▲トップへ

タイトルサンプル

口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

HOMEブログページ2023年 ≫ 3月 ≫

2023年3月の記事:ブログページ

ChatGPTは知識を高める しかし、生き残るには足りない

先日のニュースで今年の医師国家試験をChatGPTに解かせたら正解率50%だっとでていて、まだまだかなと思っていたら、米国の医師国家試験ではほぼ100%の正解率だっということです。まだ、日本語の医学データ量が少ないからで、時間とともに賢くなり、100%正解も遠くないでしょう。いつも、このような革新的な発展の際に、歯科関連の情報もちゃんと記録され、取り残されないかどうかの問題は残ります。
ChatGPTが世に出たときに、大学の先生方は学生が課題レポートや小論文をこのチャットGPTを使って書くというか、書いてもらうのではないかという心配が生まれました。これまでもCopy&Pasteを見分けるソフトがあったり、レポートはprintではなく、自筆を強要したりして不正行為の防止策を講じてきましたが、それを遥か超える事態になっているのです。しかし、このテクノロジーの進化を利用しない選択はありません。
ニューズウィーク日本版2023年03月25日(土)18時25分に、ChatGPTは大学教育のレベルを間違いなく高める――「米国最高の教授」がそう言い切るこれだけの理由、というコラムがあります。
テクノロジーの進化に伴い、人間らしい倫理観を持つリーダーのニーズが高まっている。機械と人間が競争する労働市場で、私たちは人間ならではの必要不可欠なスキルを伸ばしていく必要がある。そして偽情報が氾濫する今、偽物と本物を見分ける知性を身に付ける必要もある。大学は所属教員に対し、不安定で複雑で曖昧な世界での競争に必要な特性を学生に身に付けさせるための授業設計を促すようになるはずだ。チャットGPTは、質の低い質問をすると質の低い答えしか返ってこないことが明らかになりつつある。
私は学生たちに、将来圧倒的なパフォーマンスを上げるためには「質問学」の博士号が必要だと繰り返し強調している。学生はAIに質の高い質問を投げかけ、今の自分の知識以上のことを学ぼうとする意欲が必要だ。
より高度な質問をすれば、それだけ大きな成果が手に入る。もしチャットGPTが知的作業に不可欠なツールになるのであれば、教育者は優れた「質問者」の育成に力を入れざるを得ない。それこそ将来の世界で必要とされるスキルだ。
英語の「競争する(compete)」の語源は、「高める」という意味のラテン語だ。チャットGPTは登場の瞬間から、AIと人間の競争は避けて通れないことを明らかにした。だが同時に、大学教育のレベルを間違いなく高めるだろう。教員たちよ、パニックにならず、賢くなろう、と書かれています。

今や日本においても、あらゆる産業でDXが叫ばれています。さらにDXが広まったあとに生き残れる職種と廃れる職種は何だ等という記事もよく見かけます。医療においては、画像診断、病理診断は完全にAIに取って代わられるだろう、これらの教室に残ろうとする人は激減でしょう。私の専門の臨床診断推論も患者さんがタブレットで問診票に答え、ルーチンの臨床検査を受けると、追加検査が指示され、その結果、あなたの痛みはこれだろうと示される時が遠くないと思います。私の世代は何とか今のままで名人芸的に逃げ切れると思いますが、次の世代はそうは行きません。それではどのような仕事が必要とされていくのか、ちゃんとコミュニケーションのとれる医者、双方向で話の出来る医者でしょうと同僚と雑談したら、目も合わせず、相手を気遣う意識も無い医者に言われるよりも、ロボットに淡々と言われた方がいいかもと反論されました。言い換えます、人間らしい倫理観を持ち、スピリッチャルに基づいた患者とのコミュニケーションの出来る医療者しか生き残れなくなるでしょう。
医療におけるマニュアルはデータを採るために、皆さんが決まったことをする様に作られているそうで、その最たるモノが米国精神医学会が作るDSMはDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの略で診断と統計のためのマニュアルなんです。マニュアルに従って行った医療の結果、有効性の認められたものを適宜いいとこ取りして、患者に応じて活用するのが臨床だという話があります。臨床診断推論、治療法選択推論はAIに任せて、コミュニケーション能力を高める研修をするのが今後必須になるでしょう。
2023年03月27日 14:13

