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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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2023年5月の記事:ブログページ

一般臨床にも筋触診は大事です 是非出来る様になってください

口腔顔面痛、非歯原性歯痛の原疾患でもっとも多いのは筋・筋膜疼痛であることは世界共通の事実です。ところで、日常臨床で筋・筋膜疼痛が気になる事があるでしょうか、筋触診することがあるでしょうか。歯原性の痛みの場合には敢えて筋触診する必要は無いと思いますが、歯原性の診査をしたが原因不明、非歯原性歯痛が疑われる場合には筋触診は絶対に必要です。ここで大きな問題があります、歯痛の鑑別診断に筋触診が必要だと思っている一般臨床医が圧倒的に少ないこと、また、必要性を感じても筋触診のトレーニングを受けている人がさらに少ない、筋触診したことはあるが正確に出来るかどうか自信がない、と言ったことです。つまり、この歯痛はこの筋の筋・筋膜疼痛による関連痛としての生じていると診断できる一般臨床医は少ないということです。

当院を受診する患者さんの6割が筋・筋膜疼痛を元とする口腔顔面痛、非歯原性歯痛の患者さんです。残りの3割が神経障害性疼痛、1割がその他、痛覚変調性疼痛などの患者さんです。
筋・筋膜疼痛による非歯原性歯痛の患者さんの半分は歯内療法を専門とする先生方からの紹介です。一般歯科で歯内療法を受けたが改善せず、歯内療法専門医に紹介されたが歯原性では無い、非歯原性歯痛の可能性が高いということで当クリニックに紹介されます。このように2カ所の歯科を経て来院される方は恵まれている方々で、対局は3-4カ所を受診し、数歯の根管治療を受け、痛みが改善しないので抜歯、それでも治らないのでインターネントで検索してたどり着いたという患者さん達です。

丸3年以上続いたコロナ禍、学会、セミナーはオンラインでの同時あるいは後日配信というDXの恩恵が発揮されて、従来の現地に出向いて受講という形式から在宅で受講できるという変革がありました。ところが良いことばかりではなく、コロナにより障害された面もあります。一番が筋触診診査のHandsOn講習が出来なかったことです。現在の最先端のDXでも、筋触診の様子をビデオで供覧することは出来ても触診の指先に感じる感覚までは伝える事が出来ません。まさに、手に手を添えて指導する必要があります。

口腔顔面痛の臨床に立ち戻ると、コロナ禍により筋・筋膜疼痛がちゃんと診断されずに痛みで苦しむ人が増えたという事になります。
コロナ感染の可能性はまだまだ続きますが、そろそろ筋触診のHandsOn講習の再開を検討しようと思います。
 
