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口腔顔面痛(原因不明の歯痛、顔の痛み、顎関節症)に慶應義塾大学での永年の経験と米国口腔顔面痛専門医資格を持つ和嶋浩一が対応します

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2024年8月の記事:ブログページ

超音波併用のトリガーポイントプレッシャーリリース

今年も日本口腔顔面痛学会学術大会において、超音波併用のトリガーポイントプレッシャーリリースのハンズオンセミナーを行います。このブログでは学術大会抄録集の原稿を供覧して、ハンズオンセミナーの内容をいち早く紹介します。

本ハンズオンコースでは、超音波照射とトリガーポイント触診およびトリガーポイントプレッシャーリリースを実習してもらう。
筋・筋膜疼痛の最も有効な治療法は何かと尋ねると、多くの方々からトリガーポイント注射、最近ではボツリヌストキシン注射との答えが返ってくる。確か 
。に有効な治療法であるが、筋全体に緊張がある状況でトリガーポイントに注射しても期待するほどの効果が得られない。米国の口腔顔面痛センターでは筋・筋膜疼痛に対してどのような治療が行われているのか、基本的にセルフケアとして開口ストレッチとかみしめ中止指導、オフイス治療として超音波を併用したトリガーポイントプレッシャーリリースが行われる。
超音波併用トリガーポイントプレッシャーリリースの実際
超音波照射により筋肉の深部温度が3-4度上がり、トリガーポイントを構成するコラーゲンが軟化してリリースしやすくなる。深部温度が上がった状況でトリガーポイントである硬結部を1kg程度の圧でゆっくり起始部から停止部に、停止部から起始部に向かって一方向に筋を延ばすように指先を2-3cm程度滑らして、最初は途中でコリンと硬結部(英語ではbarrier垣根、進行を妨げる障害物)が指の下をくぐり抜けていくのを感じながらリリースする。次に、硬結を指先に感じながらくぐり抜けさせないように次第に圧力を約2-3kgに高め、指先が硬結部に乗り上げた状態で移動を止めて10-60秒間、指圧のように加圧することがポイントである。トリガーポイントの軟化、消失まで、超音波照射と術後に痛みが残らない程度に圧を高めてトリガーポイントプレッシャーリリースを繰り返えす。

ハンズオンセミナーの手順
受講者が2人一組となり、担当インストラクターの元に下記の手順で相互実習を行う。
  1. 咬筋を触診して、タウトバンド、トリガーポイントを触知、関連痛を確認する。
  2. 超音波照射(最初に、2W、90秒照射)を行い、照射部が加温されることを実感する。
  3. 咬筋全体の触診を行い、タウトバンド、硬結、トリガーポイントを再確認し、約1kgの加圧でトリガーポイントプレッシャーリリースを行う。
  4. その後は、超音波照射(2W、30秒)とトリガーポイントプレッシャーリリース(約2-3kg加圧)を繰り返す。
2024年08月22日 20:35

新刊「痛みの臨床推論」の読みどころ 1) パターン認識法の視える化

この度、「痛みの臨床推論」という痛みの診断法を解説した本を9月に出版します。本書は歯科医師向けに臨床推論を本格的に解説する、日本で最初の書籍だと思います。
臨床推論には直観的方法と分析的方法があります。
一般歯科臨床での診断は、多くの場合、治療経験があったり、馴染み深い病態であったりすることから、直感的に、簡単に正しい答えを導き出すことができます。このような直感的診断法は、「パターン認識法」とよばれ、簡単で有用な方法です。経験のある病態では、訴えの概略を聞くだけで、無意識に自分がもっている疾患イメージ、症状パターンと照らし合わせて、一致する病態を探して診断するという方法です。しかし、パターン認識法による診断には照らし合わせるべきパターンの蓄積が必要です。また、パターン認識法は一発診断とも呼ばれ、いったん診断エラーが生じると、正しい診断に至るまでパターン認識法を繰り返すことになってしまいます。また、最終的に正しい診断が得られても、なぜ診断エラーが生じたかを考察することがないため、次の診断の機会にフィードバックされず、同様の疾患においてもエラーを繰り返す可能性があります。診断エラーの繰り返しを避けるためには、一つ一つの臨床経験を次の診断にフィードバックする必要があります。どのようにフィードバックするのか、パターン認識法であっても、無意識に行っていた診断過程をステップ化して、要点を文字に表して視える化(視覚化)することが挙げられます。
本書ではパターン認識法は認知バイアスが入りやすく診断エラーを導きやすい悪い方法として取り上げていますが、一つ一つの診断エラー症例を省察してフィードバックすることにより、次のパターン認識法で有効活用できる症例バンクが出来上がります。
読者の臨床推論への理解が深まり、日常臨床における痛み診断能力の向上に寄与できることを願っています。
 
