慢性虚血性心疾患である攣縮性狭心症による歯痛
2026/05/10追加文
現在、神経障害性疼痛で当クリニックに通院中の患者さんから攣縮性狭心症で入院中という連絡をうけました。そこで、発症の際にどのような症状があったか伺いました。自覚症状で一番強かったのは喉の痛みだったそうで、逆流性食道炎で喉が刺激されたか、胃炎がひどくなって喉まで痛くなったような感じだったそうです。
狭心症や心筋梗塞の加えて攣縮性狭心症の発症に際して,歯痛が生じることがあります。
発作時、多くの場合,胸の痛みと顔面の痛み,歯痛が同時に生じ、患者の18%に顔面にも痛みが生じます。最も一般的な部位は後頭部と後頸部、頭部、咽喉部と前頸部 です。その他に4%に左側下顎、右側下顎の歯痛が生じると報告されています。稀に胸の痛みがなく歯痛のみが症状として現れることがあり口腔顔面痛専門医は知っておくべきです。
ここでは急性虚血性心疾患である狭心症、心筋梗塞に比べて余り知られていない攣縮性狭心症をガイドラインから抜粋紹介します。
第五章 市民・患者への情報提供 P51
Q1冠攣縮性狭心症とは,どのような病気ですか?
「狭心症」は,心臓に栄養を供給する動脈(冠動脈)の血流が低下して心臓の筋肉(心筋)に十分な酸素が供給されなくなり(心筋虚血),胸が苦しくなる病気です.「労作性狭心症」は,冠動脈に動脈硬化によって著しく狭くなった部位(狭窄:きょうさく)があると,急いで歩いたり階段を昇ったりなどの運動(労作)時に,心筋に十分な酸素が供給されなくなるために心筋虚血を生じ,胸が苦しくなる病気です.「冠攣縮性狭心症」は,冠動脈が一時的に過度に収縮(攣縮:れんしゅく[スパスム])をきたすために著しく血流が低下し,心筋虚血を生じる病気です.冠攣縮性狭心症は労作性狭心症とは異なり,運動中、労作時ではなく安静時に生ずるのが特徴で,おもに夜間就眠中から早朝の安静時に胸が苦しくなります.
Q2冠攣縮性狭心症では,どのような症状が生じますか?
冠攣縮性狭心症の症状は,胸が圧迫される感じ,詰まる感じ,締め付けられる感じなどが多く,激しい胸の痛みで冷汗を伴うこともあれば,漠然とした胸の違和感くらいに弱い症状のこともあります.痛みは前胸部を中心に生じますが,下顎奥歯や下顎,左肩から左腕に及ぶこともあります.痛みは数分ほど持続することが多く,ニトログリセリンの舌下(舌の下に入れて溶かします)で速やかに消失します.胸痛を自覚した後に一時的に意識を失うこともあります(失神).冠攣縮が長く持続すると心筋梗塞を発症することもあり,またきわめてまれに突然死に至ることがあります.これらの症状は冠動脈が攣縮を起こしやすい夜間就眠中から早朝起床後の安静時に生じることが多いものの,日中の安静時にも生じることがあります.労作性狭心症は体を動かしたときに生じますが,冠攣縮性狭心症は安静時に生じるのが特徴です.また冠攣縮性狭心症では早朝のみにごく軽い労作により,例えば起床後にトイレに行った時や,朝外に出て冷たい空気を吸った時などに生じることもあります.
Q3 冠攣縮性狭心症の診断は,どのように行いますか?
冠攣縮性狭心症の診断には症状の問診が一番の決め手になりますので,自覚症状を医師に詳しく伝えていただくことがもっとも重要になります.夜間から早朝にかけての安静時に胸痛を生じたときに12誘導心電図をとり,心筋虚血に特徴的な心電図所見が認められれば診断は確定します.しかし夜間から早朝の症状出現時に12誘導心電図をとることができるのは入院中に限られるため,症状出現時に心電図を記録するのは容易ではありません.24時間心電図を記録するホルター心電図検査を行った場合には,毎日のように症状が出現する患者さんでは症状出現時の心電図を記録できる可能性が高くなりますが,1ヵ月から数ヵ月に1回など症状の頻度が低い患者さんでは,症状出現時の心電図を記録できる可能性は低くなります.以後省略
引用元:冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害の診断と治療 日本循環器学会/日本心血管インターベンション治療学会/日本心臓病学会合同ガイドライン2023年JCS/CVIT/JCCガイドラインフォーカスアップデート版2023年3月10日発行
冠攣縮性狭心症を含めた急性虚血性心疾患の際に左肩、左腕になんとも言えない嫌な痛みが生ずる事はよく知られたことです、このように痛みの原因部分と異なる部位に生ずる痛みを異所性疼痛と言います。左肩、左腕に異所性疼痛が生ずるメカニズムは両者に分布している痛み神経が脊椎に到ったところで合流(収束)することによります。神経が合流することを正しくは収束と言います。一方、後頸部、喉とか下顎に異所性疼痛が感じられるのは痛み神経ではなく迷走神経、交感神経が頸神経、三叉神経と収束するからです。
このように二つのメカニズムで狭心症、心筋梗塞と言った心臓の危機、生き死にに関わることを本人に知らせるようになっています。
2025年01月13日 12:05