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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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2023年7月の記事:ブログページ

歯科にも総合診療医が必要

歯科にも総合診療医が必要
 
口腔顔面痛の診療をしていて、患者さんによく言われる事として、歯科では大学病院に行くと虫歯、神経の治療、歯周病の治療とか専門的な診療科は有るのに、なぜ、総合的に口の中を診てくれる診療科はないのですか、という疑問とも、要望と受け取れる訴えがあります。
医科においては、あまりにも専門化・細分化しすぎた現代医療の中で、特定の臓器・疾患に限定せず多面的、領域横断性を専門性とする総合診療科があり、日本専門医機構の19番目の基本領域として認定されています。
筑波大学病院附属病院 総合診療科HPから抜粋です
「総合診療科は、何か特定の臓器を対象とするのではなく、患者さんが抱える健康問題について幅広く対応する診療科です。具体的には、頭痛や発熱などのよくある症状や、複数の健康問題を抱える患者さんに対する包括的なアプローチ等、多様な健康問題について総合診療の専門的な視点から診断およびマネジメントを行っています。当科では、心理的・社会的な問題にも焦点を当てながら、十分にお話を伺い、患者さんに納得していただけるまで説明することをモットーにしています。外来でどの科を受診すればいいのかよく分からない方、総合診療の幅広い視点からの診断・治療を必要とする方などの診療について幅広く対応しています。診察したうえで専門医の診療が必要であることが明らかになった場合は、すぐに該当する専門診療科を紹介しています。治療方針が決まり病状が安定した後は、紹介医または近くの医療機関へ紹介しています。」
 
口腔顔面痛の原因診査はまさに歯科の領域横断的に総合的に知識が必要です。つまり、神経の治療を専門とする歯内療法学、歯周病の治療をする歯周療法学、親知らずの痛みや感染による炎症の痛みや粘膜疾患による痛みなどを専門とする口腔外科学、そして、顎関節症などの標準的な知識と診査技術を持って、プラス、筋・筋膜疼痛、神経障害性疼痛などの知識を持って、口の中、顔面の痛みを多面的に診ているのが口腔顔面痛であり、歯科における痛みの総合診療科と言うことになります。そこに、一般歯科臨床の知識と技術が加わる事により、虫歯をどの様な方法で修復するか、神経は抜くのがいいか、様子を診るのが良いかの判断、歯の無くなった部分をどの様に補うか、インプラントが良いか、義歯、ブリッジが良いのかなど、歯科に痛みの総合診断から、歯科全般の治療コンサルテーションを行う事が出来る様になるのが望ましいと思われます。
筋・筋膜疼痛や、神経障害性疼痛など口腔顔面痛専門医が治療するのが望ましい症例は口腔顔面痛で治療しますが、一方、診断が困難であったが歯髄の問題であったり、口腔外科の領域の痛みであることが判った場合には、自分で総合的に治療するか、必要に応じてそれぞれの専門医を紹介したり、あるいは、治療コンサルテーションを行った後に、納得した上で標準的診療を行う歯科医師に紹介したりすることなります。
このような歯科総合診療医がいても良いかなと思っていて、今後の若手歯科医師には一般歯科臨床をベースにして、口腔顔面痛を勉強し、歯科総合診療医を目指していただきたいと思っています。
2023年07月24日 21:15