2024年08月21日 11:35

海外からの患者さん 感覚検査、筋触診されていない

最近海外からの患者さんがポツポツ、全員当院のホームpageを観てきてくれます。最近のPCシステムの進歩により、pageが簡単に翻訳出来る様になったり、書類にスマホをかざすと翻訳できたりと非常に便利になっているのですね。
その中で気になる患者さんを紹介します。根管治療で後の痛みが生じ、抜歯したが痛みが収まらず、アミトリプチリン、プレガバリンが処方され、上限まで増量した効果が出ないという訴えでした。通常通り、OFPの網羅的診査を行います、歯原性-異常なし、感覚検査-触覚診査、痛覚検査 異常なし、12脳神経検査-異常なし、筋触診-咬筋、後頸部の筋に強い圧痛、関連痛あり。
歯原性、神経障害性疼痛、は否定され、咬筋に筋・筋膜性疼痛による歯痛が当てはまる。極々一般的なOFP症例です。そこで、口腔内、痛い部位の感覚検査を受けた事があるかと聞くといろいろ検査は受けたがこのような簡単な検査は受けた事が無いとの返事、次に咬筋を触診して、タウトバンドがゴリゴリしながら、この痛いところを触られた事があるかと質問、自分では時々痛いところに触っているが診査では触られた事がないとのことでした。
6月にフィリピン、インドネシアに行った時には感じた事ように、OFPの網羅的診査をパッケージにして、通常の診査で診断が出来ない患者さんに必ず実施するように、日本は元より、海外にも勧めていきたいと思います。
日本でも下顎智歯抜歯やインプラントによる下歯槽神経損傷による外傷後神経障害性疼痛が問題になっています、東南アジアのインプラント熱も高まっています。その中で、歯科医師が起こしてしまった口腔内の問題は歯科医師しか診断出来ず網羅的診査は必須と思います。
また、根管治療の際に開口保持するために筋緊張が高まり、筋障害の素因がある場合には筋・筋膜性疼痛となり、歯の痛みなのか、開口保持による筋・筋膜性疼痛なのか判らなくなり、改善しないために抜歯となったが、痛みだけ残っているという症例も診られます。根管治療後、アゴが疲れませんか、治療の後に痛みがひどくなりませんかと質問し、あるとの答えがあったら、筋触診してみましょう。
口腔内の感覚検査、咀嚼筋の筋触診、難しいことではありません、一度、日本口腔顔面痛学会のハンズオンセミナー等を受講してみてください。
 