2023年05月31日 11:30

中枢性関与が強い筋・筋膜疼痛の治療 トリプタノール

中枢性関与が強くなっている筋・筋膜疼痛の治療
筋・筋膜疼痛の治療において、トリガーポイントインジェクションよりもトリガーポイントプレッシャーリリースが重要である事を書きました。
本稿では、私が行っている標準的な筋・筋膜疼痛法を示し、それに反応しない場合に何を考えるかを解説します。考えられることは、1)セルフケアが不十分、2)トリガーポイントプレッシャーリリースを加えれば改善する、3)末梢性から中枢性の状況になっている、の3つの状況です。
他の原稿と重複しますがまず基本的な事を書きます
初診時セルフケア指導:負荷軽減法:日常生活で肩が持ち上がっていないか、かみしめていないか、防止策として、気がついたら肩を上げ下げ、 舌で口蓋を舐める、 患側で咀嚼しない 
セルフケアとしての積極的治療:左右頚部四カ所(後頸部筋群と胸鎖乳突筋)、 開口ストレッチアシストブロックを用いた開口ストレッチ、各々30秒/回、3回朝昼晩/日、これを毎日実施する。
上記のセルフケア指導だけで2-3週で初期の痛みがかなり改善します。改善した場合には更なるオフイス治療は加えずに、セルフケアの補強のみを続けて行くことが多いです。
セルフケアが不十分の場合にはセルフケアの重要性と有効性を説明して、やってもらうように指導します。また、セルフケアを熱心続けているがなかなか痛みが改善しない場合で、末梢のトリガーポイントの原因が大きいと判断された場合にはまず、超音波を併用したトリガーポイントプレッシャーリリースを行います。これは他稿で詳しく書きました。
一方、患部の筋全体、あるいは筋の範囲を超えて圧痛閾値が下がって、過敏になっている場合には末梢性に中枢性が加わっていると考えて、セルフケアのストレッチの程度を下げて、中枢に対する治療をします。
ここで疑問は「患部の筋全体、あるいは筋の範囲を超えて圧痛閾値が下がって、過敏になっている」、このような状況は痛みの発生メカニズムではどの分類になるのか、1)侵害受容性疼痛、2)神経障害性疼痛、3)痛覚変調性疼痛のどれに該当するのか。限りなく、3)痛覚変調性疼痛に近いと思っていて、痛覚変調性疼痛の診断基準に照らし合わせると三ヶ月以上を満たしていれば、痛覚過敏症状を満たしているのでpossible of nociplastic pain(痛覚変調性疼痛の可能性あり)と診断されます。
この場合の私の治療法はアミトリプチリン(トリプタノール)の投与です。トリプタノールの投与はまず各患者の至適用量を探すことから始めます、最少用量から始めて少量ずつ漸増し、眠気、口渇、便秘などの即時発現する作用を目当てに至適用量を決めます。至適用量が決まったら、その用量で1-2ヶ月投与を継続します。頻脈や心電図でQT短縮などの以上が生ずる事があるので開始前、30mg、50mg、あるいは至適用量投与の段階で心電図を採ることが必須です。
至適用量で2-4週間経過したところで、緩除に効果が発現してきます。痛みを止めるためですが、NSAIDs、アセトアミノフェン、テグレトールのような即時効果は期待出来ません。
 
2023年05月29日 19:08

超音波併用のトリガーポイントプレッシャーリリース

超音波併用のトリガーポイントプレッシャーリリース
筋・筋膜疼痛の治療というと皆さんトリガーポイント注射が最も強力な治療法と思っているようですが、全体的に緊張のとれていない筋のトリガーポイントに注射しても期待するほどの効果が得られません。
私が行っている標準的な筋・筋膜疼痛法を示します。
初診時セルフケア指導:負荷軽減法:日常生活で肩が持ち上がっていないか、かみしめていないか、防止策として、気がついたら肩を上げ下げ、 舌で口蓋を舐める、 患側で咀嚼しない 
セルフケアとしての積極的治療:左右頚部四カ所(後頸部筋群と胸鎖乳突筋)、 開口ストレッチアシストブロックを用いた開口ストレッチ、各々30秒/回、3回朝昼晩/日、これを毎日実施する。
上記のセルフケア指導だけで2-3週で初期の痛みがかなり改善します。改善した場合には更なるオフイス治療は加えずに、セルフケアの補強のみを続けて行くことがあります。
一方、セルフケアを熱心続けているがなかなか痛みが改善しない場合もあります。このような場合でまだ末梢のトリガーポイントの原因が大きいと判断された場合にはまず、超音波を併用したトリガーポイントプレッシャーリリースを行います。
  1. 超音波照射により筋肉の深部温度が3-4度上がります。これによりトリガーポイントを構成しているコラーゲンが軟化します、と言ってもまだまだ固まり硬結、索状硬結の状態です。
  2. 深部温度が上がった状況で硬結部を1kg程度の圧でゆっくり起始部から停止部に向かい、停止部から起始部に向かって一方向に筋を延ばすように指を2-3cm程度、滑らしてリリースします(マッサージの様にコリコリではありません)。ゆっくり滑らすことがポイントです、硬結(英語ではbarrier垣根、進行を妨げる障害物)を指先に感じながらゆっくり移動させる、途中でコリンと指の下をくぐり抜けて行くと言った感じです。これだけで硬結全体に柔らかくなりがなくなることもあります。
  3. 前記のリリースを行ってもまだ硬結が残っている場合、もっとトリガーポイントに圧力をかけます。これがトリガーポイントプレッシャーリリースです。指先を移動させて硬結を感じたら、指の下をくぐり抜け行かないように次第に圧力を高め、指先の移動を止めて10-60秒間、2-3kg加圧します。この操作を数回繰り返します、深部温度が下がってきたら最後超音波照射を行った後にトリガーポイントプレッシャーリリースを繰り返します。
 