毎晩、ひとり反省会  私と患者さんの合い言葉

毎晩、ひとり反省会 
筋痛はストレス、不安、怒りなどの心理精神的要因が関わっていることが多いと言われています。確かに私の患者さんのほとんどがそのように思えます。ところが、元気はつらつ、ニコニコいい顔、何でも笑い飛ばしている、このような人達が筋痛がひどい、起床時にかみ締めている感じがする、といった事を訴えます。そこで、睡眠障害について、寝付きはどうか、熟睡出来るか、途中覚醒は何回、早朝覚醒はないかなどと聞いていくと、どれも該当することが多いです。こんなに元気そうなのに何でと思うのですが、実はこの人達は日常生活のいろいろな出来事での心のもやもや、ぐるぐると再生される後悔、ふとした瞬間にふくらむ焦りや不安、やり場のないイライラなど、我慢や不満、焦りや不安が複雑に絡み合って「しんどい」ができあがってしまっているそうです。『あなたの「しんどい」をほぐす本』(KADOKAWA)私が日頃思っていたことがこの本にそのまま書かれていたので紹介しました。そして、この人達がしている事が、ひとり反省会です。初診の患者さんでこの人はと思う人に、余計な説明なしに、寝る前にひとり反省会していませんかと聞くと、素直に毎晩しています、と答えてくれます。このような患者さんにはすっと理解出来る言葉のようで、私と患者さんとの言葉かと思っていたら、この本にも出ていました。ひとり反省会で悩むのは、あなたは「こんなに落ち込むほど一生懸命頑張ったのです。そんな自分の良さを認めて、褒めてあげてください。」と書かれています。
先日、ラジオで腰痛が心因性であるという話しがあり、昔買って読んだ本を思い出してwajima図書室を探してもらいました。サーノ博士のヒーリング・バックペイン: 腰痛・肩こりの原因と治療– 1999と『腰痛は<怒り>である』2000を見つけて、もう一度読み直しています。20年以上を経て、心因性疼痛から痛覚変調性疼痛に代わるなど、最近の中枢神経系の関与等が判って来たことで、これらの本に書かれていたことが当たり前のことになっています。患者さん、病気をしっかり診ている人たちは詳しいメカニズムは別にして、なぜこの患者さんにこの症状が現れるのか大方予想が出来るのだと言う事を再確認しました。


追記 HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン/Highly Sensitive Person)と言う言葉もあります。この人達も一人反省会の会員です。
HSPは、米国の心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が提唱した心理学的概念で、神経が細やかで感受性が強い性質を生まれ持った人のことです。全人口の15~20%、約5人に1人はHSPと考えられています。

HSPには、特徴的な4つの性質「DOES(ダズ)」があります。

「いろいろなことが気になって落ち着かない」「ちょっとしたことで落ち込みやすい」と感じることはありませんか。それは、あなたが「HSP」だからかもしれません。HSPとは、視覚や聴覚などの感覚が敏感で、刺激を受けやすいという特性を生まれつき持っている人のこと。   他の人が気づかないような音や光、匂いなど、些細な刺激にすぐ気づく

HSPの人は、感覚的な刺激に対して無意識的・反射的に対応する脳の部位、「扁桃体」の機能が過剰に働きがちで、HSPではない人と比べて刺激に強く反応し、不安や恐怖を感じやすいことが分かっています。相手の気持ちを察知して行動したり、物事を深く探究できる半面、ささいなことで動揺したり、ストレスをためてしまうこともあります。


参照 https://kenko.sawai.co.jp/mental-care/202103.html#:~:text=HSP%EF%BC%88%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%B3,%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%82
 