自己筋触診の勧め 圧痛点を探す

最近の口腔顔面痛患者さんで勉強したこと-2  
 
口腔顔面痛が歯科の日常臨床で診断されない原因は明白です。歯科医師の教育不足です。口腔顔面痛の半分を占める筋・筋膜疼痛の診断のための筋触診法が伝えられていない、3割を占める神経障害性疼痛の診断のための感覚検査法が伝えてられない事に尽きます。平成26年度に非歯原性歯痛が歯科医師国家試験の出題範囲に含まれたので、非歯原性歯痛の原疾患が国家試験対策として教育されました、しかし、診断のための筋触診法、感覚検査法は文字で伝わらず、実際のビデオでも不十分、HandsOn(ハンズオン)でしか伝えられないのです。全国の歯学部で筋触診法、感覚検査法がハンズオンの実習で教育されているのは極少数でしょう。
筋触診法、感覚検査法をハンズオンで実習できるのは日本口腔顔面痛学会の診断実習セミナーだけです、残念ながら診断実習セミナーはコロナによって3年間オンラインだけで行われていましたのでハンズオンの実習は出来ていませんでした、今年は対面の実習セミナーが開催される予定です。
それなら患者さん自身で診査が出来ないかと思い、試行錯誤した結果、自分診査法を提案します。
  1. 筋・筋膜疼痛(トリガーポイント)診査の為の筋触診
  1. 頬にある咬筋をみつけましょう。両肘を胸に当て両手で頬を触ります、かみしめて人差し指から薬指で盛り上がる部分を触りましょう、そこが咬筋です。親指は下顎骨の下縁に下から固定し、他の指も固定してかみしめを弛めましょう。
  2. みつけた咬筋に置かれた人差し指から薬指をまとめてゆっくり小さな円を描くようにして咬筋の全体を触りましょう。凸凹がないかどうか、固い部分がないかどうか、大きさは左右同じかどうか、咬筋の全体像を見失ったら、もう一度かみしめて、咬筋をみつけましょう。そして、凸凹を探しましょう。
  3. かみしめて一番盛り上がった部分に、人差し指か薬指を固定して、かみしめを弛めてもらいましょう。弛めても固い部分はそのまま残っています。その部分が筋硬結部分です。少し力を入れて(最低1kg、2kg程度まで圧すこと)、小さくコリコリと押してみましょう、きっと強い痛みが出ます、場合によっては少し押すと押したところからアゴにジワーーと響くのが判ります。これがトリガーポイントからの関連痛です。トリガーポイントは一個に限りません、同じような手法で咬筋の上部(起始)から下部(停止)、さらに前縁から後縁まで全体で固い部分がないかどうか調べましょう。
  4. このようにして、自分で咬筋を診査した結果、筋に硬結、圧痛があり、そこを5秒程度圧しているとじわーっと拡がり、さらには歯の痛み、アゴの痛みが出て、その痛みが何時もの痛みであれば、あなたの歯痛、アゴの痛みは咬筋の筋・筋膜疼痛による痛みと言うことになります。
これが口腔顔面痛の診査で行っている筋触診です。その方法はやっているよと言う方がいると思います。同じように筋診査をしているのに、なぜ筋・筋膜疼痛が診断出来ないのか、その理由は力不足です。歯科医師でも、どれくらい圧したら良いのか解らないために充分な圧で押していない、一番多いのは腕力が無いために、安定して2kgの圧痛診査が出来ない事です。女性の方は特に腕力が無いことが弱点です、他の記事にも書きましたように筋・筋膜疼痛の正しい診査診断には腕力を鍛えるトレーニングも必要です。
追記:先日、筋触診のハンズオン実習の機会がありました、気になったことは、1)筋圧痛の有無は探せても、トリガーポイントは探せないだろうなと思わせる触診、gently palpated for TP ではない、雑、乱暴、動きが速すぎる、トリガーポイントの上に置いた指先に約1-2kの圧を加えて、指先をずらさずにゆっくり小さな円を描く。2)女性の圧力が弱すぎて、トリガーポイントを探せない。やっぱり、腕力を鍛える必要あり、毎日、腕立て伏せするとか。
 
 
 
2023年07月17日 14:01

最近の口腔顔面痛患者さんで勉強したこと-1 来院までの経過

最近の口腔顔面痛患者さんで勉強したこと、 イヤ、勉強させてもらった事でしょうか、これからの患者さん診療に活かさせてもらいます。
 
私のクリニックにいらっしゃる患者さんの訴えは原因不明の歯痛、口、頬、アゴ、頸、頭の痛みです。これらの痛みを総称して口腔顔面痛という病名が使われます。
様々な痛みを訴えていらっしゃる患者さんの多くは既にいろいろな治療を受けています、歯科治療として、抜髄、根管治療、抜歯を受けている患者さんもいます、また、内科、脳神経内科、脳神経外科、耳鼻科などいろいろな科を受診している患者さんもいます。さらに、近所あるいは評判の鍼灸院、整体、マッサージなどを受けている患者さんもいます。
口腔顔面痛の代表的な原疾患は咀嚼筋の筋・筋膜疼痛と三叉神経の神経障害性疼痛です。
このような原因により歯の痛みを感じている非歯原性歯痛患者さんの当クリニック受診までの典型的な経過を示します。
  1. 歯が痛いので歯科に行った、一軒目では歯は何処も悪くない、経過観察しましょうと言われた。痛みは続くので二軒目に行った、一軒目と同じように虫歯も歯周疾患も無い、原因不明と言われた。患者さんは私の歯の痛みは原因不明の痛みなんだと解釈した。3軒目を受診した時には、原因不明の歯痛と言われているので、この歯の神経を取ってみてくださいと言った、最初、歯科医師は何も異常のない歯の神経を抜くことを断ったが患者さんが何回もの懇願に根負けして神経を抜いた、数日痛みが消えたかに思えたが、痛みは再発して、元に戻ってしまった。患者さんは歯科医師に何とかしてこの痛みをとってほしいと訴えた、神経を抜く処置をした歯科医師はもはや引き下がれなくなり、抜髄(神経抜く処置)してもダメなら、歯を抜いてしまえば痛みは止まるだろうということで、抜歯を提案した、患者さんはそれで痛みが止まるならと、藁にもすがる思いで抜歯を受けた、結果は抜髄と同じ、数日痛みは感じ無かったが痛みは元に戻ってしまった。今度は隣の歯が痛いような気がする、患者さんは不安、怒りと諦めが入り交じった気持ちになり、一時も歯の痛みを忘れることが出来なくなってしまった。このような気持ちが続くことにより睡眠は浅く、途中で何回も目が覚めてしまう日が続いている。このような状況の中で隣の歯の痛みは以前に増して強くなったような気がする。もはや患者さんは、「私の歯の痛みを治してくれる歯医者は世の中にいないのか」と言った絶望感さえ感じるようになっている。  相当、苦しんでいたのでしょう。 苦痛、心が苦しく、そしあて、痛みが続く、口腔顔面痛の患者さんの状況を的確に示しています。
2023年07月17日 11:13