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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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2023年6月の記事:ブログページ

口腔顔面痛 Onsiteハンズオンセミナー開催予定

コロナによりオンラインセミナーが普及し、在宅でセミナーに参加出来るという大きな利便性が得られました。それによって、主催者と受講者を結ぶ一方向性の縦糸は太くなりましたが、双方向性ではありません、ここに大きな問題点があります。また、受講者間の横糸は繋がらず、疑問点解消の機会が失われているように思えます。
 
今年度になりマスク装着緩和、5月にコロナ5類移行によって、学会等が対面で行われることが増えています。学会場で久し振りに会って、いろいろな事をデスカッションしたいと誰もが思っていたようです。
私が主宰してる口腔顔面痛オンラインセミナーは元からオンラインですから、コロナに関係なくオンラインで続けて行きます。そして、オンライン一方向性の弱点を補うべく、これまた元からやっていたオンサイトハンズオンセミナーを復活させます。
つい先日皆さんに案内を出したところです。
【口腔顔面痛 Onsiteハンズオンセミナー】
期日:2023年9月17日(日曜日) 11時-16時
会場:慶應義塾大学北里図書館二階 第一会議室
オンラインセミナーは一方的になりがちですので、ハンズオンで筋肉に触り、口腔粘膜、皮膚の感覚検査をして、できるだけ双方向でデスカッションしたいと思います。
プログラム
1.筋痛関連:筋触診、超音波、トリガーポイントリリース
2.神経障害性疼痛関連:診断法、定性感覚検査、定量感覚検査、薬物療法、トピカル療法
3.痛覚変調性疼痛とは:診断基準、中枢感作、脳機能変調
4.口腔顔面痛オープンセミナー、オンラインセミナーでの疑問点解決
参加希望の方は7月31日までに  i.hiroco0827@gmail.com 池田浩子宛までメールをお願い致します。
 
2023年06月09日 21:34

コロナで何を邪魔され、何を得たか

コロナで我々は何を邪魔され、何を得たか
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、2019年12月初旬に, 中国の武漢市で第1例目の感染者が報告されてから, わずか数カ月の間にパンデミックと言われる世界的な流行となり、わが国でも, 2020年1月15日に最初の感染者が確認された後,アッという間に全国に広まりました。それから3年余り、ようやく収束の兆しが見えて、感染症法上の位置づけが5月8日、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行しました。今後、法律に基づいた外出自粛の要請などはなくなり、マスク、アルコール消毒など感染対策は個人の判断に委ねら、ほぼコロナ前に戻りました。
口腔顔面痛を専門とするものがコロナによってどの様な影響を受けたのか、
まん延防止宣言で外出自粛と言われた際も、通常通り診療していました。電車に乗るのが嫌とか、人混みが嫌とかでキャンセル延期した患者さんもいましたが、閑古鳥と言うほどではありませんでした。その頃に始めた診療の際のイソジンによるうがいは今も続けてもらっています。
日本口腔顔面痛学会を始め多くの学会はハイブリッド(会場で対面とLIVEプラスオンデマンド)開催というコロナ前には考えられなかった状況が出現し、自宅で学会聴講できるという便利な時代になりました。コロナ収束により多くの学会が現地開催、対面形式に戻ろうとしています、これからは主たる学会は現地に出向きますが、他の学会は今後も自宅でオンライン参加しようと思います。海外の学会はどうしようか悩み中です。オンラインでの参加を何回か試しましたが、気分的に英語の学会に集中しきれません、やっぱり、現地でどっぷり英語につからないとダメかなと思っています。
コロナによる悪影響はいっぱいですが、窮余の策で生まれた一つはオンラインセミナーの普及でしょう。2017年、大学止めて、それまでやっていた毎月の対面によるOFPオープンセミナーの運営は村岡先生に任せて、私はGoogleMeetをつかってOFPオンラインセミナーを始めました。コロナ前の当時は、Zoomには参加人数制限、時間制限(30分)があり、最も条件が緩かったのがGoogleMeet(同時参加人数24名)だったので、それで始めて、途中Zoomに乗り換えも考えましたが、今もGoogleMeet使い続けています。OFPオープンセミナーは対面からzoomによるオンラインとなり、当初の目的の慶應義塾大学医学部歯科口腔外科学教室の研修医教育と慶應以外の方々にも口腔顔面痛研修の場を提供することを続けています。
コロナによりオンラインセミナーが普及し、在宅でセミナーに参加出来るという大きな利便性が得られました。それによって、主催者と受講者を結ぶ一方向性の縦糸は太くなりましたが、双方向性ではありません、ここに大きな問題点があります。また、受講者間の横糸は繋がらず、疑問点解消の機会が失われているように思えます。
 
2023年06月09日 21:31

筋・筋膜疼痛で生ずる口腔内、顔面の感覚変化 敏感、鈍麻

筋・筋膜疼痛で生ずる口腔内、顔面の感覚変化 敏感、鈍麻
 
筋・筋膜疼痛の典型的な症状は異所性疼痛としての関連痛です。これについては、何回も書いてきました。痛みの原因が無い歯に痛みを感じる、そして、その歯の周囲の歯肉に感覚異常が生じることがあります。歯肉が敏感になります、場合によっては歯根膜の感覚も敏感になるので打診痛があったり、指や舌で圧すと違和感が出たりすることもあります。このような症状を専門的には、Paresthesia(パレシテジア:自発性または誘発性に生じる「異常感覚、錯感覚、変な感じ 」)、Dysesthesia(ディセステジア:自発性または誘発性に生じる「不快な異常感覚、嫌な感じ」)、そしてallodynia(アロディニア:通常では疼痛をもたらさない痛覚閾値以下の弱い刺激によっても痛みが感じられる感覚異常)と言います。これらの異常感覚は神経障害性疼痛でも生じますから、allodyniaがあると、それは神経障害性疼痛ですと診断されていることもあります。
口腔歯肉、粘膜のallodyniaが神経障害性疼痛によるものか、筋・筋膜疼痛によるかの鑑別診断については別稿で書きます。