2023年03月25日 12:31

ハワイから非歯原性歯痛の患者さん来院

先日、ハワイ在住の日本人の方が10年来の非歯原性歯痛で来院されました。
経過を聞くと歯痛で抜髄が始まりで、かなりの歯科を受診して根管治療を数回受けたそうです。最後に日本人のENDO専門医に紹介され、歯原性では無いとの診断、ハワイには口腔顔面痛専門医はいないので米国本土か日本に行ったらどうかとアドバイスされたそうです。今回帰省する機会があり、ENDO専門医に相談したところ、私を薦められ受診したという次第でした。
これまでも、ハワイ在住の数人の日本人から非歯原性歯痛についてメールでの相談があり、ハワイの歯科事情、口腔顔面痛事情を知っていました。米国も日本も、世界の多くの国々で、簡単に口腔顔面痛の診断治療が受けられない状況にあります。せめて、歯原性か歯原性でないかの判断、そして、非歯原性歯痛だとして、筋触診で筋筋膜疼痛の可能性はないか、ここまで診査ができれば多くの患者さんが救われます。
今回ハワイから来院した患者さんは、側頭筋、咬筋、胸鎖乳突筋、後頸部の筋から歯への関連痛がありましたから筋筋膜疼痛だと思います、10年以上経過しているために、歯痛部の歯肉にはAllodyniaも認められ、感作が生じていると思われます。
筋骨格系の痛覚変調性疼痛診断に照らすと、かなりの部分で該当する項目があり、筋筋膜疼痛に痛覚変調性疼痛が合併していると診断できます。
この患者さんはハワイに一台しかない経頭蓋磁気治療を受けていて、歯痛は治らなかったがうつが軽くなったそうです、また、処方されている薬が米国らしかったです、モルフィン、トピラマート(強い片頭痛発作があった)、プロザック(SSRI、抗不安薬として)、頓服にオキシコドンが処方されていました。
私のアドバイスはまずは筋痛へのセルフケアです、腹式呼吸しながらの頸部、咀嚼筋のストレッチ、開口ストレッチアシストブロックも渡しました。全身の随意的最大緊張からの弛緩 など
薬としては痛覚変調性疼痛への対処としてトリプタノールを勧め、漸増服用法のパンフレットを渡して、ハワイのPainmanagementに相談する様に伝えました。

最後の観てもらった日本人ENDO専門医がなぜ私を推薦したのか不思議でした、日本の大学卒業して米国で専門医資格を取ったならば、私を知っている可能性はあるかと思いながら、フルネームが書かれていたので調べたらUniversity of North Carolina at Chapel Hill 卒業でそこでENDOレジデント研修
ここまで観たときに、私の鹿児島の同級生の高校の同級生が同姓で、学生時代に会った事があり、卒業後米国に渡り、University of North Carolina at Chapel Hillの生化学の教授をしていること、その教授の奥さんが私の大学の先輩で、ENDOの教室にいて、かなり昔にメールで近況を連絡したこと等を思い出しました。鹿児島の同級生に連絡して確認したところ息子さんがハワイで開業しているということで、どうも深い繋がりがあったようです。
その息子さんが私をどうやって知ったのかはまだ不明  連絡して診察結果を送ろうと思っています。

 
2023年03月19日 10:52

末梢神経損傷分類の混乱

sunderland分類
Seddonの分類、Sunder land分類活用の問題点   
最新解説  wajima-ofp.com/blog_articles/1707630604.html
Seddonの分類は1942年に発表され、約10年後の1951年にSunder land分類が細分化して発表されています。
この図がsunderlandの原図だと思います。他の図との違いは左側の神経細胞と神経線維が複数書かれています、他の図は神経細胞1個で一本の神経線維だけと勘違いして、一個の神経細胞しか書かれていません。

末梢神経損傷の分類としてSeddonの分類(1942)、さらにこの分類を修正、細分化したsunder landの分類(1951)が用いられます。この末梢神経損傷分類の活用に当たって、いくつかの問題点があります。
第一は、Seddonの分類、Sunder land分類とも多くの日本語訳がありますが、訳が間違っているものがあります。用いられる用語は軸索、シュワン鞘、ミエリン鞘、神経内膜、神経周膜、神経線維束、神経上膜、神経幹などで、必ずしも適切な訳になっていないために損傷程度がどの程度か誤解する可能性があります。オリジナルに忠実な訳を用いてください、内容が全く違ってしまいます。
 