2024年08月17日 10:54

筋肉痛治療のポイントは 対症療法に加えて原因療法も

口腔顔面痛でも顎関節症でも、最も多い病態は筋肉痛である。特に慢性化した筋・筋膜性疼痛が一番のやっかいは病態である。かつて、筋肉痛では自発痛は起こらないと言う人もいたが、持続性の筋肉痛で受診する人は少なくない。良い例が肩こり、頸のこりなどによる緊張型頭痛である。元々の肩こり性の人が重いものを持ったり、緊張する場面にあったりすると頭が締め付けられるような感じになり、頭が重苦しく、嫌な感じの頭痛が生じ、数日続くことがある。今現在は緊張型頭痛と呼ばれるが、以前は筋緊張性頭痛と言われていた。筋の緊張だけでは無く、他に精神的緊張によっても起こることがあるということで、現在は筋が外されて緊張型頭痛となっている。精神が緊張するとどうして頭痛が生ずるのか、自律神経の交感神経が亢進し、筋肉組織のなかで筋収縮している部分の血管が緊張して充分な血液が供給されないからと言われている。収縮のためにエネルギーが必要な状況であるのに血管が収縮して血液供給が不足、この状況をEnergy Crisis(エネルギー危機)と言って筋痛の原因とされている。
筋肉痛の治療というと、まずマッサージ、ストレッチ、温罨法、指圧が挙げられる、また、最近では即時効果を求めてHydro Releaseやボトックス注射も多くなっているようです。
全ての病気の治療は原因療法と対症療法からなるのですが、どうも対症療法に目が行きがちで、上記の治療法には原因療法が含まれていません。
筋肉痛の原因療法は何でしょうか、筋への負荷の軽減を目的に筋を収縮させない、そのために、痛い筋を極力使わないことです。第一に咀嚼筋では痛い側で咀嚼しない事、また、フランスパンの様に最後までかみしめなければならない様な食べ物は避ける。次に、日中、何かに集中している時などに肩が持ち上がり、かみしめている状況になりがちです。このような状況を避けるために、気がついたら意識的に肩を上げ下げする、舌で口腔内を舐めるなどの「随意運動によるかみしめ中断運動」をしましょう。人間の身体は無意識に筋緊張していても、意識的にその部位を動かそうとすると無意識の緊張が解除されて、意識通りに動きます。これと全く異なって、こむら返りなどの痙攀では動かそうとしても解除されません。
これらの筋を過度に緊張させない、あるいは筋緊張を中断させる等の筋への働きかけに加えて、精神的緊張による交感神経亢進に対して腹式呼吸が勧められます。この呼吸法で、副交感神経が刺激され、緊張緩和にもつながります。
人間仰向けになると自然に腹式呼吸になります、この特性を活かして腹式呼吸を覚えましょう。仰向けになりへその少し上に手のひらを置きます、次にフーーと息を吐き出してみましょう、手の下のお腹が凹みます。凹みを感じたら、ゆっくり息を吸い込んで、凹んだお腹を膨らまして、お腹で手を持ち上げてみましょう。なるべく高く持ち上げて、一秒間保ちます、そして、解除、フーーとゆっくり吐き出します。数時間は1.2.3秒、4で1秒ホールド、そして解除、5.6.7秒、吐く時をなるべく長く出来る様に練習しましょう。この繰り返しをして、腹式呼吸を覚えましょう、そして、坐位でも立位でも腹式呼吸が出来る様になりましょう。緊張していると思ったらお腹に手を当てて、やってみましょう
子供の頃の深呼吸は思いっきり吸い込んで胸を拡げることから始まっていましたが、あれとはまたく違った呼吸法です。
 
2024年08月17日 10:17

夏の暑さ ブログ再開

今日は8月10日 世の中は夏休み、そして、来週は月遅れのお盆です。またその後には、大学から50年来の親友が逝ってから一周忌がきます。
今年は6月の東南アジアセミナーの準備で5月以来3ヶ月間、周りを見る余裕なく過ぎてしまいました。6月下旬から梅雨前の猛暑があり、しっかり梅雨があり、嫌な雨で朝から傘さして出勤しました。例年、梅雨時でも月一回の札幌出張では6月、7月はカラリとして良い気候だったのですが、今年は本州の梅雨が移動したかのようなドンヨリした日々、蝦夷梅雨というそうです。大通公園のビヤガーデン、残念ながら私が行った日は雨でした、ここ数日は晴れているようで、ビヤガーデンは昼から大入り満員でしょう。青天の大通公園の日陰で冷たいビール、美味しいだろうな、来年こそはです。
さて、私は北国、青森生まれですが寒さが嫌いで、暑さは何とかなります。周りの皆さんは暑い暑いと言っていますが私は暑さは感じるが苦にならないんです。これは何故だろうとつい分析癖が出てしまいました。痛みには感受閾値(感じるか感じないかの境目)と耐性閾値(どれくらいまで我慢できるか)があります。
痛みに関して、患者さんが痛みを訴えるのは、痛みの侵害刺激が、痛み刺激を認知する視床での疼痛感受閾値を超える、つまり、痛みを感じたからではなく、痛み刺激の内容が評価、判断され、それに対する反応として患者さんの大脳皮質での耐性閾値が限界に達したときである、と言われています。疼痛感受閾値はたいていの人たちで比較的一致しているが、疼痛耐性閾値には個人差があり、たとえば年齢、性、文化的背景などに影響されると言われています。また、ここには中枢感作が影響するとも言われます。
私の暑さへの反応は暑いのが気にならないのでは無く、暑いのが苦にならない、暑さ耐性閾値が高いのだろうと自己分析されます。
先日、大きな仕事が終わって負債解消で楽になり、昼に居間のクーラーが気になって自分の部屋で窓開けっぱなしで横になり、暑さは気にならず、少しうとうと、でも、このまま寝ていたら熱中症になってしまうなと思い直して、真夏の午睡は中断しました。
熱中症になる人は暑さの耐性閾値が高すぎて、我慢するのでは無く、知らずに身体の限界を超えてしまうことにより掛かるのだろうと結論。皆さん気をつけてください。
 
2024年08月10日 13:18