筋・筋膜疼痛で関連痛が生じている歯の周りの歯肉、粘膜は敏感になっていると書きましたが、筋肉の上の皮膚は敏感ではなく鈍麻になっています。
触覚が鈍麻になり、腫れぼったい感じと言う患者さんもいます、痛覚も鈍麻になっていて、爪楊枝でチクチクしても皮膚が厚くなって余り感じないと言うことがあります。このように、関連痛のある歯とその周囲の歯肉は敏感になる一方、当該筋肉を被う皮膚は鈍麻になることがあります。感覚検査を行うと、まず触覚試験で正常側は普通に触っている感じ、一方患側は余り感じない、皮膚が厚ぼったくて、触った感じが直接伝わらないと言った感じ、そして、痛覚検査で爪楊枝でチクチク、正常側はチクチク痛く感じますが、患側は余りいたくない、左右同じ位の力で触っていますかと聞かれるほど鈍麻になっています。
関連痛部分の歯、歯根膜や歯肉は筋肉の痛さを錯覚して感じているので敏感になる、一方、皮膚は筋痛に対する中枢性の抑制効果により全般的に感覚鈍麻になるのだろうと思います。これによって筋痛のある筋肉には痛みを感ぜず、関連痛のある部分は痛みを含めて全般的に敏感になっているということだと思います。

ところが、皮膚の鈍麻が敏感になることがあります、筋触診をすると少し圧しただけで痛くて顔をそむける位になることがあります、その場合には皮膚の触覚検査も痛覚検査も鈍麻では無く敏感になります。もはや中枢性の抑制機構は働かず、逆に中枢感作されている状態です。この場合、当該の筋だけでは無く、咀嚼筋、頸部筋の全部が敏感になり、肩、腕の筋肉も敏感に圧痛が感じられる事があります。何が原因で筋圧痛閾値が下がり、鈍麻だった皮膚が敏感になるのか、そのメカニズムは不明ですが、これが慢性的に続いている場合には痛覚変調性疼痛とも言えます。

痛覚変調性疼痛診断基準  確認項目1ab,c,dと4を満たすとグレード診断:痛覚変調性疼痛の可能性があるPossible
確認項目1a. 痛みは、 慢性的(3ヶ月以上)、
確認項目1b. 局所的(不連続的ではなく)多巣性、あるいは 広範囲に分布 
確認項目1c.. 侵害受容性疼痛の否定
確認項目1d.. 神経障害性疼痛の否定
確認項目4. 痛みのある部位に以下のいずれかの誘発性疼痛過敏現象が臨床的に誘発されること。
静的機械的アロディニア、 動的機械的アロディニア、 熱または冷感アロディニア、 上記のいずれかの評価後に残遺症状が残ること。


 
2023年06月07日 15:12

筋・筋膜性歯痛を疑う

非歯原性だろう、そして筋・筋膜性歯痛を疑う
 
口腔顔面痛の代表的な病態である筋・筋膜疼痛は筋圧痛だけでは無く様々な症状を呈します。一番は痛みを感じる部位が筋肉そのものではなく、異所性疼痛、関連痛として離れた部位に感じることでしょう。
口腔顔面痛臨床においては筋・筋膜性歯痛が一番多い反面、異所性疼痛であるために正しく診断されない病態です。患者さんが「この歯が痛い」と訴える、しかし、「その歯には齲窩はなく、充填物も無い、打診無し、エアーにも反応しない、レントゲンも異常なし、どうもこの歯が痛みの原因になるとは思えない」、これが非歯原性歯痛の典型的な局所症状です。異所性疼痛、関連痛という概念を知っていると、患者さんがこの歯が痛いと言っているがこの歯は悪くなく、真の原因は他にあるのだろう、と言う事になり、さらに、非歯原性歯痛を知っていると、患者さんはこの歯が痛いと言ってるが原因は筋肉かもしれない、あるいは神経の異常かもしれないという事になります。一般臨床医ではこの程度の口腔顔面痛知識があれば充分と思います。患者さんが痛いと言っても、その歯の咬合調整したり、抜髄をしたりすることはなく、口腔顔面痛の判るところに紹介するでしょう。
非歯原性歯痛をよくみている先生方は、歯原性歯痛と非歯原性歯痛がそんなにクリアーカットに判別できないと言うでしょう。患者さんが痛いと訴える歯にう蝕があったら、打診があったら、非歯原性歯痛と簡単に判別できないじゃないかと、迷ったらNSAIDs(ロキソンニン等の消炎鎮痛薬)を服用して1週間様子を観ましょう、多くの歯原性歯痛は良くなるか、悪くなるか、何らかの変化が出ます。ところが非歯原性歯痛は全くと言って良いほど症状変化がありません。これでも診断が出来ます。自信が無かったら、その日の処置は止めて、少し経過観察しましょう。
 
2023年06月07日 10:23