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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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舌痛症 口腔灼熱症候群とは

舌痛症 口腔灼熱症候群(Burning Mouth Syndrome:BMS)とは
従来、日本では心因性と言われていた舌痛症、世界的には口腔灼熱症候群(Burning Mouth Syndrome:BMS)と言われ、誘発因子としてストレス、不安など心因性が関わるが、基本的には神経障害性疼痛の一つであると言われいます。舌の神経支配は味覚を感じる顔面神経の枝の鼓索神経と感覚と痛みを感じる三叉神経の枝の舌神経からなっています。舌は味覚、感覚とも非常に敏感に出来ているので、ちょっとした刺激でも神経が刺激されて障害されてしまい、神経障害性疼痛となるようです。また、味覚の神経と痛みの神経のバランスが崩れるといろいろな症状が出ることが判ってきました。
12月の日本口腔顔面痛学会サテライトmeetingで舌痛症をテーマにすることから、改めてまとめてみました。

口腔灼熱症候群(BMS)は、舌や唇、口の中全体に焼けるような痛みを感じる病気です。
日本では舌に症状が出ることが多く、「舌痛症」と呼ばれることもあります。
誰にでも起こる可能性がありますが、特に閉経後の女性に多く見られます。
見た目に傷や腫れがないため、原因不明のまま長期間悩む方も少なくありません。
完全に治す方法はまだ確立されていませんが、治療によって痛みを軽くすることは可能です。

どんな症状が出るの?
BMSの典型的な症状は、名前の通り「焼けるような熱感(灼熱感)」です。
「舌がジーンと熱い」「ヒリヒリ・ピリピリする」「コーヒーでやけどしたような感じ」と表現されます。
しかし、見た目には異常がなく、傷や腫れ、色の変化などは見られません。
多くの人では、
  • 朝起きた直後は症状が軽く、
  • 午前中から昼にかけて強くなり、
  • 食事中や睡眠中には一時的に楽になる、
    といったリズムがあります。
また、次のような症状を伴うこともあります:
  • 口の中が苦い・金属のような味がする
  • 唾液は出ているのに「口が乾いている」ように感じる
  • しびれ感を伴う
  • 症状が続くと気分が落ち込み、不安を感じる

原因と分類の考え方
BMSには、かつて一次性と二次性という分類がありました。
  • 一次性BMS:検査をしても原因が見つからないもの
  • 二次性BMS:ビタミン不足、糖尿病、薬の副作用など、他の原因によって起こるもの
しかし、現在の国際分類(ICOP 2020)では考え方が整理され、
明確な原因が特定された場合は「BMS」とは呼ばず
それぞれ「原因による灼熱感」として区別します。
つまり、「BMS」とは現在、原因が特定できない灼熱感を指します。

なりやすい人・関係する要因
BMSは特に次のような方に多く見られます。
  • 50歳以上の女性(閉経期・閉経後)
     → エストロゲン低下により味覚神経の感度が変化します。
  • 歯ぎしり・食いしばりの癖がある方
  • 逆流性食道炎のある方
  • 糖尿病・シェーグレン症候群などの全身疾患がある方
  • 鉄・亜鉛・ビタミンB6・B12などの栄養不足
  • 長期服薬中(抗うつ薬・降圧薬など)
  • 過去の歯科治療後から症状が出た方
  • 精神的ストレス・不安・うつ状態を抱えている方
これらの要因が複雑に関係して、舌や口腔の神経が過敏化し、
痛みや灼熱感を感じるようになると考えられています。

診断の流れ
まずは歯科医院での診察が第一歩です。
見た目の異常や歯科的な病変がないかを確認し、必要に応じて専門医に紹介されます。
専門医では、次のような検査を行うことがあります。
  • 血液検査(貧血・糖尿病・ビタミン不足など)
  • アレルギー検査(食物・薬・金属など)
  • 唾液量の測定
  • 口腔スワブ検査(カンジダなどの感染確認)
  • 組織検査(まれに行う)
これらの結果に明らかな原因が見つからなければ、**口腔灼熱症候群(BMS)**と診断されます。

治療法について
BMSの原因は複数の要素が関係するため、個人差に応じた治療が必要です。
米国FDAで承認された特効薬はありませんが、いくつかの薬剤や方法が有効とされています。
薬物療法
  • **クロナゼパム(抗不安薬)**の含嗽または少量内服
  • **アミトリプチリン(トリプタノール)**などの抗うつ薬を少量使用
  • プレガバリン、ガバペンチンなどの神経過敏抑制薬を用いる場合もあります。
これらは痛みの感じ方を抑える神経調整薬として使用されます。
補助的治療・生活指導
  • ストレス緩和、睡眠の改善
  • 軽い運動やリラクゼーション
  • 栄養補給(鉄・ビタミンB群・亜鉛など)
  • 認知行動療法(CBT)や心理的サポート

自宅でできる痛み緩和の工夫
症状を軽くするために、次の方法を試してみましょう。
  • シュガーフリーガムや飴で唾液を促す
  • 冷たい水や氷を口に含む
  • 香辛料・酸味・熱い飲食物・アルコールを控える
  • アルコール入りマウスウォッシュを避ける
  • 禁煙・電子タバコの使用中止
これらは病気を“治す”方法ではありませんが、
一時的な痛みの軽減に役立ちます。

治療期間と経過
BMSは慢性化しやすく、治療せずに放置すると数か月〜数年続くことがあります。
適切な治療により、数週間〜数か月で症状が軽くなるケースもあります。
焦らずに医師や歯科医と連携し、
「症状をゼロにする」ではなく「生活を取り戻す」ことを目標に治療を続けることが大切です。

予防と再発予防
現時点で完全な予防法はありませんが、
次の点に注意することで再発のリスクを減らすことができます。
  • アルコール・カフェインのとり過ぎを控える
  • 熱すぎる・辛すぎる・酸っぱい食品を避ける
  • バランスの取れた食事でビタミン・鉄・亜鉛を補う
  • 睡眠不足・ストレスを溜めない生活を心がける

著者からのアドバイス
口の中が焼けるように痛いと、何も手につかなくなるほどつらいものです。
口腔灼熱症候群(BMS)は、見えない痛みであり、治療にも時間がかかります。
しかし、正しい理解と根気ある治療で、症状を和らげることは必ず可能です。
「もしかしてBMSかもしれない」と思ったら、まず歯科を受診してください。
そして、あなたの痛みを信じてくれる医師・歯科医師に相談しましょう。
痛みを分かち合いながら治療を続けることが、回復への第一歩です。
 
2025年10月19日 20:50