もう一点は、これらの分類はseddon分類のNeurapraxiaとAxonotomesisまでとsunderland4度までは神経線維1本1本の損傷程度を分類し、Seddon分類neurotmesisとsunderland5度では神経幹を包む神経上膜の損傷状況を示していて、神経線維1本1本の問題から神経幹の損傷に飛んでいます。神経損傷の病理像としては非常に有用で、1本の神経線維で髄鞘の障害、軸索の断裂、そして、神経幹の断裂と理解出来ます。
ところが、臨床での神経損傷は1本1本の神経線維の問題ではなく、例えば下歯槽神経損傷とか神経線維が何万本も集まった神経幹の損傷が問題です。ところが、臨床の場において、まるで下歯槽神経が一本の神経線維であるかのように、Seddonの分類のどれとか、Sunder landの何度だと話していることがあります。例えば、下歯槽神経を傷害した場合、1本1本の神経線維ではsunderlandのⅠ度から4度までの損傷が混在した状態か5度の完全に断裂してしまっているかだと思います。
おそらく、このような混乱を憂う人は私以前にいるのは当たり前で、Mackinnon,Dellonと言う人達が解決策として、Sunder Landの分類にVI度損傷としてI〜V度損傷の神経束が混在した状態であるとして分類を追加しています。臨床で診る神経損傷のほとんどはSunder Landの分類VI度損傷(様々な損傷の混在)ということになります。  
例外は智歯抜歯等で下歯槽神経を圧迫し術後にオトガイ部の鈍麻が生じたが、約一ヶ月後に完全改善した例、この例では障害された神経線維全部がseddon分類のNeurapraxia つまり脱髄のみだったと思われます。また、下歯槽神経の完全断裂neurotmesisしてしまった例は、混在無しの状況でしょう。
 
2023年03月16日 21:23

今後の活動 2023年3月に思うこと

2023年3月に思うこと
2017年3月に大学を定年退職してから丸6年経過、米国の先生方に言われたEnjoy retirementの実感が少しずつ湧いてきています。貧乏性で完全にENJOY出来ずに今に至っています。まあ、診療は100%の出力になってしまうので疲れますので休みが良いなと思うときが多くなってきました。
大学時代より診療のレベルは上がっていると思います、一番に患者さんとのコミュニケーションです、時間があるのでしっかり診査ができ、正しい診断を引き出せます。

原則火曜日、金曜日はフルタイム、第3土曜日は午前中、口腔顔面痛診療です。
第2火曜日は静岡清水病院でTMD、口腔顔面痛診療、清水病院では井川先生と池田先生が口腔顔面痛を診ていますから、私は主に紹介患者さんを診ています。静岡県は他に本格的にTMD、口腔顔面痛を診ているところはないので患者さんが集まっています。
第4水曜日は札幌風の杜歯科で口腔顔面痛診療です、広い北海道で口腔顔面痛を専門とする診療科はなく、北海道中から患者さんが集まっています。完全に口腔顔面痛の三次医療機関になっているので、ここでの診療は大変です。歯髄炎の診断で歯の治療しているが改善せず来院、どうもおかしいと神経内科に紹介したら脳腫瘍だったという例も一例だけではありません。風の杜歯科の飯沼先生は口腔顔面痛について北海道歯科学術大会で発表したり、各地区の歯科医師会で講演したりして啓発に努めています。
2022年から月刊デンタルダイヤモンドに「症例に学ぶ診断マスターへの道」と題して連載記事を編集しています。毎号口腔顔面痛に興味を持って診療している先生方にパターン認識法で診断エラーしたが仮説演繹法でしっかり正しく診断して治療したという症例を提示してもらい、診断エラーの原因を自身で探し、次の診断に活かすという内容です。今年は診断エラーのみではなく、口腔顔面痛診断に関わる様々な問題点も取り上げて継続しています。

口腔顔面痛に関するオンライン相談もしています、近くに口腔顔面痛の判る先生がいないのでどうすれば良いか、ペインクリニックの先生に薬を出してもらったが、どう飲めば良いのかとか、海外在住の方々からの相談も多いです。大都市に住んでいるがOrofacial painなんて見当たらない、何処に行っても診てもらえば良いのか、等の相談があります。

診療以外はPCに向かう時間が増えたことから、様々な情報が目についてしまい、臨床に活用できる話や世界中で話題になっている論文などを見つけて、自身のHPブログに挙げたり、口腔顔面痛MLに投稿して皆さんとデスカッションしたりしています。
閑でぼーっとする時間はなく、何時も何かしています、これも貧乏性だなーと思っています。コロナが鎮まったら、米国の学会も行きたいし、東南アジアの若手の教育も再開したいと思っています。
 
2023年03月01日 14:18

月別ブログアーカイブ

2024 (11)

モバイルサイト

元赤坂デンタルクリニックスマホサイトQRコード

スマートフォンからのアクセスはこちら

口腔顔面痛
専門医・認定医のいる施設

風の杜歯科
日本口腔顔面痛学会