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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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筋・筋膜性歯痛治療の落とし穴

解釈モデルでは処方された薬を飲みさえすれば治るはず
筋・筋膜疼痛の治療法はセルフケアの重要性は周知されているが標準治療が確立されていないために、顎関節症専門医、口腔顔面痛専門医といえども様々です。そのなかで、薬に対する過剰な信頼度を感じた話がありました。
患者さんがアゴの痛みを訴えてある大学病院口腔顔面痛外来を受診し、筋・筋膜疼痛と診断されて、病態、セルフケアを含めた治療法などを説明され、最後に筋弛緩剤を処方されたそうです。
この患者さんから電話相談を受けました。平日の休診日はクリニックにいて原稿書きをしていますから、電話があれば極力出る事にしています。
患者さんが言うには、処方された薬を飲んで、もう2週間経過しているが症状が全然改善しないとのことでした。私の現在の筋・筋膜疼痛治療の中に筋弛緩剤処方は入っていません。20年以上前、顎関節症の痛みが一緒くたに治療されていた頃、筋痛と関節痛に分けて治療すべきという意見を言っていた頃に、関節痛にはNSAIDs、筋痛には筋弛緩剤かアセトアミノフェンと使い分けていたことがありました。しかし、筋弛緩剤の有効性に疑問を感じて、ストレッチなどのセルフケアを中心とした治療に変わり、ほぼ同時期に関節痛に対する治療も歯ぎしりなどの原因に対して側方ガイド付きスプリント療法を行い、筋痛、関節痛とも改善しない場合には中枢感作が生じていると考えてトリプタノールを処方すると言う現在の治療法に変わっていました。そのため、この患者さんから筋弛緩剤2週間服用したが痛みが変わらないと言う話を聞いて、いろいろな事を考えました。
まずは、患者さんの解釈モデルがどうなっているか、どう理解したか。
患者さんは薬を処方されると、薬は効くもの、薬が一番の治療法という一般的な患者の解釈モデルから、この薬を飲めば治るはず、他の治療法なんてやらなくてもいい、という解釈モデルが出来上がってしまいます。
このような解釈で治ってしまうのがプラセーボ効果です。
これはくすりを飲んだという安心感が、体の持つ自然治癒力を引き出しているとも言われています。プラセボ効果は人によって差が大きいので、思い込みだけでは治らない人もいるし、今回の患者さんは本物の薬を服用していて、更にいくらかのプラセーボ効果も加わったと思われるが、改善しなかったことから、やっぱり、筋・筋膜疼痛に筋弛緩剤は効果が無いだろうとなと再確認出来ました。
次に判った事は、この患者さん薬が有効だろうと思ったことから、薬に頼りっきりになり、他に指導されたセルフケアをすっかり忘れてしまたことです。セルフケアを少しでもやっていたら、何らかの反応は期待されるのですが、薬さえ飲んでいれば、治るのだから、他の治療は必要ないんじゃないか、ストレッチなどのセルフケは効く気もしないし、という解釈モデルになっていたようです。 
自力本願よりも、他力本願で直せるなら、その方が楽だということが解釈モデルに見えました。
 
2023年09月05日 15:24