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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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解釈モデルの主訴を病態と信じ込み、治療まで決めてしまう

痛みが慢性経過している場合、なかなか診断がつかない場合などには病気について、患者さんは自分の持っている知識のなかであれこれ考えてしまいます。
患者さんが自分の病気についてあれこれ考えていることを解釈モデルといいます。患者さんが病気の当事者として1)自分の病気の原因をどうとらえ、2)なぜ発症したのか、3)どの程度重いのか、4)予後はどうなのか、5)どんな治療が必要なのか等、自身の病気について決めつけていることがあります。
最近いらした患者さんは10年前に海外で、歯が痛くなって抜髄処置を受けました、しかし、痛みは改善せず、その後に腫脹感も現れて現地でいくつかの医療機関で診てもらいましたが、原因不明ということでした。
この時点で患者さんは海外の下手な歯科医師による抜髄の失敗だろうと考えました。つまり、解釈モデルとして、自分のこの痛み、腫脹感の原因は抜髄の失敗である、日本でちゃんとした根の治療を受ければ治るはず、と言う考えが出来たようです。
その後、症状は痛みよりも腫脹感が気になるように変わったのですが、解釈モデルは変わらず、帰国後、すぐに近所の歯科で根管治療を受けました。10年間に4-5回根管治療を受けたそうですが、症状は全く変わりません。従って、解釈モデルも変わらないままです。
最近、ENDO専門医に紹介され精査を受けたところ、根充状態が完全ではないということで再度根管治療を受けました。三ヶ月後に経過観察を受け、その歯には全く異常が無い、しかし、歯の周囲の腫脹感が変わらないと言うことで当クリニックに紹介されて受診しました。
これまでの治療は、患者さんの10年前のこの歯の治療が悪かったのでこの歯の周りがブヨブヨ腫れぼったいんだ、ちゃんと根の治療をすれば治るという解釈モデルが歯科医師に「海外での下手な根管治療による根尖病巣、根管治療すれば直る」という指示となる根管治療が行われていたようです。
紹介してくれたENDO専門医の治療は完璧で、自発痛はもちろん打診痛もありません、歯原性で無いことがすぐ判りました。そこで、ENDO専門医の先生の私に紹介してくれた意図などを説明して、歯にこだわらずもっと広く口腔顔面痛として診査しましょうと提案、受け入れてもらいました。
結果はその歯のある三叉神経の領域に触覚鈍麻、痛覚亢進が認められ、明らかに三叉神経ニューロパチーでした。10年前には痛みが強かったようですが今は痛みよりも鈍麻感が気になると言う事で、触覚鈍麻がその原因ではないか、時々、痛くなるのは痛覚亢進によるものだろう。そして、現在の感覚障害から10年前に戻ってみると、痛かったのは歯髄炎等の歯原性では無くでは、帯状疱疹だったのではないか、そのため、抜髄後も痛みが続いていた、10年の間に痛みは収まってきて、今は三叉神経ニューロパチーによる鈍麻感だけ残っているのではないかと推定できることを話しました。すぐに納得とは行きませんでしたが、患者さんの10年間の続いていた解釈モデル、「歯の治療が悪かったのでこの歯の周りがブヨブヨ腫れぼったいんだ、ちゃんと根の治療をすれば治る」という、ホワイトボードに根管治療する毎に油性マジックで重ね書きしてきたところに、正しい理解を書き込むことが出来たかなと思っています。
 
2023年01月23日 15:03

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