朝日新聞の連載企画「患者を生きる」口腔顔面痛
9月にインドネシでアジアの学会があり、久し振りに参加しました。ついでにジャカルタにある国立インドネシア大学とトリサクティ大学でハンズオンセミナーをしました。一週間余りのインドネシア滞在最終日、風邪気味だったこととどうも水に当たったようで嘔吐、下痢、帰国してから数日食べられず体調回復にしばらくかかりました。セミナー準備に集中していたためにブログはしばらくお休みになっていました。
ここ一週間で二つの大きなことが、一つはセミナーを行ったトリサクティ大学の先生がさっそく私のクリニックに診療の見学に来てくれたこと、二つめは、朝日新聞の連載企画「患者を生きる」で、歯やあご、舌、顔などに慢性的な痛みが出る「口腔顔面痛を取り上げてもらいました。先週月曜日から5回にわたって、当クリニックに通院している患者さんの痛みと日常生活での様々な苦悩が書かれています。
筋・筋膜疼痛を主とする顎関節症の発症因子として全身の健康状態と心理的要因は非常に影響が大きいと言われています。さらに、心理的要因は発症後には継続、増悪化因子となって痛みを長引かせ、強めるようにも作用します。そのため、一端、痛みが出ると、痛みと精神的苦悩が悪循環で増悪して続いてしまう事になります。
慢性痛のほとんどは急性痛と異なり、上記の様に痛みだけではなく心理的な苦悩を伴います。従って口腔顔面痛専門医は慢性痛患者さんが痛みを訴えて来院した際に、その背景には深い苦悩があることを理解して治療にあたります。
初診時の医療面接の基本は肯定的傾聴です、患者さんの訴えを全て否定することなく聞きます、それによって患者さんが痛みについてどのように考えているかが次第に判って来ます。患者さんが今の痛みについてどのように考えているかを医学用語で患者解釈モデルといいます、意味は字のまま、患者さんが今の痛みをどのように解釈しているか、捉えているかという事です。いくつもの医療機関を受診したにもかかわらずなかなか治らない、それにより苦悩は益々深くなり、それが痛みを増悪してしまいます、患者解釈モデルはどんどん暗く、重くなっていきます。このような状況に対する治療としてBiopshychosocial治療が勧められます、Bioとは身体的、pshychoは心理的、socialは環境、が合わさって出来た言葉で、Bio身体的な面への治療だけでは不十分なので、pshycho心理的、social環境面にも対処が必要と言うことです。話しは戻って、筋・筋膜疼痛の多くの原因は心理的な要因が大きいということから、最近ではBio-pshycho-socialの順番を入れ替えてPshychosocialを重視した治療をすべきという流れになってきています。
朝日新聞の連載企画「患者を生きる」の掲載例はPshychosocialを重視した治療によって改善した典型例です。
2026年11月01日 11:42