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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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もう一つの米国顎関節症事情 TMD改善勧告レポート発行

TMDレポートにシンポジュウム表紙
MDに関する世界の最大トピックスは、2020年3月、米国学術機関の統合団体である「全米アカデミーズ」を構成する全米科学アカデミー、全米技術アカデミー、全米医学アカデミー(The National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine (NASEM))から、現状の顎関節症(TMD)に関する生物医学研究、専門教育/訓練、および患者ケアのあらゆる分野において完全に改善しなければならないとする勧告レポート(NASEM Study Report)が発行されたことです。
NASEMがその歴史の中で特定の歯科専門分野の非常に実質的な調査に関与したのは初めてであり、このレポートが歯科領域にとって非常に重要なものと認識されている。
本レポートは米国のみならず我が国をはじめとする世界中の、今後のTMDの研究、臨床に大きく影響しパラダイムシフトを引き起こす可能性があります。本レポートの発行の背景には、長年の全米TMJ患者団体からの米国国立衛生研究所(NIH)に顎関節症治療に関する改善要請があり、2018年米国議会はついにNIHに対してTMD患者の窮状を調査し、TMDsの現在の状況と将来の方向性を要約した文書を作成するように命じたことがあります。 
歴史的に、米国においては、これまでにTMDの研究臨床の改善のために数回、声明(statement)が出され、大きな影響を与えています。主たるものとして、1996年4月に米国国立衛生研究所(NIH)主催によりTMDの治療に関する世界初のテクノロジーアセスメントが開催され、改善声明が出されました。2010 年3月に米国歯科研究学会(American Academy of Dental Research: AADR)がTMD の正しい理解の普及を図るため,TMD基本声明を発表しました。この声明で強調されていたのは以下の3項目でした。1)診断は診断機器でなく、問診による病歴聴取と身体的な検査によって行う、画像検査は必要に応じて行う。 2)治療については、顎関節症の多くはself Limitingである事から、「正当化できる特定の証拠がないかぎりは,顎関節症患者の治療の第一選択は,保存的で可逆的かつ証拠に基づく治療法とすることが強く薦められる」。 3)診断と治療は、身体のみでなく心理・社会的要素に対しても行うべきである。 その後10年あまり経て、このステートメントの内容は現在の世界のTMD治療の基本となっています。
今回のNASEM改善勧告レポートで目を引くのは、1)最近の研究によるとTMDは複雑な多系統障害であるので、TMD研究と治療は関連専門領域の集学的アプローチが必要性である、2)従来の歯科中心で行われていた研究と治療は、新たな研究により得られた科学的知見と整合するように近代化されなければならない、3)従来の歯科医師のみによるTMD治療からより広範な関連専門医療領域の集学的チームアプローチに向けて調整されなければならない、としている点です。
本レポートは、TMDの研究、治療、訓練、教育に関する11個の改善項目を挙げていて、各分野における現状の問題点と改善について短期的、中長期的な提言をしています。全般として、現在の歯、咬合に焦点を当てた機械論的TMD治療からBiopshychosocialモデルとして広範な医学関連専門領域の集学的チームアプローチに向けて調整されなければならないことを強く示唆しています。これらの改善は、TMDの研究、治療、教育に向けて切望されていたパラダイムシフトを実施するための主要な取り組みの第一歩であり、本リポートは、TMDの21世紀の科学に基づく研究と治療を前進させるための生物医学研究と医療社会への強い呼びかけであると認識されています。
上記の米国におけるTMD改善レポートの発行により世界中のTMD治療、研究、教育が大きく変化することが予想され、我が国でも本レポートを参考に遅れることなく現状を見直し、改革の一歩を踏み出す必要があると思います。このような意図で、2022年7月開催の第35回一般社団法人日本顎関節学会総会・学術大会においてシンポジュムを行うことを発案企画しました。
 
2022年07月25日 15:30