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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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口腔顔面痛はまだ歯科で広まっていない

口腔顔面痛診療は日本全国何処でも受けられるわけではなく、専門医の診療をうけられるのは主に歯学部病院のある地域に限られています。
地域の何軒かの歯科を受診したが原因不明と言われた、治療を受けたが改善しない、あるいは、大学に行き、ペインクリニックに依頼されたが改善しないといった憂う状況にあることを聞きます。このような状況は日本に限ったことではなく世界中にみられるようです。正式に口腔顔面痛専門医が承認されている米国においても、ニューヨーク州、カリフォルニア州には多数の専門医がいるが、一人も専門医の居ない州があります。
イタリアから興味深い論文が出ています。「歯科医師は外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーを認識しているか?ウェブベースの疫学調査」という論文です。外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーとはどんなことか、外傷とはここでは抜髄、抜歯、切開などの歯科処置を指しています。有痛性三叉神経ニューロパチーとは三叉神経の神経障害性疼痛を指しています。従って、何らかの歯科処置によって神経が傷害されて術後に痛みが続いている状況ということになります。
この論文の要点をまとめます。
  1. 歯科医師の30%は外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーという用語を知らなかった。
  2. 歯科医師の70%は、臨床において、このような痛みを疑う患者を診たことがあった。その内訳は、根管治療後(60%)、抜歯後(43%)、原因不明(37%)、その他の歯科治療後(21%)であった。
  3. 外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーを疑った3分の1の患者だけ専門医に紹介された。
  4. 結局、ほとんどの患者は疼痛に対して、抜髄、抜歯、切開などの誤った、無意味な、不可逆的な治療を受けていた。
     結論として、不適切な診断と治療の遅れが慢性痛を生ずる可能性があります。さらに、広い知識の不足は、医療制度と患者の双方に、障害による大きな社会経済的損失をもたらしました。
これはイタリアの状況ですが、我が国と大差ないと思います。
 
2025年08月02日 21:47