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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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唐辛子、ミントと口腔顔面痛

唐辛子は食生活で欠かせない調味料の一つです。子供の頃は何であんな辛いものを美味しい料理にわざわざ掛けてまずくしているんだと思った記憶があります。でも、大人になって気がついたときにはそばには欠かせなくなり、キムチの辛いものも美味しく食べています。
ところが唐辛子は味物質ではなく、痛み刺激の一つなのです。唐辛子は痛み神経の末端にあるTRPV1という43度以上の熱さを痛いと感じる熱感受受容体の一つで、辛いと同時に熱いと感じます。ミントは26度以下の冷たさを痛いと感じる受容体TRPM8を刺激し、痛さは強く感じませんがスースーを感じます。このような一連の熱感受受容体の発見は2021年ノーベル医学賞の受賞対象でした。  北海道の北見市に行ったときに薄荷記念館を見学しました。ハッカの元は「薄荷」という中国語でした。
日常生活で、唐辛子、タバスコですごく辛いと感じたときに水を含むと辛さが和らぎます、氷を含めばもっと効果的です。これは何故かと考えたことありませんか。これは科学的に説明が出来るし、神経障害性疼痛の治療に応用されています。
科学的な根拠が3つあります、1)舌の感覚は口の中で特別敏感です、触覚、痛覚、冷温覚の統べてて歯肉に比べて遥かに敏感です。唐辛子、ミントに対しても非常に敏感です。従って辛くて熱く感じるのは舌です。
2)熱いを感じるTRPV1と冷たさを感じるTRPM8は相互に抑制しあいます。唐辛子でTRPV1の刺激の後でも前でも、ミントや冷たい水を含むと辛さを感じなくなります。TRPM8が冷たさ、ミントで刺激された結果、TRPV1の活動性が抑制されて辛さを感じなくなると言うことです。その反対もありますが、冷たさを和らげるために辛いものを含むのはナンセンスですから誰もやりません。
3)TRPV1、TRPM8とも繰り返し刺激をすると反応しなくなります。これは神経細胞が過剰に興奮することにブレーキを掛ける役目が働くためです。従って、辛いものを食べていると最初は辛い熱いと感じても、食べているうちに余り辛さを感じなくなると言うことです。
このような熱感受性受容体の特徴を舌痛症、神経障害性疼痛の治療に応用しています。
舌痛症の患者さんの舌では、元々敏感な舌が様々な外的刺激を受けて障害され熱感受受容体(TRPV1)やその他の過剰発現が明らかにされていて、ヒリヒリ感を生じていると考えられています。
舌痛症の患者さんで熱感覚過敏や冷感覚過敏のある人には、まずミントの希釈液でうがいとしてもらいます。最初に冷感覚が強く出ても5分もしないうちに感じなくなります。このような反応のある人には濃度を少しずつ高めて、頻回にうがいしてもらいます。続けることにより舌痛症の灼熱感が改善する人がいます。
ミントの効果が弱いか、全然反応が無い場合にはタバスコを希釈してうがいしてもらいます。ミントと同様に最初に灼熱感が強く出ても5分もしないうちに感じなくなります。反応のある人は強く辛さと熱さを感じますので、耐えられない場合にはもっと薄めて用います。このような反応のある人には耐えられる程度で濃度を少しずつ高めて、頻回にうがいしてもらいます。続けることにより舌痛症の灼熱感が改善する人がいます。
ミントによる効果は、2)のメカニズムです。冷たさを感じるTRPM8によって過剰発現した熱いを感じるTRPV1が抑制された結果と考えられます。
タバスコによる効果は3)のメカニズムです。TRPV1、TRPM8とも繰り返し刺激をすると過剰に興奮することにブレーキがかかり、強発現しているTRPV1が機能しなくなる結果と考えられます。
 
 
2025年11月17日 15:51