筋触診、トリガーポイントプレッシャーリリースにはある程度の指、腕の力が必要です。筋触診は1kg程度で行う様に規定されていますが、余裕を持って加圧するには1kg以上に加圧できる必要があります。また、トリガーポイントを加圧して関連痛を誘発するには1kg以上が必要です。今回述べているトリガーポイントプレッシャーリリースには1kg以上の加圧力が必要です。要は筋触診、筋膜リリースにはある程度の腕力が必要だということです。
 
2023年05月29日 14:33

口腔顔面痛の診断には筋触診が大事です-2

咬筋トリガーポイント
口腔顔面痛の診断には筋触診が大事です-2
 
先日来院した患者さんを紹介します。
ある日突然、食事中に下顎右側大臼歯部にビキッと瞬間的に激痛が生ずる様になった。主治医A医院を受診し、検査を受けたがう蝕、歯の破折、歯周病など痛みの原因になるものは見つからなかった。かみ合わせがきついからだろうということで咬合調整がされたが改善しなかった。その後、右側で硬いものをかみ締めた時に痛みが出ることが判り、B医院に転院しCTを撮り、いろいろ調べたが異常は見つからず、歯ぎしりが強いということでマウスピースを使う事になった。C医院を受診したところ咬筋へのボトックス注射が行われ、咬む力が弱くなった感じがあったが痛みに変化はなかった。D大学病院を受診し、この歯が原因だろうということで下顎右側6の抜髄・根充が行われ、現在暫間的にレジンで埋めてある。食事の際に、軟らかいアサリを強く咬んだ時に砂が混じっていて、激痛が生じた。痛みは三日間続き、その間、冷過敏も感じられた。
最初に痛みが出てから3年経過、いろいろな治療を受けたが症状は全く変わっていない。

解釈モデル(患者さんが自分の痛みをどう思っているか)と認知行動療法的評価
  1. 歯ぎしり、くいしばりが原因なのか(認知)
  2. 無駄に神経抜かれて悲しい(感情)
  3. こんなに痛いのに、なぜ誰も治せないのか(感情)
  4. 何カ所も行ったのにそれぞれ言うことが違う(行動、感情)
  5. 来年には米国転勤が予定されている、その前に治したい(感情)
 
診査結果
  1. 右側上下顎、打診痛なし
  2. 下顎右側大臼歯は無髄歯
  3. 歯周疾患なし   この段階で歯原性は否定的
  4. 感覚検査 下顎右側歯肉にParesthesia 他領域は異常なし
  5. トリガーゾーンなし、三叉神経痛否定的
  6. 顎関節診査: 左右の顎関節に無痛性クリック、下顎頭牽引圧迫誘発テスト:痛みなし 顎関節痛は否定的
  7. 筋触診:左右咬筋肥大、右側咬筋の中央部は萎縮傾向であるが下部(停止部)に索状硬結多数あって、強い圧痛、かみしめ時にその部分が盛り上がる。歯への関連痛はなし。
 
