強さは痛みが出るほど強くストレッチすると揉み返しのような遅発筋痛が生じますから、余り強くなく、筋が引っ張られているが物足りなく感じる程度にしましょう。持続時間は30秒、回数は1日3回朝昼晩としましょう、忘れないために毎日やりましょう。
咀嚼筋の筋・筋膜疼痛でも、頸部の筋ストレッチを準備運動のように行いましょう。左右の前頸部の胸鎖乳突筋、後頸部の僧帽筋、頚・頭板状筋と半棘筋のストレッチを行った後に開口ストレッチです。自力最大開口量を頸部のストレッチを行うと後で比較すると、頸部筋ストレッチの後が2-5mm増加します。つまり、頸部筋ストレッチにより咀嚼筋の緊張改善が得られると言う事です。
開口ストレッチをどのように行うかのエビデンスはありません。30秒開口したままは結構辛いです。UCLA Merill教授には舌尖を切歯乳頭につけたまま最大開口して6秒維持を6回繰り返す方法を教わりました。6*6で36秒だから30秒に近似しています。以前は3横指開口ということで指三本入れて、指で顎を30秒間、支えるように指導していました。ところが30秒の間に前歯が指に食い込んで、痛くないように顎に力が入ってしまい、場合によっては開口筋に閉口筋も収縮して顎を保持しようとする共収縮が起こってしまうことが判りました。この共収縮の高まりが筋緊張の隠れた犯人でした。せっかくストレッチと思っても、逆に顎を緊張させてしまうのでは本末転倒、そこで考えたのが発泡スチロールで作った開口ストレッチアシストブロックです。和嶋オリジナルです。
https://wajima-ofp.com/blog_articles/1634341834.html
ここまでが筋痛治療の治療です。全ての筋痛患者さんに初診時に指導します。3-4週間後にはかなり筋痛が改善している事多いです。おそらく、慢性化していない場合には改善するのでしょう。
過労に倒れたシンデレラも入院するほどではなく、少し休養をとって、お風呂でゆっくりカラダを延ばすと回復してきます。ところが重症な場合にはこれだけでは治りません。王子様の登場が必要です。筋痛治療のプラスアルファは次項で書きます。
 
2022年09月19日 16:50

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