診断:右側咬筋局所筋痛
治療:セルフケア指導、前歯型スプリント、右側咬筋索状硬結部に超音波照射、トリガーポイントプレッシャーリリースによって、かみしめ時の痛み消失。
本症例はかみしめ時の激痛という歯冠破折やう蝕などの歯原性が疑われるが、A、B、C医院では歯原性を否定して不可逆的処置はしていなかった。それに反して、D大学では不可逆的な抜髄処置をしている、当然のこととして効果は無かった。かみしめたら歯に激痛が出るならば破折かう蝕だろうという代表的バイアスによる診断エラーということである。
C医院では患側咬筋のボトックスの注射をしているが効果は得られなかった、なぜか。ボトックス注射の一義的な目的は筋収縮を阻害して筋萎縮させて筋肥大を改善することである。そのため標準的な咬筋への注射部位は硬結部を狙うのではなく、筋の中央部である。筋萎縮の結果、二次的に筋痛が改善する可能性はあるが、ボトックス注射により必ずしも筋痛が改善する訳ではない。筋・筋膜疼痛へのトリガーポイントインジェクションでは注射液の種類にかかわらず、生食水でも確実にトリガーポイントを狙って注射をすることにより効果が得られる。ボトックス注射により咬筋は全体的に萎縮しているが、下部(起始部)にはしっかり硬結が残って、収縮時に強い痛みが続いているという訳です。
本症例での一番の問題点は、これまで診察した全ての歯科医師が筋触診をしっかりやっていなかったことです。
筋触診がしっかり出来ないと口腔顔面痛診断に大きな穴が開いて仕舞います。
 
2023年05月13日 18:00

ハワイからなぜ口腔顔面痛の患者さんが私のところに来たのか

筋痛治療
ハワイからなぜ口腔顔面痛の患者さんが私のところに来たのか
 
先日ハワイから口腔顔面痛患者さんが受診したことを書きました。私にとっての疑問はなぜこの患者さんが私を指名して受診したのかでした。
患者さんは几帳面な方で、予診票にここ数年の間に受診した医療機関の名前を正確記載してありました。そして、最近に一般歯科から紹介されて受診したENDO専門医のところで、歯原性では無いからENDO治療は適応で無いこと、非歯原性歯痛、口腔顔面痛の診療には米国本土か日本に行くことを勧められた。また、非歯原性歯痛に関するパンフレットを渡されて、それに元赤坂デンタルクリニックが書かれていたと言うことであった。
ENDO専門医の名前はNozomu Yamauchi先生でした、インターネントで検索したところ、University of North Carolina at Chapel Hill 2007卒業、2010年ENDOレジデント終了であることが判りました。University of North Carolina at Chapel HillはTMD、口腔顔面痛の世界では知らない人のいない故William Maixnerが在籍した大学です。さらに私にとってはもう一つのことで非常になじみ深い大学でした。神奈川歯科大学の同級生で沖縄宮古島出身の友利優一君の幼ななじみで大学時代にアパートで会った事のある医科歯科大学出身の山内三男先生が教授として在籍している大学です。そして、大学時代にクラブの先輩であった故木下静子さんが山内先生と結婚されて、同大学のENDO教室に在籍されていました。Orofacial PainクリニックがENDO教室に属していたので、メールをやりとりして様子をうかがったこともありました。
Nozomu Yamauchi先生がUniversity of North Carolina at Chapel Hill 出身だということが判って、絶対、山内三男先生と木下さんの子供さんだろうと思いました。次に、なぜ私のことを知ったのかの疑問は残りました。
この話をまず、鹿児島にいる友利君に話したところ、山内先生の子供さんがハワイで開業している事を知っていました。さらに、この話を口腔顔面痛オンラインセミナーで紹介したところ、参加していた宮本諭先生(現:慶應義塾大学医学部 共同利用研究室・細胞組織学研究室在籍)が骨代謝の研究でUniversity of North Carolina at Chapel Hillに留学していて、家族ぐるみの付き合いがあり、次男のNozomu君がハワイで開業していることを知っていました。
そこで、患者さんの診察結果報告を兼ねてNozomu Yamauchi先生にメールを送りました。 A small world for sure.という返事があり、私がご両親と交流があった事を知ってびっくりしていました。数年前にハワイから来た患者さんがいて、筋筋膜性歯痛だったので非歯原性歯痛、筋筋膜性歯痛の解説パンフレットを渡しました。偶然にもその患者さんもNozomu Yamauchi先生を受診していたようで、それ以来、日本人の非歯原性歯痛の患者さんが受診した際にはそのパンフレットを活用して説明しているとのことでした。
私の作った非歯原性歯痛のパンフレットがハワイで活用されていることを知って、非常にうれしかったです、さらに、その先生が知り合いの息子さんだったという偶然にもびっくりでした。
 
2023年05月05日 15:12

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